「原発津波対策 安全委」で検索するとトップに出てきたのは、日経新聞の
7月13日版(WEB)でした。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819595E3E0E2E2968DE3E0E2E5E0E2E3E39790E0E2E2E2;at=DGXZZO0195166008122009000000
そこからの引用です。
「旧耐震指針では地震対策が中心で、津波は後回しだった。複数の機器が機能不全に陥る事態は起きないとの立場をとってきた。福島第1原発は津波の高さを5.7メートルと想定していたが、実際は約13メートルの津波が押し寄せた。主要設備が水につかり、事故復旧が遠のいた。」
津波対策が後回しだったことは事実です。
問題は
「津波の高さを5.7メートルと想定していたが」の部分です。
正確かどうか疑問です。
ウオール・ストリート・ジャーナル(WEB版)の7月12日付で
「Fateful Move Exposed Japan Plant」と題する記事が掲載されていました。
この記事は、当時の建設許可申請書のコピーをウオール・ストリート・ジャーナルが
検討して書かれたものです。
ほとんどが地震対策についてであり、
波については、台風によるものが大きな脅威と認識されていますが、
津波対策に関し検討した部分は一切ないということです。
台風については、1960年2月の第28号台風のときに、8メートルの大波が
押し寄せたことが述べられていました(ピークの高さは7.94メートル)。
津波については、1273年以降の3頁にわたる地震活動の歴史のリストの中で
津波についての検討もされているが、それは、1677年に福島第一原発の
まさにその付近を津波が襲ったこと、ただし高さについては特定がなく、
ただ家屋1000の倒壊と100人の死者の被害があったことが述べられているだけと
いうことでした。
どこにも津波の高さを5.7メートルと想定したという記載はありません。
この数字の根拠を知りたいものです。
さらにここからが、重要であり、信じられないことが起こっているのです。
福島第一原発の建設地は、ほとんどが海軍基地の跡地で、35メートルの高さの
崖の上にあったのです。
ところが、福島第一原発を建設する際に、35メートルの高さのうち3分の2以上に
あたる25メートルを切り取ってしまったのです。
その結果、それまで35メートルの高さだったところが10メートルになってしまった
のです。
25メートルも削った理由は、
1)建築資材の運搬の便宜のため(建築資材を陸上ではなく海上から運搬したほうが
やさしいこと、その場合の35メートルもの高さのあるところに持ち上げるのは
難しいので、高さを削ることにした
2)建設後、原子炉の冷却用の水をポンプで持ちあげるのに、高さが低い方がやりやすい
という二つの理由です。
ここで指摘しておきたいのは、35メートルの高さがあるときでも、1677年には
この付近で100人の死者、1000の家屋の破壊をもたらす津波が起こっているのです。
それを25メートルも削って10メートルにしてしまったのです。
しかも、理由は、建築がしやすいからというのです。
あまりにも無責任・無謀としか言いようがありません。
せめて削るのを半分にしていたら、17.5メートルですから、今回の津波による
被害はなかったわけです。
なお、ウオール・ストリート・ジャーナルによると、今回の津波の高さは14~15
メートルということです。
崖を25メートルも削ったなどという情報は、私は、ウオール・ストリート・ジャーナル
で初めて知りました。
想定外の被害だといいますが、少なくとも、ウオール・ストリート・ジャーナルのこの
記事を読むと、人災であることは明らかです。
いかに私たちは情報操作されているか、わかろうというものです。
不都合な情報を日本のマスコミは国民に知らせないのです。
あるいは、ウオール・ストリート・ジャーナルの記者は1000頁に及ぶ申請書
を見直す手間や時間を厭わなかったのでしょう。
日本のマスコミは、発表されたものをそのまま鵜呑みにして、右から左に
流しただけなのでしょう。
なお、福島第2や同じような地形的状況にある女川原は被害がありませんでした。
第2は高さ13メートル(今回の津波6.5~7メートル。特に津波を意識したわけでは
ないが、たまたま建設地がその高さだったということです。自然をそのまま大事にする
という謙虚な姿勢があったのでしょう)、
女川原では、13.8メートルの高さにあるということで、3.11の津波の高さは13メートル
でした。女川原の建設許可では9.1メートル以上ということでしたが、
1896年の地震(マグノチュード8.3)で建設予定地付近では13.6メートルの
津波があったことを受けて、政府の許可水準より高い13.8メートルで建設した
ということです。
そのため、第一原発のような大災害にはならなかったというのです。
マスコミで報じられている情報を信じられないことほど、怖いことはありません。
これからも、外国発の情報をお伝えしていこうと思います。
原文でお読みになる場合はどうぞ。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303982504576425312941820794.html