全国交通ニュースブログ

「くまモンのIC CARD」のスマホアプリへのシフトについて <6/2追記あり>

熊本県内の路線バス(熊本電鉄の電車も含む)では、2015年4月に独自のICカード「熊本地域振興ICカード」を導入しました。愛称は「くまモンのIC CARD」です。

https://www.kumamotoiccard.jp/

各社は熊本市電とともにもともと磁気カード「TO熊カード」を導入していました。しかしシステム老朽化のためICカードに移行するにあたり、熊本市電が西鉄の「nimoca」の導入を決めたのに対し、バス各社は市電とたもとを分かつ形で独自ICカードを導入することとなりました。もっとも、「くまモンのIC CARD」は熊本市電でも使え、バス各社でもnimocaなどの全国相互利用対象交通系ICカードを片乗り入れで使えるようにしたので、金沢市のように「どの交通機関でも共通に使えるICカードが存在しない」なんてことにはなりませんでした。

ユニークなのは、「くまモンのIC CARD」の運営元が交通事業者あるいは交通事業者が出資した会社ではなく、地元銀行系列の会社であることです。

当初時点では肥後銀行系列のシステム会社「肥銀コンピュータサービス(現九州デジタルソリューションズ)」が運営元でしたが、

https://kyu-ds.com/company/history.html

2019年の事業再編に伴いくまモンのIC CARD運営事業は肥後銀行系列のカード会社「肥銀カード」に譲渡されました。

そして、2024/7/1をメドにさらに肥後銀行本体に譲渡されることになっています。

https://www.higobank.co.jp/showimage/pdf?fileNo=2720

これは肥後銀行グループとしてのキャッシュレス関連事業を一元化し、さらに「くまモンのIC CARD」の発展形となるスマホアプリ「くまモン!Pay」の開発に着手することとなったためです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC248UV0U4A520C2000000/

https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1594850.html

「くまモン!Pay」は2025年春のサービス開始を予定しており、

アプリは店頭にあるQRコードを読み取る決済方式に加えて、アプリ内で発行した国際ブランドのプリペイドカードに希望金額をチャージし、タッチ決済などで支払う方式にも対応する。熊本県内外でQRコードがない店や公共交通機関でも、タッチ決済などに対応していればアプリ経由で支払える。

熊本県内の交通事業者と今後、電車やバスの定期券として活用できないか協議する。アプリ経由で支払うと独自のポイントを付与する機能や、プレミアム付き地域商品券としての活用も検討する。

とのこと。おそらく、サービス開始前から「くまモン!Pay」の一大キャンペーンを繰り広げ、くまモンのICCARDからのシフトを促すことでしょう。最終的には、くまモンのICCARDは「子どもや障がい者など割引運賃の対象になる=タッチ決済やQRコード決済では対応不可な方々向け」「スマホを使いこなせない方々向け」という位置づけになるかもしれません。全国でも唯一の「金融機関が主導する交通系ICカード」ならではの動きかも。

ただ、熊本市電は既に2023年春からタッチ決済やQRコード決済(PayPayや楽天ペイなど)に対応している一方、

http://www.kotsu-kumamoto.jp/kihon/pub/detail.aspx?c_id=3&type=top&id=1353

熊本県内の路線バスでは基本的にタッチ決済やQRコード決済に対応しておらず、空港リムジンバスや観光路線でタッチ決済が使えるのみです。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000116908.html

したがって、2025年春までには現在くまモンのICCARDが使えるバス全車両について新たにタッチ決済やQRコード決済対応機器を取り付けておく必要があります。そして、これら機器は、現在の全国相互利用対象交通系ICカードに代わる「熊本県外からの利用客のキャッシュレス決済手段の提供」にも活用できるわけです。

https://mainichi.jp/articles/20240527/k00/00m/020/265000c

さらに熊本市電も2026年には「nimoca」のシステムの利用を取り止めて全国相互利用対象交通系ICカードを使えなくし、県内の路線バスに同調してキャッシュレス決済は「県内客はくまモン!Pay・県外客はタッチ決済やQRコード決済」の体制とするとのこと。

https://mainichi.jp/articles/20240528/k00/00m/040/224000c

※新聞記事ではくまモン!Payには触れていません

 

<6/2追記>

くまモンのIC CARDの運営会社が肥銀カードから肥後銀行本体に変わる件は、くまモンのIC CARDのサイトにも2024/5/31に掲載されました。

https://www.kumamotoiccard.jp/news/8698/

そして、熊本市電および九州産交バスなど熊本県内バス会社の全国相互利用対象ICカード利用からの撤退については、同じ2024/5/31付で正式にリリースが出ました。

https://www.sankobus.jp/busportal/wp-content/uploads/press-ic.pdf

ただ、くまモン!Payについては「肥後銀行のリリース以上の情報を持ち合わせておりませんが、国際ブランドのプリペイドカードとのことなのでバスでの決済でも利用可能と思われます。」としか書かれていません。そして、リリース文には「くまモンのIC CARD」の文言は何回も出てきますが、その運営会社がいずれの交通事業者の系列でもない肥後銀行グループであり、さらに2024/7/1から他ならぬ肥後銀行本体に変わることに全く触れていないのが謎です・・・もしかして関係者向けではなくお客様向けリリースだから? 本当に交通事業者と一切の調整なく動いているとすればスゴイ話ですが。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「交通系ICカード」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事