ある古い翻訳書を読んでいたところ、フランスでは、玉ねぎが、いろ
いろな病気の特効薬として用いられると書いてある。まず第一に、玉ねぎは硫黄分が濃い
ので、これが意志を強くする。それから頭を明晰にする。さらに揮発分その他特殊な物質
が微量だが含まれていて、それが癌を防ぐ。また、血圧を下げる成分もある、驚くなかれ、
二十何項目も効能が書いてある。これはどうしても試さざるを得ない。たしかに、昔から
いわれていることだが、玉ねぎを二つに切ってそれを枕元に置いておくと、精神が安定し
て、神経の高ぶりを抑え、眠れるという。そういう効果は揮発分の中にあるらしい。
いよいよ試みることにした。
まず、玉ねぎを大根おろしでおろす。一個分。それを布に包んで絞る。すると、中くら
いの玉ねぎ一個で、普通のコップ八分目ぐらいのジュースがとれる。案外に量があるもの
である。
これに、強烈な味を緩和しようとして、リンゴなどを入れると却って駄目で、味がおか
しくなってとても飲めない。だから、すった玉ねぎの汁をそのままキュー″と飲んでしま
うのがよい