●iPhone OS 3.0の新機能
新しいMacBookとMacOS X Snow Leopardの話題を取り上げた約50分間の前半の後は、iPhone関連のパート2だ。登壇したスコット・フォーストール副社長は、iPhoneと AppStoreの大成功に謝辞を述べた後、「iPhone OS 3.0」の新機能の紹介を始めた。
最初に取り上げた新機能は、カット/コピー・アンド・ペースト。iPhone上の広範なアプリケーション間で、データのカット/コピー・アンド・ペーストができるようになる。もちろんアンドゥ可能で、開発者向けにAPIも公開される。カット・アンド・ペーストは、 GUIの基本ともいえる機能であり、なかったことが不思議だったわけだが、これで大きな不便が解消する。
もう1つiPhone OS 3.0の利便性を大きく改善しそうなのがSpotlightだ。トップ画面を左から右にスワイプすることで呼び出されるSpotlightで、 iPhone内のデータを横断的に検索することが可能になる。ほかにも横向き画面で利用可能な横型キーボードがサポートされ、これにより従来は縦でしか使えなかったアプリケーションの多くが、横向き、縦向きを問わず利用可能になる。
こうしたiPhoneで完結する新機能に加え、キャリアが提供するサービスと一体となった新機能として、グローバルに提供されそうなのがMMSだ。Multimedia Messaging Seviceの略であるMMSは、写真やビデオ、音など、SMSではやりとりすることのできなかった様々なデータを、他の端末の電話番号宛て、あるいは電子メールアドレス宛てに送信できるサービスを指す。
わが国でiPhoneを展開しているソフトバンクのS!メールもこのMMSである。従来のiPhoneは、 MMSをサポートしていなかったため、iPhoneユーザーはS!メールのアカウントを取得することができなかった。が、iPhone OS 3.0がリリースされた後、どのような形でiPhoneユーザーにS!メールアカウントの提供を行なうのか注目される。iPhoneでS!メールがサポートされれば、iPhone以外のソフトバンク端末からの機種変更も容易になるだろう。
このMMSについて、フォーストール副社長が示したサービス提供キャリアに、ソフトバンクのロゴがしっかり含まれていたが、お膝元のAT&Tのロゴが無い。AT&Tも夏遅くごろには対応する予定であるとのことだったが、会場にはちょっと失望感が広がった。
Appleのサービスとの連携という点では、iTunes Music Storeとの連携が強化され、iPhoneだけでムービーをレンタルしたり(わが国では現在このサービスは提供されていない)、ゲームの続編(追加レベル等)を購入することもできる。ゲーム向きの機能としては、2台のiPhoneを無線LAN(adhoc)やBluetoothで接続することも可能だ。全体で100を超える新機能をサポートしたiPhone OS 3.0は、既存のiPhoneユーザーには無償で、iPod touchユーザーには9.95ドルで、6月17日から提供される。
●待望の新形「iPhone 3G S」
フォーストール副社長によるiPhone OS 3.0の紹介とサードパーティによるiPhoneアプリの紹介が約50分間続いた後、再びシラー副社長が登壇した。今度は新しいiPhone、「iPhone 3G S」のお披露目だ。iPhone 3G SのSは、Speedを示しており、最大で2倍の高速化が図られている。が、単に速度の向上だけでなく、改善されたカメラ、ボイスコントロール、地図アプリケーションと一体化されたデジタルコンパスといったハードウェアの強化を含む。また、バッテリも強化され、ビデオやオーディオの再生時間が延長されている(3Gによる通話時間は延長されていない)。
iPhone 3G Sが搭載する新しいカメラは、300万画素で、オートフォーカス、マクロ撮影機能を備えたもの。オートフォーカスは画面上のピントを合わせたい場所をタップするだけで、AEやオートホワイトバランス(この2点も改善されている)もフォーカス点に追随する。またモノラル音声付きの動画撮影にも対応しており、 VGA画素で最大30fps(フレームレートは周囲の明るさ等、条件に依存する)のH.264動画を撮影できる。iPhone 3G Sが簡単なカット編集機能を内蔵しており、iPhoneだけで動画共有サイトへのアップロードが可能だ。
ボイスコントロールは、本体内蔵あるいはヘッドセット内蔵のマイクでiPhoneのコントロールを行なうもの。電話をかける、再生中の曲のタイトルを読み上げさせるなど、主要な機能を音声により指示することができる。日本語にも対応しているが、音声処理を iPhone側で行なうため、利用できるのは処理性能の高いiPhone 3G Sのみとなる。同様にコンパス機能を利用できるのもハードウェアでデジタルコンパスを内蔵するiPhone 3G Sだけだ。
このiPhone 3G Sの発売時期は、米国とヨーロッパの一部が6月19日、日本やオーストラリアは6月26日となっている。その後も7月、8月と段階的に提供国が追加されていく。米国での価格は16GBモデルが199ドル、新しく追加される32GBモデルが299ドルだ。国内の販売価格も発表されているので、関連記事をごらんいただきたい。