PEDIATRICS Volume 142, number 3, September 2018:e20180236
Susan C. Lipsett, et al.
背景
最近のsystematic reviewでは小児の肺炎の診断には身体所見や症状の適中率が悪いことがわかっており、多くの医師は胸部レントゲンを診断的ツールとして信頼している。小児においてはレントゲンが肺炎の除外につかえるかはわかっていない。
方法
2015年5月から2年間、年間6万人が来院する都市部の小児救急部で行われた。3か月から18歳、肺炎の評価のためレントゲンを撮像したものを対象。撮像の有無は医師の裁量だが、この救急部では肺炎を疑う患者には全例撮像する独自のガイドラインがあり、肺炎と最終診断された患児の75%は撮像した。抗菌薬投与がすでにある場合、嚢胞線維症や鎌状赤血球症、悪性腫瘍や免疫不全、誤嚥のリスクがある場合などは除外した。医師が重症すぎると判断した場合も除外された。
小児科専門医か小児救急医が臨床所見のみから肺炎があるかの予測をし、身体所見(wheezing, 呼吸促拍、ラ音、呼吸音減弱)を記載、抗菌薬を必要とするほかの感染症がないか記載した。
レントゲンは小児放射線専門医に読影された。陽性(consolidation, pneumonia)、陰性(no pneumonia, peribronchial cuffing, 無気肺、ウイルス性気管支炎を示唆する), equivocal(無気肺か浸潤影、無気肺か肺炎、無気肺らしいが肺炎の除外はできない)と分類された。
介護者に救急部受診後の4-7日目、10-14日目に電話で質問した。症状の改善もしくは増悪、登校、服薬コンプライアンス、他の医療機関への受診の有無を確認した。救急部で肺炎の診断とならなかった場合、その後肺炎の診断がついたかどうか聞いた。
Primary outcomeは救急部もしくはフォローアップ期間に肺炎の診断となったか。
結果
3101名が肺炎疑いでレントゲンを施行され、1106名(35.7%)がinclusionされた。最終的に683名がコホートに入った。平均年齢は3.1歳(1.4-5.9歳)、21.4%が入院。200名が救急部で肺炎と診断され、98%が抗菌薬を処方された。臨床的に診断された156名のうち、78%がレントゲン陽性かequivocalで、22%が陰性だった。
レントゲンの結果は16.5%が陽性、10.7%がequivocal, 72.8%が陰性だった。レントゲン陽性はより年齢が高く、ラ音や呼吸促拍があり、wheezeが少ない傾向にあった。SpO2は2群間で有意差がついたが、臨床的には意義はない差だった。
救急部で肺炎と診断されたのは、レントゲン陽性の113名のうち96%、equivocalの73名の66%だった。レントゲンが陽性もしくはequivocalだったが肺炎と診断されなかった患児はwheezeが多かった(30.0%対13.5%、p=0.02)。レントゲン陰性の497名中8.9%が臨床的に診断された。
レントゲン所見が陰性だが診断された場合には、診断されなかった患児と比較して、ラ音が多く、呼吸促拍も多かった。発熱とラ音がある111名のうち19%がレントゲン陰性だが肺炎と診断された。
レントゲンの陰性適中率は98.8%。レントゲン陰性で肺炎と診断された44名を含めると、陰性適中率は89.2%。
救急部でのレントゲン陰性だったがフォローアップ期間に肺炎の診断をうけた5名は3歳未満で、救急部に来た後1日以内に発熱があった。フォローアップ期間にレントゲン陽性になったのは1名のみ。
Discussion
レントゲンが陰性で抗菌薬が処方されなかった患児のうち、フォローアップ期間に肺炎と診断されたのは1.2%しかいなかったので、レントゲン陰性なら抗菌薬使用なしに完全に回復することを明らかにした。
胸部レントゲンを肺炎の除外に使用できるか調べた初めての研究。レントゲンを使用すると抗菌薬の不必要な使用を減らせるかもしれない。
発症早期ではレントゲンが陰性になる成人の研究が少数あるが、retrospectiveで選択バイアスもかかっている。カナダで行われた2706名の入院を必要とするCAPの成人を対象とした前向きコホート研究では、1/3は入院時のレントゲン所見は陰性で、うち7%が72時間以内に陽性になったが、レントゲン所見が変化した患者のclinical coarseについては何の言及もなかく意義は不明。
脱水時には静水圧が下がり、膠質浸透圧が上がるので、肺炎所見が出にくいと考える医師もいる。人のデータは成人に限られ、異なる結果が出ている。125名の肺炎で入院した症例のretrospective studyでは、96時間以内にレントゲン所見が増悪した患者では(入院時の)UN値と(入院後の?)飲水量が多い傾向にあった。他の研究では異なる結果が出ている。本研究でもフォロー期間中に肺炎と診断された5名は補液を必要としていないいので、初回のレントゲン時に脱水だったとは言えない。
Limitationとしては肺炎が臨床的な診断であり、gold standardがないこと。レントゲンや抗菌薬処方の判断が臨床医にゆだねられ、フォローアップのレントゲンも全例とっているわけではないこと。かかりつけ医で肺炎と診断された3名の診断が正しいかわからないこと。レントゲン陽性の肺炎が細菌性とは限らないこと。放射線科医がBlindされていないこと。
結論
急性下気道感染の症状と所見がある救急部に来院した小児において、胸部レントゲンは肺炎の診断に高い陰性適中率を持つことがわかった。
Susan C. Lipsett, et al.
