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遺伝性腎臓病「若年性ネフロン癆(ろう)」患者由来のiPS細胞の樹立に成功

2020-06-04 | 医学
 理化学研究所バイオリソース研究センターiPS細胞高次特性解析開発チームの林洋平チームリーダー、荒井優研究パートタイマー(東京理科大学薬学研究科薬科学専攻修士課程2年)らの共同研究グループは、遺伝性腎臓病の一つである「若年性ネフロン癆(ろう)」患者由来のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の樹立に成功した。
 本研究成果は、難病とされる若年性ネフロン癆の病態モデル細胞の開発を通した、発症機序の解明や治療法の開発に貢献すると期待できる。
 ヒトiPS細胞は再生医療の実現だけではなく、さまざまな疾患の病態解析や治療法開発にも有効なツールであると考えられている。若年性ネフロン癆では腎移植以外に有効な治療法がないことから、発症機序解明のために病態モデル細胞のもとになる患者由来のiPS細胞の樹立が望まれてきた。
 共同研究グループは、発症に関わることが知られているNPHP1遺伝子に欠失変異がある2人の若年性ネフロン癆患者の末梢血からiPS細胞の樹立に成功した。このiPS細胞の特性を解析したところ、NPHP1遺伝子の欠失変異が保持されており、その結果、遺伝子発現が消失していること、iPS細胞の特徴である自己複製能と多能性が維持されていることを確認した。
 本研究は、科学雑誌「Stem Cell Research」オンライン版(4月29日付)に掲載。
 背景
 ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)は再生医療だけでなく、さまざまな疾患の病態解析や治療法の開発にも有効なツールであると、注目を集めている。「若年性ネフロン癆(ろう)」は遺伝性の腎臓疾患で、腎髄質に嚢胞(のうほう)が形成され、進行すると腎線維化、末期には腎不全を引き起こす。日本国内には約500人の患者がおり、腎移植以外に有効な治療法がないことから、発症機序の解明と新しい治療法の開発が望まれてきた。
 近畿大学医学部小児科学教室は、2015年に日本人の若年性ネフロン癆患者では、「NPHP1遺伝子」の欠失変異が高い頻度で見られることを報告した。しかし、NPHP1遺伝子の欠失変異から発症に至る機序には不明な点が多いため、病態モデルを使った研究が必要である。
 若年性ネフロン癆の病態モデル動物をつくる試みとして、NPHP1遺伝子を欠失変異させたマウスが以前にも報告されていたが、そのマウスには腎臓の異常が見られず、病態モデルにはならなかった。もし、患者由来のiPS細胞が樹立されれば、そのiPS細胞から分化誘導した細胞を病態モデル細胞として研究対象とすることが可能になる。
 究手法と成果
 若年性ネフロン癆患者由来のiPS細胞を樹立するため、共同研究グループは、近畿大学医学部小児科学教室で診療中のNPHP1遺伝子に欠失変異がある2人の同患者から末梢血を採取した。
 次に、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)において、採取した末梢血からiPS細胞を作製した。その作製には、2014年にCiRA で開発された方法を用いた。患者由来の抹消血から分離した白血球の一種である単核球に、エピソーマルプラスミドベクターを用いてiPS細胞を作製した結果、6株のiPS細胞株の樹立に成功した。
 樹立しiPS細胞株は、配布機関である理研バイオリソース研究センター(BRC)細胞材料開発室(理研細胞バンク)へと寄託され、理研細胞バンクは、これらのiPS細胞に対する品質検査と、拡大生産するための培養を行った。その後、三つの研究室からなる特性解析研究グループ(理研BRC iPS細胞高次特性解析開発チーム、理研生命機能科学研究センター(BDR)ヒト器官形成研究チーム、東京理科大学薬学部生命創薬科学科)へ提供した。
 特性解析研究グループが、このiPS細胞の特性を解析したところ、NPHP1遺伝子に欠失変異が保持されており、その結果、この遺伝子の発現が消失していること、iPS細胞の特徴である自己複製能と多能性が維持されていることを確認した。
 今後の期待
 本研究成果は、今後、若年性ネフロン癆の発症機序の解明や新しい治療法の開発に役立てられると期待できる。
 また、本研究における多施設連携の枠組みを通して、医療機関・樹立機関・配布機関・解析機関(研究室)がそれぞれ連携することができれば、多くの難病に対するiPS細胞を用いた研究がより効率的に進むと期待できる。
 ◆補足説明
 〇iPS細胞(人工多能性幹細胞)、多能性
 脊椎動物の初期胚が持つ、全ての種類の体細胞へ分化する能力を多能性という。多能性を持ち、試験管内で培養して無限に増やすことができる細胞を多能性幹細胞という。iPS細胞は、成人の皮膚細胞などの体細胞・組織から採取した細胞にOct3、Sox2、Klf4遺伝子などを導入して初期化し多能性を持たせ、人工的に作製した多能性幹細胞である。
 〇NPHP1遺伝子
 ヒト2番染色体上に位置し、ネフロシスチン1タンパク質をコードする遺伝子。NPHP1遺伝子の欠失・変異は、若年性ネフロン癆の主要な遺伝的要因であることが知られている。このタンパク質は、細胞内で繊毛形成に関与していることが判明しているが、このタンパク質の機能不全がどのように若年性ネフロン癆の発症につながるかは不明な点が多い。
 〇欠失変異
 染色体上に存在する遺伝子(群)のDNA配列の一部が欠けてしまうこと。このことにより、特定の遺伝子(群)の発現がなくなり、細胞の機能異常や疾患の原因につながる。
 〇自己複製能
 iPS細胞などの多能性幹細胞は多分化能を維持したまま、ほぼ無限に増殖できる能力を持つ。これを自己複製能と呼ぶ。健常人由来や難病患者由来のiPS細胞は、自己複製能を維持し続けることができるため、研究、創薬、再生医療へと安定的に供給することが可能であり、バイオリソースとして、非常に価値が高い。
 〇単核球
 血液細胞のうちの、白血球の一種である。リンパ球と単球を合わせた総称である。技術的には、全血サンプルから遠心分離によって、濃縮回収することができる。
 〇エピソーマルプラスミドベクター
 従来のプラスミドDNAベクターを改変して、遺伝子導入した細胞内で、ゲノムDNAに組み込まれなくても、持続的に遺伝子発現を維持できるようにしたベクターの種類。技術的には、EBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス)由来のDNA複製を維持するためのEBNA1タンパク質をコードする遺伝子と、そこから発現されたEBNA1タンパク質が結合でき、ベクターのDNA複製起点となるOriP配列を同一ベクター内に構築してある。

 晴れ。早朝に少し降った様だ、土がチョット濡れていた。
 畑の隅の花畑。”オルレア”が満開に咲いている。コロニー状に纏まって咲き、見応えが素晴らしい。開花の期間がとても長く、4月から咲いている。今年も同じ場所で咲いている、昨年の種(こぼれ種)からか・・本来は多年草(宿根草)だが、夏の高温多湿に弱く、夏には枯れる一年草と扱われている(秋まきの一年草)。
 ”オルレア(オルレア・ホワイトレース)”は、花姿が非常に美しく、白いレース状の花、夏向きの花である。中央の微細な花の周りを大きな花弁を持った花がリング状に囲む、独特の形をしている。”ホワイトレースフラワー”(セリ科アンミ属、別名:ドクセリモドキ)に似ている。
 オルレア
 別名:オルレア・ホワイトレース、オルレア・グランディフローラ
 学名:Orlaya grandiflora
 セリ科オルレア属
 原産地はヨーロッパ
 一年草扱(常緑多年草)
 開花時期は4月~7月
 小さな白い花が集まり、レースのような花序


アルツハイマー原因物質の抑制、既存薬が効果

2020-05-07 | 医学
 福井大などの研究チームは、くも膜下出血や緑内障の治療に使われている「ROCK阻害薬」がアルツハイマー病の原因物質の蓄積を抑え、治療効果を持つ可能性があることを動物実験で確認したと発表した(4月1日)。
 認知症の大半を占めるアルツハイマー病は、脳の神経細胞の働きに必須の「タウたんぱく」が異常にリン酸化し、毒性の強い集合体(タウオリゴマー)を形成したり、さらに長い塊になったりして、神経細胞死を引き起こすことが主な原因とされる。
 福井大の浜野忠則准教授らは、これまでの研究で高脂血症の治療薬がタウたんぱくのリン酸化を抑えることを確認していたが、副作用などの課題もあり、その仕組みをさらに詳しく調べていた。研究チームは、リン酸化に関わる酵素「ROCK」に着目。認知症の半数以上を占めるアルツハイマー型認知症の原因となる脳内のタウたんぱくの異常を、くも膜下出血などの治療に使われている「ROCK阻害薬」が抑制することを発見した。「ROCK阻害薬」をアルツハイマー病のモデルマウスに投与したところ、タウオリゴマーが減少したことなどが分かった。
 浜野准教授は「早期の段階であれば、(アルツハイマー病の)進行を遅らせる機能が期待できるのではないか」と述べ、今後、ROCK阻害薬を用いた治験を進める考えを示した。
 ★認知症
 認知症とは、脳の認知機能障害(記憶障害・意識障害・判断力の低下等)が日常生活に支障となる疾患である。高齢者(65才以上)では4人に1人は「認知症」と「その予備軍」と言われるほどである。
 認知症は症候に対する呼び方で、種々の原疾患がある。最も多いのは、アルツハイマー病で認知症の5割~6割である(7割説もある)。アルツハイマー病はβアミロイド蛋白(蛋白質)が脳の神経細胞に蓄積し、神経細胞が破壊され、脳が萎縮して脳機能が低下する。現在の医学では、症状を一時的に軽減できても進行を止める事はまだ。

 朝から晴れ。風がとても強い。
 散歩道沿いのお庭で、背高い”ハナミズキ”が見え、お花が咲いている。お花は、白色と桃色だ。
 ”ハナミズキ”の花は中央にある黄緑色のツブツブで、白色や紅色の花弁(はなびら)に見えるのは、苞(ほう、つぼみを包む葉)である。咲き始めに花弁に見える苞が淡緑色なのは”葉”だからで、数日ほどで白色・紅色を帯びる。
 同じような花姿には”ヤマボウシ”があり、両者の区別は、”ヤマボウシ”は苞片の先端が尖っており、”ハナミズキ”のは先端が凹んでいる。
 ハナミズキ(花水木)
 別名:アメリカ山法師(やまぼうし)
  アメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ているから
 学名:Cornus florida
 ミズキ科ミズキ属
 落葉高木
 北アメリカ原産
  日本での植栽は、1915年(大正4年)に米国ワシントン市へ桜(ソメイヨシノ)を1912年に贈った返礼として贈られたのが始まり
 開花時期は4月~5月
 花色(苞の色)は白・赤・ピンク
 中心にあるツブツブの花は小さく(径数mm程)、黄緑色の4弁花
 秋に複合果の赤い実を付ける
 実は球形、直径1~3センチ程で食用になる


