鹿島《少将》の航海日誌

改めてブログ作り直しました。
ヤマト関係を中心に、興味あるもの等をお届け。

宇宙戦艦ヤマト復活編二次創作ー雪・生還編ー後編

2020-02-27 23:20:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作

後編

航海図、航路レーダー、メインレーダーでは、その場所が境界部である事を示しているが、これが門だと目視では解らなかった。
だが、メインスクリーンには、門(ゲート)を潜っていると解る映像が映り出されている。
目の細かい砂、砂丘と言う表現が相応しいだろう。
その砂丘が永遠に続く。
何れくらいの距離を移動したのだろうか、ヤマトからはまだまだ、かなりの距離ではあるが、レーダーには人工構造物を捉えていた。
かなり高層の構造物のようだ。
艦橋のクルーは眼下に拡がる砂丘もしかりなのだが、人工構造物の高さは既に地上から10キロメートルを超えて表示されていた。

「艦長。まだまだ、表示が止まりません。」メインレーダーを覗く折原が告げた。

「うむ。折原。中央電算室で解析を頼む。」

「了解。」

折原が電算室に降りて、直ぐにコルンが新たな反応を示した。

「…ン!?」
「Unknown.target!」

「夕貴サン!気をつけて!」
「前方からUnknown.targetデス!」
「複数接近して来ます!」

「メインレーダーに反応は?」折原から引き継いだ桜井に天城が尋ねた。

「メインレーダーには何も…あっ!?ちょっと待って下さい!今、反応有り!」
「Unknown.targetは6つ!!」




「……!?人(ひと)、人間…!?」再び桜井が告げて来る。

「…いや、羽の生えた人間なんて居るかよ!」

「上條一佐。あれはヴァルキリーだ!」

「ヴァルキリー!?」

「そうだ。ヴァルキリーだ別名ワルキューレ!」
「あれは人間なんかじゃない!」
「完全に我々はヤマトは、敵と見なされたってわけよ!」そう言ったのは操縦稈を握る天城だった。

「天城一佐は詳しいんですね。」

「……お父さん!」そんなやり取りの中、美雪が第一艦橋に姿を現した。

「美雪。お前…。」
艦長であり、父親でもある進は一瞬、言葉に困った。

美雪は母親である雪、古代雪(森雪)が、かつて着用していた黄色をベースに黒の矢印を施した旧ヤマトの艦内服を纏い、現れたからだ。

「美雪。それは…」

「そうよ。お母さんが着ていた艦内服よ。」

「どういうつもりだ。」

「どういうつもりも何もないわ。」
「私も古代進と森雪の娘ですもの、いっしょに、いっしょに戦うわ!」
「それに今、お母さんの声が聞こえたの!」
「お母さんは、あの石の煉瓦で造られた塔に居るわ!」

「…お母さんの雪の声が聞こえたって……お前…。」

「古代艦長。お嬢さんも16歳でしょ!?」
「16歳なら宇宙防御隊高等工科学校に入校出来る歳です。」
「即ち、立派な指揮官を目指すに相応し歳です。」
「協力して貰いましょう。」

「…しかし美雪は正規の学生では…」

「古代艦長!今、そんな事を言っている場合ではありません!」
「眼前にはワルキューレが迫ってます!」
「それにお嬢さんは、お母様の声を感じた。そしてそのお母様は、あの塔に居ると!」
「私が美雪さんを守ります!許可を!」

「…緊急時に付き、特別に許可を出す。」
「美雪は、天城一佐補助を。」
「佐々木艦医には話を通しておく。」
「配置に付け。」

天城は、美雪にウインクを飛ばすと拳を「コツン。」と当て、ハイタッチした。

「二人にヤられた。」と苦笑いの表情を浮かべる古代。

古代は気を取り直して命令を下した。

「全艦に通達!」
「第一級戦闘配置!」
「飛来する物体は人型兵器である!」
「躊躇(ためらう)な!以上だ!」



ワルキューレ(ドイツ語: Walküre)またはヴァルキュリャ(古ノルド語: valkyrja、「戦死者を選ぶもの」の意)は、北欧神話において、戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性、およびその軍団のことである。
戦場で死んだ者の半分をオージンの治める死者の館ヴァルホルに連れて行く役割を担う。
ヴァルホルでは、死んだ戦士たちは終末戦争ラグナロクに備える兵士エインヘリャルとなるが、ヴァルキュリャは彼らに蜜酒を与える給仕ともなる。
また、ヴァルキュリャは英雄をはじめとする人間たちの恋人としても登場し、そのような場合は王族の娘として描かれることもある。
ワタリガラスを伴って描かれたり、また白鳥や馬と結び付けられることもある。

ヴァルキュリャは、13世紀に書かれた『スノッリのエッダ(散文のエッダ)』『古エッダ(詩のエッダ)』『ヘイムスクリングラ』『ニャールのサガ』などに記述が見られる。
スカルド詩や14世紀の呪文、ルーン碑文などにも登場する。
また考古学的には、ヴァルキュリャを描いたと考えられている魔除けなどが出土している。

北欧神話に登場するノルンやディースといった存在は、いずれもヴァルキュリャと同様に運命を司る超自然的存在であり、その関係性についても解釈がなされている。


「上條。戦闘指揮を任す。」

「了解!」

「全主砲はハイパーショックカノンよーい!」
「波動エネルギー注入機作動!」
「波動エネルギー12パーセントをキープ、連射に備えよ!」
「波動エネルギー12パーセント注入開始!」

「天城船務長!右舵いっぱい!!」

「右舵いっぱいヨーソロ!」
「右舷側、姿勢制御スラスター噴射!!」
「対ショック体制完了!」

「主砲!ハイパーショックカノン、前衛の三体に其々、合わせ!てぃーーーッ!!」

各砲身から発射された波動エネルギーを混合させたハイパーショックカノンのエネルギー光弾は、其々が螺旋を描(えが)くように捻れ、三つのエネルギー光弾が更に一つに纏まり、プラズマ波をなびかせ、再び螺旋を描(えが)き捻れながら目標物体、目掛け突き進む。

「$/#℃㎜¢&@#@@$!!(波動エネルギーを検知!!)」
「$#℃¥:℃::#/$_!!(半物質フィールド!!)」

ワルキューレたちの周りに突如、浮かび上がるプラズマ波の渦。

ハイパーショックカノンのエネルギー光弾、其々が前衛に陣を敷くワルキューレたちに直撃した。
凄まじい青白く輝くプラズマ波をなびかせた波動エネルギー光弾と、張り巡らされた半物質プラズマ波が、ぶつかり合う。

想像を遥かに超えた衝撃波がヤマトを襲う。
「グワン!」とヤマトが押されてゆく。
噴射した姿勢制御スラスターの噴射を最大値にあげるも、ヤマトは、顎を突き上げられたボクサーのように倒されてゆく。
あと5度も傾けば、艦底部を晒すほどであった。

「くっ…。」
「ハイパーショックカノンの威力の余波か?」戦闘指揮を取る上條は呟くように口を開いた。

「桜井!人型は?」艦長古代が、あとを追いかけるように尋ねた。

「…直撃までは確認出来てますが、…あと2秒待って下さい!」
「レーダー回復!……前衛の人型…健在っ!」

その報告に青ざめる上條。
そんな上條を嘲笑うかのように、ヤマトの通信と映像回線は、強制介入された。

「地球人よ。抵抗は止めておけ。」
「我れは死者を連れ去る者。ワルキューレ。」
「抵抗すれば、するほど貴様らの仲間が連れ去られるぞ。」
「眼下をよく観てみろ!」

言われるがままに古代をはじめ、ヤマトのクルーたちは、目を凝らし、食い入るように眼下を覗き込んだ。
白い砂、砂丘に見えたものは頭蓋骨だった。
後退りする者、気を失う者、唖然とし言葉を失う者、中には失禁してしまう者までが大半を占めていた。

「どうだ?解ったであろう!?」

「で、抵抗を止めた我々はどうなる?」

「いい質問だ。」

古代の問いかけに応えたのは、ワルキューレたちとは異なる声の持ち主だった。

声の主は、白銀の翼を12枚も背中から生やた見る者によっては美少年、青年、美少女のような人型の生物であった。




「我が名はルシファー。」
「ある者は大天使長と呼び、またある者は悪魔王と呼ぶ。」

「この地はコキュートスの丘。別名:嘆きの丘とも呼ばれている地。」
「貴公らも、この丘に眠りたくはないであろう?」

誰もが口を噤(つぐ)む中、「お母さんを返して!!」と叫ぶ美雪。

「ほう。貴公の母であったか。」
「だが、それは出来ぬ。先約があるのでな。」第一艦橋を覗き込むルシファーは、美雪をマジマジと見詰めながら告げた。

「…先約、先約って何よ!」目を吊り上げ、少し声を大きく美雪は、聞き返した。

「この変体用の身体とは違い、あれだけ美しい身体は中々の希少品。」

「希少品って…お母さんは物じゃない!」
「それだけの力が有るなら、お母さんに似せたものを造ればいいでしょ!」

「アハハハハハ。」
「ほら、やはり"もの"ではないか。」
「まぁ。よい。」
「サーベラーよ。今こそ、契約をたそう。
「この娘を黙らせよ。」

ルシファーの眼が光ると、美雪の斜め前の航海長席に座る天城一佐の様子が、変化した。
ワラワラと全身を震わせ、頭を上に向けると着用している制服を破りはじめた。

「夕貴サン!?」
「天城一佐?」

駆け寄る古代艦長を払いのけ、隣に居たコルンを突き倒した。

「お父さん!」
「艦長!」
美雪と上條が駆け寄った。

「……ううっ。」片目を瞑(つむ)り、腰に手をあてがい古代は上條の肩を借り、立ち上がった。
ワラワラと震え、裸体をさらけ出した天城一佐の周りには蒼白いプラズマ波が、漂っていた。
幾つもの天城一佐とサーベラーの身体が重なりあう。

「我は"白銀の巫女"シファル・サーベラー!」
「ガトランティス最高指導者である!」
「我らガトランティスの復活、契約は果たされた!」

「地球人よ。跪け!」

「…サーベラー!いえ、夕貴の身体を媒体にした偽りのサーベラー!」
「身体だけは復活したけど、全ての能力を復活させた訳ではなさそうね?」
「違うかしら?」

「古代サン。このサーベラーはワタシが相手をします!」
「見た目はガトランティス人に成ってしまったが、元はワタシの娘、夕貴です。」

「…天城一佐が、コルンさんの娘?」

「そうです。詳しい説明はあとで致しましょう!」
「ワタシがサーベラーを押さえ付けて要る間(あいだ)に、古代サンはヤマトの操縦を!」
その時であった後部カタパルト管制室から「コスモゼロtype21」発艦のアナウンスが飛び込んだ。

「何!?」
「誰が乗っている?」

「えっ!?」
「発艦許可は出てないのですか?」
「美雪さんは、艦長からの命令だと。」艦尾カタパルトカタパルト管制クルーは、驚きながら返答した。

「解った。」
「美雪の奴…いつの間に…。」

「ヤマト緊急発進!」
「徳川!両舷全速!」

進の許可も得ないまま、母親である雪を助けたい一心でヤマトを飛び出した娘、美雪を追う古代。

「ルシファー様!ヤマトが、人間が我らの要請を無視、バベルの塔へと向かっています!」

「何ッ!?」
「バカな奴らだ!始末せよ!」

「仰せの通りに!」




「この媒体を失う訳にはゆかんのだ。」

雪は透明なクリスタルカプセルの中に保管されていた。
保管されているクリスタルカプセルの中には羊水が満たされている。
言わゆる子宮の中に雪は居る事と同じなのだ。
生きてゆくのに必要な本能で解るのだろう。眠り続ける雪ではあるが、酸素も栄養素も、カプセル内の羊水から補給しているのだ。

そして、古代が目指すバベルの塔は、あの砂丘を地上と考えるなら、10キロメートル以上もの円柱形をした超高層建造物、その最上階に雪を保管しているクリスタルカプセルはある。

そのバベルの塔から、およそ地球から月までの距離の10倍、3.844.000kmにカスケードブラックホールによって呑み込まれた太陽系の惑星が、塔を囲うように並んでいる。
太陽・水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・第十番惑星・第十一番惑星と並んでいる。
冥王星だけが、その列には存在しない。
塔の真上に存在している。
その遥か上空の空間には、これまでカスケードブラックホールによって呑み込まれた惑星や衛星が、ところ狭しと並んでいる。
まるでゴミ山のように_。

おそらく、資源を取りつくし、捨てられたのだろう。
その上空に、この次元の空間の太陽なのだろ、珍しい動きを見せていた。
西から東へと向かって移動しているのだ。
その太陽から塔の真上に設置された冥王星を介して、エネルギーを吸収しているようだ。

操縦桿を握る古代の頭の中に「ふと。」過るメッツラーの言葉。

「メッツラーを媒体とし、再び浮かび上がる異次元の思考ホログラム。
自分が異なる次元の民であること、その次元には資源が少ないため生きる糧を他の次元に求めていたこと、そしてカスケードブラックホールの正体が他次元から資源となる星々を奪い取るための巨大な次元転移装置であると。」

「何処に…何処に一体……。」そう思いながら古代は、塔の上空を見上げた。
何かに気がついた古代は、命令を下した。

「上條。ロケットアンカー射出よーい!」

「ロケットアンカー射出用意よし!」

「うむ。」

「小林航空隊隊長。悪いが君の予備機を使用する。」
「後部カタパルトへ、射出準備!」

「上條。君にヤマトを預ける。」
「もし、俺が一時間以内に帰投しない時は、トランジッション波動砲をあのバベルの塔に撃ち込め!」

「…自分も同行します!」

「駄目だ!船務長不在で階級が最上級なのは、上條、お前だ。」
「まだ銀河系が健在な内に、次に繋ぐ為にも、トランジッション波動砲を発射させた後、アマール星へゆけ!」
「イリヤ女王なら必ず、力を貸してくれるはずだ!」

上條は瞳を閉じ、肩を震わせた_。

「ワルキューレ六体、急接近!!」
「ヤマトを包囲してきます!」
古代と上條のやり取りの中、慌ただしく折原が告げて来る。

「上條!波動爆雷で弾幕を張りつつ、波動フィールド展開だ!」
「バリアミサイル発射ッ!!」

「ワルキューレ発砲!!」
「波動フィールドが…波動フィールドが中和されて行きます!」

「艦長!ワルキューレの放つエネルギー光弾の成分が判明!」
「半物質エネルギーです!」
「波動エネルギーは中和されます!」

「くっ!」
「構わん!上條。撃ち捲れ!」
「あと少しで塔だ!奴らにとって大切な塔だ!たどり着けば奴らもバカスカ撃ち込めんだろう!」

「了解!」

「……艦長!あれを!」




古代らが目指すバベルの塔の最上階近辺に浮遊するコスモゼロtype21。
どう見ても、無人のようだった。

「上條!ロケットアンカー射出!」
「ヤマトを固定する!」
「姿勢制御スラスター噴射!」
バベルの塔にロケットアンカーを撃ち込み、ヤマトは停止した。
同時にワルキューレたちの攻撃も止んだ。

