今日は明日の前日だから

わたしはおもう。わたしはつづる。あなたにみてほしいのは、あなたがあなただから。

税込9800回の恋。あとがき

2008-08-21 16:35:20 | Weblog
ここにお話をのせるのはどれぐらいぶりでしょうね。

見てる人いるのかなあ。いなそー。まあいいけどさ。てれつくてれつく。

一応ご説明。
これはわりと著作権侵害なお話です。
元ネタがあります。

うちのコメント欄からちょいと拝借。
どーしよ。訴えられたら。相手は出会い系サイト。怖いわ怖いわ。

みたいなお話です。

税込9800回の恋。

2008-08-21 16:28:46 | Weblog
 白い肌をした女だった。

 あ、とか、うん、といった相槌の気だるさより、わかりやすい単語の羅列を好むその女との会話は、刺激的だが、単調だった。俺はもっと違うものを求めているはずだった。思い巡らして、すぐ気恥ずかしくなる。なんだ、麦わら帽子とかコットンのリネンとか、俺ぁいったい何人だ、と嘲い、女の顔を覗き込むと、その目は青かった。
 ああ。俺は何がしたいんだろう。
 とりあえず今夜はクーラーの設定温度の低い部屋で寝たい。分厚い蒲団をかぶって。省エネとかエコとか、大概の人間、つまり俺のような貧乏人には、何とかネーゼやらなんやら着飾った連中のかざす理想論以上に、みすぼらしい生活の知恵にすぎない。
 狭い建物に狭い車で赴く。狭いエレベーター、狭い廊下、狭い部屋。
 寝具だけが馬鹿丁寧に広くて、女の上背は思った以上に大きく、俺は情けなくも小さい。
 普通サイズの恋。
 俺は恋をしていた。この素性も知れぬ女に。伝えたかった。俺はあんたが好きなんだが。そんな切り出し方はどうだろう。吃りつつ俺は、発する単語一つ一つを悔しいぐらい噛み締めていた。
 恋がとたんに小さくなる。恋すら人並みにいかぬのか。大恋愛など望まない。せめて、中庸を、俺は感じたい。皮を剥いでしまえば、俺は兎の肉塊だ。このクロコダイルみたいな女に喰われてしまったら、もう俺は夢にも死にたいなんて思わない。アリゲーターとクロコダイルはどう違うんだっけ。しかしながら、こいつはアリゲーターではない。目がまるでクロコダイル。
 鰐の眼が俺を見て、初めて言葉意外の音を口にした。
 俺は大恋愛を夢見る下らない音を聞く。深き溝。俺と女を隔てる、深き溝。
 二元論的要素を並べ立てる。
 どれもしっくりとこない。
 俺の恋心は膨張してゆく。鰐は喰らいはするが受け入れない。俺は鰐と融け合いたい惨めな哺乳類ヒト科オス。これを人間はなんと呼ぶ。人の間に生きる即ち人間なら、鰐に恋する俺はなんだ。
 人語を解する鰐は、最後に俺を音を立てて殺めた。
 溝を埋めたのは俺の体液が少々と万札が10枚。
 鰐は人間が女の姿を取り戻していた。あんまり美人な白人女に、俺は乱暴な言葉を吐き捨てる。しかし女はにこりと口のはを持ち上げる。こいつはきっと、俺の使える言葉では、汚いものを何も知らないんだ。
 FUCK OFFとか云おうとして、俺は先ほどの醜悪な行為を思い出し、こりゃ普通にヤりてえよ、と自分自身を鼓舞したものの、どうにもうまくいかない。
 もう恋は終わったんだよ。
 シャンソンのような終末の気分。きれいだなあ。キラキラしてる。
 しかしながら、俺はFUCKは何語か知っている。アメリカ語だ。
“Where is your country?”
 適当に作った英文。意味は伝わるか。そもそも英語でいいのか。言葉なんかでいいのか。俺は日本語しか使えないが、もううんざりだ。英語やらなんやら外国語なんて考えただけでぞっとするね。いかんいかん俺はすぐ思考の沼に逃避するな。
 返答はなかった。
 女は俺には微塵も興味がないのだ、と改めて思い知らされる。しかしその無関心に、鰐ゆえのぬめり気はなく、もはや俺たちは人間同士、というより、俺は屑だ、死にたい。
 死にたいが、俺はやはり死ぬより心地よい恋を、阿呆臭い一時を、また求めてしまうんだろう。

 この世は愛に満ち満ちているね、エリーゼ。
 俺はさいあいのひとに彼の有名な名を捧ぐ。ひけないピアノをひく俺はきっと金持ちよりイケメンより、あんたを思うよ。

コールミーテンダー

2008-08-09 13:31:35 | Weblog
女の子というのは、なにゆえこうもいとおしい。


電話ごしに彼女のきれいな肌に触れる。


イエベのリキッドファンデーション。


右足の爪先につる草が絡みついてとれません。


花は咲かない。


ただ、リキッドファンデーション。

ラビオリ

2008-08-09 01:51:46 | Weblog
棄てなさい。
―はい。
立つのをやめ、うずくまると楽になります。
―はい。
自分の悪いところをあげてごらんなさい。
―はい。
いくつも、いくつも。思いつかなくなったら、思いつかぬことを恥じなさい。
―はい。
悪いところがしみだして、水たまりができます。澄んでいて、少しとろみがあります。
―はい。
そこに足を踏み入れた人、その人があなたを愛する人です。
―――はい。


足を踏み入れたのは畜生らしき毛の塊だった。正体がわからぬので、親しみをこめるのには努力が必要だった。

それは言葉を解さない。食べるものはなんでもよいみたいだ。屑籠ごと、生ゴミを食べる。


愛とはこういうものなのだろうか。
しかし、わたしにはわからない。
愛される必要以上に、愛されない損失を思うのは何故だろう。



美しい若い男がわたしの横を通りすぎた。汚いものを見る目と十円玉を投げかける。これは愛ではない。そう思うと少し楽になり、畜生に生肉でもやりたくなる。