難病「ハンチントン病」に低分子化合物の治療薬を開発

2020-04-30 | 医学
 大阪大学大学院医学系研究科の中森雅之特任講師(常勤)、望月秀樹教授(神経内科学)、産業科学研究所の中谷和彦教授らの研究グループは、根本的治療法のない神経難病であるハンチントン病の遺伝子異常を是正する低分子化合物を発見した。ハンチントン病は、遺伝子上のCAG3塩基の繰り返し配列(リピート)が異常に伸びることが原因の神経変性疾患である。リピートが長ければ長いほど重症となることが知られており、患者さんの神経細胞でも徐々にリピートが伸びて症状の進行につながる。こうしたリピートの伸長には、CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造が関与すると考えられていた。
 中森特任講師らの研究グループは、中谷教授により創製された、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合する核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)に、異常に伸長したCAGリピートを短縮させる作用があることを見出した。従来の遺伝子治療はウイルスベクターなどにより正常な遺伝子を導入して異常遺伝子の機能を補う方法が一般的であるが、本研究成果により、ハンチントン病の原因となる伸長したCAGリピートを短縮して正常化するという究極の遺伝子治療への道がひらけた。またこの治療法はCAGリピートの伸長が原因である脊髄小脳失調症など他の神経疾患へも同じ原理で効果が期待される。 本研究成果は、国際科学誌「Nature Genetics」に、2月15日(土)午前1時(日本時間)に公開。
 研究成果のポイント
 〇根本的治療法のない神経難病であるハンチントン病の遺伝子異常を是正する低分子化合物を発見
 〇ハンチントン病の原因となる、塩基繰り返し配列の異常伸長を短縮させる方法を世界で初めて報告
 〇同じ塩基繰り返し配列の異常伸長が原因となる脊髄小脳失調症や筋強直性ジストロフィーへの応用も期待
 〇核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となった治療開発に期待
 研究の背景
 これまで、ハンチントン病や脊髄小脳失調症の一部は、CAGリピートの異常な伸長が原因で、これらのリピートはどんどん伸びて病状を悪化させる現象が知られていた。こうした疾患はいずれも神経難病で根本的治療法がなく、異常に伸びたリピートを短縮できるという発想すらなかった。
 これまでに、大阪大学産業科学研究所の中谷教授らは、核酸標的低分子化合物ナフチリジンアザキノロン(NA)が、CAGリピートが形成する特徴的なDNA構造に結合することを明らかにしていた。
 本研究の成果
 研究グループでは、ハンチントン病などでCAGリピートが異常に伸長する際に、CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造をとることが関係していることに注目し、このDNA構造に結合する低分子化合物によってリピートを短縮できないかという仮説に基づき研究を進めてきた。CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造に強く結合する分子として、NAが、ハンチントン病モデル細胞、モデル動物でCAGリピートの短縮作用を示し、モデル動物での神経変性を抑制することを実証した。このようなCAGリピートの短縮誘導には、生体に備わるDNA修復を介したメカニズムが考えられており、核酸標的低分子をもちいてDNA修復機構を制御することで、究極の遺伝子治療が実現する可能性がある。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究成果により、これまで治療法がなかったハンチントン病や脊髄小脳失調症などの神経難病の根本的治療法開発への道がひらけた。リピートが異常に伸長しておこる病気には、他にも筋萎縮性側索硬化症や筋強直性ジストロフィーなどがあり、これらの原因となる異常伸長リピート全般を対象とした核酸標的低分子化合物創薬にも期待がもてる。
 研究者のコメント
 核酸を標的とする低分子創薬は日本が世界に先行する分野であり、今後製薬企業も一体となって神経難病などに対する治療開発が進むことを期待しています。
 ◆用語説明
 〇ハンチントン病
 ハンチンチン遺伝子のCAG3塩基繰り返し配列が異常に伸びておこる遺伝性の神経変性疾患で、舞踏運動などの不随意運動や精神症状、行動異常、認知障害などを呈す。現在のところ根本的な治療法は残念ながらない。
 〇繰り返し配列(リピート)
 遺伝子上には塩基の繰り返し配列がいたるところに存在している。これらのリピートが異常に伸長することがあり、なかには病気を引き起こすものがある。具体的にはCAGリピートが原因となるハンチントン病、脊髄小脳失調症の一部や、CTGリピートが原因となる筋強直性ジストロフィーやフックス角膜ジストロフィー、CGGリピートが原因となる脆弱性X症候群、GGGGCCリピートが原因となる筋萎縮性側索硬化症などがある。
 〇CAG繰り返し配列による特徴的なDNA構造
 CAG繰り返し配列が異常に伸長することにより、本来のDNA二本鎖構造ではなく、CAG同士がくっついてヘアピン上のslipped strand構造をとる。CAGとCAG同士で二本鎖をつくるが、A-Aの塩基でミスマッチ構造が生じ、このスペースにNAが結合すると考えられている。
 〇ナフチリジンアザキノロン(NA)
 グアニン(G)と水素結合する「ナフチリジン」と、アデニン(A)と水素結合する「アザキノロン」の2つの構造を繋いだ「人工設計分子」。当初はG-Aミスマッチ塩基対に結合する分子として設計・創製した分子で、後日、CAG繰り返し配列が形成するヘアピン構造中のC-G塩基対で挟まれたA-Aミスマッチに結合することを発見した。
 〇脊髄小脳失調症
 歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らないといった運動失調を症状とする神経の病気である。このなかで遺伝性のものがあり、塩基繰り返し配列の異常な伸長が原因のものには脊髄小脳失調症1型、2型、3型、6型、7型、8型、10型、17型、31型、36型や歯状核赤核淡蒼球萎縮症などが知られている。

 今日の天気は晴れ。暫く雨が降らないので、畑で水やり。
 4月の末日になった。長い長い1月だった、来月は良い月になります様に。
 畑までの道、建物の小さなお庭で”アジュガ”の花が咲きだした。株から青紫色の小さな花(径1cm位)が幾重にも重なって付いた塔の様な花穂(かすい)が立ち上がり、この花穂が幾つも見える。花は特徴的な唇形で、上唇は2つに浅く裂け、下唇は大きく3つに裂け、真ん中の裂片が大きい。
 キランソウ属は、シソ科の属の1つで、ラテン名のアジュガ(Ajuga)で呼ばれることも多い。世界の熱帯・温帯地域に約50種が分布している。主に、”アジュガ”の名で見かけるのは、アジュガ・レプタンス(Ajuga reptans)である。これを、和名で”セイヨウジュウニヒトエ(西洋十二単)”と呼んでいる。
 因みに、「十二単(じゅうにひとえ)」とは平安時代の宮中の女官の正装である。花の名は、花が幾重にも重なって咲く様子を十二単に見立てた。
 アジュガ
 別名:西洋十二単(せいようじゅうにひとえ)、西洋金瘡小草(せいようきらんそう)
 学名:Ajuga reptans
 シソ科キランソウ属
 原産地はヨーロッパ、中央アジア
 開花時期は4月~5月


自己免疫疾患の1型糖尿病発症の抑制に関わるCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)の誘導メカニズムを発見