「後部カタパルトは準備出来ているか?」

「射出準備完了してます!」

「上條。あとを頼んだぞ。」

「…了解。」上條からの返事を聞くと、古代は航海長席を立ち、第二格納庫へ向かった。

「たどり着いたか。」
「ならば、迎えてやるとするか。」空間映像を観ながら不適な笑みを浮かべるルシファー。

ヤマトを発艦した古代は、煉瓦造りの塔の一部がくり貫かれたような空間を見つけた。
何の躊躇いもなく古代は、その空間へと操縦桿を傾けた。
暗闇に蛍光グリーンに輝く誘導灯が進む方向を示す。
地上高10キロメートル以上もの超が付く程の建造物、塔内部もヤマトが仮に航行しても、余裕がある。
小型戦闘機であるコスモパルサーが、速度を落とす事なく飛行が可能だ。
だが、古代は出力を三分の二まで落として飛行した。
周りを目視での確認が出来ないからだ。
時間にして10分くらい飛行したところで、辺りはトンネルを抜けたように明るく、開けた場所に出た。

「あそこが終点か!?」

「人間よ。そこで降りろ。」
「大丈夫だ。殺しはしない。それと貴公らが暮らしていた大気と変わらん。」
古代は指示に従い、コスモパルサーを着陸させた。



「で、上條艦長代理は、どうしたいんだ。」相変わらずの口調で小林が口を開いた。

「…俺には……俺にはトランジッション波動砲は撃てない。」

「何だよ!それ。」
「まだ一時間、経ってないんだぜ!上條よ!」

「小林。そんなに突っ掛かるなよ。」
「上條だって辛い命令を聞き入れるしかなかった訳だから。」強い口調の小林に佐々木が助け船的に告げた。

「艦長代理。命令を出したらいいのかもよ。」

「命令?」

「そう。命令。」
「私たち、まだ上條艦長代理から、命令を聞いてないんだけど。」佐々木に続いて折原もまた、助け船的に告げた。

「じれってぇな。」
「俺たち、軍法会議もんは後免だかんな!」
「小林、佐々木、コスモパルサー隊出撃!」
「桜井は輸送船の操縦の経験があったな。航海長代行を!」
「折原は第一艦橋へ!メインレーダーを!ってよ!」
「艦長が中に入れたって事はだよ、俺たちコスモパルサー隊も突入出来んじゃないかって思うだろ!?」

「…よし。それで行こう!」

「…なら、自分もコスモパルサーに乗せてくれないか?」そばで聞いていたカティー軍曹が話に加わった。

「カティー軍曹。貴女、お腹に子供がいるのに無理は駄目よ。」

「折原一等宙尉(チーフ)。それなら大丈夫よ。それに…」
「それに彼の神楽坂の仇を取りたいんだ!」

「ならさぁ、あたしの後ろに乗りなよ。」
「雷撃機なら、副座だかさ。」
「機銃くらいは撃てるでしょ!?」

「おっ!美晴。頭、良いじゃん!」

「か、艦長代理として命令をくだす。」
「小林、佐々木のコスモパルサー隊は発艦準備!尚、カティー軍曹は佐々木機に同乗せよ。」
「桜井二等宙慰は航海長代行を!」
「折原一等宙慰はメインレーダーを!」
「以上だ。解散!」こうして、上條の指揮の下、新たな作戦を開始する事と成った。



「人間よ。」
「それほどまでに、あの媒体を返して欲しいのか?」

「雪!」古代の見上げる先にはクリスタルカプセル内の雪の姿が見える。

「人間よ。では、こうしよう。」
「あのカプセルの媒体を返してやるが、その代わりに、此方を頂く。」
ルシファーが、指差した方には後ろ手に拘束された美雪が見える。

「…お父さん……。」

「貴様…。」

「動くな!」

「人間よ。我が友、ベリアルだ。」
「友であるが、我は召還し、ベリアルを呼び出した。」
「代償は生け贄を捧げなければならない。」
「そこでだ。貴公に選択する機会を与える。」
「クリスタルカプセルの媒体を選ぶか。あの娘を選ぶか。はたまた子を宿事の可能な生け贄と成る者を差し出すか。」
「三択だ。選べ。」

「………。」

「どうした?選べぬか?」



【ベリアル】

聖書にも登場している高名な悪魔であるベリアルは、悪魔学においても重要視され、多くのグリモワールにおいて名を挙げられている。

『ゴエティア』によると、序列68番の強大にして強力な王であり、80軍団を率いている。
ルシファーに次いで創造された天使であり、天上にあってはミカエルよりも尊き位階にあったと自ら語るという。
また、ベレト、アスモダイ、ガープと並んで72人の悪魔達を率いていたとされる。
燃え上がる戦車に乗り、美しい天使の姿で現れる。
地位や敵味方からの助力をもたらし、また、優れた使い魔を与えてくれるとされる。
しかし、ベリアルは召喚者が生贄を捧げないと要求に対して真実を答えようとしないという。


コルンは、娘、夕貴に憑依したサーベラーを足払いで床に押し倒すと、腕に内臓された電流蓄積器をスタンガンモードに切り替え、指先からパルス状の電流を放電、サーベラーを気絶させた。

「これでヨシ。」
「佐々木サン。聴こえて?」
「アナタの医療室ヲお借りしたい。」

「いいわよ。出撃だから。」

「アリガトウ。」
礼を告げたコルンは憑依したサーベラーを抱え上げ、医療室へ運んだ。


「コスモパルサー全機、発艦準備完了!」
「繰り返す。コスモパルサー全機、発艦準備完了!搭乗員は速やかに搭乗せよ!」
管制クルーからアナウンスが入る。
小林、佐々木らをはじめとする搭乗員が一斉に動きだした。

「小林。一つ確認。」
「塔に侵入したら、上?それとも下?」

「決まってんだろ!下だよ!」
「スリル満点!急降下ジェットコースターだよ!」

「了解。」
「だってさ。」
「残るなら今のうちだよ。」

「大丈夫。乗せて行って。」

「解った。銃座、頼んだよ。」

「ラジャー!」佐々木とカティーは拳を「コツン。」と当てた。

周りのエンジン音が五月蝿く成る中、佐々木とカティーは、発艦準備を進めた。

ハシゴを登り、機体上部をチェック。
キャノピーを開け、キックインステップ脇のキャノピー外部コントロールハンドルを使い、ボタンを押してハンドルを引き出し後方に回した。
佐々木はコックピットに座り、カティーは銃座に身体を沈めた。
搭載された管制A.Iがサポート、スクランブル発進手順に入った。

メカニックに対し指一本あげて合図し、エンジンマスタースイッチをオンに、「ジェット燃料スタータをオン。」
約15秒後、スタータのレディランプが点灯した。
「火災警告灯が点灯なし。」
佐々木は、次に指2本立ててメカニックに合図し、右側のエンジンスロットルフィンガーリフトを上げた。
右エンジンが点火、スロットルを18%に。
ファンタービン入り口温度計が600度、安定した。
続いて左エンジンスタート。
機体後方に蜃気楼が現れはじめた。
警告灯が正常。
「慣性航法装置アライメント調整。」

「輪止めを外してくれ。」
「タキシングを開始しする。」
佐々木はブレーキを踏んで作動チェック、飛行計器が正常かチェックした。

「発進カタパルトへ接続する。そのまま待て。」ヘルメットに仕込まれたインカムを通し、佐々木に伝えられた。

カタパルト上でブレーキを踏み込み左右のスロットルレバーをミリタリーパワーまで前進させ回転計、油圧計、燃料流入計、ファンタービン入り口温度計をチェック。

「回転数90パーセント以上、タービン入り口温度322度で正常。」

「ピッチ角を10度!」
「アフターバーナー点火!」

「コスモパルサー佐々木機、射出ッ!!」

だが、コスモパルサー隊が発艦した事により、"手ぐすねを引く"ワルキューレたちも動きだした。

「小林隊長!自分たちの動きに釣られて奴ら人型も動き出した!」

「よーし!俺たちで先行し、引き付ける!」
「奴らの大切な塔内部で暴れてやんよ!」

「美晴!人型の後方から突入、人型を墜とせ!!」

「了解!」



古代は一歩、前に踏み出し、選択の答えを告げた。

「ルシファーと言いましたね。」
「二人を返して頂こう。」
「生け贄にする人選は、済んでいる。」

「ほう。生け贄を差し出すか。」
「仲間の犠牲で自分たちは助かりたい!?」
「まぁ。いいだろ。」
「だが、あの媒体以上の媒体を差し出して貰わん事には、割りに合わんな。」

「それは出来ない相談だ。」
「ルシファーさん。貴女(あなた)は子を宿事の出来る者を差し出しせとしか言わなかった。」
「違いますか?」

「フハハハハハ。」
「人間よ。調子に乗るなよ。」答えを告げた古代に対し、豪快に笑う美少女姿のルシファーは、顔つきを変え、詰め寄った。

「一本、取られましね。ルシファー。」
詰め寄るルシファーを制止するように右腕的存在であるガブリエルが、姿を現した。

「私はガブリエル。」
「人間よ。悪いことは言わん。今、直ぐに跪まづけ。」
「これ以上、怒らせれば私でもルシファーを止める事は出来ない。」

「断る!」毅然とした姿勢を貫く古代。

「…ならば死を!」

「ガガガガガーーーッ!!」古代らが居る場所から下層で機銃音が聴こえて来る。

「ん!?何事……。」



コックピットからも機尾の弾痕が確認出来た。
僅かな死角に佐々木は「かすり傷」と判断した。
だが、実際には違っていた。

「……ツぅ…。佐々木さん。」

「ん!?何だい?」

「…アタシ…アタシ駄目かも……。」

「……。」
「ちっ!死角を忘れてたよ。」

「此方、第二編隊隊長:佐々木。隊長。小林隊長。聴こえる?」

「どうした?美晴?」

「ごめんよ。被弾しちまった…。」

「ひ、被弾って大丈夫なのかよ!」

「大丈夫。ごめんよ。戦線を離脱する。」
「小林。あんたは、被弾なんて事は許さないから。」

「おうよ!」
「ん!?てか……第二編隊長佐々木へ。ヤマトへ帰投せよ。」
「無事な帰投を。」

「了解。」



「カティー軍曹!」
「帰投命令が出たよ。ヤマトへ、ヤマトへ帰ろう。」
「…あんたを、あんたを死なせはしないよ!」
「あんたのお腹の中には、新しい未来が…未来を繋ぐ為にも……。」
「戻って…戻ってよ!」
「カティーーーッ!!」


ー銀河中心部近傍空間ー


「ワープアウト!」
「艦内外、異常無し。」

「うむ。」
「レーダー士!例の艦(ふね)は確認出来るか?」

「…いえ。まだ何も。」

「ん!?艦長!超空間通信!」
「光子帆を最大で展開して欲しい。であります。」

「うむ。」
「光子帆=シールド最大展開!」

イリヤ女王の命(めい)を受け、銀河中心部に赴いたアマール星所属戦闘艦パスカル級オーディーンは、艦首に装備された巨大な光子帆=シールドを最大値で展開した。

「下方より超重力波を感知!!」
「ま、待って下さい!その後方から超波動エネルギー光弾を感知!!」
「シールドが持ちこたえられかどうかです!!」


「どうやら間に合ったようだな。」

デスラー砲艦を改良した超重力波砲艦から発射された超重力波砲と、デスラー艦から発射されたハイパーデスラー砲は、パスカル級二番艦オーディーンの張り巡らされた光子帆=シールドを利用し反射され、二つのハイパーエネルギー光弾は混ざり合い、ヤマトが突入した"虚遇の次元"の中心核=人工太陽を貫らぬいた。


今から17年前、西暦2203年、銀河系中心部の宇宙で大きな異変が生じた。
別次元から別の銀河が現れ、核恒星系付近で銀河系同士の衝突が起こり、多くの星々が消滅した。
この宇宙災害は、その宙域にある地球との友好星国家「ガルマン・ガミラス帝国」の本星へも及んでいた。
デスラーは新たなる母星を探す為、残党を纏め、宛は無きに等しい航海に出ていた。
17年におよぶ航海の中、補給の為、立ち寄った惑星アマールで、地球を含む太陽系がカスケード・ブラックホールに呑み込まれた事を知ったデスラーは、イリヤ女王と対談、協力を取り付けいたのだ。

「なるほど、我々ガミラスにも責任があるのかも知れんな。」
「イリヤ女王。勝手なお願いではあるのだが、貴女(あなた)の護衛艦を一隻、お借りしたいのだが。」

「いいでしょう。貴方(あなた)の地球を救いたいとの想いを汲(く)んで、協力致しましょう。」
二人は眼下を見下ろした。
そこには、何も知らないアマールの民と地球の民が、いっしよに協力しあい破壊された城下町を再建していた_。



虚遇の次元は歪みはじめると同時に、この次元の本体とも言えるルシファーと右腕的存在のガブリエルは融合し、その正体をさらけ出した。

「フハハハハハッ!」

「愚かな人間よ。」
「我を本気にさせた代償は死滅である!」
「冷凍睡眠化しているお前たち同様の人間も、惑星群もすべて無に還してくれるわッ!!」

「そうはさせません!悪魔王サターン!」白銀の霧と共にその声は聴こえた。
と同時に、輝かしい光弾がサターンの足元に墜ちた。
サターンに動揺は見られなかった。
やがて白銀の霧が晴れると、そこには美しい女性が一人、立っていた。

「私は女神ガイアの末裔アーシャ。」

「……貴様ッ!!」

「10.000年ぶりかしらね?悪魔王サターン。」
「アナタはガブリエルの力を借りても、自身の子を宿す能力は封印されたまま。」
「自身の世継ぎを残せず、取った行動が憑依する媒体の確保。そして、己の力を保持する為の侵略、いえ惑星(ほし)を丸ごと略奪、資源を採り尽くし廃棄する。」アーシャは天、高く指をさした。
古代は、ここへ来る途中に見た無造作に配置された惑星の山を思い出していた。

