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航空自衛隊F-2戦闘機がインド共同演習参加へ#インドの戦略的変化#2024年8月28日#長尾 賢#米ハドソン研究所

2024-08-28 15:38:48 | 連絡
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長尾 賢 (ながお・さとる)Satoru Nagao

米ハドソン研究所 研究員
学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。
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インドで8月29日から行われる多国間共同演習「タラン・シャクティ24」に、航空自衛隊はF-2戦闘機3機が参加する。
航空自衛隊の戦闘機がインドに展開するのは初めてである 
インドが昨年この演習実施を発表して以降、この演習の意義に関し、Wedge ONLINE上で、何度か書いてきたが、この演習は、単に航空自衛隊の戦闘機がインドに飛んだという以上の大きな戦略的意義がある。
インドの戦略の変化を示す重要な点が隠れているからだ。 
■QUAD+NATO諸国の演習をインドが主催!
まず、今回の多国間演習の参加国だ。
今後も変化があるかもしれないが、現時点で軍用機を参加させることが確定しているのは、日米豪印の協力枠組み「QUAD(クアッド)」全部と



、北大西洋条約機構(NATO)諸国である英仏独ギリシャ、


そして、シンガポールとアラブ首長国連邦(UAE)である。
そのほかに、多くの国からオブザーバーが参加する予定ではあるものの、中国やパキスタンだけでなく、ロシアからも軍用機は参加しない。

