7月の
ある晴れた日曜、
朝ごはんを食べ終わると
妻と一緒にみなとみらいにある
インテリア家具のお店まで
クルマで出かけた。
どうやら
ウチのダイニングテーブルは
もともと6人が席を囲める
大き目なサイズらしく、
なので
妻は椅子を2脚
買い足したいの、
そうゆう。
今までは4人家族だったので、
椅子が4つあれば良かった。
けれど、
あと2つ
買い揃えたいらしい。
とゆうことで
同じメーカーのお店がある
みなとみらいクイーンズタワーまで
買いに来ました。
とはいえ
普段は妻と僕のふたり暮らしです。
使わない椅子が4脚もある
っつうのも、
かえって寂しいんじゃねぇかなー
そう思ったけど
ま、
いっか。
これからは
6人でワイワイとテーブルを囲み
メシを食って酒を飲む、
そんな楽しい日が
年に数回はあることでしょう、
きっと。
*
地下駐車場に置いた
クルマへと戻る途中、
そうだ、
祖父母のお墓参りに行こう、
急にそんな考えが
思い浮かんだ。
お墓は
黄金町のすぐ先、
久保山墓地にある。
Google mapで検索すると
みなとみらいからは
クルマで15分の距離だとゆう。
*
茶屋で
お花とお線香を買って
手桶を拝借。
そこへ水を汲み入れて
柄杓を差し入れた。
熱せられた空気に包まれた墓地に
たくさんの蝉の鳴き声が響き渡る。
久保山という名が示す通り
墓地ではなだらかな傾斜が
場内一面に広がっていて、
ま向かいの斜面にもお墓、
傾斜のその先ずっと奥の方もお墓、
お墓、
お墓、
お墓、
お墓が所狭しと
久保山を覆いつくしている。
茶屋の女性の方のご案内で
祖父母のお墓へ到着。
まずは
雨水で汚れた水鉢ふたつを取り外し、
ジャバっと雨水を捨てて
シュッ・シュッ
水を切ると
柄杓できれいなお水を注ぎ入れる。
そして
夏の日差しを浴び続けて
熱くなった墓石の上へ
ピシャ・ピシャ
幾度となく水をかけ流してみた。
最後に
花束をふたつお供えし、
モゥモゥと煙を焚き流しているお線香を
線香皿の上に置く。
流れ落ちるぬるい汗を
Tシャツの背中に感じながら、
僕は
墓石側面に刻まれた祖父母の名前
そして
戒名と亡くなった日付を読んでみた。
祖父が亡くなってから30年、
そして
祖母が亡くなってから
まもなく20年が経過する、
祖父母は
そのことを僕に知らせてくれた。
祖父の訃報は5月の季節、
社会人となって間もないのに、
会社の上司は
町屋の斎場まで足を運んでくれた。
祖母の訃報は4月のはじめ、
谷塚の斎場では桜が満開だった。
そうか、
もうそんなに経つのか。
妻に訊ねると
久保山墓地には初めて来た
とゆうので、
僕は
祖父母に妻をあらためて紹介。
今は
お墓からクルマで40分ほどのところで
暮らしていることを報告、
しばしのご無沙汰を詫び
またお墓に来ますと告げて
お墓を後にした。
茶屋に戻る石段を上りながら
お墓のあった方を振り返り見た。
すると
祖父と祖母が
お墓の前に立ち並び、
こちらを振り向いて
僕たちを笑顔で見送ってくれている、
こころ安らぐ
そんな二人の姿が目に浮かんできた。
*
二週間後。
上野さんと東京タワーを横目に
芝公園駅地下鉄入り口を
目指して歩いていると、
ポケットに入れていたスマホが
ブーン
ブーン、
揺れ動いていた。
ディスプレイには
今年1月からお世話になっている
司法書士事務所の
先生の名前が書かれていたから、
僕は
少しだけドキリとして
電話に出た。
もしもしー、
セキカワさん、
いまよろしいですか
大丈夫でーす
セキカワさん、