「古代とやら、悪魔王サターンは私が引き受けます。」
「貴方(あなた)は二人を連れて、この塔から脱出を。」

「ですが、どうやって二人を救出したら……。」古代は頭上を見上げ、クリスタルカプセルの雪の存在と後ろ手に拘束された美雪の存在をアーシャに教えた。

「それでしたら大丈夫よ。貴方のヤマト(方舟)を呼び寄せて有ります。」
アーシャは指を「パチリ!」と鳴らした。

ゴロゴロと崩れ落ちる煉瓦の壁。
土煙が舞い上がる中、宇宙戦艦ヤマトは、その姿を現した。




「さあ。お行きなさい。」

古代は軽く拳を握りった右腕を胸に当てると、コスモパルサーに飛び乗り、ヤマトを目指し飛び立った。



古代たちの目には幾つもの輝かしい光が、縦横無尽に飛び回っているように見えた。
その間(かん)古代は、後ろ手に拘束された愛娘、美雪を助け、クリスタルカプセルを制御するシステム機を破壊、雪を助け出した。
やがて、幾つもの輝かしい光は一つだけと成った。
同時に雪と美雪を乗せ、古代のコスモパルサーはヤマトに帰投した。

勝負が着いたのだろう。
女神アーシャはヤマトの第一艦橋にホログラム映像が、浮かび上がるように姿を現した。

「もう、大丈夫です。悪魔王サターンとガブリエル、その下部(しもべ)らは、冥府に封印しました。」
「冥府の王ハーデースにお願いしてね。」
「甦ったサーベラーを差し出す事を条件にね。」
「でも、大丈夫よ。憑依された彼女は無事よ。」
「元の人間として、生きて行けるわ。」
「それと、未来を繋ぐ新たな生命(いのち)も。」

「…すべて古(いにしえ)の神話の人物かと思っていました。」

「ウフ。」アーシャは軽く微笑んだ。

「でも、テレサやアクエリアスの女神は信じたのでしょ!?」

「……それは…。」

「それで良いのよ。古代。」

そう言うと女神アーシャは語りはじめた。

「古代。神話に登場するガイアは地母神であり、大地の象徴と言われるのは、ご存知ですね。」

「太古の昔、神々が生まれる以前、宇宙には何もないカオス(混沌)が広がっていた。」

「そこにガイアが生まれ、ガイアは自らの力だけで天の神ウーラノス、海の神ポントス、暗黒の神エレボス、愛の神エロースを産み、母となった。
エロースの働きでウーラノスと親子婚し夫とした。
そして、ウーラノスは神々の王となったわ。」

「ウーラノスとの間に男女6柱ずつの子どもを産んだの。」

「ティーターン=タイタン(巨神)である。
またキュクロープス=サイクロロプス(一つ目の巨人)やヘカトンケイル(百本の手を持つ巨人)、ギガース(巨人、ギガンテスと呼ばれることが多い)、末っ子のクロノスを産んだ。

「だけど、異形の神々キュクロープスたちのあまりの醜さゆえに、ウーラノスは彼らを冥界タルタロスへ閉じ込めてしまった。
子どもたちの母であるガイアは悲しみ、ウーラノスへの報復を考え、子供たちに復讐を呼びかけた。
子供たちは当初、父を恐れ誰も名乗り出なかったが、末っ子のクロノスが自ら名乗りを上げ、ガイアの作った鉄の大鎌を受け取り、ウーラノスへ復讐することとなる。」

「その夜、クロノスがガイアに知らせられていた場所へ行くと、ウーラノスは妻ガイアにかぶさるようにして寝ていた。
クロノスは大鎌でウーラノスの男性器を切り落としたの。」

「これを受け、自らの行動を恥じたウーラノスはガイアのもとを去り、クロノスが神々の王となるが、この時クロノスはウーラノスに「やがてお前も自分の息子に王位を退けられることになるだろう。」と言われ、この言葉はクロノスの脳裏に焼きつくこととなったわ。」

「やがて妻レアーとの間にできた子供を飲み込んでしまったクロノスにゼウスが復讐を決意し、そしてティーターン一族とオリュンポス神の戦いが始まるの。」

「10年以上戦いが長引くと、クロノスの横暴さを見かねていたガイアはゼウスたちにタルタロスに閉じ込められたヘカトンケイルやキュクロプスたちのことを教え、彼らを救い出すことを勧めた。
ヘカトンケイルは百本の手で大岩を投げ、キュクロープスはゼウスに雷と稲妻を与えた。
こうしてゼウスらは新たな味方とともに戦いに臨み、ついにクロノスとの戦いに打ち勝ったわ。」

「天はゼウスが、海はポセイドーンが、冥界はハーデースが治めることとなり、大地は皆のものとなった。」

「そして、ガイアはカオスの地を耕し、種を撒き、やがて、それらは生命(いのち)を育む惑星と成り、宇宙の始まりと言える空間を形成して行った。」

「こうして"宇宙"を治める事と成ったガイアは、アクエリアスを産み、女神アクエリアスを名乗らせ、今の宇宙の始まりを与えた。」

「やがて始まりの宇宙は銀河へと成長し、姿を変えて行った。」

「広大に拡がる宇宙。
女神アクエリアスは、自分の代わりに広大な宇宙を管理する種族を造り、高度な文明を与えた。
その末裔の種族がイスカンダル人よ。」


カオス(古希: Χάος)とは、ギリシア神話に登場する原初神である。「大口を開けた」「空(から)の空間」の意。
オルフェウスによれば、このカオスは有限なる存在全てを超越する無限を象徴しているという。

原初の神ヘーシオドスの『神統記』に従うと世界の始まりにあって存在した原初の神である。
世界(宇宙)が始まるとき、事物が存在を確保できる場所(コーラー)が必要であり、何もない「場」すなわち空隙として最初にカオスが存在し、そのなかにあって、例えば大地(ガイア)などが存在を現した。
また、ヘーシオドスはカオスのことをカズム(裂け目)とも呼んでいる。
『神統記』によれば、カオスの生成に続いてガイア(大地)が生まれ、次に暗冥の地下の奥底であるタルタロスが生まれた。


◆◆◆◆


「おかえり。雪。」

「おかえりなさい。お母さん。」

「ただいま。美雪。進(あなた)。」






「新たな主導者の誕生。」
「新たな連星は惑星スターシャとでも名付けよう。」デスラーは生まれたばかりの連星を見上げながら粒やいた。

虚遇の次元が崩壊し、新たな連星が誕生した_。


~一年後~


【地球連邦メガロポリス郊外:英雄の丘】

「古代サン。お久しぶりデス。」

「コルンさん。元気そうで何よりだ。」

「以前、夕貴はワタシの娘と話しをしましたネ。」
「あの子は夕貴ハ、幼い頃に全身を70パーセント以上も火災による火傷を負い、当時、命を助けるには、臓器と皮膚の移植しか方法はなく、ワタシの臓器と皮膚を移植する事にしたのです。」
「…ワタシはワタシが存在する為に"すべてをメモリ"(記憶)を残す事にしたのです。」
「その結果が、この身体です。」

古代は真剣な眼差しを見せるだけで無言だった。





「黙祷を捧げる。」
「黙……。」
古代の号令を描き消すかのように轟音を響かせ、テスト航海から帰艦したブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー。
その轟音に参列した小林は、拳を高く突き上げ怒号を飛ばした。

「バッキャローーーッ!!」

呆気に取られる参列者たち。
その参列者を代表した訳ではないが、主宰した古代はこう告げた。

「すまんな。小林。」
「テスト航海の艦長は、雪なんだ。」
「帰ったら、キツく叱っておくよ。」と、軽く肩を叩いた。

「えっ!?あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」それを聞いた小林は、あたふたするだけだった。
「アハハハハッ!」と、笑い声が英雄の丘に拡がっていた_。

「ねぇ。このあと赤道際の続きがやろうよ。」早々とバニーガールにコスプレした天城は、やる気満々で笑顔を覗かせていた_。


~fin~




【地球連邦防衛第一艦隊旗艦ブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー】

※ブールノアのほぼ同型艦ブルーアースが存在するが此方は、改装されたブルーノア級の非武装艦であり、改・ブールノア級の位置付けの為、"ブール・ギャラクシーを二番艦とした。
【ブールアース】
旧地球防衛軍残存艦隊旗艦。
残存救助艦隊に所属し、残存人員の救助と政府中枢部の移動に用いられた。

初代艦長:上條 了
(テスト航海時艦長:古代 雪)






【パスカル級二番艦オーディーン】
アマール防衛隊の旗艦で、パスカル将軍の座乗艦と同型の二番艦。

水上艦(あるいは帆船)に近い構成となっており、艦首部には巨大な艦首マスト(光子帆)が付いており、シールドを張れるのが最大の特徴。
このシールドは『オーディーン 光子帆船スターライト』をオマージュしたものである。
武装は3連装主砲を艦前部に4基、並列配置で装備。
舷側には、大航海時代にある海賊船の様に数多くの副砲が並んでいる。



連星(英語: Binary star)とは2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体である。
双子星(ふたごぼし)とも呼ばれる。
連星は、地球から遠距離にあると、一つの恒星と思われ、その後に連星である事が判明する場合もある。
この2世紀間の観測で、肉眼で見える恒星の半数以上が連星である可能性が示唆されている。
通常は明るい方の星を主星、暗い方を伴星と呼ぶ。
また、3つ以上の星が互いに重力的に束縛されて軌道運動している系もあり、そのような場合にはn連星またはn重連星などと呼ばれる。



この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。
既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。
使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。
一部、私の設定及び解釈が混ざっています。

宇宙戦艦ヤマト復活編二次創作ー雪・生還編ー前編

2020-02-27 23:19:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作





古代らヤマトのクルーたちの前にメッツラーを媒体とし、再び浮かび上がる異次元の思考ホログラム。

メッツラーは、自分が異なる次元の民であること、その次元には資源が少ないため生きる糧を他の次元に求めていたこと、そしてカスケードブラックホールの正体が他次元から資源となる星々を奪い取るための巨大な次元転移装置であることを暴露し、古代たちを嘲笑いながら去っていった_。

しかし、人工物であることに活路を見出した古代は、次元転移装置の本体を発見させ、トランジッション波動砲6発を一斉射でこれを破壊する。
カスケードブラックホールは消滅し、地球は救われるかに思われた_。

だが、それは違っていた………。

ヤマト乗組員に敬礼を持って見送られながら、地球はカスケードブラックホールに飲み込まれ消滅した。
その後、残存地球人類の救助に当たっていた防衛軍旗艦ブルーアースから入電、観測の結果、地球は銀河中心部の巨大ブラックホールに飲み込まれたことが判明したと告げらた。

「古代艦長。長らく銀河中心部に調査に赴いていた波動実験艦武蔵の報告を纏めたデータが、ここにある。」
ブルーアース艦長から直々にタブレットを観せられた古代。
はじめは動画をサラッと眺めるように観ていたが、所々で気になった場面が存在した。
古代は動画を一時停止しては、気になった場面を人差し指と親指で軽く摘まむように押さえ、上下左右に拡げ、拡大、食い入るように覗き込んだ。

「……これは」と言葉には出さず、古代は心の中で呟いた。




宇宙戦艦ヤマト復活編二次創作

宇宙戦艦ヤマト2220ー雪・生還編ー

前編


残存地球防衛艦隊と合流した宇宙戦艦ヤマトは、物質の補給と修復を終え、何かに気付いた様子の古代は、ブルーアースに地球の最期を見届けると告げ、単艦にてヤマトを銀河系中心部へと発進させようとした。

「古代艦長。待ってください。」少し慌てた様子で、レーダーパネルを覗く桜井が告げてくる。

「何か?」

「ブルーアースより、強襲揚陸艇を曳航する内火艇二隻、接近。」

「その内火艇より、乗艦許可の申請あり。」通信長の中西が桜井の後を追うように告げてくる。

「うむ。回線を繋げ。」

「此方、ブルーアース艦長を兼任する艦隊司令より、貴艦ヤマトへ転属、古代艦長の指揮下へ入るよう命じられた天城二等空佐以下二十名。乗艦を許可されたし。」

「……司令。」

「中西。乗艦許可をだせ。」

「了解。」

こうして、新たに二十名のクルーが加わる事と成り、ヤマト艦内の人事が急遽、行われた。

大きく変わった人事は、航海長とコスモパルサー・チーフパイロットを兼任する小林をコスモパルサー隊隊長とし、航海長を着任した天城二等空佐を選出した。

「小林。君にはコスモパルサー隊隊長に専念して貰いたい。」

「まぁ。俺も兼任は疲れちまうから、了解っス。」

その返事に少し、呆れ顔を覗かせる天城。

天城夕貴(あまぎゆうき)24歳。女性。独身。
現在、艦長職を目指している中、この異常事態に遭遇、昇進試験前に実戦配置されブルーアースの副航海士(長)を務めていた。
今回、急遽、ヤマト転属と成る。
髪はショートカットで黒髪。
日本出身。眼は僅かにつり目で瞳は茶系、赤いルージュが好み。
どちらかと言うと、"姐さん"タイプ。
コスプレが趣味でポールダンスが得意という一面も持ち合わす。
身長は佐々木艦医より、少し高い170Cmであるが、艦内ブーツの踵高を合わせると175Cmと高身長の持ち主。
同乗したコルン=万能ロボットと仲が良い。
一等空佐の昇格試験に一度は合格するも、その祝いの席で酔って絡む上官を失神させ、保留にされた。
原因は、今の時代では珍しい合気道の段を所持しているのにも関わらず、手加減しなかった為とされている。
黒帯を剥奪する事も検討されたが、"護身術"まで取り上げるのはと当時、長官に就任した真田に救われた過去を持つ。
古代がパトロール艇艇長時代に着ていた丈の短い艦長コート、色はライトグレーを基調にブルーの縁、脚にピッタリフィットする白を基調としたパンツタイプをブーツイン。ブーツ色は黒である。
ブルーアースのイメージカラーを制服にした感じてある。
そして、アナライザーとは異なるタイプの自立型ロボット=コルンが佐々木艦医のサポートとして配置された。
コルンは二足歩行タイプで、どちらかと言えばアンドロイドに近い。
佐々木艦医がパイロットとして艦内に不在時、艦医代行を務める。
アナライザーほど砕けた性格は持ち合わせていない。
五指それぞれが更に五本づつに分かれ、端末間入力や手術を行う事が可能。
誰に教わった(インプット)のかは、解らないが、「次はお仕置きよ。」が、口癖である。
指先から超低周波から気でつさせるくらいの電流を放電する事が出来る。
過去にブルーアース内で、セクハラに値するとして、男性クルーに放電、失禁させた事がある。
以後、警告した後、それでも止めない時に放電レベルを上げる事にしている。
身長は165Cm。
女性型二足歩行タイプ万能ロボット。
「コルン」と言う名前は製作者が歴史を勉強中に"アイドル"というものに興味が沸き、そのアイドルに似せて造った為、「コルン」と名付けた。
天城夕貴二等空佐をケアする事が日課に成っている。