つまり西側諸国と一部グローバルサウス諸国が主体となる空軍の大規模演習である。 
インドは過去、米国が主催する多国間空軍演習「レッド・フラッグ」や、豪州が主催する「ピッチ・ブラック」に参加してきたから、それらの演習を参考に、自らが主催する、多国間空軍演習を企画したものと思われる。
ただ、「レッド・フラッグ」も「ピッチ・ブラック」も、練度の向上だけでなく、同盟国・同志国間の友好関係と連携を強化し、その連携を世界に見せつける効果を狙ったものでもある。
見せつける相手は、もちろん呼ばれていない国々に対してである。
だから、インドが、QUADとNATO諸国を中心とする大規模共同演習を企画すること自体、これまでの方針より一歩踏み込んだものといえる。
特にインドが念頭に置いている、中国は、この演習を無視できないだろう。 
■避けてきた陸上、航空の演習を実施することにした
中国が特に気にする可能性があるのは、これまでのインドの姿勢と違うからだ。
インドは、QUADとの連携が中国を刺激しすぎることを懸念してきた。
QUAD4カ国の協力が公の発言として提唱されたのは2007年の安倍晋三首相(当時)のインド国会での演説以降であるが、そのころの中国の軍事力の配置は、主に太平洋側にあり、インドが刺激しすぎなければ、インドを攻撃するように見えなかったからだ。
しかし、その後、情勢が変わってきた。
2010年代になると、中国のインド洋進出が活発化するだけでなく、印中国境においても侵入事件が急速に増えてきた。
11年213回だった侵入事件数は、19年には663回になっていく。
インドにとってQUADとの連携はより重要になっていった。
 それでも、インドの姿勢は慎重だった。
もし中国が本気になってQUADをつぶしにかかるとしたら、最初にインドを攻撃する可能性がある。
 中国が日米豪を攻撃する場合、海を渡らなければならないが
インドは陸上から攻撃できる。
それに日米豪は、条約で固く結ばれた同盟国で、簡単に切り崩せない。
でもインドは、日米豪とそれほど強く結ばれていない。 
インドに対して、軍事的な圧力をかけ、日米豪と手を結んでも特にならないぞ、というメッセージを送れば、日米豪とインドを切り離すことができると、中国が信じてしまうかもしれない。
だから、インドとしては、日米豪との軍事的な連携を深める際は、それがあまり目立たないように、2国間ベースでやるのがいいし、もしやるなら、印中国境を刺激しないように、海洋に限定する方がいい。
 そこでインドは、米印の海軍共同演習「マラバール」を徐々に変化させ、途中で日本を正式メンバーにし、何年か間を空けてから、次に豪州を加えてきた。そして、陸上や航空のような、印中国境に直接かかわりそうな共同演習をQUADすべて含む形で実施することは、避けてきたのである。
 ところが、中国はそんなインドの慎重な行動を尊重しなかった。
そして、20年、大量の釘が出た鉄の棒や、青龍刀などを大量に調達、装備し、インドに大規模侵入、インドを襲撃したのである。
 中国側の死傷者はよくわからないが、インド側では死者20人、負傷者76人、つまり、合計で死傷者100人近く出す事件となった。
それ以降、現在まで、印中両軍は国境地域でハイテク装備多数を大規模展開し、にらみ合ったままだ。
 このような環境において、インドの慎重さに変化がみられた。
22年には、印中国境から100キロメートル(㎞)以内で、2度、米国と陸上の共同演習を実施した。
そして、23年春には、米国のB1爆撃機を中国全土が爆撃できる飛行場に招き、空軍共同演習を実施した(詳しくは「印中国境の米印軍共同演習に日本が参加する意義」)。
検索引用サイト:https://wedge.ismedia.jp/articles/-/30085
そして、その延長線上で、今回の「タラン・シャクティ」も企画した。
 この演習は、大規模すぎて1年遅れたものの、24年、QUAD全部と、NATO諸国の空軍機まで加えた形で、実施することになったのである。
インドとしては、印中国境を念頭に、中国に対し、強いメッセージを送りたいのだ。 
■日本にとっての意味
インドがやりたいことはわかるが、日本にとってはどうだろうか。
インドがQUADやNATO諸国と協力を深め、印中国境で、中国に圧力をかけてくれることは、中国が太平洋側に展開する戦力や予算を引き付けてくれることを意味する。その点で、日本としては歓迎していい状況がある。 
ただ、それでなく、日本の戦略として、今回の展開は意義がある。
日本もまた、海から、空や陸へと、展開できる戦力を増やす必要があるからだ。 
海上自衛隊の努力があり、日本とインドは、深い関係を築き始めている。
すでに米国海軍の艦艇はインドで整備を行っているが、日本の海上自衛隊の艦艇も、今後、インドで整備する方向で検討されている。
そうなれば、ソマリアの海賊対策など、インド洋に展開する日本の艦艇はそのままインド洋に常駐し、乗員だけ飛行機で入れ替えて展開することも可能になるかもしれない。
日本の海上自衛隊の任務が増える中で、このような日印協力は、艦艇と乗員の効率的な運用につながっていくだろう。
しかし、艦艇だけでは、戦力不足である。
中国からみれば、航空機の支援のない艦艇は、あまり強くないようにみえる。
そうなれば、中国は、日本のことを甘く見て、インドにしたように(最近ではフィリピンに対してもやっているが)、鉄の棒や青龍刀、斧などを振りかざして、死傷者を出し、脅そうとするかもしれない。
中国は、相手が強く見えなければ、どんどん、行動をエスカレートさせてくるだろう。
だから、艦艇だけではなく航空機も連携させ、中国に対して、甘く見られないようにしなければ、中国の行動は抑止できないのである。  
その観点から、日本が海上自衛隊だけでなく、航空自衛隊の世界展開を進めていることは、意義がある。
今年、航空自衛隊は、これまで同盟国だった米国だけでなく、豪州で「ピッチ・ブラック」に参加し、インドで「タラン・シャクティ」に参加した。
22年にはフィリピンにも展開したことがある。
同盟国・同志国との連携を、海洋から航空に拡大しつつあり、その能力を世界に証明しつつある。
NATO諸国が日本に来ているから、日本はNATO諸国への返礼として、行くことになるだろう。
さらに、海上自衛隊、航空自衛隊の展開は、陸上自衛隊の展開にもつながりつつある。
 8月20日の日印外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)の後、日印では陸海空統合の共同演習が計画され始める方向性にある。
すでに米印間では実施されているものでもあるから、日印で実施できるはずだ。
いずれ、最終的に、QUADで陸海空軍の統合共同演習を実施する方向性になっていくことが考えられる。
 このような高い展開能力を、同盟国・同志国と連携して実施できるからこそ、中国の行動をインド太平洋全域で抑止し、平和を維持することができる。その重要な一歩として、今回の演習参加は意義があるだろう。 
検索引用サイト



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