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山下一仁(やました・かずひと)1955年2月、岡山県生まれ。
77年東大法卒、農林省入省。
82年5月&12月ミシガン大学応用経済学修士、行政学修士。
2005年12月東大農学博士。
08年3月農水省退官、経済産業研究所上席研究員。
10年4月キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(専門は貿易政策、食料・農業政策)。
https://www.jiji.com/jc/v8?id=20230215yamashita01
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1年前のロシアによるウクライナ侵攻により、世界の小麦輸出の3割を占めるロシアとウクライナからの輸出が減少した。
これにより、小麦など穀物価格は上昇し、中東やアフリカの所得の低い国で大きな影響が出た。日本の食料安全保障は有事に耐え得るのか。軍事紛争から見えた現状と、問題点、対策についてまとめた。(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員 山下一仁)
〇二つの食料危機
食料危機には二つのケースがある。
このうち一つは、①価格が上がり買えなくなって飢餓が生じるケースだ。
穀物国際価格指数と国内CPI(消費者物価指数)の推移
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下記URL
参照
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ウクライナ侵攻を契機に小麦価格が高騰し、アフリカなどで食料危機が生じている。
物価変動を除いた穀物の実質価格は、過去1世紀低下傾向にある。名目価格では史上最高値と言われる現在の穀物価格も、実質価格では1960年代の平均価格と同程度である。
1961年に比べ人口は2.5倍だが、米、小麦とも生産量は技術進歩によって3.4~3.5倍となり、供給が需要を上回っている。
しかし、突発的な理由で需給のバランスが崩れ、価格が急騰するときがある。途上国の人たちは、支出額の半分以上を食料費に充てている場合が多い。穀物価格が倍以上になると、パンや米を買うことができなくなり、飢餓が生じる。
日本でこの種の危機が起きることはない。
2008年、穀物価格が3倍程度に高騰したときでも、日本の食料品の消費者物価指数は2.6%しか上昇しなかった。
日本の消費者が飲食料品に支払っているお金のうち87%は、加工・流通・外食への支出だ。
輸入農水産物に払っているお金は2%に過ぎず、その一部の輸入穀物の価格が3倍に跳ね上がっても、全体の支出に影響することはほとんどない。
小麦輸入の上位3カ国、インドネシア、トルコ、エジプトに、日本が買い負けることはないのだ。
〇深刻なシーレーン破壊
食料危機のもう一つのケースは、➁食料が届かなくて飢餓が生じるという危機である。
日本が懸念すべきはこれで、例えば台湾有事のように日本周辺で軍事的な紛争が生じ、シーレーン(海上交通路)が破壊されて輸入が途絶すると、深刻な食料危機が起きる。
小麦も牛肉もチーズも輸入できない。
輸入穀物に依存する畜産はほぼ壊滅する。
生き延びるために、最低限のカロリーを摂取できる食生活、つまり米とイモ主体の終戦後の食生活に戻るしかない。
当時の米の一人1日当たりの配給は2合3勺だった。
今は1日にこれだけの米を食べる人はいない。
肉、牛乳、卵などの副食がほとんどなく、米しか食べるものがなかったので、現代よりも量が多いとはいえ当時の国民は飢えた。
現在、1億2550万人に2合3勺の米を配給するためには、玄米で1600万トンの供給が必要となる。
しかし、農水省とJA農協は、減反で米生産を減少させてきた。
米価を高く維持し零細で非効率な兼業農家を滞留させることで、その兼業(サラリーマン)収入をJAバンクの預金として活用できるからである。
2022年の生産量は、ピーク時(1967年1445万トン)の半分以下の670万トンである。
今、輸入が途絶すれば、国民の半分以上が餓死する。
これが、食料自給率向上や食料安全保障を叫ぶ農水産やJA農協が行っている政策がもたらす悲惨な結末だ。
コメ生産量推移(1961年=100)
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下記URL
参照
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1960年から比べて、世界の米生産は3.5倍に増加したのに、日本は4割の減少である。
しかも、補助金を出してまで主食の米の生産を減少させてきた。
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・昭和の宇宙に咲くCS「さくら」の開発から学んだこと 「過疎地域における3.11地震・津波浸水被害復旧と衛星通信への期待」
