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餃子倶楽部

あぁ、今日もビールがおいしい。

「ラ・ボンバンス」検定準1級問題(2012年5月)・解答解説・その2

2012-06-02 11:03:30 | Hepburn
(6)バブルB
「あわび鍋」
 バブルは「泡(あわ)」、Bは「ビー」で、合わせて「あわび」。
 実際のメニューには、「バブルB ノリノリ めかわリロセ」とあった。「ノリノリ」は「生海苔」、「めかわ」と「リロセ」は再び右からの逆読みで「わかめ」と「セロリ」。
 これは、あわびをメインとして、生海苔とわかめが添えられた海の香りたっぷりの小鍋で、セロリの薄切りがいいアクセントになっていた。
 ここでのお酒はぬる燗。「ラ・ボンバンス」でのぬる燗は初めてのこと。

(7)02910087・・ダレ
「牛肉とお花の冷しゃぶ、ごまだれソースがけ」
 029で「お肉」、10は「と」、087は「お花」で、「肉とお花」。
 「・・」は(5)に続いて再び「ごま」で、ごまだれ。
 小さな四角い銀の蓋を明けると、色鮮やかなエディブルフラワー(edible flower:食用花)が目に飛び込んできた。美しい吹き寄せちらしのようでもあった。牛肉と季節の野菜には軽く火が通され、ごまだれがかかっている。お花をあしらった「冷しゃぶ」というわけだ。

(8)ジンジャー♪13
「新生姜飯」
 ジンジャーは言うまでもなく「生姜」。
 ♪は(1)でも述べたように、「ドレミファソラシド」のいずれか。1は「いち」の「イ」、3は「スリー」の「ス」ということで、「ドレミ…」は「ラ」を選択して、「ライス」となる。
 小振りの土鍋で炊かれた「新生姜の炊き込みご飯」。スタッフが蓋を開ける。おおッ!立ち上る湯気の向こうに、米の一粒一粒が見事に立って、艶やかに輝いているではないか。目にするだけでも感動だ。お茶碗によそって頂いた炊き込みご飯をパクッと口に放り込むと、新生姜の香りと出汁の風味が口の中に優しく広がる。磨き抜かれたお米はエッジが利き、はっきりとした輪郭が印象的だ。お宝とも言えるお焦げがまるで郷愁を誘うようにさらなる風味を加える。ご飯を食べているだけなのに、昔日の感傷が胸にこみ上げてくるとは!日本のお米文化の奥深さを思い知らされた。
 残ったご飯はおにぎりにしてもらい、家に持って帰った。帰宅後、嫁のマッチは3個のおにぎりを「うまうま、うまうま」とあっという間に平らげた。


   ◆   ◆   ◆

 さる5月28日(月)、その1週間ほど前、キヤスのお母さんが古希を迎えられたということで、キヤスがお母さんを西麻布「ラ・ボンバンス」に招いたそのお祝いの席に僕も御一緒させて頂いた。
 「ラ・ボンバンス」2012年5月期の献立は、上で紹介した8品に加え以下のものがあった。

・稚鮎炭火焼 蓼ソース添え(Are you ready イェーイ!:Are you→アーユー→鮎)
・フォアグラとスクランブルエッグ イングリッシュマフィンと共に(フォアグラ スクランブルーイングリッシュマフィア)
・今月のデザートセット(白いコーヒー&黒ゴマのシャーベット シャンパンゼリー)

 キヤスママは、ブースの壁に掛かっていたヒロヤマガタの画に目を留め、あくまで日本でありながらも西洋的なテイストを感じさせるところがお店の雰囲気に調和している、と褒めた。いつものように快活に目を輝かせながら、料理の一品一品に舌鼓を打ち、ご自身でも焼物を嗜(たしな)まれることもあり、食器やお猪口や切り子の一つ一つに感心しておられた。そして、「食は芸術よね」と北大路魯山人を思わせる一言をさらりと言ってのけた。
 僕たち3人は、田無の家のこと、昨年他界されたキヤスパパと最後にお世話になった病院の先生のこと、キヤスをはじめとする子供たちのこと、草花のこと、旅のこと、そして友のことなど、尽きせぬ想いを口々に語り合った。宿命的なことに、楽しい時間はあっという間に過ぎ、ふと時計を見ると入店してから3時間あまりが経とうとしていた。柴又方面から「今日はこれでお開きということで」という声が聞こえたような気がした。
 僕たちは店の外でシェフの岡元さんに見送られて、タクシーに乗り込み、渋谷まで行き、そこから山手線に乗った。新宿駅で埼京線に乗り換えるために、僕は電車を降りた。近いうちにマッチと息子の京を田無の家に連れて行くことを約束して。