2020-04-27 | 医学
 理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの下川周子客員研究員(国立感染症研究所寄生動物部主任研究官、群馬大学大学院医学系研究科生体防御学協力研究員)と大野博司チームリーダー、国立感染症研究所寄生動物部の久枝一部長らの共同研究グループは、自己免疫疾患の1型糖尿病(Type 1 diabetes;T1D)発症の抑制に関わるCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)の誘導メカニズムを発見した。
 本研究成果は、現代病(花粉症や自己免疫疾患)が増加したのは感染症が減少したからだとする「衛生仮説」を科学的に証明するとともに、T1Dの新たな予防・治療法の開発につながると期待できる。T1Dは、インスリンを分泌する膵臓の細胞が自分の免疫細胞によって破壊され、高血糖が引き起こされる自己免疫疾患で、近年患者が増加している。
 今回、共同研究グループはマウスを用いて、腸管寄生線虫のHeligmosomoides polygyrusが感染すると、T1Dの発症が抑制されることを見いだした。そしてそのメカニズムとして、寄生虫がトレハロースという糖を分泌することでRuminococcus属の腸内細菌が増殖し、この菌によってCD8Tregが誘導されることにより、膵臓の細胞の破壊が食い止められ、T1Dの発症が抑えられることを明らかにした。さらに、T1Dの患者では血液中のCD8Tregが減少しており、Ruminococcus属の腸内細菌が少ないことも明らかにした。
 本研究は、オンライン科学雑誌「Nature Communications」(4月22日付)に掲載。
 背景
 近年、衛生環境の改善によって、寄生虫病や結核などの感染症は減少したが、アレルギーや自己免疫疾患などの現代病は増加の一途をたどっている。特に、薬剤の普及により寄生虫の感染者数が劇的に減少した地域では、自己免疫疾患の患者数が増加していることが疫学的に証明されている。このように、現代病が増加したのは、感染症が減少したためではないかという考えを「衛生仮説」という。
 寄生虫に感染すると、宿主(ヒト、マウスなど)は免疫機能を発達させ、寄生虫を体外へ排出しようとする。これに対して、寄生虫は宿主の免疫機能を低下させるシステムを持つため、宿主の攻撃を回避できると考えられている。したがって、寄生虫の感染症の予防・治療にはそのシステムの解明が重要であり、寄生虫が誘導する(免疫抑制性の)細胞の種類や分泌する物質を同定する研究が世界中で盛んに行われている。
 共同研究グループは、自己免疫疾患の中でも、近年特に発症者が増加している1型糖尿病(Type 1 diabetes;T1D)をターゲットとし、寄生虫の一種である腸管寄生線虫の感染がT1Dに与える影響を調べた。T1Dとは、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞が自己の免疫細胞によって破壊され、そこから分泌されるインスリンの絶対的な不足が原因となり、高血糖が引き起こされる疾患である。ちなみに、いわゆる生活習慣病である2型糖尿病(Type 2 diabetes;T2D)は、肥満などによってインスリンが出ていても十分に効かない、つまりインスリン抵抗性によって血糖値が上昇する病気であり、T1Dとは病態が全く異なる。
 研究手法と成果
 T1Dのマウスモデルは、ストレプトゾトシン(STZ)を低濃度で繰り返し投与することで作製した。STZは膵臓のβ細胞を特異的に破壊するため、マウスに投与するとインスリンが産生されなくなり、その結果、高血糖が引き起こされる。しかし、あらかじめ腸管寄生線虫であるHeligmosomoides polygyrus (H. polygyrus)をマウスに感染させると、T1Dを誘導しても血糖値の上昇が抑えられ、β細胞の破壊も見られなかった。このことから、H. polygyrusはT1Dの発症を抑制することが分かった。
 次に、そのメカニズムを調べるために、H. polygyrusが感染した際の免疫応答を調べた。これまでH. polygyrusの感染において、さまざまな免疫抑制性の細胞が誘導されることが報告されていたが、共同研究グループは、その中でCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)に着目した。実際、マウスにH. polygyrusが感染するとCD8Tregが増加し、感染マウスからその細胞を除去するとT1Dを発症した。また逆に、非感染マウスにCD8Tregを移入することで、T1Dの発症が抑制された。これらの結果から、H. polygyrusによるT1D 発症の抑制にはCD8Tregが重要であることが明らかになった。
 次に、H. polygyrusがどのようにCD8Tregを誘導するのか調べた。H. polygyrusは、主に小腸上部(十二指腸)に寄生する寄生虫である。そこで、H. polygyrus感染マウスの小腸内容物に存在する代謝産物を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)[9]を用いて解析した。すると、感染マウスでは腸管内で糖のトレハロースが増加していること、そのトレハロースはH. polygyrus自身が分泌していることが分かった。
 トレハロースは腸内細菌の餌になることから、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢の変化を解析したところ、H. polygyrusが感染することでRuminococcus属の細菌が増加していることを突き止めた。その中でも特にトレハロースを投与したマウスで増加したRuminococcus gnavus(R. gnavus)を野生型マウスに経口投与すると、CD8Tregが誘導され、さらにSTZを投与することでT1Dの発症を誘導しても血糖値の上昇が抑えられることが分かった。この結果から、H. polygyrusによるT1Dの発症抑制に関わるCD8Tregは、寄生虫が分泌するトレハロースで増殖したR. gnavusによって誘導される可能性が示された。
 さらに、T1Dの患者では血液中のCD8Tregが減少しているとともに、CD8Tregを誘導するRuminococcus属の腸内細菌が少ないことも明らかにした。
 今後の期待
 CD8Tregはこれまでに、多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患に効果があることが動物モデルで示されているが、その誘導メカニズムは分かっていなかった。今回の研究で、CD8Tregの誘導には、寄生虫が分泌するトレハロースとそれによって増殖した腸内細菌が必要であることが明らかになった。
 T1Dには膵移植や膵島移植といった治療も選択肢の一つとして考えられるが、ドナー不足などの問題から現実的ではなく、現時点では一生涯にわたるインスリンの注射による投与という、生活の質(QOL)に対する悪影響が極めて大きい治療法しかない。今後、このCD8Tregの誘導メカニズムや膵臓での抑制メカニズムが明らかになることで、T1Dの新たな予防・治療法の開発へつながると期待できる。
 ◆補足説明
 〇自己免疫疾患
 本来は、外来から侵入してくる全ての異物から生体を守るはずの免疫システムが異常を来し、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう疾患。
 〇CD8陽性制御性細胞(CD8Treg)
 1970年に報告された白血球の一種で、これまでのさまざまな研究から炎症性疾患、腫瘍免疫、移植寛容、自己免疫疾患などに対する新たな治療戦略の糸口になると考えられている。しかし、いまだにその機能などの全貌は明らかになっていない。
 〇衛生仮説
 乳幼児期の衛生環境が、個体の免疫系の発達に影響を及ぼしているという仮説。近年アレルギーや自己免疫疾患の患者が増加している背景には、衛生環境の改善や生活水準の向上、予防接種の普及、食生活・栄養の変化、抗生物質の乱用による幼少時の感染症の減少が関与していることが、多くの疫学調査でも証明されている。
 〇Heligmosomoides polygyrus
 齧歯類に感染する腸管寄生性線虫の一種。さまざまな免疫応答を引き起こしながら数カ月以上感染しているため、慢性感染のモデルとして使用される。
 〇トレハロース
 グルコースがグリコシド結合してできた二糖の一種である。食品以外に化粧品、飼料などに使用されている。また、耐糖能改善の効果、神経変性疾患抑制の効果、細胞保護の作用など、多種多様な生理機能があることが知られている。
 〇Ruminococcus属
 セルロース分解能を持つグラム陽性菌。培養には強い嫌気度を要求する。
 〇膵臓ランゲルハンス島
 膵臓の内部に島状に散財する内分泌を司る細胞群であり、様々なホルモンを分泌している。
 〇ストレプトゾトシン(STZ)
 天然由来の有機化合物であり、特に哺乳類の膵臓のβ細胞への毒性を持つ。アルキル化剤系の抗がん剤としても使用される。
 〇ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)
  試料を注入口で加熱して気化させたガスをキャピラリーカラム(中空の細長いガラス管)に送り出し、ガスとカラム内部との親和性による移動スピードの違いやカラムを昇温加熱した時の沸点の違いを利用してガス中の成分を分離させ、質量分析計で測定する装置。
 〇次世代シーケンサー
 大量のDNA配列を高速で決定する実験機器。数千から数百万ものDNA分子配列を同時に決定できる。

 今日は晴れ、雲が少し多く、風が少し強い。
 近所のお庭に”ゲッケイジュ(月桂樹)”を植えている。お花が咲いている。このお花は雄花。”ゲッケイジュ(月桂樹)”は雌雄異株。雌の木には実が付く。
 日本には明治に渡来して栽培され、「雌木は少ない」と聴く。近所に雌木があり、チョット嬉しい・・でもまだ咲いていない。
 古代オンピックでは枝を冠(かんむり)にした月桂冠は、名誉の象徴となっている。現代では、葉・実は月桂葉・月桂実と言い、香辛料などで用いられる。
 ゲッケイジュ(月桂樹)
 別名:ローレル(Laurel)、スイートベイ(Sweet bay)、Bay tree(ベイ・ツリー)
 学名:Laurus nobilis
 クスノキ科ゲッケイジュ属
 雌雄異株
 常緑高木(樹高:5m~10m)
 原産地は地中海沿岸
 日本には明治9年頃に入ってきた
 日露戦争(明治37年~38年)の戦勝記念に日比谷公園に植樹されたのがきっかけとされる
 開花時期は4月~5月
 黄白色で先が4裂した小花が沢山集まり花房を形成
 実(約8㎜の楕円状球形)は10月頃に黒紫色に熟す


副鼻腔炎、たんぱく質「セマフォリン4D」が鼻のポリープ形成を誘導する鍵分子

2020-04-22 | 医学
 大阪大学大学院医学系研究科の西出真之助教、津田武医師、猪原秀典教授、熊ノ郷淳教授らの研究グループは、セマフォリンというタンパク質が、鼻ポリープを形成する難治性のちくのう症である「好酸球性副鼻腔炎」の病態形成に重要な役割を果たしており、治療の標的となることを明らかにした。本研究成果は、臨床アレルギー学のトップジャーナルのひとつである米国アレルギー・喘息・免疫学会(AAAAI)の機関誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に、2月6日(木)0時(日本時間)に公開。
 好酸球性副鼻腔炎は鼻ポリープを高い確率で合併し、手術やステロイド投与による既存の治療法では、一度治療した後の再発率が高く、正確な病態の理解に基づいた、安全かつ効果的な治療方法が求められている。
 研究成果のポイント
 〇難治性の副鼻腔炎において、セマフォリンというタンパク質がアレルギー反応や鼻ポリープの形成を誘導していることを発見した。
 〇セマフォリンの血中濃度が高い患者さんは、この病気が重症かつ難治であった。
 〇セマフォリンを抑制する抗体治療を行うと、動物モデルにおいて好酸球性副鼻腔炎が著明に軽快することを見出し、同疾患の今後の診断や治療に役立つことが大いに期待できる。
 研究の背景
 好酸球性副鼻腔炎は鼻ポリープを高い確率で合併し、多くの患者さんは鼻づまり・どろどろの鼻汁・嗅覚(におい)の障害を訴える。日本では、中等度から重症以上の患者さんの数が約2万人存在すると言われている。治療は内視鏡により鼻ポリープを切除する手術や、ステロイドの投与などが行われるが、一度治療した後の再発率が高く、正確な病態の理解に基づいた、安全かつ効果的な治療方法が求められている。
 セマフォリンは、もともと神経発生を誘導する因子として発見されたタンパク質であるが、近年では腫瘍免疫や、骨代謝・自己免疫疾患との密接な関連が報告されている。さらに好中球などの「顆粒球」と呼ばれる白血球におけるセマフォリンの機能もここ数年で明らかになり、血管炎やアレルギー疾患に対する創薬ターゲットとしても注目を集めている。しかし、難治性ちくのう症におけるセマフォリンの効果は調べられておらず、実際に診断や治療のターゲットになるのか詳細は分かっていなかった。
 研究グループが注目したセマフォリン4D(SEMA4D)という分子は、通常は色々な細胞の膜表面に存在する分子として存在しているが、細胞表面で刺激を受けて切断される。切断された遊離型のSEMA4Dは、細胞間のシグナル伝達に関わる。今回、研究グループは、鼻ポリープを形成する難治性の副鼻腔炎である「好酸球性副鼻腔炎」の患者さんの血液から、SEMA4Dとの関わりを調べ、治療の標的となるのかを検証した。
 本研究の成果
 研究グループにより、好酸球副鼻腔炎の患者さんの血中では、遊離型SEMA4D濃度が上昇しており、その濃度が重症度に相関していることが発見された。また好酸球副鼻腔炎の患者さんの白血球においては、好酸球特異的に膜型SEMA4Dが減少しており、好酸球上のSEMA4Dが切断され、膜上の発現が低下、その結果として血中の遊離型SEMA4D濃度が上昇していた。好酸球性炎症において遊離型SEMA4Dがどのような役割を持っているか、さらに追求するために、鼻腔上皮細胞株に対する刺激実験を行った結果、SEMA4Dは鼻腔上皮細胞において細胞内タンパク質のRhoAの活性化を介した、透過性の亢進に寄与することが示された。
 これは、好酸球上に発現しているセマフォリン4D(SEMA4D)が、好酸球の活性化に伴って細胞から遊離し、SEMA内皮細胞や鼻腔の上皮細胞に働きかけ、血管や上皮の結合を緩めて好酸球を通り抜けやすくすることが、アレルギー反応を悪化させ、鼻ポリープの形成に関与していることを示す。
 さらに、SEMA4Dは、インターロイキン6(IL-6)などの炎症を引き起こす様々な分子(サイトカイン)を上皮から分泌させることも分かった。
 これらを踏まえて、好酸球性副鼻腔炎の動物モデルにおいて、SEMA4Dに対する抗体を用いて中和実験を行ったところ、好酸球性炎症が軽快することを見出した。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 本研究により、日本国内で患者さんが多い難治性のアレルギー疾患である好酸球性副鼻腔炎において、セマフォリン分子がアレルギー反応や鼻ポリープの形成を誘導していることを発見した。患者さんの中でも、セマフォリンの血中濃度が高い方は重症かつ難治性であることが分かった。さらに、セマフォリンを中和する抗体を用いると、動物モデルにおいて好酸球性副鼻腔炎が著明に軽快することを見出した。
 この結果から、血清の遊離型SEMA4D濃度は、好酸球性副鼻腔炎の病勢を反映するマーカーとして有用であり、好酸球由来のSEMA4Dはアレルギー炎症を増悪させる因子として、好酸球性副鼻腔炎における新たな治療ターゲットとなることが考えられる。
 研究者のコメント(津田武医師)
 好酸球性副鼻腔炎の患者様は様々な病気の経過をたどります。軽快しやすい患者様もいらっしゃれば、逆になかなか改善しない患者様もいらっしゃいました。「なぜ同じ病気でもこのように経過が全く異なるのだろう」という疑問をスタートとして、その病態解明の一助となる研究を行えたことを大変意義深く感じています。今後も好酸球性副鼻腔炎の患者様の治療に注力していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 今日の天気は晴れ。朝は雲が多かったが、10時過ぎからはお日様が顔を出した。
 散歩道沿いのお家。お庭と道の境に”シバザクラ”が植えられている。色とりどりの花が咲き出している。満開の様で、色彩変化が綺麗な絨毯の様だ。
 名(シバザクラ:芝桜)の由来は、芝の様な広がりの花、桜の様な花・・とある。
 シバザクラ(芝桜)
 別名:花詰草、花爪草(はなつめくさ)
 英名:moss phlox(苔状のフロックス)
 学名:Phlox subulata
 ハナシノブ科フロックス属
 多年草
 原産は北アメリカ東部
 開花時期は4月~5月
 絨毯状に地面を覆い花が咲く
 花は桜に似ている
 花径2cm位、花色は紅・白・紫など