背景
最近のsystematic reviewでは小児の肺炎の診断には身体所見や症状の適中率が悪いことがわかっており、多くの医師は胸部レントゲンを診断的ツールとして信頼している。小児においてはレントゲンが肺炎の除外につかえるかはわかっていない。
方法
2015年5月から2年間、年間6万人が来院する都市部の小児救急部で行われた。3か月から18歳、肺炎の評価のためレントゲンを撮像したものを対象。撮像の有無は医師の裁量だが、この救急部では肺炎を疑う患者には全例撮像する独自のガイドラインがあり、肺炎と最終診断された患児の75%は撮像した。抗菌薬投与がすでにある場合、嚢胞線維症や鎌状赤血球症、悪性腫瘍や免疫不全、誤嚥のリスクがある場合などは除外した。医師が重症すぎると判断した場合も除外された。
小児科専門医か小児救急医が臨床所見のみから肺炎があるかの予測をし、身体所見(wheezing, 呼吸促拍、ラ音、呼吸音減弱)を記載、抗菌薬を必要とするほかの感染症がないか記載した。
レントゲンは小児放射線専門医に読影された。陽性(consolidation, pneumonia)、陰性(no pneumonia, peribronchial cuffing, 無気肺、ウイルス性気管支炎を示唆する), equivocal(無気肺か浸潤影、無気肺か肺炎、無気肺らしいが肺炎の除外はできない)と分類された。
介護者に救急部受診後の4-7日目、10-14日目に電話で質問した。症状の改善もしくは増悪、登校、服薬コンプライアンス、他の医療機関への受診の有無を確認した。救急部で肺炎の診断とならなかった場合、その後肺炎の診断がついたかどうか聞いた。
Primary outcomeは救急部もしくはフォローアップ期間に肺炎の診断となったか。
結果
3101名が肺炎疑いでレントゲンを施行され、1106名(35.7%)がinclusionされた。最終的に683名がコホートに入った。平均年齢は3.1歳(1.4-5.9歳)、21.4%が入院。200名が救急部で肺炎と診断され、98%が抗菌薬を処方された。臨床的に診断された156名のうち、78%がレントゲン陽性かequivocalで、22%が陰性だった。
レントゲンの結果は16.5%が陽性、10.7%がequivocal, 72.8%が陰性だった。レントゲン陽性はより年齢が高く、ラ音や呼吸促拍があり、wheezeが少ない傾向にあった。SpO2は2群間で有意差がついたが、臨床的には意義はない差だった。
救急部で肺炎と診断されたのは、レントゲン陽性の113名のうち96%、equivocalの73名の66%だった。レントゲンが陽性もしくはequivocalだったが肺炎と診断されなかった患児はwheezeが多かった(30.0%対13.5%、p=0.02)。レントゲン陰性の497名中8.9%が臨床的に診断された。
レントゲン所見が陰性だが診断された場合には、診断されなかった患児と比較して、ラ音が多く、呼吸促拍も多かった。発熱とラ音がある111名のうち19%がレントゲン陰性だが肺炎と診断された。
レントゲンの陰性適中率は98.8%。レントゲン陰性で肺炎と診断された44名を含めると、陰性適中率は89.2%。
救急部でのレントゲン陰性だったがフォローアップ期間に肺炎の診断をうけた5名は3歳未満で、救急部に来た後1日以内に発熱があった。フォローアップ期間にレントゲン陽性になったのは1名のみ。
Discussion
レントゲンが陰性で抗菌薬が処方されなかった患児のうち、フォローアップ期間に肺炎と診断されたのは1.2%しかいなかったので、レントゲン陰性なら抗菌薬使用なしに完全に回復することを明らかにした。
胸部レントゲンを肺炎の除外に使用できるか調べた初めての研究。レントゲンを使用すると抗菌薬の不必要な使用を減らせるかもしれない。
発症早期ではレントゲンが陰性になる成人の研究が少数あるが、retrospectiveで選択バイアスもかかっている。カナダで行われた2706名の入院を必要とするCAPの成人を対象とした前向きコホート研究では、1/3は入院時のレントゲン所見は陰性で、うち7%が72時間以内に陽性になったが、レントゲン所見が変化した患者のclinical coarseについては何の言及もなかく意義は不明。
脱水時には静水圧が下がり、膠質浸透圧が上がるので、肺炎所見が出にくいと考える医師もいる。人のデータは成人に限られ、異なる結果が出ている。125名の肺炎で入院した症例のretrospective studyでは、96時間以内にレントゲン所見が増悪した患者では(入院時の)UN値と(入院後の?)飲水量が多い傾向にあった。他の研究では異なる結果が出ている。本研究でもフォロー期間中に肺炎と診断された5名は補液を必要としていないいので、初回のレントゲン時に脱水だったとは言えない。
Limitationとしては肺炎が臨床的な診断であり、gold standardがないこと。レントゲンや抗菌薬処方の判断が臨床医にゆだねられ、フォローアップのレントゲンも全例とっているわけではないこと。かかりつけ医で肺炎と診断された3名の診断が正しいかわからないこと。レントゲン陽性の肺炎が細菌性とは限らないこと。放射線科医がBlindされていないこと。
結論
急性下気道感染の症状と所見がある救急部に来院した小児において、胸部レントゲンは肺炎の診断に高い陰性適中率を持つことがわかった。
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