哲学的な何か、あと心の病とか

『人生とは何か、考えるほどにわからない。というのは実は正確ではない。わからないということが、わかるのである。』池田晶子

遺伝子改良人間(ジーンリッチ)

2013年12月31日 | 哲学・心の病
プリンストン大学のリー・シルバー教授は著書『複製されるヒト』のなかで、遺伝子的強化の処置を施されて生まれる人々(遺伝子改良人間)のことを「ジーンリッチ」と呼び、この優れた人間集団がいずれ普通の人々である「ジーンプア」を置き去りにし、その結果、人類がふたつの種へと分岐していくことを懸念している。
そして、「ジーンリッチ」と「ジーンプア」の分岐は、最初は社会的なレベルではじまり、しだいに生物学的レベルにおよんで、ついにはホモ・サピエンスとは異なる新たな種を生み出すというのだ。
シルバー教授によると、このような分岐が人類に起こることは避けがたいという。

しかし、現時点では、子どもが特定の性質を持つように事前に遺伝子を設計することは、技術的にも倫理的にも強く問題視されている。

池田晶子「靖国神社参拝について」

2013年12月30日 | 哲学・心の病
靖国神社参拝について、池田晶子さんは次のことを書いている。

霊を慰め、霊を弔うとは誰でも言うが、その霊の何であるかを人は理解しているものだろうか。
いやそもそも、そんなものが存在すると思って、人はそう言っているのだろうか。
「あなた、霊は存在すると思うか」。
真正面から尋ねてみるなら、誰もが一瞬は答えに窮するに決まっている。
誰か総理に質問してみればよい。
総理、霊を弔うとおっしゃるけれども、霊は存在するとお考えなのですか。
もし存在しないとお考えなら、靖国参拝とはナンセンスな行為なのではないですか。
(『41歳からの哲学』「弔うとおっしゃるけれど-霊」より)


靖国参拝がナンセンスかどうかは別にして、靖国参拝をする全ての総理に、「霊は存在すると思っているのかどうか」、そして「その根拠」を、私は聞いてみたいが、どうだろう?

感動とは?

2013年12月29日 | 哲学・心の病
ネット上の記事を紹介させて頂きます。


〉加藤樹里(一橋大学)

星空を見たとき。映画や小説、漫画、ドラマに接したとき、スポーツの素晴らしいプレーを見たとき。美しい音楽、絵画に出会ったとき。
私たちは色々な場面で「感動した」と言うように、感動は私たちにとって身近な感情だと思います。
しかし感動に関する研究はごくわずかであり、「感動とは一体何なのか?」「私たちはなぜ感動するのか?」という謎は謎のままです。

私は主に実験、そして調査により、感動の正体に近づこうと一連の研究を行っています。
今日「感動」という言葉は軽くなるばかりですが、感動は私たちに素晴らしいものを与えてくれるという信念のもと、感動について日々考えています。


〉大平英樹(名古屋大学教授)

内村航平選手の美しい跳躍の映像がテレビから流れる。
体操男子団体での苦悩を超えて手にした個人総合の金メダルに鳥肌が立ち、目頭が潤む。
一橋大の加藤樹里氏(心理学)によれば、感動とは制約がある中での価値の再発見に伴う感情である。
つまり失敗、苦難、別離、死といった制約が大きいほど、大事なものを得たときの感動も大きいというわけだ。

脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路の線条体に、神経伝達物質のドーパミンが放出されると震えるような快感が経験され、同時に扁桃体が交感神経系を刺激して身体も興奮する。
自分の成功ではないのに日本人選手の活躍に感動するのは、内側前頭前野や上部側頭溝などの「心を読む神経回路」の活動で「日本人」という同じ集団に属する他者を同一視するからだ。

感動は、刹那的な個人の利益から、長期的な他者や社会の利益に意識を切り替えることが重要だ。
内村選手の活躍に感動した人は、周囲の大事な人や日本のために何かをしたくなるに違いない。
しかし、偏狭なナショナリズムにつながる危険もはらむ。
バドミントン女子ダブルス決勝で日本ペアがみせたような、全力を尽くし敗れ去った選手に感動できる大人の能力を我々は涵養(かんよう)すべきではないか。

※【涵養(かんよう)】水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること。

感動体験の効果とは?