この他、陸戦もこなせる海兵クルー11名、甲板クルー8名、合わせて19名が着任した。

「…と言う訳だ。佐々木艦医も協力して貰えるかな?」

「了解。」
「私はパイロットをやれれば、それでいい。」

「コルンには艦橋への入出の許可を与える。以上だ。」

「天城航海長。早速だが、ワープ準備に入ってくれ。」
「目的地は銀河中心部だ!」

「了解。」

「全艦に通達。航海長の天城だ。」
「これよりヤマトはワープに入る。」
「30秒後、ワープに入る。各位、ワープに備えよ。」
着座するとすぐに右前方に設置されたキーボードをカタカタと打ち込み、ワープカウンターに合わせ、操縦悍をクイッと押し倒した。

「ワープ!」

連続ワープによって約1500光年を飛躍したヤマトは、銀河中心部まで2万光年付近に到達した。

「ワープアウト!」
「艦内外に異常を認めず。」
「これより、通常航行に移行する。」

「うむ。」

「中西通信長。全艦に通達。」
「各部署は、オートに切り替え、全クルーは大展望室に集合せよ。以上だ。」
中西は艦長古代に言われるがままを通達した。
ざわざわと全クルーがところ狭しと、半鮨詰め状態で、大展望室に集合した。

一分後、艦長古代が姿を現した。

「ヤマトクルーの諸君。」
「これより、ヤマトは赤道祭を行う。」
「諸君らには24時間の休息を与える。」
「その前に、自分から一つ提案したい事を伝える。」

「それは、着任した新たな航海長天城二等空佐に、不在する船務長を兼任して貰いたいと考えている。」

「…艦長。お話中に申し訳ございません。」
「私より、年下ではありますが、上條一等空佐が階級は上です。」
「上條一等空佐が適任かと。」

「その事なんだが、本作戦終了まで、艦長特権により、君を一階級昇進させ、一等空佐と考えている。」
「我々、ヤマトのクルーは本作戦を遂行するにあたり、一枚岩に成らなくては成らないと考えている。」
「是非、君には受けて貰いたいと思う。」

「自分なら構いませんよ。ただし、戦術にあまり口出ししなければですが。」その場の空気をヒンヤリさせる発言をしたのは戦術長の上條であった。

「上條。君の意見は分かった。」
「だが、先ほども述べたように一枚岩が欠かせない。」
「素早い判断、素早い行動が不可欠である。」
「どんなに優れた戦術でも、それを判断し、行動出来なければ、ヤマトに限らず負ける。」
「一枚岩に成るには全クルーの判断が不可欠と思う。」
「自分が提案した天城二等空佐の船務長兼任に賛成か反対かを聞かせて欲しい。」

「自分は賛成です。」最初に口を開いたのは、機関部を預かる徳川機関長だった。

「自分等は賛成する。」

「俺たちも構わないぜ。賛成だ。元々、部下だったからって訳ではないが。」新たに着任した海兵クルーと甲板クルーが賛同した。

「賛成します。」折原が続いた。

「私も賛成。俺も。」コスモパルサー隊隊長の小林、艦医を兼任する佐々木もまた、賛同した。
ポツリポツリと賛同する声が上がった。
古代は、ゆっくりと全体を見回した。

「反対する者は?」古代がそう問いかけた時であった、佐々木艦医の影から声が上がった。

「…わたしも賛成。」

古代美雪の声であった。
地球を脱出する際に一時は拒んでいた美雪だが、「お母さんを助けよう。」と父である進の言葉に、進が搭乗するコスモゼロで脱出し、そのままヤマトに乗艦、元艦医の佐渡の経営するフィールドパークで過ごしていた事もあり、簡単な手当ては心得ていた。
その為、進は佐々木艦医に頭を下げ、そばに置いて貰っていたのだ。

進は軽く笑みを浮かべて見せた。

「反対者、無し。よって天城二等空佐を現時点を持って本作戦終了まで、一等空佐に昇進、船務長と航海長を兼任して頂く。」

「天城一等空佐。引き受けて貰えるか?」

天城は一瞬、眼を閉じ、ゆっくりと深呼吸し、再び眼を開け、「解りました。船務長兼任を拝命します。」

「うむ。」
「これより、天城一等空佐は船務長を兼任する事と成った。」
「諸君らの協力に期待する。この件については以上だ。」

「これより24時間の赤道祭を開催する。」
「諸君らも知っての通り、この宙域には赤道はないが、およそ24時間後、ヤマトは、この銀河中心外縁部を超え、中心部へと突入する。」
「その境目であるこの外縁部を赤道に見立て、本作戦の成功させる為、赤道祭を開催する。」

「解散!十二分に鋭気を養い、赤道祭を楽しめ以上だ。」

酒を嗜(たしな)む者、歌を披露する者やものまねをする者、食事に専念する者、筋トレする者、コスプレする者と、それぞれが赤道祭を満喫していた。



だが、そんなヤマトは付かず離れずの距離を保ち、通常のレーダーからは捉えにくい亜空間から監視されていた。

「我が領内に入り込んで来るとはな。」

「通信士。地獄の番犬(ケロベロス)に超亜空間通信にて、報告せよ。」
「ヤマトが我が領内に出現したとな。」

「了解。」

「我がハウンド・ドッグ(猟犬)は、これよりヤマトを追い込む!」
「砲雷士!一番から四番、亜空間魚雷装填!」
「二番、四番にヤマトのエンジン音を入力!」

「了解!」

【ガトランティス残党軍ハウンド・ドッグ級潜宙艦=ハウンド・ドッグ】

「艦長!亜空間魚雷装填完了!」

「うむ。」
「操舵士!亜空間深度100。潜航はじめ!」
「砲雷士!亜空間深度100に到達と同時に全門発射だ!」

「了解!」



古代の計らいで開催された銀河中心部赤道祭の盛り上がりも、最高潮に達した頃、けたたましく警戒アラートが全艦に響き渡った。
オートに切り替えての航行だが、それを補う為、古代はコルンにメインレーダーに同調させ、警戒に当たらせていたのだ。

「全艦、警戒セヨ!繰り返す全艦、警戒セヨ!」
「雷跡4!急接近!!」

「オイ、オイ、オイ!これからか盛り上がりだって時に!!」
「天城姐さんのコスプレ、ポールダンスなんて、そうそう観れるもんじゃないんだぜ!」

「…てか、貴方たち警戒アラートが鳴ってるんだから気持ち切り替えなさいよ!」ダラダラとぼやく海兵クルーたちに、折原は"カチン!"と来た様子を覗かせ、注意を促した。

「ん!?あんだぁ」
「止めておけよ。ここは気高きヤマト様だせ。」

「その士官の言う通りだよ!」
「神楽坂曹長!からかうんじゃないよ!ポールダンスなら特別に作戦終了後にまた、観せてやるから。」そう叱責を飛ばすのは、少し説得力に欠けるかも的な猫耳飾りでチャイナドレスにコスプレした天城だった。

だが、そのタイミングでヤマトは爆音と共に、大きく揺れ、その場に居た全員が床に投げ出された。

「おおっと!」

「きゃぁぁぁっ!」

「「コホン。」…曹長。その手を速やかに退(ど)けろ。」

「神楽坂曹長は部下を纏めて、艦首格納庫のアレで待機!」
「折原チーフナビゲーターは、私と第一艦橋へ!」

「了解!!」

二分後、第一艦橋に姿を表した天城と折原は現状の報告を聞いた。

「…天城一等空佐。その格好は……。」

「古代艦長!お叱りは後程、伺います!」
「状況報告を願います!」

面を食らった古代ではあったが、状況を説明した。

「コルン!雷跡のトレースは出来ているか?」

「ハイ。夕貴サン。」

「…艦長!通常の空間魚雷じゃない、亜空間からの雷撃です!」
天城がそう告げた時であったコルンと交代した桜井が「雷跡4本!」を告げた。

「機関長!右舷、補助エンジン停止!艦首左舷、姿勢制御スラスター全開で噴射!」
「左舵90度ッ!!」

古代はこの天城の操艦に、今は亡き島の姿をダブらせていた_。

約70.000トンも有る巨体な船体が、まるでラリーカーのように宇宙の海をスライドさせてゆく。

「機関長!補助エンジン停止!」

「…停止!?」

「機関長!沈みたくはないでしょ?10秒で停止して!」

「り、了解!!」額に袖捲りした腕をあてがい、汗を拭う太助。

90度ターンしたヤマトは、急制動した。
艦内のほとんどのクルーが床に投げ出された。
そんな中、冷静にコルンだけは淡々と状況を報告した。

「夕貴サン。お見事!」
「ホーミング魚雷を含む亜空間魚雷4本は、交わしマシタ。」

「ふぅ~。」と息を吐き出す天城。

「第三波来ます!」
交わした安堵も束の間、間髪入れずに第三波亜空間魚雷攻撃に曝(さら)されるヤマトとクルーたち。

「折原!中央電算室で潜宙艦の居場所を割り出せ!」古代は折原に命じた。

「了解!」

そんな中、天城は意見具申した。
「艦長!そうそう何度も、亜空間魚雷を効せません!ですが、彼ら海兵隊に陽動させたいと思います!本来の使い方ではありませんが。」
「その間に居場所の特定を!」

「……強襲揚陸艇=ワスプを?海兵隊の発艦準備がまだだ。」

「それでしたらもう、準備は出来ています!」
「あとは、発艦命令だけです!」

「…流石だな。」
「よし。強襲揚陸艇ワスプは直ちに発艦せよ!」

ヤマト艦首格納庫のハッチが左右に開き、固定しているガントリーロックが解除され、一度、喫水線の辺りまで沈み込んだワスプは、元の喫水線まで浮かび上がると、降下用姿勢制御スラスターを吹かしながら、ゆっくりと降下、強襲揚陸艇ワスプが発艦した。

【強襲揚陸艇ワスプ】
※突撃揚陸艇:信濃の後続艇。
艇型はマッコウクジラにヤマトの安定翼を付けたような形である。
ブリッジは無く、ダブルデッキコックピットが艇首上部に設置されている。
(上段に操縦席×1・レーダー及び通信席×3・キャプテンシート×・1下段にCIC席×1)
これは、高機動力を優先し、上部構造物を無くす事で、被弾率を軽減する狙いがある。
突撃揚陸艇:信濃とは違い、本来の揚陸を目的として再開発された小型特務艇。
多脚戦車(重戦車)三両まで搭載可能。
(小型車両タイプ五台まで可能)
艇前部に格納庫、中部に武器・弾薬庫及びクルー待機室、後部に機関部を設ける。

全長:80m

武装
対艦ミサイル発射管×4門
対空ミサイルランチャー×2基
艇底部対艦・潜魚雷発射管×4門
十六連装波動爆雷投射基×1基
空間・亜空間ピンガー弾発射基×1基
25mm単装陽電子機関砲×8基

乗員:50名まで可能。



海兵隊。
対白色彗星帝国ガトランティス戦において、空間騎兵隊が事実上壊滅した為、新たに創設された部隊である。
基本的には旧空間騎兵隊と変わらない。
但し、隊員はパイロットの訓練を必ず受講しなければならない。
また、宇宙小型船舶以上の資格修得が義務付けられている。
これは万が一、正規パイロット又は航海士が負傷した場合でも、代わりに飛行又は操舵を可能にする為である。



「一丁、暴れるとするか!」
「柳伍長。亜空間ピンガー弾を一発、くれてやれ!」
「その後に、間髪入れずに波動爆雷初弾投下だ!」

「了解ッス!」

艇の中腹辺りから直径20Cm長さ50Cm程の筒が筍のように突出しすると、蒼白い光を纏った光弾が射出された。
その蒼白い光弾は宇宙空間を融解するように、ジワッとゆっくりと、別次元へ墜ちてゆく。

「カーーーン!」と数秒後、反響音が返って来る。
神楽坂曹長は急(す)かさず、波動爆雷投下を命じた。

「CIC!波動爆雷、第一波を投下せよ!」

「来た来た!了解!」柳はまるで子供が欲しくてたまらなかったオモチャを買って貰ったかのように、はしゃぎ気味に返答した。

ダブルデッキコックピット後方に八連装で二段で格納式に装備された波動爆雷投射基が、せりあがり16発の爆雷を上方に向かって射出、30mくらい舞い上がったところで落下、蒼白い光に包まれ、亜空間へと沈んでゆく。

数秒から数十秒の間の時間差で16個の光の輪が空間に浮かび上がる。

「曹長!亜空間深度5から100の間で波動爆雷の爆発を確認!」ソナー・レーダーを担当する一人、カティー・ヒロスエ軍曹が報告した。

「うむ。他に何か拾えたものは無いか?」

「…今のところ、何も。」ヘッドホンに手をあてがいながらカティー軍曹は返答した。

「よ~し。柳伍長!今度は波動爆雷と亜空間深度100にセットした亜空間魚雷二本を反響音が確認取れた場合に墜とすぞ!」
「カティー軍曹!動きを感知したら音紋を取れ!」

「了解!!」

その時であった、広域レーダーを監視する濱田軍曹が慌てて告げて来る。

「曹長!雷跡4本!ヤマトへ急接近!!」

「やはりな。奴は焦ってやがる。」
「潜望鏡深度に浮上して、状況を確認出来ずだ!」
「この空間にはヤマトしか存在しないと思い込んでやがる!」

だが、曹長の"勘"とは裏腹にワスプに向かって亜空間魚雷二本が迫っていた。

「……ん!?」
「空間境界面に雷跡二つ!!」
「コッチに向かって来ます!」

「なっ!?何ッ!」
「澤田!回避だ!」

「かっ、回頭、間に合わない!」その言葉と同時に、爆発音に包まれワスプは大きく揺れた。
乗艇する皆が、直撃を覚悟し備えていた。
だが、一向に沈む気配を感じない。
神楽坂は、そろりと瞑(つむ)る眼を片方だけ開けた。

「……助かった…のか!?」


「パルスレーザー掃射開始!!亜空間魚雷を撃ち落とせ!!」

「古代艦長。どうやら間に合ったようです。」

ワスプが射ち放ったピンガーによる反響音から折原もまた、潜宙艦の位置を逆探に成功、ヤマトはワスプの発進に合わせ、亜空間魚雷を射ち放っていたのだ。
これは、相手に亜空間魚雷の発射音を察知させない為だ。
それによって陽動するワスプは救われ、またガトランティス残党軍潜宙艦ハウンド・ドッグを亜空間の藻屑にしたのだ。
だが、この勝利の喜びも束の間、ヤマトのゆく手に憚(はばか)る超巨大な浮遊物体をヤマトのメインレーダーは捉えていた。
それは目視でも確認出来る程の超巨大な浮遊物体であった。

