もう1つ、2024/8/25付ブログ記事「2024~25年度に開通予定の北海道の高規格道路について」の続報です。
上記ブログ記事で取り上げた2025年度に開通予定の高規格道路のうち、厚賀静内道路の当面の終点となる新冠ICが仮称通りの正式名称となりました。
https://www.hkd.mlit.go.jp/mr/release/a00ihh000000debg-att/jre2p60000000mat.pdf
「乗りものニュース」の記事はこちら
その厚賀静内道路ですが、実は全区間が1995年に事業化されています。しかし、新冠ICから東側は事業化から30年を経ても完成のメドが立たない状況です。
https://www.hkd.mlit.go.jp/mr/douro_keikaku/tn6s9g000000283f.html
北海道開発局公式サイトで公開されている2020年度に作成された「日高自動車道(一般国道235号)厚賀静内道路 再評価原案準備書説明資料」の4ページ目には、以下のような記載があります。
平成 7年度 事業化
平成12年度 事業再評価
平成17年度 事業再評価
平成22年度 事業再評価
平成23年度 用地補償着手、工事着手
平成25年度 事業再評価
平成28年度 事業再評価
令和 2年度 事業進捗率44%
つまり、事業化から用地買収や工事の着手まで15年以上かかったわけです・・・ 沿線に人口密集地や急峻な地形は特になく、この地域に数多くある競走馬の牧場の一部が計画ルートにかかったとしても代替地は容易に確保できるはずで、その背景は皆目見当もつきません(あるとすれば設計に再三の見直しが発生したとか)。
ということで、過去の事業再評価資料を探してみました。
1.2005年度の再評価資料
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/17sai/2_h17_001.pdf
この時点では総事業費を410億円と見積もっており、調査・設計および地域住民との合意形成を円滑に進めるためのPI(パブリックインボルブメント)等を進めており、引き続き事業が順調に進んだ場合、平成20年代後半の事業完了を予定していました。
2.2010年度の再評価資料
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/22sai/2_h22_005.pdf
この時点では総事業費は482億円に増加しており、用地進捗率はゼロ%・事業進捗率は6%となっています。事業の進捗が順調でない理由は特に挙げられていません。
3.2013年度の再評価資料
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/25sai/2_h25_007.pdf
この時点では総事業費は482億円で変わらず、用地進捗率・事業進捗率とも7%となっています。特記事項として「津波浸水予測区域の見直しによるIC形状の変更」が挙げられています。
4.2016年度の再評価資料
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/28sai/2_h28_004.pdf
この時点では総事業費は578億円に増加しており、用地進捗率は41%・事業進捗率は15%となっています。特記事項として「津波浸水予測区域の見直しによる計画ルートの変更」が挙げられており、2013年度の再評価資料と比較すると、海岸沿い<静内市街地の西側>に計画されていた静内ICが海岸から2km以上離れた内陸部<静内市街地の北側>に変更されていることが分かります。
5.2020年度の再評価資料
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/r2sai/2_r2_003.pdf
冒頭で紹介した再評価原案準備書説明資料を基に評価の上作成されたものですが、総事業費は100億円増の678億円となり、用地進捗率は約59%・事業進捗率は約52%(増額後の事業費を基準とした場合約44%)となっています。事業費増の内訳は冒頭で紹介した資料のみに掲載されており、以下の通りとなっています。
・法面保護工の変更 (約41.8億円増)
・軟弱地盤対策工の変更 (約33.2億円増)
・トンネルにおける掘削パターン等の変更 (約15.6億円増)
・トンネルにおける掘削パターン等の変更(ガイドライン策定による切羽安定対策)(約3.7億円増)
・トンネルにおける掘削パターン等の変更(政令改定によるトンネル吹付材料の変更)(約1.1億円増)
・立入防止柵の変更 (約6.0億円増)
6.2022年度の再評価資料
これが、現時点で最新の再評価資料のようです。
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-hyouka/r4sai/2_r4_005.pdf
総事業費は195億円増の873億円、用地進捗率は約75%・事業進捗率は約74%となっています。
北海道開発局公式サイトで公開されている2022年度に作成された「日高自動車道(一般国道235号)厚賀静内道路 静内三石道路(静内~東静内) 再評価原案準備書説明資料」にはもっと詳細な情報が掲載されています。
事業費増加分の半分を超える98.9億円分は、2016年度に津波浸水想定区域を回避するルートに変更となった静内トンネルの掘削関連(トンネル掘削パターンの見直し・トンネル掘削補助工法の見直し)です。このほか、「濁水処理施設の見直し(約11.2億円増)」「橋梁計画の見直し(約18.0億円増)」「軟弱地盤対策工の見直し(約67.1億円増)」が増加要因として挙げられています。