今日は明日の前日だから

わたしはおもう。わたしはつづる。あなたにみてほしいのは、あなたがあなただから。

桜色の涙。

2005-04-20 17:29:19 | Weblog
 君を思い出すと、瞬時に思い出されるのは君の涙。
 君はよく泣いた。たいていは彼、あたしと君の共通の友人。
「どうして好きなのに、伝えられないの?」
「どうしてほかのこにはやさしいのにあたしにはつっけんどんなの?」
そんなくだらないねたで君はよく泣いた。
 なんで涙が思い出されるか、っていうと、君の涙はいつも桜色だったから。
 比喩なんかじゃない。ほんとうの話。
 君のまるまっちい大きな目からひとつ、またひとつと流れる涙は確かに桜色だった。その証拠に、ティッシュで涙をふくと、ほんのりとピンク色の、それはもう桜色としか言いようのないほどの、美しいしみがついた。
 はじめてみたときは驚いた。
「ねえ、桜色だよ?」
あたしが尋ねると、君は当然、とでも言うように、
「あなたはちがうの?」
とたずね返した。

 あたしはもう君にはずいぶんあってないね。

 ことしも桜は散ってしまった。君の涙が落ちるように。
 でも来年も咲くだろうし、あたしは君を思い出す。

 それだけで、いいんだ。