葛城市の加島伊佐夫さん(71)が今月、金剛山(1125メートル)への連続登山3千回を達成した。がんや台風などのピンチを乗り越え、8年2カ月以上1日も休まず登り続けたという。

 会社勤めをしていた2002年、血圧が高くなったのが気になり、月2、3回のペースで登り始めた。その後、がんで胃の3分の2を摘出したが、意欲は衰えなかった。61歳で退職後、山で顔見知りになった男性に「月に何回くらい来ますか?」と聞いたところ、「年に休むのが5、6回」との返事が。これを機に、毎日登ろうと決意した。徐々に休む日を減らし、07年12月から挑戦が始まった。

 高天彦神社の辺りから頂上まで1時間15分ほどかかる。まずは身近な人が持っていた連続67回の記録を目指し、無事達成。「1日休むと、ここまでまた2カ月かかる。もったいないからこのまま続けよう」。それが1年になり2年になり……。今では8年を超えた。

 ログイン前の続きこの間、幾度となく記録が途絶える危機があった。

 5年ほど前には前立腺がんが発覚。医師からは入院の案も示されたが、「山登りがあるので」と通院で治療。連続2千回にあと5日ほどに迫った日には風邪で38・5度の熱が出た。薬を飲み、切り株に何度も座って休憩しながら山頂へ向かった。「病気に負けない気力があった」と振り返る。

 13年9月の台風の時は、あと10分で下山というところで、山の一部が崩落。幸いけがはなかったが、轟音(ごうおん)とともに木々が倒れていく様を間近に見て、恐怖に襲われた。しかし、「記録が続いている」と気持ちを奮い立たせ、大きい音が聞こえたらどちらに逃げようかと常に身構えながら登る日が10日ほど続いた。

 ひざくらいまで雪が積もる日は、仲間と協力し、体力を使う先頭を交代しながら2時間以上かけて登る。14年5月にはひざが痛くなり、時間はかかるが傾斜が緩やかなルートに変更。約半年は杖を両手に持ちながら登る日々だった。

 登山はすでに日課だ。ほとんどの日は早朝から登り始め、午前6時には山頂にいる。登りながら、帰宅後の畑仕事の手順などを考える。ヘッドライトを着けて登る冬は、見上げる星空が美しい。今の時期はちょうど頂上で日の出を迎え、東の山々の稜線(りょうせん)があかね色に染まる景色に見とれる。

 連続3千回の節目となった12日は、「よう、これだけ登れた。元気でおれたのは幸せ」と感じた。どんな悪条件でも、どうしたら登れるのかを考える。それが頭の体操にもなっている。

 難点は泊まりがけで出かけられないことだ。家族から「いつまで続けるの?」と聞かれるが、こう答えることにしている。「目標を持つと縛られる。だから目標は持たないようにしている」。山に登ると、ごはんがうまい。登り続ける理由は、シンプルにもそんなところにあるのだとか。だからやめられない。