「前方より、十字架を逆さにしたような小惑星、接近!」
「…ん!?接近!?」メインレーダーを監視する桜井が報告を入れようとしたが、被せるように古代が、口を開いた。

「桜井!良く見てみろ!」
「あれは小惑星なんかじゃない!」
「あれは…あれは超巨大戦艦ガトランティスだ!!」

「…超巨大戦艦ガトランティス!?」
「当の昔に沈んだと言うか、消滅したはずでは!?」古代と桜井のやり取りに口を挟む上條。

「ああ。上條。お前の言う通り、19年前にその姿は女神テレサと共に消滅した!」
「だが、あれは間違いなく、あのガトランティスの巨大戦艦、おそらく同型艦だ!」
「だが、消滅したのは言われる"本隊"であって、残党が居たと考えるのが妥当だ!」
「ガトランティスは、この銀河系に植民地惑星を幾つも、保有していた。」
「当時は植民地惑星の事など、眼中に無かった……。」
「俺たちは当時のヤマトのクルーや地球連邦政府ならびに防衛軍は、目の前の敵の排除だけしか考える余裕が無かった……。」古代はうつむき、拳を握りしめた。

「ガトランティス本隊が地球圏から姿を消して、すぐに暗黒星団帝国の出現、地球の占領等と、たて続いた事でガトランティス残党を見落としていた。」
「例え、残党が居残っていたとしても、ガルマン・ガミラスやボラー連邦と言った星間国家が睨みを効かせていた。」
「時が来れば……なんて思いもあったかも知れん…。」
「今、悔やんでも仕方ない事なんだがな。」古代は自分に言い聞かせるように吐いた。




「それより、あの逆十字架の意味が解ったよ。」
「上條、十字架が意味するもの何だ?」

「…十字架と言えば神ですか?」

「そうだ。神だ。だが、奴らガトランティス残党が神ではない。」
古代はタブレットを開き、何やら書きはじめた。

【十字架→神→GOD→逆十字架→DOG→犬。即ち、地獄の番犬=ケロベロスだ! 】

「地獄の番犬=ケロベロス…ですか!?」

「上條、あの超巨大戦艦ガトランティスの奥をよく観てみろ!光点が在るのが解るか?」

「…あっ!解ります!」

「あれが、メッツラーを媒体とした=あの思考ホログラムの言っていた別次元の門だろう!」
「あの門の先に太陽系の星々も、雪も存在する!」

「桜井。艦内通信だ。」
「コスモパルサー第一攻撃機隊、雷撃機隊は直ちに発艦せよ!」
「第二攻撃機隊は発艦準備を急げ!」

「此方、小林!第一攻撃機隊発艦完了!!」
「これより目標の超巨大戦艦へ攻撃を開始する!」

「艦橋了解!ご武運を!」

ヤマト航空隊第一攻撃機隊は13機から成る攻撃機隊である。
航空隊隊長と編隊長を兼任する小林以外は、2機で一組の編隊である。
同様に佐々木を編隊長とした雷撃機隊も第二攻撃機隊編隊長工藤以外は、2機一組の編隊を組む計39機の三編隊構成。
※予備機を合わせて42機のコスモパルサー機を搭載している。

ヤマト航空隊の基本攻撃パターンとしては、第一攻撃機隊が敵艦載機を惹き付け、雷撃機隊の艦爆攻撃と続き、第二攻撃機隊が援護に入り、第一攻撃機隊と交代、第一攻撃機隊は速やかに帰艦、整備と補給を済ませ、再び発艦し、雷撃機隊及び第二攻撃機隊と共に帰投、雷撃機隊及び第二攻撃機隊の帰艦後、順次帰艦する。
これが基本的は攻撃パターンである。

今回、敵艦載機隊が存在しない極めて珍しい戦闘パターンの為、小林率いる第一攻撃機隊は、佐々木率いる雷撃機隊の支援に専念した。

「何時に成ったら艦尾が見えて来るんだよ?」

「隊長。ボヤキは禁物ですよ~。データによると全長12キロメートルも有るようです!」

「にしても、図体ばかりデカイが、近接兵装は少ないのか!?」
「こりゃ美晴に仕事(たのしみ)取っといてやらないと、ムクれちゃうな。」
鼻歌やジョーク混じりにパルサーを飛ばす小林は、次の瞬間、度肝を抜かれる。
逆十字架のように直立浮遊していた超巨大戦艦が、動き出したのだ。
直立浮遊から水平へと体制を変えると同時に発砲した。
砲塔一基が、ほぼヤマトの全長程の大きさが有る。
その数、艦体上部だけでも16基、側面6基、下部に2基も装備されている。
その上部に装備された16基の砲がヤマトに対し、一斉射撃を行ったのだ。

「…マジかよ!?」
「アイツ動き出しやがったぞ!!」
「全機!散開せよッ!!」

「編隊長!!超巨大戦艦が発砲した!!」

「あれだけの砲撃、ヤマトは無事なのか?」

「……どうやらシールドミサイルを使用したようで、無事を確認!」
「おそらく波動フィールド・ミサイルを使用したと思われる!」
「着弾したヤマト周辺に特殊な歪みとプラズマ波が、確認出来る!」

「そうか!ところでコッチは全機、無事か?」

「無事です!」の返答に小林は安堵の表情を見せた。


【タキオン波動粒子エネルギー弾頭ミサイル=波動フィールド・ミサイル】
波動エンジンで生み出されるエネルギーをそのまま使用し、弾頭に詰め込んだ防衛用エネルギー弾で、中にはタキオン粒子で覆われた3次元空間があり、この空間は周囲の空間連続体と比べて非常に不安定なもので、攻撃を受けた目標は周囲の時空間が歪曲して崩壊・誘爆に至る。



「艦長!散開する攻撃機隊とワスプを一旦、引き上げさせ、トランジッション波動砲で一気に方をつけましょう!」

「駄目だ!」

「何故です?」

古代は上條からの具申「トランジッション波動砲」の使用に許可を出さなかった。

「上條。波動実験艦武蔵は何処で、地球や太陽系の惑星がブラックホールに飲み込まれた事を教えてくれた?」

「…銀河中心部のブラックホール。」

「そうだ。銀河中心部のブラックホールだ。だが、あの"次元の門"の手前には、この超巨大戦艦ガトランティスの残党軍しか存在しない!」

古代の説明に何かを感じた上條は、トランジッション波動砲使用不可を受諾した。
そう。ヤマトの航海はまだ、半ばを過ぎたに過ぎない。
次元の門の先に、まだ目にした事のない"本隊"が待ち受けている。
トランジッション波動砲を使用すれば、ヤマトは一時的だが、全てのエネルギーを失う。
仮にガトランティス残党軍を超巨大戦艦を殲滅させたとしても。

「上條。ここに折原に作らせた簡易的だが、あの超巨大戦艦の平面図がある。」

「あの時は全く余裕がなかったから気が付かなかったが、あの超巨大戦艦は艦体上部に武装が、集中している。」
「艦底部には近接兵装は、はっきり解らないが、大型兵装は翼の下部に二基と格納された主砲しかない。」
「艦首後部に砲塔が二基確認出来るが、この格納された主砲の先端部分にバリアミサイルを利用して、ヤマトを接近させ、接岸する。」
「この場所なら装備された兵装では、射角が取れない。」
「白兵戦を仕掛け、推進機部を破壊する!」

「丁度、強襲揚陸艇ワスプは発艦が完了している。」
「それと、バリアミサイルを展開して、ヤマトを下部に降下させている間に残りのコスモパルサー隊を発艦させる。」
「いくら火力がデカイがとは言え、五月蝿く飛び回るコスモパルサー隊を狙い撃ちする事は不可能だ!」

「活路を開くにはこの方法しかない!」

「桜井!全艦及び散開するコスモパルサー隊とワスプに通達!」
「これより超巨大戦艦に対し、白兵戦を仕掛ける!」
「待機中のコスモパルサー隊はバリアミサイル発射と同時に発艦せよ!」

「上條!バリアミサイルをヤマトの左右と前方に発射!」

「天城!ヤマト緊急発進!!目標、超巨大戦艦ガトランティス!」
「下部へ降下せよ!」

「了解!!」

全部署の返答が返ると、古代はヤマトを緊急発進させた。

超巨大戦艦ガトランティスの集中砲火が激しく成る中、宇宙戦艦ヤマトは古代艦長の指揮の下、全速で降下、超巨大戦艦の艦底部を目指した。
バリアミサイルが張り巡らされた防御膜を盾に、散開するコスモパルサー隊、強襲揚陸艇ワスプを一度、ヤマト後方に纏め、第二攻撃機隊の発艦を完了させた。

「艦首、姿勢制御スラスター噴射!」
「ロケットアンカー射出!」
「ガトランティス艦艦底部に固定!」
ヤマトの操縦悍を握る天城一佐の額に汗が滲む。
「踏ん張りが効かないッ!」と言葉を溢すと、履いていた踵高10Cmのピンヒールのパンプスを脱ぎ捨てた。
腰の辺りまで入ったチャイナドレスのスリットからガーターベルトで固定された黒いストッキングに包まれた太ももを覗かせた。

急制動で停止したヤマト。
完全停止し、艦内に異常が無い事を確認した天城一佐は、コルンを呼んだ。
「五分、私と交代して。」そう告げると自席を立ち、「艦長。五分、離れる許可を。」
「艦内服を着用したいと思います。」と告げた。

「うむ。よかろう。」

許可を得た天城は脱ぎ捨てたパンプスを拾い、第一艦橋を後にした。

ヤマトの接岸と同時に嵐のような砲撃はピタリと止んだ。
この機を見逃さず、小林率いる第一攻撃機隊は艦底を飛び回り、推進機に寄り近いエアダクトを目指す強襲揚陸艇を援護した。
一方、佐々木率いる雷撃機隊及び第二攻撃機隊は、艦上部をスレスレと飛び回り、ブリッジを目指した。
戦艦の上を飛んでいるという感覚は無く、むしろ要塞の中を飛行している感覚だ。
ヤマト程の大きさのある砲塔や上部構造物を3D化した映像を頼りに、射角に入らないよう集中しての飛行は、そう長くは続かない。
身体自身が持たないと言った方が、正解かも知れない。
少しでも、高度をはみ出れば即、砲撃の餌食なのだ。

「美晴!コッチは揚陸に成功、海兵隊が乗り込んだ!」

「了~解ッ!」
「佐々木隊は全機!艦爆を開始せよ!」

その号令を待っていましたと言わんばかりに、各機は散開、対艦ミサイルをぶっ放した。



「隊長。やっぱ積んで来て正解でしたね。」

「まぁな。だだっ広いかんな。こんな場所で使うなんて思ってもいなかったがな。」
「陸じゃなくて、戦艦の中だかんな。」

【全地形対応型多脚戦車アスタラス】

ブルーアースから派遣された海兵隊らは、揚陸艇に搭載した全地形対応型多脚戦車三両に分乗、超巨大戦艦機関部を目指していた。

「おっと!ガトランティスの武装兵らのお出迎えだぜ!」
「散開しながら、踏み潰せ!」

「おいおい!奴ら対戦車ミサイルランチャーまで、持ち出したぞ!」

「艦内っていうより、室内演習場だぜ!」

「おう。派手に暴れんのは構わないが、弾、取っておけよ。推進機、手作業で破壊は勘弁だからな。」

「了~解!!」



天城は自室に戻るとドアが閉まるか閉まらないくらいのタイミングで、歩きながらチャイナドレス脱ぎ、ブラとガーターストッキング、ショーツも着替える次いでに脱ぎ、汗を拭うと全身を鏡に映した。
全裸の身体が映し出され、頭のてっぺんから足指の先まで、上から下、下から上へと一往復、眺めた。
「…う~ん。あとは作戦が終わってからじゃないと無理ね。」と、うなじに手をあてがい髪の毛を持ち上げながら呟いた。

同時に背後から何が近づく気配を感じていた。
「誰!?」天城は「パッ」と振り返ると素早く手刀の構えを取った。
目の前がカメラのフラッシュを炊いたような一瞬、眩しい光に包まれた。

「丁度良い媒体だな。」
「我が名は"白銀の巫女"シファル・サーベラー。」
「まだ、第二形体だがな。」

「……なっ!何が一体……?」
第二形体:白銀の巫女を名乗るシファル・サーベラーは天城の裸体に触れた。

「……うぐぐっ………。」天城は言葉に成らない言葉を発した。
前屈み気味で内腿(うちもも)に力を入れた。

「閉じるな!これは運命(さだめ)られた儀式。」
「我を受け入れる運命(さだめ)。」

「あん…うううううっ……。」

「あと少しの我慢だよ。ほ~ら、入った。」

天城の目の前は全裸を映す鏡が有るだけだった…。

「……あれ!?」天城は一瞬、寝ぼけていたのかと思うほど、鏡の前に立った時と何ら変わりなかった。

「…早く着替えを整えて戻らないと、コルンに叱られるな。」

そう呟きながらエアボディ・スーツを着た。

エアボディ・スーツは、2202年に女性パイロット用に新開発されたボディ・ストッキングのような全身にフィットしたボディスーツで、半透明からブラック系の色に手首に装着されたコントロールキーで変える事が可能で、また、体温に合わせ自動的にスーツ内を快適な温度に保つ機能やクッション材のような役割も備え、長時間の戦闘等に耐え得るなどが高く評価され、当初は艦内服として認められていたが、男性の目線が釘付け…と、その上に他の上着を羽織るように成った為、現在でも一応、艦内服と認められてはいるが、インナー扱いするクルーが殆どだ。

身支度を整えた天城は、第一艦橋へと戻った。



「……ガガ…ガ………ッーーー。」耳障りな音が、ヘルメットに内臓されたインカムから聞こえて来る。

真っ白な閃光が幾つも重なり合う。
眩しさに額に手の掌をあてがい、目を細め何が起きたのか確かめた澤田は、次の瞬間、柳伍長の乗車する多脚戦車が瞬時に青白い光と共に消えるのを見た。

「隊長ッ!柳伍長の戦車が…戦車が消滅したッ!」
「奴ら、ガトランティスは、ただの対戦車ミサイルランチャーなかんかじゃない!」
「あれは…あれはバスターグレネード弾だ!」
「19年前、木星ガニメデ基地が、空間騎兵隊が、壊滅させられた時に見た奴と同んなじだ!」

