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病害に強く倒伏しにくい飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を育成

2019-03-08 | 農業
 農研機構は、黒穂病抵抗性が極強で耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ2)新品種「やえのうしえ」を育成した(3月6日発表)。
 肉用牛の繁殖経営が盛んな南西諸島では、畑の面積が限定されることや、台風や干ばつなどの被害を頻繁に受けることが粗飼料確保の上で課題となっている。
 これまでに農研機構は、南西諸島で普及している既存の飼料作物(牧草)であるローズグラスよりも多収となる飼料用サトウキビ「KRFo93-1」「しまのうしえ」を育成し、普及を進めてきた。しかし、「KRFo93-1」はさび病類の発生、「しまのうしえ」は収穫時期が遅れた際の倒伏が課題となっていた。また、特に沖縄県についてはサトウキビ最重要病害である黒穂病の発生地帯であるため、罹病した株からの黒穂病菌が他のサトウキビ畑へ拡散する懸念は常にある。こうしたなかで両品種とも黒穂病への抵抗性をさらに高めることが求められていた。
 これより、今回、耐病性と耐倒伏性に優れる飼料用サトウキビ新品種「やえのうしえ」を育成した。「やえのうしえ」は母(種子親):製糖用サトウキビ品種「農林8号」、父(花粉親):黒穂病抵抗性が極めて高い国内自生のサトウキビ野生種「西表いりおもて8」とする品種である。黒穂病やさび病などの主要病害に強く、収穫時期に倒伏しにくいことが特徴であり、機械収穫に要する時間が短縮されることが期待できる。
 栽培適地は南西諸島全域であり、現在沖縄県南城市で栽培が開始されている。
 因みに、栄養価を示すIVDMD(インビトロ乾物分解率)は、育成地では「KRFo93-1」および「しまのうしえ」と同程度である。沖縄でのIVDMDは「しまのうしえ」よりもやや低い値となるが、肉用繁殖牛への給餌において「やえのうしえ」は「しまのうしえ」と同様に利用できる。
 その他の特徴と栽培上の注意点、としては
 1.新植時の初期生育がやや遅いので、除草剤を使用する等雑草害を受けないように気を付ける必要がある。
 2.葉鞘(ようしょう)の毛群(もうぐん)が多いため、手刈り収穫には適さない。
 3.飼料用であり製糖用原料としては利用できない。
 ◆用語解説
 〇黒穂病(正式名称:サトウキビ黒穂病)
 黒穂病菌(Sporisorium scitamineum)の寄生によって起こる植物の病気で、サトウキビ最重要病害である。
 病気が発生すると茎の先端から薄い灰色の膜につつまれた黒色の鞭状物を抽出し胞子を飛散させる。感染した株は枯死するため大幅な減収をもたらす。胞子の飛散による被害の拡大を防ぐためには、株の抜き取り作業を行う必要があり多大な労力が必要となる。
 〇飼料用サトウキビ
 牛の飼料専用に開発されたサトウキビで、これまでに「KRFo93-1」と「しまのうしえ」の2品種が育成されており、「やえのうしえ」は3番目の品種となる。
 〇さび病類
 さび病は葉身に鉄さびが付着したような病徴を示すサトウキビの重要病害である。2種類のさび病菌によって褐色を呈する場合と黄色を呈するものがあり、両者を併せてさび病類としている。さび病による病斑の密度が高くなると葉は枯れる。
 〇株出し栽培
 前作の収穫後に再生する萌芽茎を仕立て、再度、収穫する栽培法のこと。
 〇多回株出し栽培
 複数回にわたり株出し栽培を実施する栽培法。
 〇モザイク病(正式名称:サトウキビモザイク病)
 アブラムシ類の媒介によって発病するウイルス性病害であり、サトウキビ栽培地帯では広範囲にみられる病気の種類である。モザイク病が広がるとかなり減収となる。病徴はウイルスの種類やサトウキビの品種により異なるが、一般には緑色の葉に淡黄色や濃緑色をした、長さが不揃いな病斑を生じる。
 〇種間交雑
 同属異種間の植物を人工的に交配し雑種をつくること。
 「やえのうしえ」は「農林8号」(Saccharum spp. Hybrid)と「西表8」(Saccharum spontaneum)を交配した雑種から選抜・育成された。
 〇IVDMD(in vitro:インビトロ)
 乾物分解率の略語で栄養価を示す。
 インビトロとは生体の機能や反応を試験管内で行う試験や実験の総称。牛の第一胃の胃液を用いた培養法で乾物サンプルの消化のしやすさを測定する。
 〇葉鞘の毛群
 葉の基部が鞘状になり茎を包む部分(葉鞘)に生えている細かい毛のこと。生育旺盛期に多くみられる。

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