陸上100メートルを12秒48で走り、小学5年の日本一になった男の子が桜井市にいる。ユニークな練習法を武器に今夏、全国大会で優勝した。日本選手初の9秒台を出した桐生祥秀選手にライバル心を燃やし、「将来は自分も9秒台で走りたい」と意気込む。

 桜井市立朝倉小5年の服部蓮太郎君(11)は8月、第33回全国小学生陸上競技交流大会に県代表として出場。5年生男子の部で12秒48を出し、20年ぶりに大会記録を更新した。

 陸上を始めたのは昨年4月。女子サッカーをしている中学生のいとこの部屋にメダルが飾られているのを見て、「メダルがほしい」と思ったのがきっかけだ。それまではピアノと中国の楽器、二胡(にこ)の演奏が好きだった蓮太郎君だが、クラスで足が速い方だったこともあり、100メートル走に挑んだ。

 ログイン前の続き父親の孝志さん(42)は陸上部出身。2カ月間、孝志さんと練習をして県内の大会に参加した。不安があったが、予選を好タイムで通過すると、決勝は1位で走り抜けた。

 この経験が自信になった。孝志さんも桜井アスリートクラブを立ち上げてサポート。週に3~4回、近くの公園や道路で練習する。近所の小学4年の寺田奏生(そう)君(10)と橿原市から通う松村史悠(しゅう)君(9)を含め、3人がメンバーだ。

 練習は長くても1時間半程度。15分で終わるときもある。孝志さんは選手時代、練習に熱を入れてけがに悩まされた経験がある。「練習は短時間集中、そして楽しんでやるのがモットー」と話す。

 バットで野球のボールを打ち、自分でそのボールを全力で走って追うのがダッシュの代わりだ。体のバランスを整えるため、左右でフライングディスクを投げたり、体幹強化にボクシングのミット打ちをしたり。「上り坂を走れば自然と効率の良い走り方になる」と、細かいフォームの指導はほとんどしない。

 「練習というより、遊んでるみたいで楽しい」と蓮太郎君は笑う。陸上を始めて約1年半。身長は10センチ以上伸びて164センチになった。もらったメダルは9個。すべて金色だ。先月下旬の大会では参考記録ながら12秒24の自己ベストが出た。

 将来の夢は100メートル9秒台。桐生選手が出した記録に、「桐生選手は追い風1・8メートルだった。自分は向かい風で9秒台を出します」と力強く言った。