朱禪-brog

自己観照や心象風景、読書の感想
を書いてます。たまに映画も。

王の挽歌

2023-07-02 22:38:30 | 本 感想
遠藤周作先生は
多数の顔もつ方で
歴史小説家の顔も、もっておられた

時代は、太閤が大阪城を築城し
天下人となった
室町の戦国時代

小説の主人公は
北九州六カ国の王「大友宗麟」

わたしは、この本を三読しましたが
消化不良というか
腑に落ちない感覚があり
なぜだろうという思いが、終日
消えずに、なかなか、この小説の
感想を書けずにいました

豊後の王の内面の葛藤心理を
遠藤周作さんは、描いていきます
ひと言で云うと
この王は、「気弱き者」なのです

武辺の統領の血筋に生まれたが故に
また、戦国という時代に生まれた故に
内乱や謀叛、叛乱、脅威があり
そこには、善のなかにも悪があり
悪のなかにも善があると
宗麟は云うのですが
懊悩はきこえるものの、やはり
腑に落ちないのがあったのです

ですが、すこしわかってきたように
思います
もちろん、わたしの個人的な
感覚ですが…

それは
強烈な悪役ともいえる
存在を、遠藤周作さんは
わざと省いたのではなかろうか?

信長や秀吉を悪役にする訳では
ないですが
「すべてなで斬りにせよ」
「すべてを鉄と火にゆだねよ」

前者は信長
後者は秀吉が云ったとされる言葉
です

この小説では、そのような
言葉はいっさい出てきません

宗麟がほんとうに求めていたのは
なにか?
それを、彼に痕跡を残す
登場人物を通して
じわりじわりと、外濠を埋めて
いくように描く作品だと思います