統合失調症の妄想、脳の訂正機能が低下している可能性

2020-04-16 | 医学
 東京大大学院医学系研究科の河西春郎教授や柳下祥講師らが、「統合失調症で妄想が生じるのは、脳で間違った学習を現実に合わせて訂正する機能が低下している可能性が高い。」と発表(3月22日)。論文は英科学誌ネイチャー電子版に掲載。
 統合失調症は約100人に1人が発症するとされる。幻覚や妄想などの症状がある。若年での発症が多いが薬の効果は限られている。統合失調症の薬は神経細胞でドーパミン受容体の働きを妨げるが、なぜ効くかは不明だった
 河西教授らは、マウスに低い音を聞かせ、水が飲めると学習させる実験を行った。その際、脳の「側坐核」と呼ばれる部分を調べると、神経伝達物質「ドーパミン」の濃度が上昇し、ドーパミンを受け取る1型受容体のある神経細胞群が働いて水を飲める条件を学んでいた。次に高い音を聞かせると、実際には水が出ないのにマウスは水をなめようとした。ただ水が期待通り出てこない周波数は学習し、水を飲む動作も減った。
 脳のドーパミンの量を過剰にすると学習できなくなった。統合失調症の薬でドーパミン受容体を阻害すると学習できるようになったことから、ヒトではこの学習障害が妄想を引き起こすとみている。
 統合失調症患者の治療には、2型受容体に作用する抗精神病薬が使われている。今回の研究により、ドーパミンが過剰になり、1型受容体の神経細胞群により誇大な妄想が生じた場合、抗精神病薬を使うと現実に合わせて訂正されるという仕組みが考えられるという。

 天気は晴れ。風もなく、穏やかな日だ。
 駐車場の”ユキヤナギ”の花が満開だ。枝が弓状に湾曲して真っ白い花が咲いている。開花してから暫くたつから、散り始めるころかな。
 ”ユキヤナギ”の花は白い小さな花の集合で、名の如く雪が降り積もった様見える。中国名でも”噴雪花”と見た様子が分かる命名である。
 名(ユキヤナギ:雪柳)の由来は、柳(やなぎ)の様な葉と枝(枝垂れ)に雪の様な白い花を咲かせるからと言う。名に”ヤナギ”と付くが”ヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属)”の仲間ではない。柳の様な葉は細長い披針形(ひしんけい)で、別名に小米花(こごめばな)や小米柳花(こごめやなぎ)があり、この花が咲く様子を表している。
 ユキヤナギ(雪柳)
 別名:小米花(こごめばな)、小米柳花(こごめやなぎ)
 学名:Spiraea thunbergii
 バラ科シモツケ属
 落葉低木、丈は1m~2m
 日本原産、中国原産説もある
 開花時期は3月~5月
 花は径7mm位と小さい
 花色は白
 ピンク色の蕾の”紅花雪柳(フジノピンク)”がある
  園芸品種、雪柳の赤花品種
  蕾は綺麗なピンク、花は薄桃色の白
 若葉が黄金色の”黄金ユキヤナギ”がある


がんが免疫の攻撃から逃れる新メカニズムを発見

2020-04-15 | 医学
 筑波大学医学医療系の渋谷和子教授らの研究グループは、がん細胞が「可溶型CD155」というタンパク質を産出することで、免疫細胞の攻撃から逃れるという仕組みを発見したことを発表した(2月10日)。
 正常な細胞ががん化すると、がん細胞の表面にCD155タンパク質(膜型CD155)が増加する。免疫細胞は、この膜型CD155と免疫細胞上の活性化受容体「DNAM-1」が結合することで、がん細胞を攻撃し排除している。また、がん患者さんは、健常者と比較してCD155の変異体「可溶型CD155」が血清中で高いことがこれまでに報告されている。
 研究グループは、可溶型CD155を産出する悪性黒色腫(メラノーマ)の腫瘍株と、産出しない腫瘍株をマウスに移入し観察。結果、可溶型CD155を産出する腫瘍株で、有意に多くの肺転移が起こることを見出した。また、可溶型CD155が免疫細胞であるNK細胞上のDNAM-1に結合することで、DNAM-1と膜型CD155の結合を阻害し、NK細胞ががんを排除できなくなっていることもわかった。
 この仕組みは、免疫細胞の1つT細胞の攻撃から逃れる免疫チェックポイントとは異なる、「がんが免疫の攻撃から逃れるもう1つの仕組み」で、がんの免疫療法として新たな可能性がある。
 研究グループは、今後の展開として次のように述べている。
 「本研究により、がん細胞は可溶型CD155を分泌することにより免疫逃避を行っていることが明らかになりました。このことから、体内から可溶型CD155を除去すれば、身体が本来持っている免疫システムによってがん細胞が排除されると考えられ、がんの新しい治療法の開発につながることが期待されます。既存の免疫チェックポイント阻害剤は、免疫細胞への抑制シグナルの阻害による治療法でした。一方、可溶型CD155の除去は、活性化シグナルを促進するものであり、作用機序が全く異なります。従って、免疫チェックポイント阻害剤の効果が薄い患者への治療にも役立つ可能性があります。」

 今日の天気は晴れ。風も穏やか。気温は最高気温20℃とあったが、そんなにない感じ・・少し寒い。
 散歩中に鉢植えの”セイヨウサクラソウ(西洋桜草)”の花を見つけた。早春の花が少ない時期に咲くので、春到来の花として人気がある。一般に”プリムラ(Primula)”と呼ばれる。”プリムラ”は、世界で600種以上あると言われる程に種類が豊富。これは、”プリムラ・マラコイデス(Primula malacoides) ・・と思う。
 原産地は中国(雲南省・四川省)で、イギリスで品種改良されたものが、日本へ明治末期~大正初期に渡来した。
 因みに、葉っぱには弱い毒(プリミン)があり、皮膚の弱い方はかぶれる可能性がある・・ご注意。
 セイヨウサクラソウ(西洋桜草)
 別名:乙女桜(おとめざくら)、プリムラ・マラコイデス(Primula malacoides)
 サクラソウ科サクラソウ(プリムラ)属
 日本では半耐寒性一年草(二年草)
 原産地は中国、イギリスで品種改良
 開花時期は2月~4月
 花は、径1.5cm~8cm、 花色は白・赤・ピンク