例の件で
家庭裁判所から電話がありまして
え…
シンイチさんのお父さんのご両親、
つまりシンイチさんの祖父母、
おじいさんとおばあさん
お二人に関する書類を
こちらで準備させていただきます
その確認のお電話です
あら…
おじいさんは
幸一さん、
おばあさんは
俊枝さん
でお間違いないですよね
そう、
幸一と俊枝です
ふたりはもう20年も30年も前に
亡くなっていて、
いやー驚いたな、
実は
先々週かな、
久しぶりに
ふたりのお墓参りに
行ったばかりです
司法書士の先生曰く、
例の件では父までが書類提出の対象かと
考えていたが、
家裁から祖父母に関しての書類も
提出するよう求められたらしい。
それは難しい作業ではなく、
既成の資料を提出すれば
コトが済むのだそう。
なので
おじいさん・おばあさんの
お名前の確認と
おふたりに関する書類を提出する
そのことのご報告です、
大丈夫ですから、
ゆっくりとした口調で
そう伝えてくれた。
*
スマホをみつめていると、
上野さんが
心配そうに声をかけてくれた。
何かありました?
大丈夫ですか?
大丈夫です、
僕は笑顔でそう応えた。
そうか、
お墓を振り返り見たとき、
祖父母ふたりは
やはり僕と妻を
見送ってくれていたのだな、
きっとそうに違いない。
そして
大丈夫、
いろいろなことが
大丈夫だからね、
シンイチや
そのことを僕に伝えたかったのだ
間違いない、
僕はそう確信した。
*
上野さん、
神保町に着いたら
キッチン南海で
昼ごはん食べましょう!
暑い日にはカツカレー、
英気を養いましょう!
いいですね、
行きましょう!
僕たちは弾むようにして
芝公園駅の地下階段を
駆け下りていった。
ある晴れた日曜、
朝ごはんを食べ終わると
妻と一緒にみなとみらいにある
インテリア家具のお店まで
クルマで出かけた。
どうやら
ウチのダイニングテーブルは
もともと6人が席を囲める
大き目なサイズらしく、
なので
妻は椅子を2脚
買い足したいの、
そうゆう。
今までは4人家族だったので、
椅子が4つあれば良かった。
けれど、
あと2つ
買い揃えたいらしい。
とゆうことで
同じメーカーのお店がある
みなとみらいクイーンズタワーまで
買いに来ました。
とはいえ
普段は妻と僕のふたり暮らしです。
使わない椅子が4脚もある
っつうのも、
かえって寂しいんじゃねぇかなー
そう思ったけど
ま、
いっか。
これからは
6人でワイワイとテーブルを囲み
メシを食って酒を飲む、
そんな楽しい日が
年に数回はあることでしょう、
きっと。
*
地下駐車場に置いた
クルマへと戻る途中、
そうだ、
祖父母のお墓参りに行こう、
急にそんな考えが
思い浮かんだ。
お墓は
黄金町のすぐ先、
久保山墓地にある。
Google mapで検索すると
みなとみらいからは
クルマで15分の距離だとゆう。
*
茶屋で
お花とお線香を買って
手桶を拝借。
そこへ水を汲み入れて
柄杓を差し入れた。
熱せられた空気に包まれた墓地に
たくさんの蝉の鳴き声が響き渡る。
久保山という名が示す通り
墓地ではなだらかな傾斜が
場内一面に広がっていて、
ま向かいの斜面にもお墓、
傾斜のその先ずっと奥の方もお墓、
お墓、
お墓、
お墓、
お墓が所狭しと
久保山を覆いつくしている。
茶屋の女性の方のご案内で
祖父母のお墓へ到着。
まずは
雨水で汚れた水鉢ふたつを取り外し、
ジャバっと雨水を捨てて
シュッ・シュッ
水を切ると
柄杓できれいなお水を注ぎ入れる。
そして
夏の日差しを浴び続けて