 キヤスママ、キヤス、今日は会食の席に僕のことも混ぜてくれて本当にありがとう。言葉にならないぐらい嬉しかった。また、楽しい思い出作りに励もう!
 そしてキヤスママ、ママがいつまでも若くお元気でいられることを心よりお祈りしています。


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「ラ・ボンバンス」検定準1級問題(2012年5月)・解答解説・その1

2012-06-01 10:07:16 | Hepburn
(1)New? crab3♪
「新グリーンピースのすり流し、カニみそ添え」
 Newはもちろん「新(しい)」を意味するので、「新ジャガ」、「新タマネギ」などのように、走り(走り物、初物)の食材となる。
 ?は「ピースマーク」であることから「グリーンピース」。
 crabはスペル通りに「カニ」。
 3は「三つ」の「み」、♪は「ドレミファソラシド」の「ソ」と解釈し、合わせて「カニみそ」。
 ♪は「ラ・ボンバンス」の暗号メニューにしばしば登場するが、「ドレミファソラシド」のいずれの音も適用可能であるようだ。
e.g. ♪ー4「ソース」、(株)♪「カブラ;蕪」など。
 新グリーンピースの峻烈な爽やかさと、滋味深い出汁、そしてカニみそのこくが三位一体となった完成度の非常に高い椀物であった。

(2)u2fly
「ウニフライ」
 u2は「ウニ」。
 fly [flai](飛ぶ)はfry [frai](揚げる、炒めるなど加熱調理する)と音が似ていることから、その代用表現であろう。よって「ウニフライ;揚げウニ」となる。
 とはいえ、「ウニよ、飛べ」というのも素敵な表現だ。「空飛ぶウニ」なんて、なかなかシュールなファンタジーではないか!

(3)奇才
「イサキ」
 奇才(キサイ)は(右から)逆読みして「イサキ」。
 逆読みは「ラ・ボンバンス暗号メニュー」でもっとも多用されるパターンの一つである。これまでにも、「↑わかぐふ」で「フグ皮揚げ」、「るじすかのりぶどさ」で「佐渡鰤の粕汁」などがあった。今回のメニューでも、(4)の「りぎにお」が右からの逆読みパターンで「おにぎり」を意味している。
 今夜のイサキは皮を湯引きした松皮造り(湯引きした皮が松の木肌に見えることから)。皮と白身の間にある半生の脂身がたいそう美味。

(4)birdかい!りぎにお
「(炙り)鳥貝と(焼き)おにぎり」
 言うまでもなく、birdは「鳥」で「鳥貝」。上述のように「りぎにお」は逆読みして「おにぎり」。
 火で炙った鳥貝がお寿司一貫ほどの焼きおにぎりにトッピングされている。炙ったり、焼いたりと、その一手間二手間が料理を数倍おいしくする。

(5)よもぎ・・10fuABU2
「エビとウニのよもぎ胡麻豆腐和え」
 「・・」は小さな黒い粒なので「ごま」を意味している。以前には「・」と粒1個の表記で「ごま」を意味したこともあった。10は「十(とお)」、fuは「ふ」で「(とおふ→)とうふ(豆腐)」。10fuで「豆腐」も以前に出題例がある。以上から、「・・10fu」は「ごま豆腐」のこと。
 ABは「エービー」で「エビ」、U2は(2)にもあったように「ウニ」のこと。
 (2)~(5)は「2012ロシアンルーレット」と題された、前菜7種プレートのうちの4品。他に、ナムルロース(ナムルを牛ロース肉で巻いたもの)、カツオくん(漬けカツオの握り)、そして弾ける生ハムがあった。なぜ「ロシアンルーレット」なのかというと、この弾ける生ハムの中に駄菓子の「パチパチ(はじけるキャンディ)」が隠されていたため。確か、初めてこの店に来た時にも同様の仕掛けを経験した(http://blog.goo.ne.jp/gyozaclub/d/20110727)。


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「ラ・ボンバンス」検定準1級問題(2012年5月)

2012-05-31 08:16:49 | Hepburn
問 以下の(1)~(8)は西麻布「ラ・ボンバンス」のコースメニューの一部である。それぞれどのような料理であるか、そのおおよそのところを答えよ。

(1)New? crab3♪

(2)u2fly

(3)奇才

(4)birdかい!りぎにお

(5)よもぎ・・10fuABU2

(6)バブルB

(7)02910087・・ダレ

(8)ジンジャー♪13

 解答と解説は明日。


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さすらう餃子#2「花列車で筍を食べに行くの巻」(4)