筋ジストロフィーの治療標的となり得る新規の因子を発見

2020-04-05 | 医学
 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授らの研究グループは、ジスフェルリンタンパク質の異常によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の治療標的となり得る新規の因子を発見した。東北大学医学系研究科神経内科学分野の小野洋也非常勤講師、鈴木直輝非常勤講師、割田仁院内講師、青木正志教授らの研究グループは、菅野新一郎講師(東北大学加齢医学研究所)、林由起子教授(東京医科大学病態生理学分野)、三宅克也教授(国際医療福祉大学基礎医学研究センター)らと協力した。本研究成果は、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌である「Molecular Therapy」のオンライン版に、米国時間2020年2月12日に掲載。
 ジスフェルリン異常症は、筋肉細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの異常によって引き起こされる成人発症の筋ジストロフィーの総称である。ジスフェルリンの欠損によって、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、その結果として筋細胞の変性・壊死が生じ、筋肉の萎縮と筋力の低下につながると考えられている。研究では、ジスフェルリンに結合するタンパク質として新たにAMPK複合体を同定し、AMPK活性化剤(アカデシン)を投与することにより、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜の修復機能が改善することを見出した。さらに、薬剤(メトホルミン)投与によりAMPKを活性化させると、ジスフェルリン異常症のモデル動物での筋力低下や筋損傷を改善することを示した。本研究で得られた知見から、ジスフェルリン異常症の治療法の開発が進むと期待される。
 発表のポイント
 〇筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)は、筋細胞膜の損傷時の修復機能が損なわれ、筋肉の萎縮と筋力の低下といった障害を示す根治療法のない国の指定難病である。
 〇筋細胞膜の修復に必要な分子として、AMPKタンパク質複合体を新規に発見した。
 〇薬剤によるAMPKの活性化によって、ジスフェルリン異常症患者由来の筋細胞膜修復機能およびジスフェルリン異常症モデル動物の筋力低下や筋損傷を改善させることができた。
 研究内容
 国の指定難病である筋ジストロフィーは、いまだ根治療法のない難治性の遺伝性疾患で、筋肉の萎縮や筋力の低下といった障害を示す進行性の筋疾患である。この疾患では、筋細胞膜を構成するタンパク質の異常や欠損、筋細胞膜の損傷からの修復に必要な機構の破綻によって、筋細胞が正常に維持されなくなることが原因であるとされている。
 東北大学医学系研究科神経内科学分野は、1998 年に筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の原因遺伝子を同定して以来、臨床遺伝子診断を通じてジスフェルリン異常症の病態解明に貢献してきた。ジスフェルリンは筋細胞膜の修復に重要な役割を持つことが明らかにされており、近年、ジスフェルリンに結合し、筋細胞膜の修復に関与するタンパク質が存在することが報告されているが、筋細胞膜の修復の分子機構の詳細は不明のままであった。
 本研究では初めに、ジスフェルリンの一部分に結合するタンパク質を培養細胞の抽出物から単離し、質量分析装置を用いたプロテオミクス解析によって複数の結合タンパク質を同定した。つぎに、同定された候補タンパク質の一つであるAMPK に注目し、このタンパク質が筋細胞膜の障害に対してどのように働くのか、レーザー照射による筋細胞膜障害実験によって解析した。結果、マウスにおいてレーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPK タンパク質複合体が損傷部位に集積し、また、筋肉由来の培養細胞においてAMPKの働きを抑制すると筋細胞膜修復機能が低下することを発見した。さらに、ジスフェルリンを欠損させたマウスにおいてレーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPK 複合体の損傷部位への集積が遅延することから、ジスフェルリンがAMPK 複合体の集積に必要であり、AMPK 複合体集積の足場として機能している可能性を見出した。また、ジスフェルリンに変異をもつ患者由来の培養細胞において、AMPK を活性化する薬剤(アカデシン)を投与すると筋細胞膜修復が改善することを明らかにするとともに、ジスフェルリン異常症のモデル動物(ゼブラフィッシュおよびマウス)において、AMPK 活性化剤メトホルミンを投与すると骨格筋の障害が改善することを確認した。
 本研究で得られたAMPK複合体が損傷を受けた筋細胞膜の修復において重要な役割を担っているという新たな知見は、根治療法がいまだないジスフェルリン異常症の治療法の開発に結びつく可能性がある。本研究で得られた知見を発展させることで、ジスフェルリン異常症のみならず、筋ジストロフィー全体の新しい治療法の開発が進むことも期待される。
 ◆用語説明
 〇ジスフェルリン
 筋肉細胞に存在する2080 アミノ酸残基からなる巨大タンパク質。
 〇 AMPKタンパク質複合体
 AMP活性化タンパク質リン酸化酵素(AMPK)の複合体。細胞内のエネルギー源であるATP(アデノシン-3-リン酸)が
分解されてできるAMP によって活性化されることから、細胞内のエネルギーセンサーとしての役割を担っている。
 〇質量分析装置
 タンパク質を分解した断片を大きさ(質量)によって分離し、どのようなタンパク質が含まれていたかを分析できる装置。
 〇プロテオミクス解析
 生体サンプルに含まれるタンパク質の種類を網羅的に解析する技術。
 〇ゼブラフィッシュ
 モデル生物として研究に使用される熱帯魚。
 ゼブラフィッシュの筋組織は形態・機能の面でヒト筋組織とよく類似しており、ヒト疾患の原因遺伝子について変異体を作成することで、疾患の原因解明・治療法開発に繋げることができる。

 朝は曇り、時々小雨がパラパラと。午後から晴れてきた。風は1日中少し強い。
 4月に入り、サクラが咲けば季節は春本番となる。先月末に仙台管区気象台では開花宣言をした。3月28日の開花宣言は、平年より14日、昨年より8日早い・・畑の種まきも早くなる!!。
 いつもの散歩道のサクラも満開だ。
 サクラ(桜)はバラ科サクラ属サクラ亜属の樹木の総称。
 日本には固有種・交配種を含め600種以上の品種が確認されている。
 その中の”染井吉野:ソメイヨシノ”は、江戸末期に染井村(現在の東京都豊島区巣鴨・駒込あたり)の植木職人が、吉野桜として出したと伝えられる。明治以降日本全国各地に広まり、サクラの中で最も多く植えられた品種となった。
 この吉野桜は大島桜と江戸彼岸の雑種説が定説である。一代交雑種であり、自家交配の結実はほとんどない。このため、殖やすのは挿し木となる。
 ◆サクラの語源
 サクラの語は有史以前からある。語源の存在は不明、だがよく知られる説がある。
 〇「咲く」に複数を意味する「ら」を加えたもの、花の密生する植物全体を指す
 〇春に里にやってくる稲(サ)の神が憑依する座(クラ)をいう
 〇花の種をまいて花を咲かせたとされる、「コノハナノサクヤビメ(木花之開耶姫)」の「さくや」から


現状検出が困難な1cm未満の膵がんを画像化、早期膵がんを診断できる

2020-03-29 | 医学
 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構量子医学・医療部門放射線医学総合研究所の吉井幸恵主幹研究員、田島英朗主任研究員、山谷泰賀グループリーダー、張明栄部長、東達也部長らは、難治性として知られる膵がんを早期に診断すると同時に、治療にも有用となる、微小膵がんの画像診断法を開発した。本成果は、英科学誌Natureの姉妹誌である「Scientific Reports」オンライン版に、2020年3月10日19時(日本時間)に公開。
 ポイント
 〇がん細胞表面に高密度に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)に結合するPET検査薬剤(64Cu-セツキシマブ)と、感度と解像度が高い3次元放射線検出器を搭載したPET装置を組み合わせた画像診断法を開発
 〇従来の画像診断法では検出できない3 mmの微小な早期膵がんをマウスで画像化
 〇難治性として知られる膵がんを1cm未満の早期に診断し、適切な治療計画の策定の実現につながる技術となることが期待される
 膵がんは、生存率が最も低い難治性のがんの一種で、その予後を改善するため早期診断・治療を可能にする手法の開発が望まれている。特に、1 cm未満の早期膵がんの検出・治療はより高い生存延長効果が得られると報告されているが、現状のCT検査、検査薬剤としてFDGを用いたPET検査、MRI検査、超音波検査のいずれも1 cm未満の早期膵がんを画像化することは困難である。
 これに対して量研では、PET検査薬剤として、膵がんなど多くのがん細胞の表面に高密度に存在している上皮成長因子受容体(EGFR)に結合する抗体(セツキシマブ)を放射性同位体の銅-64(64Cu)で標識した64Cu-セツキシマブを開発し、本薬剤を腹腔投与すると膵がんに特異的に高集積させられることを、これまでの研究で見出していた。また、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載することにより、従来のPET装置よりも高解像度の画像を撮像できるPET装置を独自に開発していた。
 今回プレスリリースした研究では、これらの技術を融合することで、治療にも有用な早期膵がんの画像診断法を開発できると考え、64Cu-セツキシマブを早期膵がんモデルマウスに腹腔投与し、3次元放射線検出器を搭載した独自のPET装置で撮像した。その結果、マウス膵臓内の3 mm大の微小膵がんを明瞭に検出することができ、64Cu-セツキシマブと独自のPET装置を用いた画像診断法が早期膵がんを画像化する手法として有用であることが示された。本画像診断法は、1 cm未満の早期膵がんを診断し、適切な治療計画を策定する上で役立つ技術となることが期待される。
 それだけでなく、今回使用したPET装置は、検出器の並べ方を工夫することで、患者さんが装置で囲われていない開放部分から重粒子線を照射することができる設計(Open-PET)になっている。そのため、今回の研究成果で可能となった解像度の高い撮像法と重粒子線がん治療を併せて用いることで、将来的には、治療時に微小ながんの正確な位置を画像で確認しながらより効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療を提供することも期待される。
 背景
 膵がんは、5年相対生存率が10%以下と極めて低い難治性のがんである。膵がんの生存率が低い原因として、膵臓は体深部に位置するため早期発見が難しいことや、自覚症状が乏しいことが知られており、膵がんの予後改善のためには、早期診断・治療法の開発が求められている。特に、1cm未満の早期膵がんの発見・治療は、より高い生存延長効果が得られると報告されており、その手法開発は非常に重要である(Kikuyama et al. Cancers. 2018, Jung et al. J Korean Med Sci. 2007)。
 近年、血液中のがん特異的なバイオマーカーを検出する血液バイオマーカー検査7)が早期膵がん患者の有望なスクリーニング法として注目され、臨床で使用され始めている。しかし、現状の画像診断法では、血液バイオマーカーで膵がん高リスクと診断されても腫瘍位置を特定できず、確定診断並びにその後の適切な治療計画を立てることは困難である。また現在、膵がんの画像診断法としては、CT検査、MRI検査、FDG-PET検査、超音波検査などがあるが、これらの方法を用いたとしても、1 cm未満の膵がん病変の検出は困難なのが現状である。
 これに対して、吉井・張・東らは、これまでに、膵がんを含む多くのがんに過剰発現するEGFRに対する抗体(抗EGFR抗体セツキシマブ)をPET画像診断に使用できる放射性核種64Cuで標識した64Cu-セツキシマブを開発した(Yoshii et al. Oncotarget 2018)。さらに、マウスを用いた実験より64Cu-セツキシマブを腹腔投与することで、同薬剤がマウスの膵臓内に形成された膵がん病巣に高集積することを示した(Yoshii et al. J Nucl Med 2019)。
 また、田島・山谷らは、感度と解像度を飛躍的に向上させた3次元放射線検出器を搭載した次世代型PET装置として、OpenPETを開発、改良してきた。OpenPETは、従来の一般的なPET装置よりも解像度が高く(分解能2mm)、リアルタイムにPETを撮像しながら、装置で患者さんが囲われていない部分から、手術や重粒子線治療などを施すことが可能な世界初の開放型PET装置である。
 研究内容と成果
 本研究では、これらの技術を融合し、64Cu-セツキシマブを腹腔投与し、OpenPETで撮像することで、膵臓内にある微小な早期膵がんを検出することが可能になるのではないかと考え、マウスを用いた動物実験を行った。その結果、マウス膵臓内の1 cm未満の早期膵がんを明瞭に画像化できた。また、これまでの技術では非常に困難であった3 mm大の微小な早期膵がんの画像化にも成功しており、特筆すべき成果と言える。
 一方、現在臨床において膵がんの画像診断に使用されているPET薬剤のFDGを静脈投与・腹腔投与した場合や、64Cu-セツキシマブを静脈投与した場合は、OpenPETを用いても、マウスに形成された早期膵がんを画像化することはできなかった。
 これらのことから、64Cu-セツキシマブを腹腔投与してOpenPETで撮像する手法は、膵がんの早期画像診断に有用であることが示された。また、OpenPETには患者さんが装置で囲われていない部分があるので、そこから治療(重粒子線がん治療や手術など)を施すことができる。治療時に64Cu-セツキシマブを投与してOpenPETで撮像することにより、微小膵がんの位置をリアルタイムに確認しながら、重粒子線を腫瘍に正確に治療照射する技術としても有用と考えられる。
 今後の展開
 本成果を受け、現在は、64Cu-セツキシマブとOpenPETを組み合わせた早期膵がん診断法の臨床実用化を目指して安全性を確認する非臨床試験を実施中です。
 本法は、血液バイオマーカーを用いた早期膵がん患者スクリーニングで膵がん疑いとなった患者に適用することで、これまで画像診断が困難であった早期膵がん患者において、腫瘍の正確な位置決定並びに適切な治療計画策定に寄与できると期待される。それだけでなく、本法を用いて、治療時にがんの位置を画像で確認しながら重粒子線を正確に照射することにより、より効果的で、患者の負担が少ない革新的な膵がん治療戦略を提供することも期待される。
 ◆用語解説
 〇上皮成長因子受容体(EGFR)
 EGFRとは、Epidermal Growth Factor Receptorの略で上皮成長因子受容体のこと。膵がんを含む多くのがんで高発現することが知られる。
 〇3次元放射線検出器
 次世代のPET技術開発において、量研が世界に先駆けて開発した検出器。従来の検出器が、2次元の放射線位置検出であるのに対し、検出素子の深さ方向も含めて3次元の放射線位置検出を可能とする。
 〇FDG
 18F-fluorodeoxyglucoseのこと。多くのがんではFDGを多く取り込む性質があり、がんPET診断薬として、広く使用されている。
 〇銅-64(64Cu)
 陽電子放出放射性核種であり、PET用の放射性薬剤の標識用に使用できる。
 〇 OpenPET
 PETとは、Positron emission tomographyの略で陽電子放射断層撮影のこと。
 OpenPETは、3次元放射線検出器を使用した高感度かつ高解像度な画像撮影が可能な次世代型PET装置で、従来の一般的なPET装置よりも高分解能を有する(分解能2 mm)。また、高速画像解析システムでリアルタイムにPETを撮影しながら、患者さんが装置で囲われていない開放部分から治療を施すことが可能。
 〇重粒子線がん治療
 炭素粒子を用いたがん治療法で、がん病巣に狙いを定めた選択的照射が可能なため、正常組織への影響が少なくがんに対する効果が高い治療法。
 〇血液バイオマーカー検査
 近年、膵がんのみならず多くのがんに対し、早期にがんの疑いがあることを予測する(スクリーニング)する手法として、血中のがん特異的物質を探索する検査(血液バイオマーカー検査)が世界各国で研究されている。膵がんに対しては、アミノ酸プロファイルを使った血液バイオマーカー検査が臨床実用化されている。

