平成27年11月23日(月)にテレビ朝日系で放送された『Qさま!!3時間SP 現役東大生・京大生が選んだ日本のスゴイ偉人ランキングBEST40から全問出題! 学力王No.1決定戦SP』(ゼネラルプロデューサー樋口圭介)で、坂本龍馬がランキング第1位だった。
選んだ理由が2例紹介された。
「先見性 行動力が凄い」(東大 新領域修士1年)
「日本の近代化をいち早く進めた人」(東大 理学系研究科修士2年)
史実の坂本龍馬の人物や事績を知っていたら出てこない言葉だ。小説・テレビ・萬画等の中に登場する“架空の幕末スーパーアイドル坂本龍馬”の姿に過ぎない。
“龍馬が薩長の和解連携を発案し、彼が仲介して気乗りしない両者を説得し手を結ばせた”という龍馬伝説「薩長連携発案仲介伝説」はウソである。
“龍馬が大政奉還策を発明し、彼の奔走によって実現した”という龍馬伝説「大政奉還発明奔走伝説」はウソである。
“坂本龍馬が夕顔丸船中において『船中八策』を提唱した”という龍馬伝説「『船中八策』提唱伝説」はウソである。
“坂本龍馬が勝海舟の海軍学校で塾頭だった”という龍馬伝説「海軍学校塾頭伝説」はウソである。
“坂本龍馬が作った新政府案に龍馬本人の名が無いことを西郷隆盛が指摘すると、坂本は「役人は嫌だ。世界の海援隊をやりたい」旨の発言をした”という龍馬伝説「世界の海援隊伝説」はウソである。
“龍馬が「亀山社中」を設立した”という龍馬伝説「亀山社中設立伝説」はウソである。
“「亀山社中」は日本初の商社である”という龍馬伝説「亀山社中日本初商社伝説」はウソである。
お気の毒にも歴史的実在の坂本龍馬は、かつて彼を政治的に利用しようとした人物や、今現在彼を金儲けのネタにしている「悪質龍馬業者」連中によるウソと誇張によって塗り固められてしまっている。
“ウソも百回言えば真実になる”という言葉があるらしい。坂本龍馬の「龍馬伝説」はその好見本である。
この番組内では「亀山社中日本初商社伝説」だけが亀山社中跡地写真に「日本初の商社」という説明字幕が付くという形で示されただけで、その他の「龍馬伝説」についてはナレーション・字幕・出演者発言などの如何なる形でも言及されなかった。文教大学付属中学・高等学校教諭 河合敦氏による解説も、第1位であるにも関わらず、一切無かった。これは注目すべきことだ。
ゼネラルプロデューサー樋口圭介氏は、「亀山社中日本初商社伝説」は別として、殆どの「龍馬伝説」を正しくフィクションとして認識していると思われる。
坂本龍馬に関する問題の第1問は
“坂本龍馬がある人物を言い表した言葉 [ ? ]に入る人物は誰?
われ、はじめて[ ? ]を見る。
その人物、茫漠(ぼうばく)としてとらえどころなし。
ちょうど大鐘(おおがね)のごとし。
小さく叩けば小さく鳴り、大きく叩けば大きく鳴る。”
という旨のもの。
正解は「西郷隆盛」。
東大生・京大生へのアンケート結果に忠実に従って“架空の幕末スーパーアイドル坂本龍馬”を第1位にせざるを得なかったゼネラルプロデューサー樋口圭介氏の苦悩と無言の懺悔を、本物の幕末維新の英雄 西郷隆盛を正解とするこの第1問に、私は勝手に感じ取ってしまうのだが、どうだろう。