2012-04-25 07:54:10 | Hepburn
 雨中の「い鉄」ムーミン列車は13:35に終点の大原駅に到着。
 当初は、JR大原駅で13:38発の外房線各駅停車に乗り換えて、帰京する予定だった。だが、乗り換え時間が3分と短く、いすみ鉄道大原駅とJR大原駅の位置関係もわからなかったので、走って移動という事態も考慮し、急遽、時間的に余裕のある、14:23発の特急わかしお18号に乗ることにした。東京駅への到着時間は5分と違わないし、特急の座席の方がはるかに快適だと思ったのだ。結局のところ、いすみ鉄道大原駅とJR大原駅は隣接しており、JRの千葉東京方面は改札を入ってすぐのホームだったので、3分という乗り換え時間でも十分間に合ったのだが。
 まあ、そういうわけで各自それぞれにお土産などを物色した後、さらに強くなってきた雨と風を避けるために、何となく連絡橋を渡って向い側のホームにある待合室へ足が向いてしまった。前述のように、改札を入った、すぐ目の前が千葉東京方面行きのプラットホームなのである。
 14:20過ぎ、特急わかしお18号がホームに入って来た。さまよう餃子御一行様はお気楽なことに線路を隔てたホームの待合室にいて、うすらぼんやり特急を眺めている。「あれ、あたしたちの乗る特急じゃない!」と誰かが気づき、あーっ!そうだそうだ!と、さまよう餃子御一行様はドドドドッと階段を駆け上り、やはりドドドドッと階段を駆け降りて、発車2、3秒前のところで、全員何とか乗り込むことができたのであった。走らずに済んだところを、わざわざ予定を変更して走らずに済ませようとしたのに、結局走ることになっちゃったのね、お疲れちゃん、おバカちゃん。
 特急わかしお18号は15:35に東京駅に到着。東京駅一番街にこの日オープンした「東京おかしランド」を見ようと、一度駅を出た。翌日仕事のあるジュンコちゃんは東京駅から帰宅する予定だったが、「東京おかしランド」で何か買って行きたいと、果敢にも、開店初日で大混雑のエリア内に飛び込んで行った。「今日はありがとう。とっても楽しかったわ。またねー」と手を振りながら。
 シズカちゃん、トモエちゃん、カオリちゃん、そして僕の4人はそこから杉並にあるトモエちゃんの家に行き、打ち上げの飲み会に突入。家に帰るまでが遠足、と先生に言われたことがあるかどうかは定かではないが、僕たちの遠足は家に帰っても続いた。僕たちは、シズカちゃんとトモエちゃんの愛猫ChaCha(メス、10歳)の宿命の対決などを肴に、夜が更けるまで、ワイン3本と紹興酒を1本開けた。

 打ち上げ&ChaCha(茶々)画像はこっちhttp://kaotansan.blog.so-net.ne.jp/2012-04-26

 外ではまだ雨が降りしきっていた。ワインの入ったグラスを傾けるとき、僕は一度、深夜、そぼ降る雨の中、トコトコと物静かに走るローカル線のことを想った。      (了)


まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
風の先の終わりを見ていたらこうなった 雲の形をまにうけてしまった
(奥田民生)


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さすらう餃子#2「花列車で筍を食べに行くの巻」(3)

2012-04-24 17:38:19 | Hepburn
 「郷土料理たけのこ」の営業は11時からで、僕たちは開店直後に入店したので、一番乗りかと思ったが、驚いたことに先客がいた。店内は広く、長い座敷席が2つとカウンター席、そしてテーブルが3、4脚置かれていた。さすらう餃子一行は座敷席の奥に陣取った。さあ、思う存分、気の済むまで大多喜の筍を食べたるで!
 僕たちは迷うことなく、「たけのこ御前」(3150円)を注文した。「たけのこ御前」は、筍の刺身を含み、全10品ほどにも上る筍尽くしのコースなのだが、食べ切れないかも知れないから、とトモエちゃんは「たけのこステーキ御前」をチョイスした。酒はビールと勝浦の地酒。

「たけのこ御前」
・筍の酢の物(筍の先端あたりの柔らかい皮である姫皮の酢の物)
・筍入りデザート(なぜか最初に登場。バナナなどとともにフルーツソースで和えてある)
・筍の胡麻和え(これは初めて食べた。クリーミーな胡麻ペーストが筍とよく合い、白飯にかけて食べたいぐらいだ)
・香の物(メンマ)
・煮物(筍、人参、椎茸、里芋などの煮物)
・山菜の天ぷら(もちろん筍の天ぷらも。テーブルにはなぜか「アジシオ」しか置いてなかった)
・筍の唐揚げ(衣に味がついているから唐揚げだよ、とジュンコちゃんが逸早く発見)
・筍の刺身(これが目当てでこの店に来たようなものだが、まったくの生というわけではなく、軽く茹でてあるようだ。えぐみがまったくなく、食感もほどよく柔らかでおいしいことはおいしかった。筍の上に乗った柚子味噌をつけすぎると、味噌の味しかしなくなってしまうので、味噌は大部分落としてから食べた)
・筍のステーキ(生クリーム入りのブラウンソースで食す)
・焼き筍(皮ごと焼いてあるため、中は蒸されて、大変に香りがよく、筍の味も濃い)
・筍ご飯(筍料理で一番の好物。筍ご飯と冷や酒があれば後は何もいらないぐらいだ。ご飯の上には筍を細かく刻んで乗せてあり、さらに黒胡麻がかかっているのがアイデア)
・筍のみそ汁(筍の風味が抜群。筍みそ汁には筍の茹で汁を使うという話を聞いたことがある)