 天気は曇り~小雨。昨日の予報では「積雪の恐れあり」、雪は降らずに小雨となった。
 数日前の散歩道で見つけた小さなお庭の”ペチコートスイセン”、独特な花の姿で咲いている。
 ”ペチコートスイセン”の名は英名「Hoop petticoat daffodil」からの訳名のようだ。ペチコートとは「スカート状の」との事で、ラッパの様な副花冠の姿からの由来である。副花冠が目立つが、花冠は外側の6枚の細い萼(がく)の様なヒゲの様で目立たない
 因みに、ペチコートとは、現代では”スカートの下に装着する女性用の下着、ランジェリーの一種”である。しかし、19世紀初期以前では”スカート状ドレス”との事で、19世紀初期以前の命名なら納得かな。
 別名はナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)で、”Narcissus”はギリシャ神話の水に映った自分の姿に恋した美青年の名前からである。ナルシスト(自己陶酔型の人)の言葉で残っている
 ペチコートスイセン(ペチコート水仙)
 別名:ナルキスス・ブルボコディウム (学名:Narcissus bulbocodium)
 英名:Hoop petticoat daffodil
 学名:Narcissus bulbocodium
 ヒガンバナ科スイセン(ナルキスス)属
 原産地は地中海沿岸地方
 耐寒性多年草
 丈は10cm~20cm
 開花時期は3月~4月
 花は径4cm位、花色は黄色、円錐状の副花冠が特徴
 葉は細くほぼ筒状


幹細胞治療による血管再生メカニズムを解明

2020-03-22 | 医学
 神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター脳循環代謝研究部の研究グループは、投与した造血幹細胞が血管内皮細胞に「細胞内で欠乏しているエネルギー源(グルコースなど)」をギャップ結合を介して直接供給することが、障害されている血管内皮細胞の再生をスタートさせるトリガーであることを発見した。
 成果は、幹細胞が障害された細胞に分化あるいはサイトカインなどで「命令」を与えて再生をスタートさせているのではなく、幹細胞が障害された細胞で欠乏している「エネルギー源」を直接供与することが再生をスタートさせる鍵であることを示しており、再生医療において全く新しいパラダイムが存在することを明らかにした。
 研究成果は、2020年2月21日に、国際学術誌「Stroke」にオンライン掲載。
 背景
 造血幹細胞を使った再生医療は、四肢虚血、心筋梗塞、脳梗塞、新生児脳性麻痺など、多くの治療困難な疾患を対象に行われてきた。私達のグループでも、難治性四肢虚血患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2003)、重症心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Stem Cells Dev. 2015)を行い、その治療効果を示してきた。しかしこれらの造血幹細胞移植がどのように血管再生を促進し、脳神経の回復まで行うのかについて、造血幹細胞の血管内皮細胞への分化や、サイトカインのパラクライン効果などが提唱されてきたが、否定的な結果も数多く報告されており、その本質は全く不明であった。
 研究手法・成果
 まず、血管内皮細胞と造血幹細胞を一緒に培養することで、血管内皮細胞にどのような変化が起こっているのかを検討した。その結果、血管内皮細胞と造血幹細胞が接する状態で培養した場合のみ、血管内皮細胞の活性化が見られ、細胞同士が直接接することで、何らかの影響を与えていることがわかった。
 次に、骨髄組織における造血幹細胞と血管内皮細胞の直接的な接着に重要であるギャップ結合に着目した。細胞と細胞は、各々の細胞が細胞膜で区切られているため、細胞の中身(細胞質)が直接的に移動することは基本的にはない。しかし、ギャップ結合は細胞質と細胞質を直接つなぐ細いトンネルのような働きを有しており、細胞間がギャップ結合で繋がると、分子量1500以下の低分子であれば濃度勾配に従って移動することが知られている。そこで造血幹細胞に低分子の蛍光物質を封入し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、造血幹細胞に封入した蛍光物質が脳梗塞巣の障害された血管に移行していることがわかった。さらに、造血幹細胞から血管内皮細胞へギャップ結合を通って流れる分子の一つがグルコースであり、グルコースの供給がトリガーとなり、血管内皮細胞では低酸素誘導因子(HIF1-α)の活性化が起こり、その後の血管再生起点となっていることを明らかにした。
 波及効果
 我々が発見したメカニズムは、宇宙ステーション/宇宙船に例えるなら、ダメージを負った宇宙ステーション(障害を受けた脳組織)の救助に小さな宇宙船(造血幹細胞)を派遣→宇宙ステーションとドッキング→狭いハッチ(ギャップ結合)を開けて連結→ハッチから修復に必要物資を搬入→ダメージを負った宇宙ステーションの修復(再生)を促進、という救助システムと全く同じであった。幹細胞を使った再生医療のメカニズムが、このような合理的な修復システムに基づいていたことは、大きな発見で、再生医療に新しいパラダイムを提示するものである。
 今回の研究では、幹細胞による障害細胞への直接的な低分子化合物供給の重要性が明らかになり、投与幹細胞の品質管理や細胞機能の向上、さらにメカニズムの解明により、幹細胞が不要な再生医療の可能性も開かれたと考えている。
 今後の予定
 今回の研究は、理化学研究所(神戸市)、日本赤十字社/医薬基盤研(箕面市)、フラウンホーファーIME研究所(ドイツ)、ウォーリック大学(英国)との共同研究の成果である。今後も、これらの研究者らと①幹細胞の機能向上研究、および②幹細胞が不要な再生医療開発を行い、脳梗塞患者および認知症患者に対する新規治療法開発を続けていく予定である。
 ◆用語解説
 〇ギャップ結合
 接触する細胞同士をつなぎ分子量1500以下の小さい分子やイオンを通過させる細胞間結合。細胞の細胞膜にはコネクソンと呼ばれるトンネルのようなタンパクが存在し、接触する細胞のコネクソン同士が繋がると、小さい分子やイオンが隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動する。
 〇低酸素誘導因子(HIF1-α)
 細胞が酸素不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質。ヒト遺伝子の約2%が直接あるいは間接的に制御されており、血管再生にも重要な役割を果たしている。

 今日の天気は、曇り~小雨~曇り、時々晴れ。ハッキリしない天気だな。
 散歩道沿いの玄関前の小さなお庭に、”フッキソウ”の花が咲いている。今年の冬は暖冬だから早く咲きだしたのかな。
 茎頂に穂状花序の雄花、雌花が付く。雄花・雌花ともに白色で花弁が無く、雄花は茶色の太い4本の雄蕊を持ち、雌花は2本の花柱を持った子房がある。雄花は花序の先に沢山で、雌花はその下に付く。多数の葉が茎にラセン状に付き、荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉で、密に互生して輪生に近く見える着き方である。
 名(フッキソウ:富貴草)の由来は、青葉が絶えない常緑性から、その姿を繁栄に擬えたとされる。別名は、キッショウソウ(吉祥草)、キチジソウ(吉事草)と縁起が良い。因みに、ユリ科には”キチジョウソウ”がある・・吉祥草:草・常緑、学名:Reineckea carnea、赤い実を付ける。
 ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木である。”草”のように見えるが、地下茎が横に這って繁茂する小低木である・・木だ!!。
 フッキソウ(富貴草)
 別名:吉祥草(きっしょうそう)、吉事草(きちじそう)。
 学名:Pachysandra terminalis
 ツゲ科フッキソウ属
 常緑小低木
 原産地は日本、中国
 開花時期は4月~5月


