あたしはお汁粉を食べている。甘い。甘い。ときおりちいさいころ感じた夢の怖さをまた感じる。
皮膚科のある高層ビル。あたしは見下ろす。とたんに怖くなる。さっき食べたお汁粉がおなかの中で「飛び降りろ」「飛び降りろ」とささやく。
カサをさして歩く人。カサをささずに歩く人。今まさにあるかんとしている人。
そしてそのどれにもなれずにニキビ跡を気にするあたし。
デパートの床にすら花は咲く。歩き出そうよ、って明るく笑う。でもあたしは立ちすくむ。ここはあたしの居場所じゃないかもしれないって思う。トーキョー花盛り。あたしの心は破壊盛り。
それでもね、一歩踏み出せたんだ。薄暗い廊下。かえって落ち着く。
盛者必衰はわかるけど、あたしはまだ盛者ですらない。
でも歩く。歩き出す。
歩き出すんだ。