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米もみ収量(千万トン)順位は 1.中国19、2.印度14、3.イン ドネシア6.0、4.バングラデシュ 4.6、5.ベトナム3.8、 6.ミュン マー3.05、7.タイ3.04、8.フィリ ピン1.6、9.ブラジル1.2、10.日 本1.1で、日本は米の主要生産国です。
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Space Japan Review, No. 74, June / July 2011
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〇コメ輸出国となれば
農水省は今回のウクライナ危機に便乗し、小麦や大豆の国内生産を拡大するとしている。
しかし、2300億円の財政負担により生産を振興しているが、130万トンの麦・大豆しか生産できていない。
一方、同じ2300億円を拠出するなら、計700万トンほどの小麦を輸入・備蓄ですることができる。
危機が起きたとき、130万トンと700万トンの差は大きな違いとなる。
米農業を農水省やJA農協から救う方法はある。
減反を止めてカリフォルニア米と同程度の面積当たりの収穫量(単収)の米を全水田に作付けすれば、1700万トン生産できるのだ。
平時は700万トンを国内で消費し、1000万トンを輸出に回せばよい。
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昭和の宇宙に咲くCS「さくら」の開発から学んだこと
過疎地域におけるデジタルデバイド解消の切り札として期待される衛星通信 その2
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過疎地域におけるデジタルデバイド解消の切り札として期待される衛星通信 その2
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日本酒メーカーの国内や海外における消費者への直接販売
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そして、危機のときには輸出していた米を食べるのだ。
平時の米輸出は、危機時のための米備蓄の役割を果たす。
しかも、倉庫料や金利などの負担を必要としない無償の備蓄である。
自由貿易が食料安全保障の確保につながるのだ。
米の貿易量は、小麦2億トンに対し5000万トンと4分の1に過ぎない。
また、世界全体の生産に占める輸出の割合は、小麦26%、大豆43%に対し、米は6%と極めて低い。
わずかな不作であっても輸出量は大きく減少する。
さらに、3大輸出国のインド、タイ、ベトナムは途上国であり、国際価格が高騰すると、国内から米が輸出され、国内価格も高騰して飢餓が生じるので、輸出を制限しがちである。
つまり米の国際市場は極めて不安定なのだ。
日本が1000万トンを輸出すれば、世界の貿易量は2割上昇し、日本はインドに次ぐ世界第2位の米輸出国になる。
生産量に対する輸出比率が高いので、不作でも輸出はインドのように減少しない。
信頼できる安定した輸出国である。
世界の食料安全保障の最も弱い部分である米貿易に対して、日本は大きな貢献を行える。
日本の食料安全保障が世界の食料安全保障となるのだ。
減反政策は、国民が納税者として補助金を負担しつつ、米価上昇を消費者としても負担するという異常な政策だ。
減反が廃止されれば3500億円の補助金は不要になり、消費者は米価下落の恩恵も受ける。
価格低下の影響を受ける主業農家に補償するとしてもその費用は1500億円で済む。
〇なぜキーウを落とせなかったか
有事によってシーレーンが破壊されると、石油も輸入できなくなる。
石油がなければ、肥料や農薬も供給できず、農業機械も動かせないので、一定の面積当たりの収量は大幅に低下する。
戦前はある程度、化学肥料も普及していたが、農薬や農業機械はなかった。石油がなければこの状態に戻る。
終戦時の人口は7200万人、農地は600万ヘクタールあった。
仮に、この時と同じ生産方法を用いた場合、現在の人口は1億2550万人に増加しているため、農地面積は、1050万ヘクタール必要になる計算だ。
しかし、農地は宅地への転用が進んだ結果、440万ヘクタールしか残っていない。
ゴルフ場や公園、小学校の運動場などを農地に転換しなければならないが、九州と四国を合わせた面積に相当する600万ヘクタールの農地を追加することは不可能だ。
真に国民への食料供給を考えるなら、大量の穀物を輸入・備蓄して危機に備える必要がある。
原資には、減反廃止で余った金を活用すればよい。
ロシア軍がウクライナの首都キーウを陥落できなかったのは、食料や武器などを輸送する兵站に問題があったからだ。食料がなければ戦争はできない。
戦前、農林省の減反提案を潰したのは陸軍省だった。減反は安全保障に反する。
日本の食料安全保障は、農水省やJA農協に農政を任せてしまった結果、危機的な状況に陥っている。
いったん有事となれば、日本は戦闘行為を行う前に食料から崩壊するだろう。
国民は彼らから食料政策を自らの手に取り戻すべきだ。
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