
左:小湊鉄道(車両の向こうに見えるのは竹の形をした公衆トイレ)。右:いすみ鉄道スニフ号(車両の先頭にムーミンキャラクターの一人、スニフが描かれている)。

いすみ鉄道はムーミン列車

車内にはスナフキンも。「僕は孤独になりたいんだ。来年の春、また会おう」
上総中野駅10時43分発のスニフ号は、西畑(にしはた)駅を過ぎ、10時52分に総元(ふさもと)駅に到着。総元駅近くの「郷土料理たけのこ」でお昼を食べるために、ここでいったん下車する。
そもそもこの房総半島半周遠足の発端は、去年の今頃に僕が餃子に書いた「筍と鶯」(http://gyo-za-club.blogzine.jp/mgbs/2011/05/post_2026.html)という記事だった。
昔読んだ『美味しんぼ』に、掘ったばかりの「筍の刺身」にまつわるエピソード(「旅先の知恵」)があって、それが忘れられず、去年大多喜で筍掘りを初体験した後、マッチの実家で茹でる前の筍の刺身を食べさせてもらったのだが、既にえぐみが出てしまっていて、とてもおいしいとは思えなかった。もう一度『美味しんぼ』を読み返してみると、筍の刺身は「一番先端の柔らかい部分だけ」というところを読み落としていることに気がついたので、もう一度、今度は「筍の先っぽの刺身」に挑戦したい、といったようなことを書いたところ、キヤスが「その先っぽを食べるとき、一緒に連れていってはもらえないだろうか」というコメントをくれた。
さらに、今年1月「2012初春 青春18切符ローカル線の旅」という記事を書いた時、またまたキヤスが「ローカル線の旅はたまらないなー。(去年8月の青森への旅に続けて)ぜひまた行こう!」と書いてくれたので、「春の青春18切符(3/1~4/10)で酒蔵巡りでもしよう!」と返事したところ、シズカちゃんも酒蔵巡りに賛同してくれて、さらに嬉しいことには、去年の「筍と鶯」のことを覚えていてくれたようで「筍狩とセット?」と提案してくれた。そこで僕は以下のようにコメントした。
「では、菜の花が咲く頃に、JR内房線の五井から小湊鉄道に乗って養老渓谷まで行き、まず散歩&筍を楽しむ。上総中野でいすみ鉄道に乗り換え、大原に出て、そこからJR外房線で御宿まで行き、岩瀬酒造(『吉の井』の蔵元)訪問。御宿から大原まで戻り、木戸泉酒造(『木戸泉』の蔵元)に立ち寄ってから、帰京。以上、『さすらう餃子・房総半島を半周するの巻』というのはどうだろうか」
これが今回の遠足の原形である。
こうして、今までのいきさつを整理してみると、実はキヤスがキーパーソンになっているのがわかるのだが、はなはだ残念なことに、キヤスは法事のために、この日は参加することができなかった。
その後、土曜日は蔵元が休みということで、蔵巡りを断念。散策に関しては、シズカちゃんから、ぜひ御宿の月の砂漠(童謡「月の砂漠」のモデル)を歩いてみたい、というリクエストがあったのだが、早くからこの日は雨天であることがわかっていたために、これも中止。
唯一残ったのが筍を楽しむプランである。大多喜、筍、刺身などをキーワードとしてウェブ検索をかけて見つけたのが、ここ総元駅近くにある「郷土料理たけのこ」というわけだった。
僕たち5人は、まだ冷たい雨が降り止まぬ中、「郷土料理たけのこ」に向かって歩きだした。と言っても駅から徒歩3分、駅を出てまっすぐ歩き、突き当たりのT字路を左折するだけでよかったのだが。
道沿いの水田ではカエルたちが、グワッグワッ、クワックワッ、グワッグワッ、クワックワッ、と大合唱していた。雨が降ると、やはりカエルは嬉しいのだろうか、などとどうでもいいことを考えていると、前方に「たけのこ」と書かれたお店の看板と幟(のぼり)が見えてきた。おぉ、あった、あった。一応事前に電話して、今日の営業と筍料理を確認していたのだが、無人の総元駅を出ると、食堂はおろか、店といえるものは何もなく、本当にこの駅でよかったのだろうか、と少し心配になってきたところだったのだ。