ファイティングトップ

スクラッチ木造帆船製作日記と映画、スタトレなどあれこれです。

Fubbsのフィギュアヘッドについて

2007年11月16日 | Fubbs 建造日誌

 消費期限と賞味期限の偽装が話題の昨今、うちでは、別に表示が間違っていたわけでもない、正真正銘の期限切れの茶わん蒸しを妻に食べさせられて、熱出してしまいました^^;;;
 おかげで、一昨日からアップした記事を公開にすることを忘れる始末です。 このところ映画の記事や製作記事などの、いわゆる生の記事が全然かけてないのですが、一応、映画は見てます。ダイハード4.0だとかゾディアック、ナイトミュージアムなど、一応記事書きかけたのですが、まとまらずまだアップできていません。
 製作の方は、ずっと止まっていて、その間に作ったものと言えば、作業用のテーブルを嵩上げして立ち位置で作業できるようにしたことと、プリンター台を改造して、図面作業などをするための机を作ったことくらいです。
 一応、精読の作業は細々と続けていて、英国軍艦の武装と艤装品は、ようやく50パーセントを超えました。内容からいうと、砲の歴史と種類関係を終えて、砲の用具類の最後のところに差し掛かっています。このあとは、弾薬庫などの船体と直接かかわる部分に入り、キャビンなどの内装に続いて行きます。
 SWAN級の方は、まだ3割に行かないあたりで止まっていますが、ブードリオ氏の本を扱っているANCRE社から出ている、GABAREと以前ご紹介した42フィート武装ロングボートの英訳版を購入しました。前者はフランス軍の輸送船で、後者は24ポンド砲を搭載したシャループ(ロングボート)です。Gabareの方は、製作サイトなども立ち上げられており、フランス艦好きの旬な艦のようです。ロングボートの方は、40ページの小冊子なので、武装と艤装品の文章が16~7世紀の引用で行き詰まると、精読作業をしています。2/3以上が制作関連の文章なので、ボート製作のノウハウを得れそうです。


 他には、アドミラルティ・モデルについての「クリーグスタイン・コレクション」の本を買って眺めています。8000部の限定出版でしたが、買う価値はありました。
 今関係するところでは、Fubbsと同時代のもので、似たような意匠のフィギュアヘッドの写真が収穫でした。表題写真に引用したものがそれです。
 ポーシャ版でも、ロメロ版でも、集合したフィギュアヘッドの頂部は、天蓋が付くと説明されており、模型もそのように作られているのですが、初代Fubbsと同時期の、同じように人物像が複数集合したスタイルのフィギュアヘッドでは、側面から見るとこの天蓋と全く同じ曲線を描いている構造物は、天蓋状に頂部を覆ってはおらず、棒状の意匠で頂部は中空で何もついていません。
 これが艦のサイズに起因するものか、意匠の解釈を二人が間違えたのか、詳しく調べないとわかりませんが、像の印象から言うと、側面と正面の繊細さに比べて、頂部のディティールの無さがかなり不自然なので、解釈の誤りと言う方に傾いています。像側面から見ても、この部分が中空で抜けている方が、フィギュアヘッドの繊細さが際立ちます。
 問題は、このフィギュア・ヘッドがどんな艦に付けられていたのかと言うことなのですが、実は、この像、艦についた状態ではなく、製作途中の像なのです。ステムにはまる位置に、松材のハンドルが付いており、ケルビム像の手足など、突出部分は、後に別部品で作ろうとしたのか、立ち切り状で、作られていません。


 この本によると、この種の集合型フィギュアヘッドは、アン女王の治下の初めの数年間に特徴的なものだそうです。年代でいえば、1702-1704年だそうです。こちらを信じるとすれば、Fubbsの解説にあった、「1724年再建造時に、オリジナルの彫刻類を利用した」と言うのが誤りで、「1724年の再建造時に、以前の彫刻類を引き継いだ」と言うことになります。つまりFubbs建造当時のチャールズ統治下に作られた彫刻類ではなく、最初の建造以降、1702-04年の二年間に再建造または修理がおこなわれ、その際にフィギュアヘッドが取り換えられたのかもしれません。
 像の意匠は、トリトン二体、アン女王二体、ケルビム二体と天使二体で、Fubbsの方は、女性二体、ケルビム二体と、差はありますが、王冠の掲げ方や、問題の天蓋、バックグラウンドの意匠など、全く同じ文法でデザインされています。今のところ、この本以外で、この意匠が1702-04のみに見られる特徴的なものということを述べているものを見掛けませんが、少なくとも、この時代以降には見られませんし、それ以前の模型でもあまり見ない珍しいフィギュアヘッドです。
 この像は、「恐らく一等艦か二等艦のためのもの」と書かれているので、王室ヨットよりはかなり大型ですから、像の数に差があるのでしょう。



