GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

ご飯とライスの違い

2017-01-30 01:55:03 | FOOD&DRINK
何気なしにネットニュースやコラムを読んでてふと気になる記事があった。
ご飯とライスの違い。

某FM曲のサイトのコラム。書いてあることを要約すると、
【洋食屋さんで「ご飯」と呼ぶのは合わないから「ライス」と呼んでるとか、容器が茶碗か皿かが違うだけとか。つまり「ご飯とライスは同じものだけど、お皿と名前だけで変えてる」と思ってないか?】とあり、続けて【しかし、実は調理法が違うのです】と。

ここまで読んで嫌な予感したのよ。絶対勘違いした半可通のことをこの後書いてるなと。
案の定その続きには、

【ご飯は米を研ぎ、炊飯器や土鍋で水と一緒に炊き上げ、水がなくなったら完成。粘り気がある食感に仕上がる。
ライスは水を入れて炊くまでは一緒。ですが、この後途中で一度水を捨てます。その状態で弱火で暫く蒸らして出来上がったのがライス。パラパラした軽い仕上がりになる。
だから定食屋ではもっちりと和食に合うご飯、洋食屋ではパラパラした洋食に合うライスなのです。】

多分この人はどこかの老舗の定食屋のオーナーさんに聞いたか、何かのグルメ本でこの知識を入れてしまったんだろうな。
あながち間違いとは言えないのだが、ライスとご飯という呼び方の違いについての論理、これは全く違う。

この人の理論なら、ライスとして提供してるなら町の洋食屋やレストランは米を、すべて途中で水を捨てる炊き方をしてなければいけない。悪いが、ほとんどそんな店はない。だいたいハンバーグやエビフライにはこの炊き方の米は合わない。そこらへんの洋食屋のライスは日本のコシヒカリだ。パラパラなどしていない。
ラーメン屋さんだってライスとして出してる店はあるが、まずそんな炊き方をしていないし皿に乗って出てこない。

この人が書いてるのは日本の米(短粒種)の炊き方と、タイ米などの長粒種の炊き方のことであって、ライスとご飯との呼び方の違いではない。
確かにタイ米などは日本の炊飯器や土鍋で炊く、従来の炊き方では美味しくならない。書いてあるように途中で一度水を捨てて蒸らして作ると美味しい。
タイ米やカリフォルニア米はまずいと思ってる方は、この炊き方で炊いてみてくれ。うまいよ。ただしこの炊き方で日本の米を炊くと「?」って味になるから注意ね。

そして長粒種の米は、和食の定番のおかずには合わないが、カレーには長粒種の米の方が合う。でもそれも、インドやスリランカ、タイなどのシャバシャバのカレーね。日本式の小麦粉や玉ねぎを使ったどろどろのカレーなら、日本の米の方が合う。

この人が勘違いしてる原因は、日本の米を洋食に合わせて改良したのがコシヒカリということ。アジア料理にはパサパサした米が合うが、洋食にはもっちりした米の方が合う。洋食にはパサパサ=ライスってちょっと無理がねぇか?
コシヒカリが今や主流になってるのは、おかずがフライとか肉とか、なんとかソースとかかかった料理、こってりした味付けのものが増えたからだろう?。あっさりとした刺身や煮魚、煮付けや和風だしのものはササニシキお方が合う。ただそれだけのことだ。

どうしてこんなことを得意げにこの人は書いたのかわからないが、結構巷にも、こんな勘違い薀蓄を平気で得意げに喋る人はいる。
薀蓄満載のグルメ漫画や、テレビでも小ネタとりいれたグルメ番組が多すぎるのかな。その中で間違った情報や風説が流れ、それを鵜呑みで信じちゃうのかもしれない。

カレーライスとライスカレーの違い。
これを「カレーライスは一つの皿にライスもカレーも載せてあるやつで、ライスカレーは別々に出てくるやつ」なんて得意げに答える人がいたら、胡散臭いと思ってくれ。本当は違いなどない。明治時代にいろんな土地や店で、好き勝手に呼んでただけだ。
多分こんなウンチクを得意げに語る奴は、未だにライスをフォークの背に乗せて食べてたり、パスタをスプーンを使ってくるくるして食べてるような気がする。

おはぎとぼた餅の違いは?ってのも間違いが多い。
多くの人が「おはぎは秋の花である萩を真似て作ったから秋に食べるもの。ぼた餅は牡丹の花を真似て作ったから春に食べるもの。」と思ってる。
はい、これは間違いです。
萩は別に秋の草ではありませんし、牡丹も春の花ではありません。(花札なら萩は7月、牡丹は6月です)

ぼた餅はもともと「持ち飯(もちいひ)」と呼ばれてたのがなまったとか、ボタ米(クズ米)で作ったからとか言われてる。おはぎは小豆の色が萩の色に似てるからが由縁らしい。
どちらにしても文献で「これからはこの食べ物はこういう理由でこう呼ぶこと」なんて残ってるわけじゃないが、こちらが正解。(とされている)

焼き飯とチャーハンとピラフ。
料理学では違いがあるんだろうが巷では、フライパンで作ると焼き飯、中華鍋で火にくぐらすように作るとチャーハン、バターで作るとピラフなんて思ってる。正確にはピラフは研がない生米から作るのだが、そんなピラフは喫茶店のランチメニューで出てくることはない。焼き飯とチャーハンの違いも店によってバラバラだ。オムチャーハンなんてオム(オムレツ/フランス語※)+チャーハン(炒飯/中国語)の合成語だし。(※ 英語で「omelet」語源はフランス語の「omelette」)

アイスクリームとアイスクリン、シャーベットとジェラートの違いならまだわかる。カフェオレとカフェラテの違いや、ミルクティとロイヤルミルクティの違いもわかる。イタリアとフランスとか、西洋と日本での呼称の違いもあるが、厳密には作り方や含有物が違う。
ただ日本って結構いい加減なのよね。

パンケーキとホットケーキ。
お汁粉とぜんざい。
冷麺と冷やし中華。
冷麦とそうめんとにゅうめん。
雑炊とおじや。
しらすといりことちりめんじゃこ。
中華そばとラーメン。
おにぎりとおむすび。
ざるともり。
炭酸水とソーダ。
寿司と鮨。
どら焼きと三笠焼き。
今川焼きと回転焼きと太閤焼きと小判焼き。
ソーセージとウィンナー。

つい知っちゃうと「違いはこれなのだ!」って、覚えたての薀蓄を語りたくなる気持ちはわからなくもないがね。でも、それデマじゃない?
いなり寿司の東西の違いを語るとか、広島お好み焼きと大阪お好み焼きの違いを語るのならまだしも、食べ物のうんちくは結構危険よ。
しかも興味のある人ならともかく、聞かれてもいないのにわざわざ語っても、「へ〜そうなんだぁ」って右から左。しまいには「だからどうした」「それがどうした」「うざいやつ」ってどんどん離れていかれちゃうからご注意を。

食べ物屋さんや飲み屋さんでならともかく、ネットなんかは残るからね。もっと注意が必要ね。