弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

米連邦最高裁、杞憂が現実になった可否同数の場合の判決

2016年03月26日 | 日記

この2月13日アメリカ連邦最高裁の現職アントニン・スカリア判事が旅先で
死亡しました。
ここをどうぞ。

後任にワシントン連邦高裁のメリック・ガーランド判事を3月16日、オバマ大統領が指名しました。
アメリカでは、上院の承認が必要です。
ここをどうぞ。

前任のスカリア氏は筋金入りの保守派でした。
ということで、共和党は、レームダックのオバマ大統領が指名するのは相応しくないとして
承認手続きに一切応じない姿勢を示しています。
現在は上院では共和党が多数派です。

アメリカの最高裁判事の定数は9人です。日本は15人です。少ないですね。
現在8人で、思想的背景は保守派4対アンチ保守派4の同数です。
ということで、4:4と可否同数の意見となった場合のことが懸念されていましたが、
早くも22日、そういう事態が生じました。

どのような判決になるのか。
つぎのとおりです。これが判決の全部なのです。

 

黄色でマーカーしたところが判断です。可否同数でした、引き分けですと宣言するだけなのですね。
これで全部なのです。
意見が示されることもないのです。
つまり、結論は出ませんでした、と宣言しただけということです。

上告が棄却されたわけではないけれども、認められたわけでもないですから、結果的には
棄却されたのと同じなのですが、どのような議論がなされたのか、どのような理由の賛成
反対意見があったかなど一切示されないわけですから、時間の無駄・お金の無駄、労力の
無駄、何もかも無駄、無駄骨だったというわけなのです。

深刻な問題です。

アメリカは政治でも司法でも制度的に複雑な問題を抱えている国のようです。