料理写真はこちら→http://kaotansan.blog.so-net.ne.jp/2012-04-21
  
 いやあ、食べた食べた。大袈裟じゃなく、この小1時間ほどの間に1年分の筍を胃袋に収めた。ビールと冷酒もみんなで1本ずつしか飲めなかったほどだ。女性陣も一生懸命ワンダフルに完食!
 小休止後、1年分の筍が入ったお腹をさすりつつ、店を出て、総元駅へと戻った。
   
   
    
P4140716
   
総元駅に咲く日本水仙
  
   
    
    
P4140717
  
同じく、梅と桜。わかりにくいかも知れないが、手前が梅。
  
   
   
   
 無人の駅舎に置かれている「駅ノート」をパラパラめくっていると、ある女の手記が目にとまった。「ユウ君、4年前に一緒に見ようねって約束した菜の花を見に来ました。菜の花は4年前と変わらないのに…」一瞬、ソープオペラの世界に引き込まれそうになった。「菜の花本線涙雨」などという演歌か何かのタイトルも頭に思い浮かんだ。シズカちゃんたちも「駅ノート」に引き寄せられて来て、何これ何これ、ウソ―ッ!ユウ君にはこの女の人が重かったのかな、もしかしたらユウ君は…などとみんなしてインスタントワイドショー化していると、向こうから12:53分発大原行きの列車がトコトコトコトコとやって来たので、僕たちもユウ君との思い出にサヨナラをした。
 土曜日の午後、そぼ降る雨の中を、僕たちを入れて十数人ほどの乗客を乗せたいすみ鉄道の気動車(ディーゼル車)は、ガタゴト、ガタゴトと静かにゆっくりと走った。
 雨の遠足だな、と僕は思った。
 あれは僕が小学校の2、3年生の頃だったと思うが、遅い秋のある週末、故郷の郡山から特急電車に乗って、父が僕を今はなき後楽園球場で行われていた日米野球を見に連れて行ってくれた。今は新幹線で郡山から東京までは1時間20分ほどで行けるが、当時は特急でも郡山から上野まで2時間半ほどかかった。途中で空が泣き出し、試合は5回途中で降雨のためノーゲームとなった。父と僕は立ち食いの天ぷらうどんを啜り、雨に濡れた後楽園球場を後にして、やはり特急電車で郡山に帰って行ったのであった。あの時、父は何を思っていたのだろうか。
 また、小学校6年の時、仲の良かった友だち3人と電車に乗って白河の南湖公園へ出かけたことがあった。まあ郡山から白河へは電車でたかだか30~40分ぐらいだし、何か目的があるわけでもなかったのだが、僕たち4人は自分たちだけの小さな冒険に心の中ではちょっとワクワクしていたことだと思う。この時も雨に降られた。僕たちはほとんど人気のない公園に寂しく立つ東屋でそれぞれのお弁当を広げた。僕は母が持たせてくれた、海苔でびっしり覆われた真っ黒で真ん丸で大きなおにぎりに口を大きく開けてかぶりついた。その時の写真が今でも残っている。あの時、友だちたちは何を思っていたのだろうか。
 日米野球にしても南湖公園にしても、僕自身はそんなに悲しんでもなかった、と思う。まあ、小さい頃からぼーっしていることが多かったので、そういうこともあるだろう、ぐらいにしか思っていなかったのではないだろうか。むしろ雨の遠足は雨の匂いとともに僕の心の特別な位置に刻印され、その物悲しい感傷は、今となっては文学的で、甘美とさえ言えるほどの記憶となっている。
 車窓をゆっくりと後ろに流れてゆく雨の里山を眺めるともなく眺めながら、そんなことを思い出していると、トモエちゃんがデジカメで撮った1枚の写真を見せてくれた。
 液晶モニターには、低木帯の向こうに、わずかに新緑の気配が漂い始めた、雨に煙る森が映っていた。樹林のシルエットは、雨の港に停泊するヨットのマストを連想させた。森林の前景には、静かに降りしきる雨が風に流されて刻々と姿を変える白い霞のようにたなびいていた。森が静かな芳香を放っているようだった。東山魁夷の画のような気配さえ感じられた。
 いい写真だね、と僕が言うと、トモエちゃんはまんざらでもないような顔をした。
 やっぱり、雨の遠足は悪くない、と僕は思った。



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