「かっ、囲まれた。」
「奴ら死を躊躇わない覚悟だ!」

「んな物んまで持ち出したって事は…」
「俺たちは……俺たちは罠にハメられた……。」
「カティー軍曹!聴こえるか!?」

「何んだい?」

「一度しか言わねぇから、よく聴けよ」
「カティー。俺たちが侵入したエアダクトを破壊しろ!」
「風穴、開けたら航空隊隊長さんに、ありったけの対艦ミサイルをぶっ放なせと伝え、お前はヤマトに帰投しろ。」

「隊長!?どうやって脱出すんの?」

「悪りぃ。腹ん中の子の父親(おやじ)に成れねぇ。」

「なっ!?何、言ってんのか解んない!」

「ガガ…ガ………。」

「…地球を………………。」

「……隊長!?神楽坂隊長!?」

「うわぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」

「よ、よくも!対艦ミサイル発射管ハッチオープン!!」
「喰らいやがれぇーーーッ!!」

「航空の隊長さん……聴こえる?」
「ありったけの対艦ミサイルをここから撃ち込んで!!」

「カティー軍曹!?どうした?何があった?」

「隊長…隊長が死んだ……中の部隊は壊滅…した……。」
「神楽坂隊長の遺言なんだよ。」
「遺言なんだよォーーーッ!!」

「小林から各機へ!」
「ワスプが開けた穴から、ありったけの対艦ミサイルを撃ち込め!!」

内部から誘爆を招き、12キロメートルも有る超巨大戦艦ガトランティスは、腹腸(はらわた)を喰いちぎられるかのように、血反吐を吐き散らすように彼方、此方で爆発、輝かしい爆焔の花火を散らしていた。

「全機、ヤマトに帰投せよ!」
「カティー軍曹!帰投だ!」
「彼の、隊長の死を無駄にするな!!」

だが、そんな哀しみなど関係無いと言わんばかりに、超巨大戦艦ガトランティスは艦首部から後ろを切り離し、艦爆を繰り返す佐々木率いる雷撃機隊及び第二攻撃機隊に牙を向く。

「かっ艦長!」
「ガトランティス艦の艦首が……艦首が分離した!」
慌てふためく桜井が告げた。

「上條!ロケットアンカーを切り離せ!」
「砲雷撃戦よーい!!」

「主砲、一番、二番、撃ち方はじめッ!!」

ヤマトが撃ち放つショックカノンを何発も何発も、直撃を喰らう超巨大戦艦ガトランティスの分離した艦首部が、黒煙を撒き散らし、眼前にまで迫っていた。

「地球人よ!銀河に散らばる我が同胞ガトランティスの民よ!よく聞け!」
「我がガトランティスは必ず、復活を成し遂げる!!」
「サーベラー閣下が我を残党を導く!」
「サーベラー閣下は必ず復活を成し遂げ、導いてくれる!」宇宙空間に響き渡るガトランティス艦に残る残兵の声は、宇宙戦艦ヤマトにも届いていた。

「…ぶ、ぶつかる!」震える声の桜井が言った。
だが、迫るガトランティス艦首部とヤマト第三艦橋は、紙一重の距離を残し交わした。

「ふ~う。間に合ったようね。」神業的な操艦をやってのけた天城一佐の姿があった。

「コルン。ごめんなさい。ちょっと遅く成ったわね。」

「次はお仕置きですからネ。」

「はい。はい。」

「はい。は一回デ。」

「はい。はい。」

「言った矢先ら…お仕置きネ。」
「バチッ!」

「痛ッ!」
「ごめんなさい。」

「ガトランティス艦艦首部、消滅を確認。」ポカンとする桜井に代わり、折原が報告した。

「うむ。」

「機関長。補助エンジン出力、三分の一。」

「天城一佐。進路をあの光点=次元の門へ。」
「全艦に通達。各部署は整備及びダメージコントロールを急げ。」

「了解。」



「ルシファー様。どうやら"人間"が、この次元の境目まで、たどり着いたようです。」
「いかがなさいますか?」

「うむ。今しばらく放っておけ。」

「では番犬の役にも、たたないかったガトランティスを名乗る人間らは、いかが致しましょう?」
「死滅、致しますか?」

「…そう焦るな。契約も、あと一つ残っている。」
「手足としては、まだ、使えるだろうからな。」
「それに、我らを封じたアクエリアスの女神は、その力も衰えた。」
「我らが完全復活するには、人間の力がまだ必要な時、我が親愛なるガブリエルよ。あと少し、機が熟すのを待て。」

「仰せのままに。」



「船外作業班より艦橋へ。」

「此方、艦橋。何か?」

「船外の修復作業を完了。入艦する。」
「エアロックの減圧をお願いする。」

「了解。エアロック室にて待機せよ。」

宇宙戦艦ヤマトは修復を終え、カティー・ヒロスエ軍曹の具申を聞き入れ、艦長古代は戦死者を弔う為、宇宙葬を行った。

・宇宙防御第二艦隊旗艦ブルーアース所属第一海兵隊群第六分隊隊長:神楽坂 彬曹長。(二階級特進により三等宙慰)
・同分隊隊員:濱田 勉軍曹(二階級特進により准慰)
・同分隊隊員:柳 将吾伍長(二階級特進により曹長)
・同分隊隊員:澤田 将一等宙士(二階級特進により軍曹)
と続き、航空隊隊員、戦術科、航海科、機関科、本作戦に参加し、惜しくも命を落とされた戦死者57名は手厚く葬られた。

「捧げー砲!」
「黙祷。」艦長古代の号令に合わせ、選出されたクルーたちによる弔砲(ちょうほう)が行われた。



宇宙戦艦ヤマトは速度を上げた。
ヤマトの両舷を流れる星々は、流星群の天体ショーを思わせる。
この先の不安が頭の片隅に追いやられてゆく_。

修復を終え、再発進から一時間が過ぎ、ヤマトから見える景色が、代わりはじめた。

銀河系は太陽系を含む銀河の名称である。
地球から見えるその帯状の姿は天の川と呼ばれる。

1000億の恒星が含まれる棒渦巻銀河とされ、局部銀河群に属している。
通常の銀河と同様、銀河系も数多くの恒星や星間ガスなどの天体の集まりで、全質量は太陽の1兆2600億倍と見積もられている。
そのうち可視光などの電磁波を放出している質量の合計は5.1%以下の643億太陽質量で、質量の大部分は暗黒物質であると考えられている。
中心付近には比較的古い恒星からなる密度の高いバルジを持ち、それを取り巻くように若い恒星や星間物質からなる直径約8万-10万光年のディスク(銀河円盤)がある。
ディスク(銀河円盤)の厚さは中心部で約1万5000光年、周縁部で約1000光年で凸レンズ状の形状を持つ。
ディスク(銀河円盤)の中には明るい星や散開星団、散光星雲などが多く見られる渦状腕が存在する。

「想像していたより、明るく感じる空間ですね。」無言の艦橋内でいち早く口を開いたのは天城であった。

その天城の言葉に口を挟んで来た折原は、「カタカタ」とキーボードを叩き、立体化した映像をメインスクリーンに映し出した。
「ですが本来なら、この辺りに、いて座Aの中心部には超大質量ブラックホールが存在するのですが…」

「そのブラックホール自体が消えてしまった…。」

「…そうです。」

「すべては、あの門を潜れば解るという事だ。」


◆◆◆◆


超大質量ブラックホール(英: Supermassive black hole)は、太陽の105倍から1010倍程度の質量を持つブラックホールのことである。
全てではないが、銀河系(天の川銀河)を含むほとんどの銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在すると考えられている。

超大質量ブラックホールには、比較的質量の小さいものと比べて際立った特徴がある。
(質量をシュヴァルツシルト半径内の体積で割って求めた)平均密度は低い可能性があり、実際に地球の大気よりも低密度かもしれない。
これは、シュヴァルツシルト半径は質量に比例するが、密度は半径の3乗(体積)に反比例するためである。
無回転ブラックホールの事象の地平面のような球体の体積は半径の3乗に比例するが、質量の増加は直線的であるため、体積は質量よりも急激に増加する。
そのため、ブラックホールの半径が大きくなると、密度は小さくなる。
ただし、この現象は数学的な定義からくるものであり、必ずしも実際の物理的な特徴として保証されるものではない。
また、これは単に事象の地平面の半径が非常に大きいことを表しているに過ぎず、したがって比較的低密度な広い領域を含みつつ中心はやはり非常に高密度でありうる。
事象の地平面近傍でも潮汐力は非常に弱い。
中心にある重力の特異点までの距離が遠いため、ブラックホールの中心に向かう宇宙飛行士がいるとすれば、かなり深く進むまで、スパゲッティ化されることはない。

宇宙物理学者 Steven H. Rainwater が率いるマックス・プランク地球外物理学研究所とカリフォルニア大学ロサンゼルス校のチームは、ヨーロッパ南天天文台とW・M・ケック天文台による観測データから、銀河系の中心にあるいて座A*が超大質量ブラックホールである証拠を突き止めた。
我々の銀河の中心にあるブラックホールは、約410万太陽質量にあたる、約8.154572 × 1036kgの質量を持ち、シュヴァルツシルト半径は0.08auになると計算した。



【ルシファー】

明けの明星を指すラテン語であり、光をもたらす者という意味をもつ悪魔・堕天使の名である。
キリスト教、特に西方教会(カトリック教会やプロテスタント)において、堕天使の長であるサタンの別名であり、魔王サタンの堕落前の天使としての呼称である。

天使たちの中で最も美しい大天使であったが、創造主である神に対して謀反を起こし、自ら堕天使となったと言われる。堕天使となった理由や経緯については様々な説がある。
神によって作られた天使が神に背いて堕天使となったという考えは、旧約偽典ないしキリスト教黙示文学の『アダムとエバの生涯(英語版)』にみられる。
その中で悪魔はアダムに向かって、自分は神の似姿として作られたアダムに拝礼せよという命令を拒み、そのために神の怒りを買って天から追放されたのだと語る。
『クルアーン』にもこれに類似した話があり、イブリースは粘土から作られたアダムに跪拝せよという神の命に背いて堕落したと数箇所で述べられている。
キリスト教では悪魔は罪によって堕落した天使であるとされ、オリゲネス、アウグスティヌス、ディオニュシオス・アレオパギテス、大グレゴリウス、ヨハネス・ダマスケヌスらは天使が罪を犯すという問題について論じた 。
大グレゴリウスやセビーリャのイシドールスは、罪を犯して堕落する前のサタン(=ルシファー)はすべての天使の長であったとし、中世の神学者たちも、サタンはかつて最高位の天使である熾天使か智天使の一人であったと考えた。
悪魔にルシファーの名を適用したのは教父たちであった。
たとえばヒエロニムスは金星を指すラテン語であったルーキフェルを、明けの明星としての輝きの喪失に悲嘆することになる、かつて大天使であった堕天使長の名とした。
この光の堕天使としてのルシファーの名がサタンの別称として普及したが、教父たちはルシファーを悪魔の固有名詞としてでなく悪魔の堕落前の状態を示す言葉として用いた。
キリスト教の伝統的解釈によれば、ルシファーは元々全天使の長であったが、神と対立し、天を追放されて神の敵対者となったとされる。
「ヨハネの黙示録」12章7節をその追放劇と同定する場合もある。



【ガブリエル】(ヘブライ語: גַברִיאֵל‎、アラビア語: جِبرِيل‎、英語: Gabriel)は旧約聖書『ダニエル書』にその名があらわれる天使。
ユダヤ教からキリスト教、イスラム教へと引き継がれ、キリスト教ではミカエル、ラファエルと共に三大天使の一人であると考えられている(ユダヤ教ではウリエルを入れて四大天使)。
西方キリスト教美術の主題の一つ「受胎告知」などの西洋美術において、彼は優美な青年で描かれる。
時には威厳のある表情で描かれることもある。
聖書においてガブリエルは「神のことばを伝える天使」であった。
ガブリエルという名前は「神の人」という意味である。
キリスト教において、最後の審判のときにラッパを鳴らし、死者を甦らせる天使はガブリエルである。




【第四代 宇宙戦艦ヤマト】

イスカンダル航海時を初代とし、対白色彗星帝国ガトランティス戦に参戦したヤマトが二代目とカウントしています。
そして、三代目が対暗黒星団帝国(デザリアム)戦、ディンギル帝国に参戦ヤマトとカウント。
今回の2220年アクエリアスの氷塊から回収され、造られたヤマトを四代目とカウントしました。

超弩級宇宙戦艦

全長:280.00m

艦体幅:43.60m

最大幅:61.77m(安定翼展開時:87.72m)

艦体高:94.54m
最大高:99.47m

最大速力
(通常航行時) 亜光速

主機関:タキオン粒子陽電子流動式六炉心波動エンジン×1基
副機関:陽電子タービン×8基・2軸

兵装
艦首波動砲×1門(六連射が可能また、六連発分の波動エネルギーを一度に放出するトランジッション波動砲を発射可能。)

主砲:46糎三連装陽電子衝撃砲塔×3基(9門)
副砲15.5糎三連装陽電子衝撃砲塔×2基(6門)
魚雷発射管×12門(艦首および艦尾両舷)
上部八連装ミサイル発射塔×1基
両舷八連装ミサイル発射基×2基
亜空間魚雷発射管×8門(艦底)
94式爆雷投射機(マスト付け根)
12.7糎四連装高角陽電子速射砲塔×8基
8.8糎三連装高角陽電子速射砲塔×2基
12.7糎連装高角陽電子速射砲塔×8基
7.5糎連装高角陽電子速射砲塔×10基
7.5糎三連装陽電子速射機関砲塔×4基
司令塔近接防御火器×2基

艦載機
艦載艇
艦載車両
改・零式52型空間艦上戦闘機コスモゼロタイプ21×1機
改・1式空間戦闘攻撃機 コスモパルサー×39機(+予備機3機)
100式空間偵察機×2機
99式内火艇×2隻(救命艇)
作業用装載艇×6隻

強襲揚陸艇ワスプ×1艇(特務艇)

特殊装備
亜空間ソナー

※私設定が混ざっています。


後編へ
つづく。


この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。
既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。
使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。
一部、私の設定及び解釈が混ざっています。

宇宙戦艦ヤマト2220ー雪・生還編ー第七話

2020-02-26 21:50:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作



宇宙戦艦ヤマト復活編二次創作

宇宙戦艦ヤマト2220ー雪・生還編ー

第七話




コルンは、娘、夕貴に憑依したサーベラーを足払いで床に押し倒すと、腕に内臓された電流蓄積器をスタンガンモードに切り替え、指先からパルス状の電流を放電、サーベラーを気絶させた。

