GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

ONE OK ROCK 18祭 曲も合唱も良かったのだが

2017-01-14 16:00:35 | MUSIC/TV/MOVIE
地上波には今まで出なかったONE OK ROCKが、ついに登場!しかもNHKの番組。
『ONE OK ROCK 18祭(フェス)-1000人の奇跡 We are-』と名打たれたこの番組は、“18歳世代”とONE OK ROCKが一つのステージを作り上げていくといった内容の企画番組。

この番組を見て、すごく違和感があったのよね。

番組は18歳世代とONE OK ROCKが、「一生記憶に残る熱量の高い体験をともに紡ぎたい」というのがテーマ。
今回の企画が立ち上がった時に、18歳世代の参加をNHKのホームページで呼びかけてたのも見た。面白いことやろうとしてるなぁと、感心した記憶がある。

この企画に参加したい人は「参加したい思いを動画で表現」し番組に送る。その動画を見てONE OK ROCKのメンバーが、思いを込めて楽曲を制作する。
その曲を、日本全国から応募された動画の中から選ばれた1000人の18歳世代と、ONE OK ROCKが1回限り&1曲だけのステージで披露する。
ね、面白そうでしょ。

生まれた曲が「We are」だ。ワンピースの主題歌みたいなタイトルだが、全くそちらとは関係ない。ワンオクらしいエモーショナルなロックのかっこいい曲だ。1000人が歌えるようにコーラスアレンジも専門家が担当。昨年11月13日に行われた収録で、1000人+ワンオク4人で披露されたこの曲は、とても素晴らしい仕上がりだった。

これのどこに違和感が?って。
曲はいいのよ。必死に練習する若者たちの映像もいいのよ。
でもね、肝心の構成がダメなのよ。

テーマがブレちゃってるの。

ゆとり教育だったのに今はそれを否定されるわ、選挙権がいきなり与えられるわ、それでも未成年の扱い。大人と子どもの岐路。それが18歳世代。
これからの進路や仕事のこと。将来への不安。目標や夢。これからの行動。全てが不安で悩んだりする。それが今も昔も18歳世代だろう。
そんな彼女・彼らが、憧れのアーティストと一つの作品を作り上げることで、それぞれが何かを得られるはずだ。それがメインテーマ。

でもね、これでは「一緒に作り上げた」とは言えないのよ。
そりゃ、曲は応募動画をワンオクのメンバーが見て作ったし、それをみんなで同じステージで歌ったんだから、「一緒に作り上げた」は嘘じゃない。でもそれは「we are」という曲の1000人コーラスバージョンを一緒に作っただけなのよ。

学生時代は何気ないきっかけで書道に出会った男の子。そしてその動画を見て自分も書道で応募動画を出した女の子。
同世代二人しかいない過疎の村で和太鼓叩いてた二人。同じく和太鼓の動画で応募してきた女の子。
その5人が当日、ワンオク登場前にパフォーマンスを披露する。和太鼓の旋律に合わせ、でっかい紙にでかい筆で“18祭”と書き上げる。
そしてワンオク登場。そして1000人と「we are」を合唱。

これなら「1万人の第九」と変わらないのよ。
一緒のステージで歌えたとかで思い出作りができたねってレベルになっちゃったのよ。
なぜ、書道のパフォーマンスや、和太鼓をワンオクの演奏、つまり楽曲演奏・歌唱中に入れなかったのか。
応募してきた動画の中には、三味線やダンス、ヴォイパやグラフィックなどもあったのに、なぜそれを一緒に構成しないのか。

これじゃぁ18歳である必要もないし、歌が歌えなければダメなのなら、初めから歌唱動画で応募させればいい。

現に学生時代サッカーをしてたが、骨折してしまい引退までもう試合に出れなかった女の子が参加してた。地域ブロックで練習してる際にこの子は、周りの人と馴染めずポツンとしてた。彼女がその後誰かと仲良くなったかどうかは不明だ。サッカーとコーラス。相反するものだな。
運動部、体育会系だから誰とでもすぐ仲良くできるかとか思ってないか?サッカーW杯の応援とかで、見知らぬ人と肩を組める奴ら(主に体育会系)が騒いでるから勘違いしてるようだが、音楽、しかもロックってどちらかというと文科系だぞ。

しかもみんなワンオクファンばかりだから、すぐ仲良くなれるだろうって言われてもな。それならコンサート会場では、ライブ後は見知らぬファン同士の集いやサークルが出来上がるぞ。横のつながりが結構早いジャニーズファンでさえ、そんなのは稀だぞ。
言い方変えれば「私(僕)が一番ファンだ」と思ってる。それがファンってやつだ。中にはコアなファンもいりゃ、ニワカだっている。

しかも今の18歳世代。コミュ障害なやつはいっぱいいる。
俺らのガキの頃のように、近所の空き地で遊んでて知らない奴が「僕も入れてぇー」『いいよ〜』ってのが当たり前な時代とは違う。スマホやネットでのコミュニケーションで育った世代なんだもの、協調性が無いとか、個の世代と言われても仕方が無いよ。

それなのに「君たちはそれぞれ一つ一つの花」とか言って誤魔化されてきた。個性が大事だ!他人と違っていいのさ!なんてね。はっきり言ってこれ、なんの才能も無い人を意味なく励ます言葉でしょ。自意識過剰や、変に自信つけられてもな。根拠なく「自分はできる系」って思わなくては大変なのかもしれない。

そんな18歳の中から、どんな選考基準で選んだのかわからないが、選ばれた1000人は何らかの光るものがあったんでしょう。熱い思いが出せられる人だったんでしょう。その1000人をただワンオクの演奏に合わせて歌わすだけで満足してるNHK。それじゃぁ応募動画で出した個性はどこへ行ったんだ?
高校野球やオリンピックと変わらないインタビューや、感動を演出しようと魂胆丸見えの映像。中には「育ててくれた母のために応募しました」なんてのもあった。それを聞いて涙ぐむ母の映像。こんなのが見たいのか?これが今の18歳世代だと言いたいのか。

18歳世代の心の不安など、18歳世代以上の人は全部知ってるよ。誰もが通ってきた道なんだから。
ガキの頃から一つの事に打ち込んで、今も続けてるやつ、挫折したやつ。
18の頃には何もなく、大人になってから道を見つけられた人も、ただ単に何となく生きてきてしまってる人もいるだろう。
そんな人たちへのメッセージなのか、今の18歳世代へのメッセージなのか?

今回の中でも、世間や学校や社会に何か言いたい人もいただろう。思い出作りのために参加した人もいるだろう。面白そうだからと参加した人もいるだろう。「ワンオクと一緒に」の言葉に惹かれて応募した人もいるだろう。そんな、せっかくやる気満々の若者1000人集めたのに、それをまるで大道具やパーツのように使う、全く主旨のブレた分からん番組に仕上がってたのが残念。
しかもこの番組のために作ったはずのワンオクの「We are」は2017年のNHKサッカーテーマ曲になるんだとさ。何じゃそりゃ。使い回しか?予算取るための苦肉の策か?どちらにしてもなんか嫌。

さすが全国で40%の人が観る紅白歌合戦で、毎回くだらない演出をして、毎回顰蹙をかっても懲りないNHKだな。
「どうですか、NHKらしくない番組を作りましたよ」って自己満足なんだろうな。
ドキュメンタリーには下手な演出はいらない。ドキュメンタリーは定評あるNHKはそんなことは百も承知のはずだが。

ONE OK ROCKの楽曲も良かったし、1000人のコーラスとの合作もいい出来栄えだったから、いろんな意味で残念。