運動会は地域社会の最大イベントだ。
特に小学校の運動会は朝早くから場所取りあり、地方からじいちゃん、ばぁちゃん
が駆け付けたり、こども以上に大人が入れ込んでしまっている。
友達のお母さん同士、ニコニコしながら歩いているが
内心はどんな気持ちなのだろう。
運動会の徒競走はどの学年でもメインイベント。
ゴール前でくっちゃべってるお母さん、こわばる気持ちをごまかしてます。
学校側も演出して、そのままスタート地点に集合させりゃいいものを、
グランド半周回らせて「さぁこれから、あなたのお子さん走りますよ!」
なんてやるもんだから、いやが上にも会場のボルテージは最高潮。
やったぜ無料のロックンロールコンサートいただきます。
「おい!タケ、タケ、 いけよー。 負けるな!」
「タケ、いけー。いけー。」
一人のお母さんがこども達の集団に向かって叫び始めた。
すごいボリューム。
金切り声なんてもんじゃない。
気合が乗った北島三郎の“こぶし”と言った方が的を得てる。
スタート地点に向かっているこどもの集団の、どの子のお母さんか探してみるが、こどもは完全に無視しているので親子関係わかりません。
さぁ、いよいよです。
第一グループ・・・。 スタート!
続いて
第二グループ・・・。 スタート!
そのお母さん、沈黙。 何も言葉を発しません。
次々スタートしても、あまりに静かだからスタート地点が遠いので自分の子供を見失ったかと思たよ。
「行けー、行けー、 タケ! タケ! タケー抜けー」
「行けー、タケ、タケー!!! 」
そのグループが走り始めたら、あのお母さんが突然叫び始めた。
自分の子供を見失う訳あるもんか。
スタートからゴールまで、人目もはばからず叫けんでる。
子供の名前と“行けー”、と“抜けー”だけの連発。
何かの想いを子供に乗せて、ゴールに向かって自分も一緒に走ってる。
このお母さんを笑えるか。
眇めている人もいただろうが、自分はそのお母さんを見つめてしまった。
このお母さんだけではない。
朝早くから、おにぎり握って、黙々と握って、 どんな想いを込めるのか。
あるいは日常業務と、淡々とこなすのか。
運動会にはお握りは必需品。
勝負がかかっている時は、やっぱりお握りがよく似合う。