「これでヨシ。」
「佐々木サン。聴こえて?」
「アナタの医療室ヲお借りしたい。」

「いいわよ。出撃だから。」

「アリガトウ。」
礼を告げたコルンは憑依したサーベラーを抱え上げ、医療室へ運んだ。








「コスモパルサー全機、発艦準備完了!」
「繰り返す。コスモパルサー全機、発艦準備完了!搭乗員は速やかに搭乗せよ!」
管制クルーからアナウンスが入る。
小林、佐々木らをはじめとする搭乗員が一斉に動きだした。

「小林。一つ確認。」
「塔に侵入したら、上?それとも下?」

「決まってんだろ!下だよ!」
「スリル満点!急降下ジェットコースターだよ!」

「了解。」
「だってさ。」
「残るなら今のうちだよ。」

「大丈夫。乗せて行って。」

「解った。銃座、頼んだよ。」

「ラジャー!」佐々木とカティーは拳を「コツン。」と当てた。

周りのエンジン音が五月蝿く成る中、佐々木とカティーは、発艦準備を進めた。

ハシゴを登り、機体上部をチェック。
キャノピーを開け、キックインステップ脇のキャノピー外部コントロールハンドルを使い、ボタンを押してハンドルを引き出し後方に回した。
佐々木はコックピットに座り、カティーは銃座に身体を沈めた。
搭載された管制A.Iがサポート、スクランブル発進手順に入った。

メカニックに対し指一本あげて合図し、エンジンマスタースイッチをオンに、「ジェット燃料スタータをオン。」
約15秒後、スタータのレディランプが点灯した。
「火災警告灯が点灯なし。」
佐々木は、次に指2本立ててメカニックに合図し、右側のエンジンスロットルフィンガーリフトを上げた。
右エンジンが点火、スロットルを18%に。
ファンタービン入り口温度計が600度、安定した。
続いて左エンジンスタート。
機体後方に蜃気楼が現れはじめた。
警告灯が正常。
「慣性航法装置アライメント調整。」

「輪止めを外してくれ。」
「タキシングを開始しする。」
佐々木はブレーキを踏んで作動チェック、飛行計器が正常かチェックした。

「発進カタパルトへ接続する。そのまま待て。」ヘルメットに仕込まれたインカムを通し、佐々木に伝えられた。

カタパルト上でブレーキを踏み込み左右のスロットルレバーをミリタリーパワーまで前進させ回転計、油圧計、燃料流入計、ファンタービン入り口温度計をチェック。

「回転数90パーセント以上、タービン入り口温度322度で正常。」

「ピッチ角を10度!」
「アフターバーナー点火!」

「コスモパルサー佐々木機、射出ッ!!」


※イメージ曲【宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ちーコスモタイガーのテーマ】より引用。

だが、コスモパルサー隊が発艦した事により、"手ぐすねを引く"ワルキューレたちも動きだした。

「小林隊長!自分たちの動きに釣られて奴ら人型も動き出した!」

「よーし!俺たちで先行し、引き付ける!」
「奴らの大切な塔内部で暴れてやんよ!」

「美晴!人型の後方から突入、人型を墜とせ!!」

「了解!」


古代は一歩、前に踏み出し、選択の答えを告げた。

「ルシファーと言いましたね。」
「二人を返して頂こう。」
「生け贄にする人選は、済んでいる。」

「ほう。生け贄を差し出すか。」
「仲間の犠牲で自分たちは助かりたい!?」
「まぁ。いいだろ。」
「だが、あの媒体以上の媒体を差し出して貰わん事には、割りに合わんな。」

「それは出来ない相談だ。」
「ルシファーさん。貴女(あなた)は子を宿事の出来る者を差し出しせとしか言わなかった。」
「違いますか?」

「フハハハハハ。」
「人間よ。調子に乗るなよ。」答えを告げた古代に対し、豪快に笑う美少女姿のルシファーは、顔つきを変え、詰め寄った。

「一本、取られましね。ルシファー。」
詰め寄るルシファーを制止するように右腕的存在であるガブリエルが、姿を現した。

「私はガブリエル。」
「人間よ。悪いことは言わん。今、直ぐに跪まづけ。」
「これ以上、怒らせれば私でもルシファーを止める事は出来ない。」


【ガブリエル】イメージ

「断る!」毅然とした姿勢を貫く古代。

「…ならば死を!」

「ガガガガガーーーッ!!」古代らが居る場所から下層で機銃音が聴こえて来る。

「ん!?何事……。」


コックピットからも機尾の弾痕が確認出来た。
僅かな死角に佐々木は「かすり傷」と判断した。
だが、実際には違っていた。

「……ツぅ…。佐々木さん。

「ん!?何だい?」

「…アタシ…アタシ駄目かも……。」

「……。」
「ちっ!死角を忘れてたよ。」

「此方、第二編隊隊長:佐々木。隊長。小林隊長。聴こえる?」

「どうした?美晴?」

「ごめんよ。被弾しちまった…。」

「ひ、被弾って大丈夫なのかよ!」

「大丈夫。ごめんよ。戦線を離脱する。」
「小林。あんたは、被弾なんて事は許さないから。」

「おうよ!」
「ん!?てか……第二編隊長佐々木へ。ヤマトへ帰投せよ。」
「無事な帰投を。」

「了解。」


「カティー軍曹!」
「帰投命令が出たよ。ヤマトへ、ヤマトへ帰ろう。」
「…あんたを、あんたを死なせはしないよ!」
「あんたのお腹の中には、新しい未来が…未来を繋ぐ為にも……。」
「戻って…戻ってよ!」
「カティーーーッ!!」



ー銀河中心部近傍空間ー



「ワープアウト!」
「艦内外、異常無し。」

「うむ。」
「レーダー士!例の艦(ふね)は確認出来るか?」

「…いえ。まだ何も。」

「ん!?艦長!超空間通信!」
「光子帆を最大で展開して欲しい。であります。」

「うむ。」
「光子帆=シールド最大展開!」

イリヤ女王の命(めい)を受け、銀河中心部に赴いたアマール星所属戦闘艦パスカル級オーディーンは、艦首に装備された巨大な光子帆=シールドを最大値で展開した。

「下方より超重力波を感知!!」
「ま、待って下さい!その後方から超波動エネルギー光弾を感知!!」
「シールドが持ちこたえられかどうかです!!」






「どうやら間に合ったようだな。」

デスラー砲艦を改良した超重力波砲艦から発射された超重力波砲と、デスラー艦から発射されたハイパーデスラー砲は、パスカル級二番艦オーディーンの張り巡らされた光子帆=シールドを利用し反射され、二つのハイパーエネルギー光弾は混ざり合い、ヤマトが突入した"虚遇の次元"の中心核を貫らぬいた。


今から17年前、西暦2203年、銀河系中心部の宇宙で大きな異変が生じた。
別次元から別の銀河が現れ、核恒星系付近で銀河系同士の衝突が起こり、多くの星々が消滅した。
この宇宙災害は、その宙域にある地球との友好星国家「ガルマン・ガミラス帝国」の本星へも及んでいた。
デスラーは新たなる母星を探す為、残党を纏め、宛は無きに等しい航海に出ていた。
17年におよぶ航海の中、補給の為、立ち寄った惑星アマールで、地球を含む太陽系がカスケード・ブラックホールに呑み込まれた事を知ったデスラーは、イリヤ女王と対談、協力を取り付けいたのだ。

「なるほど、我々ガミラスにも責任があるのかも知れんな。」
「イリヤ女王。勝手なお願いではあるのだが、貴女(あなた)の護衛艦を一隻、お借りしたいのだが。」

「いいでしょう。貴方(あなた)の地球を救いたいとの想いを汲(く)んで、協力致しましょう。」
二人は眼下を見下ろした。
そこには、何も知らないアマールの民と地球の民が、いっしよに協力しあい破壊された城下町を再建していた_。


虚遇の次元は歪みはじめると同時に、この次元の本体とも言えるルシファーと参謀役的存在のガブリエルは融合し、その正体をさらけ出した。


【悪魔王サターン】イメージ

「フハハハハハッ!」

「愚かな人間よ。」
「我を本気にさせた代償は死滅である!」
「冷凍睡眠化しているお前たち同様の人間も、惑星群もすべて無に還してくれるわッ!!」

「そうはさせません!悪魔王サターン!」白銀の霧と共にその声は聴こえた。
と同時に、輝かしい光弾がサターンの足元に墜ちた。
サターンに動揺は見られなかった。
やがて白銀の霧が晴れると、そこには美しい女性が一人、立っていた。

「私は女神ガイアの末裔アーシャ。」


【女神ガイアの末裔アーシャ】イメージ。

「……貴様ッ!!」

「10.000年ぶりかしらね?悪魔王サターン。」
「アナタはガブリエルの力を借りても、自身の子を宿す能力は封印されたまま。」
「自身の世継ぎを残せず、取った行動が憑依する媒体の確保。そして、己の力を保持する為の侵略、いえ惑星(ほし)を丸ごと略奪、資源を採り尽くし廃棄する。」アーシャは天、高く指をさした。
古代は、ここへ来る途中に見た無造作に配置された惑星の山を思い出していた。

「古代とやら、悪魔王サターンは私が引き受けます。」
「貴方(あなた)は二人を連れて、この塔から脱出を。」

「ですが、どうやって二人を救出したら……。」古代は頭上を見上げ、クリスタルカプセルの雪の存在と後ろ手に拘束された美雪の存在をアーシャに教えた。

「それでしたら大丈夫よ。貴方のヤマト(方舟)を呼び寄せて有ります。」
アーシャは指を「パチリ!」と鳴らした。





ゴロゴロと崩れ落ちる煉瓦の壁。
土煙が舞い上がる中、宇宙戦艦ヤマトは、その姿を現した。

「さあ。お行きなさい。」

古代は軽く拳を握りった右腕を胸に当てると、コスモパルサーに飛び乗り、ヤマトを目指し飛び立った。


◆◆◆◆


古代たちの目には幾つもの輝かしい光が、縦横無尽に飛び回っているように見えた。
その間(かん)古代は、後ろ手に拘束された愛娘、美雪を助け、クリスタルカプセルを制御するシステム機を破壊、雪を助け出した。
やがて、幾つもの輝かしい光は一つだけと成った。
同時に雪と美雪を乗せ、古代のコスモパルサーはヤマトに帰投した。

勝負が着いたのだろう。
女神アーシャはヤマトの第一艦橋にホログラム映像が、浮かび上がるように姿を現した。

「もう、大丈夫です。悪魔王サターンとガブリエル、その下部(しもべ)らは、冥府に封印しました。」
「冥府の王ハーデースにお願いしてね。」
「甦ったサーベラーを差し出す事を条件にね。」
「でも、大丈夫よ。憑依された彼女は無事よ。」
「元の人間として、生きて行けるわ。」
「それと、未来を繋ぐ新たな生命(いのち)も。」

「…すべて古(いにしえ)の神話の人物かと思っていました。」

「ウフ。」アーシャは軽く微笑んだ。

「でも、テレサやアクエリアスの女神は信じたのでしょ!?」

「……それは…。」

「それで良いのよ。古代。」

そう言うと女神アーシャは語りはじめた。

「古代。神話に登場するガイアは地母神であり、大地の象徴と言われるのは、ご存知ですね。」

「太古の昔、神々が生まれる以前、宇宙には何もないカオス(混沌)が広がっていた。」

「そこにガイアが生まれ、ガイアは自らの力だけで天の神ウーラノス、海の神ポントス、暗黒の神エレボス、愛の神エロースを産み、母となった。
エロースの働きでウーラノスと親子婚し夫とした。
そして、ウーラノスは神々の王となったわ。」

「ウーラノスとの間に男女6柱ずつの子どもを産んだの。」

「ティーターン=タイタン(巨神)である。
またキュクロープス=サイクロロプス(一つ目の巨人)やヘカトンケイル(百本の手を持つ巨人)、ギガース(巨人、ギガンテスと呼ばれることが多い)、末っ子のクロノスを産んだ。

「だけど、異形の神々キュクロープスたちのあまりの醜さゆえに、ウーラノスは彼らを冥界タルタロスへ閉じ込めてしまった。
子どもたちの母であるガイアは悲しみ、ウーラノスへの報復を考え、子供たちに復讐を呼びかけた。
子供たちは当初、父を恐れ誰も名乗り出なかったが、末っ子のクロノスが自ら名乗りを上げ、ガイアの作った鉄の大鎌を受け取り、ウーラノスへ復讐することとなる。」

「その夜、クロノスがガイアに知らせられていた場所へ行くと、ウーラノスは妻ガイアにかぶさるようにして寝ていた。
クロノスは大鎌でウーラノスの男性器を切り落としたの。」

「これを受け、自らの行動を恥じたウーラノスはガイアのもとを去り、クロノスが神々の王となるが、この時クロノスはウーラノスに「やがてお前も自分の息子に王位を退けられることになるだろう。」と言われ、この言葉はクロノスの脳裏に焼きつくこととなったわ。」

「やがて妻レアーとの間にできた子供を飲み込んでしまったクロノスにゼウスが復讐を決意し、そしてティーターン一族とオリュンポス神の戦いが始まるの。」

「10年以上戦いが長引くと、クロノスの横暴さを見かねていたガイアはゼウスたちにタルタロスに閉じ込められたヘカトンケイルやキュクロプスたちのことを教え、彼らを救い出すことを勧めた。
ヘカトンケイルは百本の手で大岩を投げ、キュクロープスはゼウスに雷と稲妻を与えた。
こうしてゼウスらは新たな味方とともに戦いに臨み、ついにクロノスとの戦いに打ち勝ったわ。」

「天はゼウスが、海はポセイドーンが、冥界はハーデースが治めることとなり、大地は皆のものとなった。」

「そして、ガイアはカオスの地を耕し、種を撒き、やがて、それらは生命(いのち)を育む惑星と成り、宇宙の始まりと言える空間を形成して行った。」

「こうして"宇宙"を治める事と成ったガイアは、アクエリアスを産み、女神アクエリアスを名乗らせ、今の宇宙の始まりを与えた。」

「やがて始まりの宇宙は銀河へと成長し、姿を変えて行った。」

「広大に拡がる宇宙。
女神アクエリアスは、自分の代わりに広大な宇宙を管理する種族を造り、高度な文明を与えた。
その末裔の種族がイスカンダル人よ。」


カオス(古希: Χάος)とは、ギリシア神話に登場する原初神である。「大口を開けた」「空(から)の空間」の意。
オルフェウスによれば、このカオスは有限なる存在全てを超越する無限を象徴しているという。

原初の神ヘーシオドスの『神統記』に従うと世界の始まりにあって存在した原初の神である。
世界(宇宙)が始まるとき、事物が存在を確保できる場所(コーラー)が必要であり、何もない「場」すなわち空隙として最初にカオスが存在し、そのなかにあって、例えば大地(ガイア)などが存在を現した。
また、ヘーシオドスはカオスのことをカズム(裂け目)とも呼んでいる。
『神統記』によれば、カオスの生成に続いてガイア(大地)が生まれ、次に暗冥の地下の奥底であるタルタロスが生まれた。