新型コロナウイルス「スパイクたんぱく質」の立体構造解明

2020-03-01 | 医学
 米国のテキサス大と国立アレルギー・感染症研究所の研究チームが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が人の細胞に侵入、感染するのに使う「スパイクたんぱく質」の立体構造を解明した。2020年2月19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表。
 コロナウイルスは遺伝情報を担うリボ核酸(RNA)が入った粒子の表面に「スパイク」と呼ばれる突起があり、人の細胞表面にある受容体たんぱく質と結合して侵入、増殖する。新型ウイルスのスパイクたんぱく質が結合する受容体たんぱく質は、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスの場合と同じ「ACE2」であることが分かっている。研究チームが新型ウイルスのスパイクたんぱく質をACE2と結合させる実験を行ったところ、SARSより結合力が強く、人の細胞へのくっつきやすさが10~20倍強いことが分かった。新型ウイルスの感染が拡大する要因となっている可能性があると指摘している。
 この分子の働きを妨げる化合物が薬の候補になる。人の免疫システムに攻撃対象と覚えさせて発症を抑えるワクチンや、侵入を阻害する抗ウイルス薬の開発に広く利用されることが期待される。
 因みに、新聞記事より
 新型コロナウイルス(2019-nCoV/SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)を対象とした治療薬の開発が本格化してきた。米国立衛生研究所(NIH)は2020年2月25日、COVID-19を対象に、抗ウイルス薬である「レムデシビル」の医師主導治験を始めたと発表した。同治験は、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導し、米Nebraska大学と協力して実施する。また、同治験などを補完する目的で、開発元の米Gilead Sciences社が企業治験(第3相臨床試験)を開始。日本もこれらの治験に加わる方針だ。現在、COVID-19に効果があると正式に認められた治療薬は無い。治験の結果次第では、レムデシビルがCOVID-19に対する治療薬として、世界で初めて承認される見込みとなった。
 ◆アメリカ国立アレルギー・感染症研究所
 アメリカ国立アレルギー・感染症研究所 (NIAID; National Institute of Allergy and Infectious Diseases) は、アメリカ合衆国の国立衛生学研究所(NIH)を構成している27の研究所及びセンターの一つ。

 天気は晴れ。雲が少なく、雨は降りそうでない。でも、風は少々強い。
 今日も畑に行く。そろそろ、”ダリア”球根の植え付けを準備しなくては。
 畑の片隅で、黄色の花”クロッカス”が咲いている、”キバナサフラン”と呼ばれる。色々な花色の中で、生き残ったのは黄色い花である・・黄花品種は強いのかな。花被片が6枚、雄しべが3本、中央の雌しべは柱頭が糸状に3つに分かれている。
 ”クロッカス”は、アヤメ科クロッカス属の総称で、世界に75種程ある。園芸上、春咲き種をクロッカス、秋咲き種をサフランと呼ぶのが一般的のようだ。”サフラン”を秋咲きクロッカスと呼ぶこともある。
 キバナサフラン(英: crocus)
 学名:Crocus vernus
 アヤメ科サフラン属
 開花時期は2月~4月
 色々な花色の品種がある、黄・白・青・紫・藤など
 葉は細長く、真中に白い筋が入っている


葉酸受容体を発現する細胞だけを検出できる蛍光試薬の開発

2020-02-14 | 医学
 東京大学の研究グループは、動物体内で葉酸受容体を高発現しているがん部位を短時間にはっきりと蛍光検出できる近赤外光領域の蛍光試薬を開発した。本成果は、国際科学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版で2020年1月26日付で公開された。
 ポイント
 〇生体深部での観察が可能な近赤外光領域の蛍光を発し、がん治療の標的分子として注目される葉酸受容体を発現する細胞だけを検出できる蛍光試薬を開発した。
 〇正常な生体組織への吸着を抑え、蛍光試薬の投与後わずか30分以内で、はっきりとがん部位を蛍光検出できた。
 〇培養細胞およびマウス摘出胚でも、選択的に葉酸受容体の発現を観察できた。
 葉酸受容体は、卵巣がんや子宮内膜がんにおける過剰発現やマウス胚における神経管閉鎖部位での特異的な発現が報告されており、臨床医学および生命科学研究において重要な標的分子である。実際に近年、葉酸受容体の発現を可視化する蛍光試薬を用いた臨床試験で、がん摘出手術中に目では見分けにくいがん部位を見つけるための利用が報告されている。また、がん治療における抗体の標的分子としても注目されている。
 研究グループは、動物体内で葉酸受容体を高発現しているがん部位を、短時間にはっきりと蛍光検出できる近赤外光領域の蛍光試薬を開発した。
 この蛍光試薬を、葉酸受容体を発現しているがんを持つモデルマウスに静脈内投与したところ、わずか30分以内ではっきりとがん部位を蛍光検出することができた。既存の蛍光試薬は動物個体への投与後、標的がん部位を明確にするために、それ以外の部位に吸着した余剰な蛍光試薬が排泄されるまで、数時間から1日程度の長い時間待つ必要があることが問題であった。
 そこで、蛍光試薬の正常組織に対する非特異的な吸着を抑えることで、蛍光試薬の排泄を待つ時間を短縮し、リアルタイムかつ高感度に蛍光観察ができると考え研究に着手した。
 研究グループは、これまで多くの蛍光色素の開発に成功している。その技術力をもとに、葉酸受容体に対するリガンドである葉酸とさまざまな蛍光団とを水溶性の高いペプチドリンカーで結合させた分子をデザイン、合成した。培養細胞で評価したところ、正常細胞への取り込みが見られなかった近赤外蛍光を発する蛍光試薬、FolateSiR-1を見いだすことに成功した。また、その分子構造が類似した蛍光試薬であるFolateSiR-2をコントロール(対照)化合物として、さらなる評価を行った。両蛍光試薬を葉酸受容体が過剰発現しているKB細胞(ヒト口腔がん細胞)に応用した結果、FolateSiR-1は細胞膜上のみから蛍光が観察された。また、この蛍光は過剰の葉酸による競合阻害によって消失したため、FolateSiR-1は葉酸受容体を選択的に可視化していると考えられた。FolateSiR-2は細胞膜上の蛍光に加え、細胞内からも点状の蛍光が観察された。この点状の蛍光は葉酸競合実験においても消失しないことから、一部のFolateSiR-2は葉酸受容体以外の細胞内部位にも取り込まれていると考えられた。
 これら蛍光試薬をマウス胚の染色へと応用したところ、FolateSiR-2においては胚全体から点状の蛍光が観察されたのに対し、FolateSiR-1は葉酸受容体が高発現していると報告されている神経管閉鎖部位において強い蛍光が観察された。また、KB細胞を用いたがんモデルマウスへと応用したところ、FolateSiR-2は投与後6時間経過後も正常細胞への吸着に由来するバックグラウンド蛍光が観察された一方で、FolateSiR-1はバックグラウンド蛍光の消失が早く、蛍光試薬投与後30分以内に高感度でがんの蛍光観察が可能であった。
 さらに、ヒト卵巣がんの凍結組織マイクロアレイへと応用した結果、正常組織サンプルからは蛍光は観察されず、葉酸受容体が発現したがん部位から蛍光を観察することに成功した。
 これらのことから、これまでの蛍光試薬の問題点を克服した高感度で葉酸受容体を発現した細胞を検出できる実用的な蛍光試薬であることが示された。
 開発した蛍光試薬を用いることで、手術中における目では見つけにくかった卵巣がんの蛍光検出などの臨床医療への応用が期待される。また、蛍光試薬の投与後、短時間でがんを高感度で検出できることから、手術直前および手術中での蛍光試薬の投与ができる可能性があり、よりその応用範囲が広がると期待される。さらに、生命科学研究では、マウス胚の神経管閉鎖部位における葉酸受容体の蛍光イメージングのように、葉酸受容体に関わる生命現象を明らかにすることができ、基礎研究においても有用なツールになると考えられる。
 本研究の成果は、将来、臨床医療と基礎研究の両面において、その進展に大きく貢献することが期待される。
 ◆用語解説
 〇葉酸受容体
 水溶性ビタミンである葉酸を細胞内に取り込む役割を担うたんぱく質のこと。
 〇胚
 動物の個体発生におけるごく初期の段階の個体のこと。
 〇蛍光
 紫外線や可視光線といった光が照射されることで、そのエネルギーを吸収し、分子(蛍光色素)が励起状態となり、それが基底状態に戻る際に放出される光のこと。
 〇近赤外光領域
 650から900nm(ナノメートル)の光の波長領域で、高い生体組織透過性と自家蛍光の低さから、動物個体での蛍光イメージングに向いている波長領域である。
 〇ヌクレオチド
 DNAやRNAの基本単位で、リン酸および糖、塩基で構成されているもの。
 〇神経管形成
 脳や脊髄などの中枢神経系を作り出す重要な過程のこと。
 〇mRNA
 核内でDNAから転写される、たんぱく質に翻訳され得る塩基配列情報を持ったRNAのこと。
 〇蛍光イメージング
 目的とする分子だけを蛍光で光らせて、蛍光顕微鏡を用いて観察するもの。

がん細胞排除の過程で生じるカルシウムウェーブの存在を発見

2020-02-13 | 医学
 北海道大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授らの研究グループは、がん化の超初期段階において変異細胞が正常細胞層から排除される際に、変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが花火のように同心円状に伝播することを突き止めた。このカルシウムウェーブを受けた正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって、変異細胞の排除を促進していることがわかった。変異細胞の排除に伴うカルシウムウェーブは,哺乳類培養細胞層及びゼブラフィッシュの皮膚細胞層の両者で同様に観察されることから、進化の過程で保存された普遍的な現象であることが示唆される。これらの研究成果は,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で生じる現象を明らかにするものであり、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待できる。本研究成果は、 2020年1月31日公開のCurrent Biology誌にオンライン掲載。
 ポイント
 〇これまでブラックボックスであった、がん化の超初期段階で起こる現象を解明。
 〇変異細胞から周囲の正常細胞に伝播するカルシウムの波が変異細胞の排除を促進。
 〇新たながん研究分野の開拓、「世界初のがん予防薬」の開発につながることが期待。
 研究手法
 独自に確立した培養細胞系とマウスモデルを用いて、変異細胞が 正常細胞 層から排除される時の細胞内のカルシウムイオン濃度を解析した。
 研究成果
 変異細胞が正常細胞層から排除される際に変異細胞から周囲の正常細胞に向かってカルシウムイオンが同心円状に波のように伝播することを突き止めた。さらに、カルシウムウェーブを受けた正常細胞に様々な変化が生じ、その結果 正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって 変異細胞の排除を 押し出すように促進していることがわかった。
 今後への期待
 これらは,これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で起こる現象を明らかにした研究成果であり、新たながん研究分野の開拓につながる可能性がある。この研究成果をさらに発展させることによって、世界初の「がん予防薬」の開発へつながることが期待される。
 ◆カルシウム
 カルシウムは原子番号20の金属元素。元素記号はCa。周期表第2族アルカリ土類元素の一種。
 人体に最も多いミネラルで、体重の約2%(約1kg)を占めている。生体ミネラルの中でCaが最も多く、生体の構造維持に必要な骨格を形成している。骨以外(体液中や細胞内)でCaはカルシウムイオン(Ca2+)として存在し、細胞内シグナル伝達を担う代表的なセカンドメッセンジャーの一つであり、広範な細胞機能の制御に関与している。
 体内のカルシウム濃度はビタミンD、副甲状腺ホルモン、カルシトニンの3つによって調節されている。カルシウム全体の99%は骨や歯の成分(ハイドロキシアパタイト)として存在する。脳神経系においても、神経伝達物質放出、シナプス可塑性、神経細胞死のトリガーとなるものであり、また各種グリア細胞機能の制御に不可欠である。

