朱禪-brog

自己観照や心象風景、読書の感想
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本 感想 洋船建造 吉村昭

2022-03-11 07:01:07 | 本 感想
洋戦建造

大黒屋光太夫は日本の外洋沖に遭難し
南から北に流れる黒潮に乗り漂流する。

地球の自転作用により壮大な幅と流れ
となる黒潮の行先は
北方ロシアのアリューシャン列島
カムチャツカ半島となり
アメリカ大陸を超えて地球をひと回り
する。
光太夫は
様々な艱難の末ペテルスブルクにて
女帝エテカリーナ二世に謁見したという。
光太夫の切々とした帰国の願いに
女帝は応じた。
これは女帝が日本との交流の時期が
到来したからと判断したものだと
作家吉村昭氏は言う。

女帝の命を受けた
ロシアプチャーチン使節は
軍艦に乗り日露和親条約の交渉を
開始する。

が、時の安政の大地震が発生し
ロシアディアナ号は転覆沈没する。

日本方 勘定奉行川路聖謨
(かわぢとしあきら)
ロシア方プチャーチン
双方の指揮官に漢気をみる。

内産物、海産物に恵まれた故に
外からの輸入に頼る必要のない
当時の日本は内国廻船を建造する
船大工のみであった。

そして、国交はない。

礼節と万国法にもとずき
川路聖謨は軍艦を新たに建造する
意志を示す。

当時、アメリカと日米通商条約を
締結したとはいえ、鎖国状態であった
日本はオランダ語でしか意思疎通が
できない。

内国廻船の製造技術しかもたない
船大工であるが、船を造る技術は
相当なもので、苦労の末
初の洋船建造を成し遂げる。

完璧に蘇ったディアナ号は
故国に帰国し
その後、礼節には礼節ともいえる
絢爛豪華な装飾を施した
ディアナ号で日本に凱旋し
誠を日本に伝える。

伊豆の戸田浦という港を訪れたい
と思う歴史の影絵と呼べる作品
だと思う 。