「新たな主導者の誕生。」
「新たな連星は惑星スターシャとでも名付けよう。」

虚遇の次元が崩壊し、新たな連星が誕生した_。


※イメージ曲【宇宙戦艦ヤマト2199より(新銀河誕生)】より引用。


「おかえり。雪。」

「おかえりなさい。お母さん。」

「ただいま。美雪。進(あなた)。」




~一年後~




【地球連邦メガロポリス郊外:英雄の丘】

「古代サン。お久しぶりデス。」

「コルンさん。元気そうで何よりだ。」

「以前、夕貴はワタシの娘と話しをしましたネ。」
「あの子は夕貴ハ、幼い頃に全身を70パーセント以上も火災による火傷を負い、当時、命を助けるには、臓器と皮膚の移植しか方法はなく、ワタシの臓器と皮膚を移植する事にしたのです。」
「…ワタシはワタシが存在する為に"すべてをメモリ"(記憶)を残す事にしたのです。」
「その結果が、この身体です。」

古代は真剣な眼差しを見せるだけで無言だった。


「黙祷を捧げる。」
「黙……。」
古代の号令を描き消すかのように轟音を響かせ、テスト航海から帰艦したブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー。
その轟音に参列した小林は、拳を高く突き上げ怒号を飛ばした。

「バッキャローーーッ!!」

呆気に取られる参列者たち。
その参列者を代表した訳ではないが、主宰した古代はこう告げた。

「すまんな。小林。」
「テスト航海の艦長は、雪なんだ。」
「帰ったら、キツく叱っておくよ。」と、軽く肩を叩いた。

「えっ!?あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!」それを聞いた小林は、あたふたするだけだった。
「アハハハハッ!」と、笑い声が英雄の丘に拡がっていた_。

「ねぇ。このあと赤道際の続きがやろうよ。」早々とバニーガールにコスプレした天城は、やる気満々で笑顔を覗かせていた_。



~fin~





【地球連邦防衛第一艦隊旗艦ブールノア級二番艦ブール・ギャラクシー】

※ブールノアのほぼ同型艦ブルーアースが存在するが此方は、改装されたブルーノア級の非武装艦であり、改・ブールノア級の位置付けの為、"ブール・ギャラクシーを二番艦とした。
【ブールアース】
旧地球防衛軍残存艦隊旗艦。
残存救助艦隊に所属し、残存人員の救助と政府中枢部の移動に用いられた。

初代艦長:上條 了
(テスト航海時艦長:古代 雪)





パスカル級二番艦オーディーン
アマール防衛隊の旗艦で、パスカル将軍の座乗艦と同型の二番艦。

水上艦(あるいは帆船)に近い構成となっており、艦首部には巨大な艦首マスト(光子帆)が付いており、シールドを張れるのが最大の特徴。
このシールドは『オーディーン 光子帆船スターライト』をオマージュしたものである。
武装は3連装主砲を艦前部に4基、並列配置で装備。
舷側には、大航海時代にある海賊船の様に数多くの副砲が並んでいる。


連星(英語: Binary star)とは2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体である。
双子星(ふたごぼし)とも呼ばれる。
連星は、地球から遠距離にあると、一つの恒星と思われ、その後に連星である事が判明する場合もある。
この2世紀間の観測で、肉眼で見える恒星の半数以上が連星である可能性が示唆されている。
通常は明るい方の星を主星、暗い方を伴星と呼ぶ。
また、3つ以上の星が互いに重力的に束縛されて軌道運動している系もあり、そのような場合にはn連星またはn重連星などと呼ばれる。




この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。
既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。
使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。
一部、私の設定及び解釈が混ざっています。

宇宙戦艦ヤマト復活編ー雪生還編ー第六話②

2020-02-25 23:54:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作




「ワルキューレ六体、急接近!!」 「ヤマトを包囲してきます!」 古代と上條のやり取りの中、慌ただしく折原が告げて来る。

「上條!波動爆雷で弾幕を張りつつ、波動フィールド展開だ!」 「バリアミサイル発射ッ!!」

「ワルキューレ発砲!!」 「波動フィールドが…波動フィールドが中和されて行きます!」

「艦長!ワルキューレの放つエネルギー光弾の成分が判明!」 「半物質エネルギーです!」 「波動エネルギーは中和されます!」

「くっ!」 「構わん!上條。撃ち捲れ!」 「あと少しで塔だ!奴らにとって大切な塔だ!たどり着けば奴らもバカスカ撃ち込めんだろう!」

「了解!」

「……艦長!あれを!」

古代らが目指すバベルの塔の最上階近辺に浮遊するコスモゼロtype21。 どう見ても、無人のようだった。

「上條!ロケットアンカー射出!」 「ヤマトを固定する!」 「姿勢制御スラスター噴射!」 バベルの塔にロケットアンカーを撃ち込み、ヤマトは停止した。 同時にワルキューレたちの攻撃も止んだ。

「後部カタパルトは準備出来ているか?」

「射出準備完了してます!」

「上條。あとを頼んだぞ。」

「…了解。」上條からの返事を聞くと、古代は航海長席を立ち、第二格納庫へ向かった。

「たどり着いたか。」 「ならば、迎えてやるとするか。」空間映像を観ながら不適な笑みを浮かべるルシファー。

ヤマトを発艦した古代は、煉瓦造りの塔の一部がくり貫かれたような空間を見つけた。 何の躊躇いもなく古代は、その空間へと操縦桿を傾けた。 暗闇に蛍光グリーンに輝く誘導灯が進む方向を示す。 地上高10キロメートル以上もの超が付く程の建造物、塔内部もヤマトが仮に航行しても、余裕がある。 小型戦闘機であるコスモパルサーが、速度を落とす事なく飛行が可能だ。 だが、古代は出力を三分の二まで落として飛行した。 周りを目視での確認が出来ないからだ。 時間にして10分くらい飛行したところで、辺りはトンネルを抜けたように明るく、開けた場所に出た。

「あそこが終点か!?」

「人間よ。そこで降りろ。」 「大丈夫だ。殺しはしない。それと貴公らが暮らしていた大気と変わらん。」 古代は指示に従い、コスモパルサーを着陸させた。

「で、上條艦長代理は、どうしたいんだ。」相変わらずの口調で小林が口を開いた。

「…俺には……俺にはトランジッション波動砲は撃てない。」

「何だよ!それ。」 「まだ一時間、経ってないんだぜ!上條よ!」

「小林。そんなに突っ掛かるなよ。」 「上條だって辛い命令を聞き入れるしかなかった訳だから。」強い口調の小林に佐々木が助け船的に告げた。

「艦長代理。命令を出したらいいのかもよ。」

「命令?」

「そう。命令。」 「私たち、まだ上條艦長代理から、命令を聞いてないんだけど。」佐々木に続いて折原もまた、助け船的に告げた。

「じれってぇな。」 「俺たち、軍法会議もんは後免だかんな!」 「小林、佐々木、コスモパルサー隊出撃!」 「桜井は輸送船の操縦の経験があったな。航海長代行を!」 「折原は第一艦橋へ!メインレーダーを!ってよ!」 「艦長が中に入れたって事はだよ、俺たちコスモパルサー隊も突入出来んじゃないかって思うだろ!?」

「…よし。それで行こう!」

「…なら、自分もコスモパルサーに乗せてくれないか?」そばで聞いていたカティー軍曹が話に加わった。

「カティー軍曹。貴女、お腹に子供がいるのに無理は駄目よ。」

「折原一等宙尉(チーフ)。それなら大丈夫よ。それに…」 「それに彼の神楽坂の仇を取りたいんだ!」

「ならさぁ、あたしの後ろに乗りなよ。」 「雷撃機なら、副座だかさ。」 「機銃くらいは撃てるでしょ!?」

「おっ!美晴。頭、良いじゃん!」

「か、艦長代理として命令をくだす。」 「小林、佐々木のコスモパルサー隊は発艦準備!尚、カティー軍曹は佐々木機に同乗せよ。」 「桜井二等宙慰は航海長代行を!」 「折原一等宙慰はメインレーダーを!」 「以上だ。解散!」こうして、上條の指揮の下、新たな作戦を開始する事と成った。

「人間よ。」 「それほどまでに、あの媒体を返して欲しいのか?」

「雪!」古代の見上げる先にはクリスタルカプセル内の雪の姿が見える。

「人間よ。では、こうしよう。」 「あのカプセルの媒体を返してやるが、その代わりに、此方を頂く。」 ルシファーが、指差した方には後ろ手に拘束された美雪が見える。

「…お父さん……。」

「貴様…。」

「動くな!」

「人間よ。我が友、ベリアルだ。」 「友であるが、我は召還し、ベリアルを呼び出した。」 「代償は生け贄を捧げなければならない。」 「そこでだ。貴公に選択する機会を与える。」 「クリスタルカプセルの媒体を選ぶか。あの娘を選ぶか。はたまた子を宿事の可能な生け贄と成る者を差し出すか。」 「三択だ。選べ。」

「………。」

「どうした?選べぬか?」

【ベリアル】

聖書にも登場している高名な悪魔であるベリアルは、悪魔学においても重要視され、多くのグリモワールにおいて名を挙げられている。

『ゴエティア』によると、序列68番の強大にして強力な王であり、80軍団を率いている。 ルシファーに次いで創造された天使であり、天上にあってはミカエルよりも尊き位階にあったと自ら語るという。 また、ベレト、アスモダイ、ガープと並んで72人の悪魔達を率いていたとされる。 燃え上がる戦車に乗り、美しい天使の姿で現れる。 地位や敵味方からの助力をもたらし、また、優れた使い魔を与えてくれるとされる。 しかし、ベリアルは召喚者が生贄を捧げないと要求に対して真実を答えようとしないという。

第七話へつづく。


宇宙戦艦ヤマト2220ー雪・生還編第六話①

2020-02-23 22:35:00 | 宇宙戦艦ヤマト:二次創作




【女性型二足歩行タイプ万能ロボット=コルン】イメージ。

「…サーベラー!いえ、夕貴の身体を媒体にした偽りのサーベラー!」
「身体だけは復活したけど、全ての能力を復活させた訳ではなさそうね?」
「違うかしら?」

「古代サン。このサーベラーはワタシが相手をします!」
「見た目はガトランティス人に成ってしまったが、元はワタシの娘、夕貴です。」

「…天城一佐が、コルンさんの娘?」

「そうです。詳しい説明はあとで致しましょう!」
「ワタシがサーベラーを押さえ付けて要る間(あいだ)に、古代サンはヤマトの操縦を!」
その時であった後部カタパルト管制室から「コスモゼロtype21」発艦のアナウンスが飛び込んだ。

「何!?」
「誰が乗っている?」





「えっ!?」
「発艦許可は出てないのですか?」
「美雪さんは、艦長からの命令だと。」

「解った。」
「美雪の奴…いつの間に…。」



「ヤマト緊急発進!」
「徳川!両舷全速!」




※イメージ曲【宇宙戦艦ヤマト復活編】THE.ALFEE2009ver.より引用。


宇宙戦艦ヤマト復活編二次創作

宇宙戦艦ヤマト2220ー雪・生還編ー
第六話①


進の許可も得ないまま、母親である雪を助けたい一心でヤマトを飛び出した娘、美雪を追う古代。

「ルシファー様!ヤマトが、人間が我らの要請を無視、バベルの塔へと向かっています!」

「何ッ!?」
「バカな奴らだ!始末せよ!」

「仰せの通りに!」



「この媒体を失う訳にはゆかんのだ。」

雪は透明なクリスタルカプセルの中に保管されていた。
保管されているクリスタルカプセルの中には羊水が満たされている。
言わゆる子宮の中に雪は居る事と同じなのだ。
生きてゆくのに必要な本能で解るのだろう。眠り続ける雪ではあるが、酸素も栄養素も、カプセル内の羊水から補給しているのだ。

そして、古代が目指すバベルの塔は、あの砂丘を地上と考えるなら、10キロメートル以上もの円柱形をした超高層建造物、その最上階に雪を保管しているクリスタルカプセルはある。

そのバベルの塔から、およ3844.000kmにカスケードブラックホールによって呑み込まれた太陽系の惑星が、塔を囲うように並んでいる。
太陽・水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・第十番惑星・第十一番惑星と並んでいる。
冥王星だけが、その列には存在しない。
塔の真上に存在している。
その遥か上空の空間には、これまでカスケードブラックホールによって呑み込まれた惑星や衛星が、ところ狭しと並んでいる。
まるでゴミ山のように_。

おそらく、資源を取りつくし、捨てられたのだろう。
その上空に、この次元の空間の太陽なのだろ、珍しい動きを見せていた。
西から東へと向かって移動しているのだ。
その太陽から塔の真上に設置された冥王星を介して、エネルギーを吸収しているようだ。

操縦桿を握る古代の頭の中に「ふと。」過るメッツラーの言葉。

「メッツラーを媒体とし、再び浮かび上がる異次元の思考ホログラム。
自分が異なる次元の民であること、その次元には資源が少ないため生きる糧を他の次元に求めていたこと、そしてカスケードブラックホールの正体が他次元から資源となる星々を奪い取るための巨大な次元転移装置であると。」

「何処に…何処に一体……。」そう思いながら古代は、塔の上空を見上げた。
何かに気がついた古代は、命令を下した。

「上條。ロケットアンカー射出よーい!」

「ロケットアンカー射出用意よし!」

「うむ。」

「小林航空隊隊長。悪いが君の予備機を使用する。」
「後部カタパルトへ、射出準備!」

「上條。君にヤマトを預ける。」
「もし、俺が一時間以内に帰投しない時は、トランジッション波動砲をあのバベルの塔に撃ち込め!」

「…自分も同行します!」

「駄目だ!船務長不在で階級が最上級なのは、上條、お前だ。」
「まだ銀河系が健在な内に、次に繋ぐ為にも、トランジッション波動砲を発射させた後、アマール星へゆけ!」
「イリヤ女王なら必ず、力を貸してくれるはずだ!」

上條は瞳を閉じ、肩を震わせた_。


※イメージ曲【宇宙戦艦ヤマト復活編より、この愛を捧げて】より引用。


第六話②へ
つづく。


この物語りは、「宇宙戦艦ヤマト復活編」の続編として二次創作ではありますが、オリジナルの物語りです。
既存のメカ設定及びキャラクター設定は基本的に、そのまま引用しています。
使用している画像は一部を除き、宇宙戦艦ヤマトシリーズ本編等より、引用した画像でイメージです。
一部、私の設定及び解釈が混ざっています。