私達は何年か前に東京へ行ったとき、
少しあぶく銭もあったので初めてグリーン車に乗った。
その時はグリーン車はものすごく空いていて静かな空間だった。
ふと前を見ると4人の男性が黒背広を着て乗っておられたが、その光景は異様だった。
2人の男性は座席を回して向かい合わせに座っていたが、
残りの2人はその人たちに背を向けて腕を後ろの腰に組んで、
新大阪から東京まで微動だにせずに通路に立っていたのだ。
その雰囲気から、私達は察した。
なんとこの人気の少ない車両にわざわざその道の人達と乗り合わせたことを。
その立っている2人の男性は車両が揺れても足に力を入れて立ち続ける。
のぞみで東京まで3時間半をだ。
私達は東京が近づいてきたとき、その人達が先にデッキに出たのを見た。
その後に私達はデッキに出たのだけど、
最悪なことに、彼らが立っていた方はホーム側のドアではなかった。
なので私達がそのグリーン車から最初にホームに降り立つことになってしまった。
さて、ホームに新幹線がゆっくりと止まりドアが開くと、
そこには全員黒ずくめのその道の人達が30人ほどはいただろうか。
みんながドアを凝視して輪になって並んでいた。
私達はそこに一番に入っていかなければいけなかった。
もちろん、その人たちは何も声を発しない。
その後で、その4人の男性達がホームに降り立つと、
「お疲れさまです!!」というタイミングの揃った声が浴びせられた。
その30人ほどの団体は全員が黒のネクタイを締めていたので、
私達は誰か関東の大物さんが亡くなったのではと想像した。
さて、いつもの宿に泊まって、東京の友人とロビーでお茶をしていると、
なんとまた私達の隣の席に、その道の人達が10人以上で座り、
その中のエライ人らしい男性はマオカラーの上着を着てホットコーヒーを飲んでいた。
私達はこの旅行中、この東京に多くのこの道の人達が集結しているのを感じた。
なぜこんなにどこででも遭遇するのか、横でオレンジジュースを飲んでいても、
落ち着かないことこの上ない。
彼らは一般人には何も危害も与えない。
むしろエライ人になるにつれて紳士的に振る舞ってくれる。
でも、30人の怖面の黒ずくめの男性達はそれだけで威圧的な感じだった。
関西から東京までは500km。
新幹線を使わないでとはいわないが、
大きなリムジンとかで移動すれば、お付きの2人の男性も座れたのになと思う。
こんなことを、今プロ野球を見ているとさんざんCMに出てくる、
「アウトレイジ」という映画のCMを見ていてふと思い出した。
くぅ