「稲作は1年の内で3月下旬から4月が一番忙しいね」
「収穫の秋ではないんですか」
「稲の赤ちゃんが元気に育つかが大事。元気でなければいいお米はつくれない」
毎年その農家さんが、春になると
毎日、毎日ビニールハウスを覗き込んでいるのを見かけていた。
その農家さんがいよいよ動き始める
3月、稲作スタートを見て見たかった。
「「苗間」という。この中で稲の赤ちゃんを大事に育てるんだ」
「天候が悪かったり、風が強いと心配で眠れない時もあるよ」
苗間の骨組みを五郎兵衛新田で真っ先に組み立ていたその農家さん。
「負けず嫌いだなぁ」
「東京はコロナで大変なんだろ」
「はい。五郎兵衛米を紹介する機会も失いました」
コロナの影響はまだまだ続く。
秋にはこの苗間で育てられた稲の赤ちゃんが大いなる実りで都会の食を支えるのだ。
「今晩から長野はまた雪だから、残念ですが今日帰ります」
「コロナには気を付けろよ」
日帰りになってしまった信州行き。
厚い雪雲が浅間山に向かって走り始めていた。