潰瘍性大腸炎の炎症が長期間続けば、大腸がんの発生リスクが15~20%に高まる

2019-12-28 | 医学
 難病の潰瘍性大腸炎によって大腸がんのリスクが高まる原因を、京都大などのチームが明らかにした。大腸の粘膜で炎症と再生が繰り返され、がん関連遺伝子を含む多くの遺伝子が変異していた。研究成果は12月19日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載。
 潰瘍性大腸炎は下痢や血便などの症状が出る難病で、原因不明。患者は国内では約17万人、平成25年度末の医療受給者証などから、日本国内だけで166,060人いる。人口1万人あたり10人程度という計算になる。
 大腸の炎症が長期間続くことで、大腸がんの発生リスクが15~20%に高まる。
 チームは、潰瘍性大腸炎の患者の大腸から採取した粘膜のくぼみの細胞について、遺伝子にどのような変化が起きているかを詳しく解析した。患者の大腸では炎症による細胞死と、新たな細胞分裂による再生が繰り返されており、通常の大腸と比べ、遺伝子の変異が起きる速さは3倍だった。変異の中に、発がんと関連がある遺伝子が含まれていた。
 一方、大腸がんの細胞ではみられない、がん化を抑える変異が起きていることもわかった。患者の大腸の粘膜は、がん化しやすい細胞と、逆に通常よりもがん化しにくい細胞が入り交じった状態だとみられる。
 チームの小川誠司・京大教授は「がん化を抑制する遺伝子変異があったことは驚きだ。この遺伝子をターゲットにした薬は、大腸がんの治療や予防に有効かもしれない」と言う。

 お休み。年末年始は暫くお休みします。

 天気は、朝から晴れ。風は少しある、チョット強く吹くと冷たさが顔・首にかかる。
 今日は12月28日。新寺小路緑道で毎月28日に行われる「こみち市」の日である。
 緑道だった木々は葉を落としている・・枯れ木の道かな。
 新寺小路緑道のある新寺界隈は、多くの寺院が集まる寺町で、区画整理によって歩道のみの「新寺小路緑道」が整備された。緑道(東西640m・幅10m)はサクラなどが植えられた。


真核細胞で利用できる新しいゲノム編集ツールCRISPR-Cas3を開発

2019-12-15 | 医学
 大阪大学医学部附属動物実験施設/東京大学医科学研究所の真下知士教授、大阪大学微生物病研究所の竹田潤二招へい教授、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の堀田秋津講師らの研究チームは、新たに大腸菌由来TypeI-ECRISPRシステム(CRISPR-Cas3:クリスパー・キャス3)を開発した。ヒト細胞でゲノム編集ツールとして利用できる(12月6日発表)。本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」(オンライン)に12月6日掲載。
 研究成果のポイント
 〇真核細胞で利用できる新しいゲノム編集ツールCRISPR-Cas3を開発し、実際にヒトiPS細胞の遺伝子修復に利用できることを確認。
 〇CRISPR-Cas3は、世界中で利用されているCRISPR-Cas9とは異なり大きくゲノムを削る特徴を持ち、さらに認識標的配列が長いためオフターゲットへの影響も極めて低いことを明らかにした。
 〇従来よりも安全性の高い新しい日本発ゲノム編集基盤ツールとして、新たな創薬や遺伝子治療などへの利用、農水産物への利用など、さまざまな分野への応用が期待される。
 研究の背景
 ゲノム情報を操作することができるゲノム編集技術は、遺伝子の機能を理解するだけでなく、農水産業における品種改良や、遺伝子治療、再生医療での新規治療法開発など、幅広い分野における活用が期待されている。代表的なゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9は簡単で効率的にゲノムを操作することができるため、世界中でさまざまな生物や細胞に用いられている。ゲノム編集技術はさまざまな分野に応用されている一方で、標的配列以外のゲノム領域を誤って編集してしまうオフターゲット変異のリスクや、狙うことのできる標的配列の制限といった技術的問題がある。加えて、アメリカ主導で開発されたことによる知的財産の課題があり、日本における医療応用や産業用への利用が制限される懸念がある。こうした状況から、従来のゲノム編集技術とは異なる特徴を持った新しいゲノム編集ツール、特に国産の新規ゲノム編集ツールの開発が強く求められていた。
 本研究の成果
 本来、CRISPR-Casシステムは細菌、古細菌に存在する獲得性免疫システムと考えられており、細菌に感染するウイルス等のゲノムを切断することで、自らを守っている。CRISPR-Casシステムは、複数タンパク質の複合体でDNAを切断するClass1と、一つのタンパク質で切断するClass2に分かれているが、これまで開発されてきたCRISPR-Cas9やCpf1、Cas13などはClass2に分類される。一方、Class1の真核細胞でのゲノム編集技術はこれまで報告されていなかった。そこで本研究チームは、Class1に属するType I CRISPRに着目し、ヒト細胞でゲノム編集に利用できないか検討した結果、大腸菌由来のType I-E CRISPR-Cas3がヒト細胞内で変異を導入できることを見出した。
 CRISPR-Cas3によって導入される切断パターンをキャプチャーシーケンスで解析したところ、標的配列の上流側に数百から数万塩基にわたって広範囲に配列が失われる欠失変異が導入されていることがわかった。この性質はCas9の標的部位に短い変異を導入する性質と大きく異なる。Type I-E CRISPR-Cas3は、27塩基を標的として認識するcrRNAと5つの因子から成るCascade複合体がゲノム上の標的配列を認識して、その後Cas3がDNA切断を誘導する。このCas3はヘリカーゼドメインを持つことから、二本鎖DNA構造をほどきながら標的配列の上流側で広範囲にわたってDNA切断を起こしたと考えられる。CRISPR-Cas3のオフターゲットへの影響について、全ゲノムシーケンス解析、また100カ所以上の類似領域のシーケンスを調べたところ、Cas9ではわずかにオフターゲット変異が確認された一方、Cas3ではオフターゲット変異は確認されなかった。すなわち、CRISPR-Cas3はオフターゲットへの影響がCas9と比較して少なく正確性が高いことが示唆された。
 さらに、CRISPR-Cas3の遺伝子疾患に対する治療応用として、デュシャンヌ型筋ジストロフィー患者由来iPS細胞に利用した結果、エクソンスキッピングによりDMDタンパク質の発現が改善することを確認できた。
 本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
 CRISPR-Cas3はゲノムを大きく削ることから遺伝子や外来ウイルスなどを完全に破壊する、もしくは大規模領域をノックインすることに適していると考えられる。また標的を認識する配列が、Cas9が20塩基に対してCas3は27塩基と多く、オフターゲットへの影響の少ない安全なゲノム編集基盤ツールと考えられる。このようにCas9とは全く違った特徴を持つ日本発のゲノム編集ツールを今後さらに改良することで、医療や食品産業など多くの分野で応用できることが期待される。
 ◆用語説明
 〇デュシャンヌ型筋ジストロフィー
 筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称であり、デュシャンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が全くもしくはほとんどないために起こる。ジストロフィンは筋細胞が壊れにくくする役割を持つタンパク質で、ジストロフィンが少ないと筋細胞が壊れ、炎症、線維化が起こり、筋力の低下による運動障害、呼吸筋障害、心筋障害などが引き起こされる。ほとんどの患者さんは20歳前後で死亡する。ジストロフィン遺伝子はX染色体に存在し、220万塩基の巨大遺伝子で、79のエクソンを持つ。
 〇ヘリカーゼ
 DNAなどの核酸をほどく酵素の総称。DNAに結合して、ATP、GTPなどを加水分解して得られるエネルギーを利用して、決まった方向へ核酸をほどいていく。
 〇エクソンスキッピング
 遺伝子の中でタンパク質合成の情報を担う部分をエクソンと呼び、直接タンパク質をコードしていない領域をイントロンと呼ぶ。例えばデュシャンヌ型筋ジストロフィーの患者では、いくつかのエクソンがなくなっていたり、重複していたり、塩基が変異していたりしており、正常なジストロフィンタンパクが作れなくなっている。異常のあるエクソンを読み飛ばしてやる(スキップする)ことで、機能的なジストロフィンタンパクを作らせることで治療する方法。
 〇ノックイン
 狙ったDNA配列の場所に、特定の配列を導入したり置き換える技術。外来遺伝子の導入や、標的遺伝子の標識化、病気に関連した配列への変換など、様々な目的に利用されており、新しい疾患モデルの作成や遺伝子治療に向けて必要不可欠な技術である。
 ◆CRISPR-Cas9
 CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR associated proteins)とは、DNA二本鎖を切断(Double Strand Breaks=DSBs)してゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入することができる新しい遺伝子改変技術である。第3世代のゲノム編集ツールとして2013年に報告されたCRISPR-Cas技術は、カスタム化(標的遺伝子の変更や複数遺伝子のターゲット)が容易であり、マウスといった哺乳類細胞ばかりではなく、細菌・寄生生物などの膨大な種類の細胞や生物種において、そのゲノム編集または修正に利用されている。

 今日の天気は曇り。お日様が見えない冬の曇りの日は、寒さもあり、チョット憂鬱。
 冬になると咲き始める花がある。冬でも咲く花は貴重で、”イソギク”もその一つだ。”イソギク”は伊豆半島や房総半島等の海岸に自生する多年草で、私達が目にするのは、園芸種(野生種がそのまま園芸店などに流通)。名(イソギク)の由来は、海岸に咲く菊から名づけられた。
 葉や花が独特。葉は肉質で、葉裏の細かい毛で覆われて銀白色となっているのが葉表まで広がり、葉表の白い縁取りとなっている。花は沢山の小さな筒状花だけが集まって数mm程の大きさとなり、この集合体がさらに集まって散房状の頭花となっている。舌状花はない(まれに白色の舌状花がある、と言う)。
 寒い早朝、駐車場の横のお庭で、咲き始めた”イソギク”を見つけた・・雪・氷の季節を実感する。
 イソギク(磯菊)
 別名:岩菊(いわぎく)
 学名:Chrysanthemum pacificum
 キク科キク属イソギク種
 半常緑多年草
 地下茎で増える、茎は木化して越冬する
 原産地は日本(固有種)
 開花時期は10月~12月
 花は鮮やかな黄色
 キク属では珍しい筒状花だけの花
 特徴:水をあまり要求しない、生長がゆっくりしている