 異なる部分で一番問題となるのは、正面に掲げた板のイニシャルです。これはポーシャ女史によるとGRと描かれています。GRは、ジョージ・レックス(レックスはラテン語で国王を意味し、王の署名には名前の末尾につけます)の意味なので、明確に1714-1727年の間を意味します。従って、イニシャルがGRとすれば像は以前からのものだが、このイニシャルのプレートは、1724年の再建時に交換したと考えることになります。
 上の女史の図と写真を比較するとわかるように、王冠を掲げる天使や側面の女性像(模型の方は案の女王)の関係やフォルムなど実に似た配置ですし、写真の方には、ちょうどイニシャルのボードが来るあたりのケルビムの手足が作業途中で付けられておらず、全体のフォルムのラインとして、イニシャルのプレートが入ると奇麗なラインができるような欠落があります。このケルビムがイニシャルを描いたプレートを持っている図案であることを暗示しているようです。


 ロメロはCRと主張していますので、そうだとすると1682年の進水時からこの意匠のフィギュアヘッドが存在し、クリーグスタインの言う「こうした意匠のフィギュアヘッドは1702-1704年の間の特徴」と言う記述が誤りと言うことになります。しかし、ロメロ氏は、ロイアル・スタンダードの考証でもかなりいい加減な事を言っているので、あまり信頼を置く気になりません。しかも、氏の本についているフィギュアヘッドの図は、ご覧のようにどう見てもGRにしか見えない図が掲載されています。(余談ですが、この程度の絵しか書いてないくせに、ポーシャ女史の絵を「マンガのような雑な絵」と言うのですからいい度胸ですね^^;)

 クリーグスタイン本でいうところが正しいとすると、Fubbs最初の建造時には別のフィギュアヘッドが付いていたが、1724年の再建造時以前にフィギュアヘッドがこの意匠のものに交換され、かつそれは、1702-04年の間のこととなります。ここで問題となるのは、そうしたことが起こりうるような修理がこの時期になされたか?と言うことですが、これが実に微妙です。記録によると1701年に再艤装が行われています。規模からいうと再建造である1724年には及びませんが、かなり大がかりな修理をしているので、彫刻関係が修正を受けていても不思議はありません。差も一年なので、これを誤差の範囲と見るか範囲外と見るかは微妙です。これが10年程度の中の一年以内なら誤差と見るのもたやすいですが僅か2年の期間に対する1年ですから、誤差とは見にくい側面があります。そして、クリーグスタインの論を受けるとすれば、イニシャルはCRとは考えにくく、当初は別の(ウイリアムまたはアンのイニシャル)が付いていたが、1724年の再建造時にGRと交換したと考える事になるでしょう。

 まあ、現実的なところをいえば、イニシャルがGRでもCRでも、これが判別できるクォリティでこのサイズのフィギュアヘッドを作ることができたら、自分を大いに褒めたいくらいの、ごくごく小さい文字(比率から言って大きくても2ミリ程度の字)ですから、あまり関係ないともいえます^^;
 まあ、飾り文字のCとGはかなり紛らわしいですし、ちょっと図版がつぶれていたら、もう区別できないでしょう。また、このフィギュアヘッドの資料が少ないうえ、肝心のFubbsの当時の模型の写真が、このあたりをはっきり写していないものしかないので、現物を見てみない限り、何とも言えないのが実情です。
 グリニッジの展示リストにはFubbsは載っていないので、NMMまで出かけていったとしても、この模型を見せてもらえるかどうかも定かではありませんから、もう少し色々文献を漁ってみる事にする予定です。

 もともと船にしか興味がない上、英国の王室の歴史は、嫌になるほどごちゃごちゃしているので、今まではリチャード獅子心王が、シールを変えて借金を踏み倒したことくらいしか知りませんでした。この調べ物のおかげで、多少理解できるようになてきたことが収穫でしょうか^^;


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お体大丈夫ですか? (REALLIFE)
2007-11-18 15:01:58
こんにちは。
熱出したということですが、大丈夫でしょうか?私もそういう系統のは嫁さんに二回やられてまして、二回とも食中毒に近い症状が出てエライ目にあいましたから、もう御免です(汗)
ところでフィギュアヘッドというやつですが、色々なものがあるのですね。確かに昔の船にこういうのはつき物だと思いますが、これだけでも凄いなあって思ってしまいます。色々勉強も必要なんですね、本当に頭が下がります。
毎回同じですが、頑張って下さい。
返信する
ありがとうございます~ (ろっく)
2007-11-19 05:02:11
 RIALLIFEさんも経験者でしたか^^;
 お体大切に^^
 これからはうっかり毒盛られないように注意しないといけないと痛感しました(トホホ・・・
 二日ほど苦しみましたが、いまは、もう回復しました。お見舞いありがとうございます。

 なんといいますか、グリレのマフラーとヘッツアーのマフラーの変更時期がどうのと言った感じの戦車の派生形を調べたりするのとあまり変わらない感じで取り組んでいるので、たいしたことでもないんですが、聞こえはいいですよね。^^;
 
返信する