熱くなった墓石の上へ
ピシャ・ピシャ
幾度となく水をかけ流してみた。
最後に
花束をふたつお供えし、
モゥモゥと煙を焚き流しているお線香を
線香皿の上に置く。
流れ落ちるぬるい汗を
Tシャツの背中に感じながら、
僕は
墓石側面に刻まれた祖父母の名前
そして
戒名と亡くなった日付を読んでみた。
祖父が亡くなってから30年、
そして
祖母が亡くなってから
まもなく20年が経過する、
祖父母は
そのことを僕に知らせてくれた。
祖父の訃報は5月の季節、
社会人となって間もないのに、
会社の上司は
町屋の斎場まで足を運んでくれた。
祖母の訃報は4月のはじめ、
谷塚の斎場では桜が満開だった。
そうか、
もうそんなに経つのか。
妻に訊ねると
久保山墓地には初めて来た
とゆうので、
僕は
祖父母に妻をあらためて紹介。
今は
お墓からクルマで40分ほどのところで
暮らしていることを報告、
しばしのご無沙汰を詫び
またお墓に来ますと告げて
お墓を後にした。
茶屋に戻る石段を上りながら
お墓のあった方を振り返り見た。
すると
祖父と祖母が
お墓の前に立ち並び、
こちらを振り向いて
僕たちを笑顔で見送ってくれている、
こころ安らぐ
そんな二人の姿が目に浮かんできた。
*
二週間後。
上野さんと東京タワーを横目に
芝公園駅地下鉄入り口を
目指して歩いていると、
ポケットに入れていたスマホが
ブーン
ブーン、
揺れ動いていた。
ディスプレイには
今年1月からお世話になっている
司法書士事務所の
先生の名前が書かれていたから、
僕は
少しだけドキリとして
電話に出た。
もしもしー、
セキカワさん、
いまよろしいですか
大丈夫でーす
セキカワさん、
例の件で
家庭裁判所から電話がありまして
え…
シンイチさんのお父さんのご両親、
つまりシンイチさんの祖父母、
おじいさんとおばあさん
お二人に関する書類を
こちらで準備させていただきます
その確認のお電話です
あら…
おじいさんは
幸一さん、
おばあさんは
俊枝さん
でお間違いないですよね
そう、
幸一と俊枝です
ふたりはもう20年も30年も前に
亡くなっていて、
いやー驚いたな、
実は
先々週かな、
久しぶりに
ふたりのお墓参りに
行ったばかりです
司法書士の先生曰く、
例の件では父までが書類提出の対象かと
考えていたが、
家裁から祖父母に関しての書類も
提出するよう求められたらしい。
それは難しい作業ではなく、
既成の資料を提出すれば
コトが済むのだそう。
なので
おじいさん・おばあさんの
お名前の確認と
おふたりに関する書類を提出する
そのことのご報告です、
大丈夫ですから、
ゆっくりとした口調で
そう伝えてくれた。
*
スマホをみつめていると、
上野さんが
心配そうに声をかけてくれた。
何かありました?
大丈夫ですか?
大丈夫です、
僕は笑顔でそう応えた。
そうか、
お墓を振り返り見たとき、
祖父母ふたりは
やはり僕と妻を
見送ってくれていたのだな、
きっとそうに違いない。
そして
大丈夫、
いろいろなことが
大丈夫だからね、
シンイチや
そのことを僕に伝えたかったのだ
間違いない、
僕はそう確信した。
*
上野さん、
神保町に着いたら
キッチン南海で
昼ごはん食べましょう!
暑い日にはカツカレー、
英気を養いましょう!
いいですね、
行きましょう!
僕たちは弾むようにして
芝公園駅の地下階段を
駆け下りていった。
私と母はいつも、「やってるから大丈夫!」と薔薇に水をあげます。見てるのよねー、きっと天国で、うふふ!