行徳平兵衛の徒然

とりあえずは奥の細道の自転車放浪記

平兵衛の「奥の細道」-7  黒羽~白河

2007年11月10日 | 奥の細道
2006年10月11日(水) 晴~雨
黒羽出張所バス停から北上し、次の農協前バス停近くから左折、道なりに西に進み光明寺跡を通過、白旗城跡の案内板のある四辻を右折すると余瀬の集落だ。
西側に曽良の句碑がある西教寺があり、東の小道へ進むと翠桃の屋敷跡や墓があり、墓の前は稲刈り機や耕運機でふさがれていた。今は鄙びた集落で往時を偲ぶ術はない。
来た道を北に進み蜂巣十文字を左折しR182へ入り北西に進む。篠原辺りの西の山際に芭蕉句碑「秣負う 人を枝折の 夏野哉」とある玉藻稲荷神社を訪ねる。
教養も文才もなく、やや体育系を加味した理系の当方としては、奥の細道の「----那須の篠原をわけて、玉藻の前の古墳をとふ。----」とある玉藻前を知らず、調べた結果はたいそう興味のある人物?なので披露しよう。
<玉藻前伝説>
中国の殷王、天竺マガダ国の太子、またも中国の周王の前に、その都度名前を替えて現れた美女は、王達を功みに誑かし国を滅亡にと導いていった。この美女こそが白面金毛九尾の妖狐で、我が国には天平七年、美しい少女に化け遣唐使船で密入国した。その後数百年の間人々を惑わしながら諸国を放浪し、捨子に化けたところを、北面の武士に拾われ「藻」と名付けられて育てられた。
藻は成長するに従い博識で絶世の美女へと変わり、宮廷に上がると鳥羽帝の側女「玉藻前」として、その寵愛を一身に受けていった。帝が玉藻前を寵愛するに従い、度々原因不明の病に冒される様になって行き、陰陽博士が占ったところ、神鏡に十二単を着た白面金毛九尾の妖狐が現れ、その原因が玉藻前である事が突き止められ、正体を見破られた妖狐は那須野が原へと逃げのびて行った。
この妖狐は那須野が原でもしばしば村人に悪事を働くので、朝廷は陰陽博士・上総介・三浦介にその退治を命じ、首尾よく退治できたが、その瞬間天地は動き稲妻雷鳴が轟き屍は大岩石と化した。この岩は二百年以上にわたり怨念の毒気を吐き続け、近づく人・動物・飛ぶ鳥・虫等をことごとく死滅させ、これを鎮めるため源翁と言う僧侶が遣わされ、長い祈祷の末に杖で岩を突くと砕け散り妖狐の霊は成仏したと言う(これが那須の殺生石だ)。
<もう一つの妖狐退治>
三浦介が妖孤を追跡中に姿を見失ってしまったが、池の淵に立って辺りを見回したところ、池の面近くに延びた桜の木の枝に蝉の姿に化けている狐の正体が池にうつったので、三浦介は難なく妖孤を狩ったと伝えられる。この池が玉藻神社の鏡池だ。
この玉藻前は「今ならば偉大なテロリストだ」等と空想しながら、狐塚らしい祠を見つつ、暫し静寂の林の中で古を偲んだ。
R182に戻り北西に進む。乙連沢辺りの農家には秋の花々が庭一面に咲いている。練貫の交差点を右折し坂上の六町歩バス停を左折し、野中の道を唯々北上する。陸羽街道のR4を横切り、鍋掛街道を直進し、JRを歩道橋で越えて黒磯駅西口に出る。
これより那須湯本へ向かうが、交通量の多い街道なのでバスを利用することにした。
湯本のバスターミナルに自転車を預け、温泉神社に詣でる。玉藻前の物語はここでも多く語られているが、やはり玉藻稲荷神社の方が似つかわしく思われる。殺生石・賽の河原・地蔵達を見て芦野へ向かう。
一軒茶屋の三叉路を左のR21に進み、くだり坂が延々と芦野まで続くが、陸羽街道R4を横切るとR28となる。黒田原駅でコンビニ弁当を調達し、左手に赤いトンガリ帽子の地蔵堂を眺め、しばらく走ると芦野駐在所前交差点に到着する。旧陸羽街道R294横の遊行庵からは遊行柳は数百メートルだ。奥の細道の「清水流るるの柳は、蘆野の里にありて、田の畔に残る。----」とあるが、西行の「道のべに 清水流るる柳かげ しばしとてこそ 立ちとまりつれ」は当地を訪れず、御所の襖絵を見ながら詠んだことになっている。西行の“追っかけ”としてはやや不満が残る。
柳の下で遅い昼食を食べるが、雲が張り出し冷たい風が田面を吹き始めた。雨になる前に新白河駅に辿り着かなければならない。「田一枚 植えて立ち去る 柳かな  芭蕉」ほどとのんびりはしていられない。
陸羽街道R294を境の明神に向かうが、山中辺りの街路樹は大変ユニークな鳥の形(写真)をしており、両側に延々と続く(何羽いることやら?)。ポツポツ雨が降り出し、下野と奥州の間の峠「境の明神」に着く頃にはずぶ濡れだ。社の軒下で衣服を取り替え暫く雨宿りする。雨間をみて白河の関へ向かう。峠を越え1kmほど下り右折、金堀を経て茂ケ崎T字路を右折、2kmほど南下すると白河の関跡で、雨はいよいよ本降りだ。
関を越える時は「---古人冠を正し、衣装を改めしことなど--- 卯の花を かざしに関の 晴れ着かな 曽良」と奥の細道にあるように、当方も着せる衣装も無い自転車に尾花をかざして一句。
       ハンドルに 尾花かざして 関を越す    平兵衛
旗宿で宿を捜すが宿は無く、傘を探せど傘は無しだ。ショボショボ関の森を見学し横道へ出ると「関の森公園」があり、売店でようやく傘を調達することが出来た。秋の夕暮れは早い、まして雨降りだ。早々新白河へ向うが、「庄司戻し」を覗き、傘を差しての片手運転で幾つかの峠を超え、雨に煙る関山を眺め、R289を左折し新白河駅に着く。
薄暗い雨の町の信号がやけに鮮明に見えた。
今日の走行距離 74km


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