表参道のイルミネーションはもうやっていないときいた。
そのとき思い出した、小さなお話。
いくつだったかなあ、忘れちゃったけど、わたしはイブに家族でイルミネーションをみにいった。
「きれいだね」
そんなやさしい声が飛び交う街。わたしはサンタクロースなんてもう信じていなかったけど、サンタがくれるプレゼントに思いを馳せていた。
「きれいだねえ、エリノ」
お母さんが云う。
「それにしてもすごい人だな」
お父さんが云う。
ヒカリヒカリヒカリ。
ものすごい数の豆電球がわたしに語りかける。
「ほーら、今日はクリスマス。今年一年いい子にしてたかな」
比喩ではない。本当に語りかけたのだった。
わたしはあわてて両親を見た。
二人はイルミネーションに夢中。わたしのほうなど見てもいない。
「だれ?」
わたしは心のなかでつぶやく。
すると、また声がする。
「イルミネーションなんかより、ずっときれいなもの、みせてあげる」
「なに?」
「秘密」
みせてあげるっていってるわりに秘密だなんてけちだなあ、っておもいながら、また上を見る。
「ほら」
ほらほらほらほらほら。
声が響く。
「だから、だれなの?」
Sの子音が聞こえたつぎの瞬間、わたしは倒れてしまった。
「エリノ?どうしたの?」
ぐわんぐわんにゆがんだお母さんの声。
「熱でもあるんじゃないか?」
むかし医者になりたかったくせに適当なお父さんの診断。
おでことおでこをくっつける。
「熱があるわ」
お母さんはそういうと、お父さんにおんぶをするよう促した。
わたしはおぶわれて、原宿を後にした。
たった一瞬のイルミネーションの美しさ。
そしてなぞの声。
わたしは熱でぼーっとする頭で考えた。
あれは、だれ?
翌朝目覚めると、案の定わたしの枕元にはおもちゃがあった。
サンタなんてもう信じてないのになあ。そう独り言を云う。
ところが、そこには去年やその前とは違うものがあった。
きらきらと光る砂のようなものが散らばっていたのだ。
「おかあさん、サンタさんきたよ」
子供のふりってつらい。
「でも、なんか砂みたいなのがばら撒いてあったよ」
え、とお母さんは振りむく。
「砂?そんなの知らないわよ」
ほら、サンタは自分だって云ったようなもんだ。
お父さんに聞いてもすっとぼけている。
こんなにうそつくのうまかったっけ、と考えても、思い当たらない。
「ほら、エリノ、来てごらん」
そういったお父さんのもとに急ぐ。
なんだこれは。まさか、本当に…。
「ホワイトクリスマスだね」
窓の外には雪が舞っていた。
わたしに声をかけたのは誰だったんだろう。
そしてあの砂は?
それは今でもわからない。
ただ、わたしはそれ以来前よりもクリスマスが好きになった。
メリークリスマス!
そのとき思い出した、小さなお話。
いくつだったかなあ、忘れちゃったけど、わたしはイブに家族でイルミネーションをみにいった。
「きれいだね」
そんなやさしい声が飛び交う街。わたしはサンタクロースなんてもう信じていなかったけど、サンタがくれるプレゼントに思いを馳せていた。
「きれいだねえ、エリノ」
お母さんが云う。
「それにしてもすごい人だな」
お父さんが云う。
ヒカリヒカリヒカリ。
ものすごい数の豆電球がわたしに語りかける。
「ほーら、今日はクリスマス。今年一年いい子にしてたかな」
比喩ではない。本当に語りかけたのだった。
わたしはあわてて両親を見た。
二人はイルミネーションに夢中。わたしのほうなど見てもいない。
「だれ?」
わたしは心のなかでつぶやく。
すると、また声がする。
「イルミネーションなんかより、ずっときれいなもの、みせてあげる」
「なに?」
「秘密」
みせてあげるっていってるわりに秘密だなんてけちだなあ、っておもいながら、また上を見る。
「ほら」
ほらほらほらほらほら。
声が響く。
「だから、だれなの?」
Sの子音が聞こえたつぎの瞬間、わたしは倒れてしまった。
「エリノ?どうしたの?」
ぐわんぐわんにゆがんだお母さんの声。
「熱でもあるんじゃないか?」
むかし医者になりたかったくせに適当なお父さんの診断。
おでことおでこをくっつける。
「熱があるわ」
お母さんはそういうと、お父さんにおんぶをするよう促した。
わたしはおぶわれて、原宿を後にした。
たった一瞬のイルミネーションの美しさ。
そしてなぞの声。
わたしは熱でぼーっとする頭で考えた。
あれは、だれ?
翌朝目覚めると、案の定わたしの枕元にはおもちゃがあった。
サンタなんてもう信じてないのになあ。そう独り言を云う。
ところが、そこには去年やその前とは違うものがあった。
きらきらと光る砂のようなものが散らばっていたのだ。
「おかあさん、サンタさんきたよ」
子供のふりってつらい。
「でも、なんか砂みたいなのがばら撒いてあったよ」
え、とお母さんは振りむく。
「砂?そんなの知らないわよ」
ほら、サンタは自分だって云ったようなもんだ。
お父さんに聞いてもすっとぼけている。
こんなにうそつくのうまかったっけ、と考えても、思い当たらない。
「ほら、エリノ、来てごらん」
そういったお父さんのもとに急ぐ。
なんだこれは。まさか、本当に…。
「ホワイトクリスマスだね」
窓の外には雪が舞っていた。
わたしに声をかけたのは誰だったんだろう。
そしてあの砂は?
それは今でもわからない。
ただ、わたしはそれ以来前よりもクリスマスが好きになった。
メリークリスマス!