2013年12月27日 | 哲学・心の病
感動して「泣く」ことにはストレスを解消する効用がある、ということを以前ブログに書きましたが、感動することには、もっと重要な効果もあるのではないだろうかと思いネットで調べたら、次の説がありました。

(たとえば、原作が藤沢周平氏の映画に感動することは、何かしら人格形成に影響を与えるのではないかと疑問に思って調べました。)


感動体験の効果として、動機づけに関連した効果、認知的枠組みの更新に関連した効果、他者志向・対人受容に関連した効果の三つがあげられている。

細かく見ると、

動機づけに関連した効果では、やる気・肯定的思考・自立性や自主性・自己効力感に、

認知的枠組みの更新では、思考転換・視野拡大・興味拡大に、

他者志向・対人受容では、人間愛・関係改善・寛容さ・信頼・利他意識に、

それぞれ影響があったとされている。


とのことでした。

「他人の目」は犯罪を抑止する?

2013年12月24日 | 哲学・心の病
ファーストフード店や学校のカフェテリアの多くではセルフサービス方式を取っているため、食べ終わった後に食器を自分で片付けなければいけない。
お店の人にとって、食器類を片付けてくれないのは困る。
それではどうしたら、利用者に食器類を片付けてもらえるのだろうか?

レジでの会計の際に片付けてもらうようにお願いする?
それとも時々店内を見回って、片付けない人がいたら注意する?
どちらも、効果が見込めない、あるいはお店の人の負担が増えてしまうため、あまり良い案ではなさそうだ。

イギリスのニューキャッスル大学のマックス・E・ジョーンズ氏たちは、「他人の目」に注目してこの問題を考えた。
言うまでも無く、人は他人の目を気にする存在。
ごみをポイ捨てする回数は、人に見られている時より見らてれいない時の方が圧倒的に多いだろう。
そこでジョーンズ氏たちの研究グループは、人の目があればカフェテリアの食器置き去り率は低くなるだろうと考えた。
しかも、本当の生身の人間の目でなく、単に目の写真をポスターにして壁に貼るだけでも効果があるという仮説を立てた。
これまでの実験室の中での研究で、目の形状をしたものが視界に入ると、人は他人に対して協力的に振舞うようになることが明らかにされていたからだ。

また、ジョーンズ氏たちは目の効果だけでなく、「食べ終わったら食器を片付けてください」という片付けについての注意文の効果や、一緒に食事やお茶をする人数の影響についても同時に検証した。

実験会場は大学のカフェテリアで、ポスターは以下の4種類。

(1)目有り・注意文有り
(2)目無し(代わりに花)・注意文有り
(3)目有り・注意文無し
(4)目無し(代わりに花)・注意文無し

その結果はどうなったのだろうか?

まず、目の効果は、やはり目がないよりもあるほうが、食器の置き去り率は低くなった。
目がないと35%位の人が食器を置き去りにしたのに対し、目があるとその比率が20%程度と大幅に減少した。
一方で、注意文があってもなくても、置き去りにされる比率は変わらなかった。
また、グループのサイズが大きくなるほど、置き去り率は高まるという結果になった。

これらの結果は、

①人はたとえ本物でなくても、他人の目があることで、食器を片付けるようになる
②片付けの注意文は食器の片付け率向上にほとんど効果を持たない
③グループの人数が大きくなると、気が大きくなるのか、はたまた個人が特定されにくくなるためか、片付け率が低下する

ということを示し、注意文より目の写真の方が効果があるという結果だった。

「恋は盲目」の理由とは?

2013年12月24日 | 哲学・心の病
恋愛の最中は、強い幸福感を起こすドーパミンの分泌は多く、コカインやヘロインへの反応に似ているのだとか。

また、判断の中枢の前頭前皮質と社会的認知に関わる脳の部位は活性化しにくくなるのだそうです。
いわゆる「恋は盲目」の状態。

ヘレン・フィッシャーによると、それは、子孫を残すための合理的なシステムだとか。

強い幸福感がなかったらば、その相手との子孫を残そうとするだろうか?

また、恋人に対する判断の歪み(良い点を大きく、悪い点を小さく見る)でなかったならば、その相手との子孫を残そうとするだろうか?

哲学しよう

2013年12月22日 | 哲学・心の病
どんな哲学者にしても、私たちと同じ人間だ。
だから、紀元前から現代までの哲学者たちが考えてきたことは、結局は誰もが一度は考えようとしてきたことと同じだ。
ビビることはない。
ただ、彼らと私たちのどこが違うかというと、彼らはとにかく最後まで考えて、『とりあえずの(←ここ重要)』答えを出しているということだ。

分かるということは自己満足ではない。
まさに、この世界を積極的に理解していくということだ。
この世界を理解して生きるのと、理解しないまま手当たり次第に生きるのとでは、雲泥の差(←ここは私は疑問)なのだよ。

by ある著作者

「SVR理論」とは?

2013年12月17日 | 哲学・心の病
「SVR理論」とは、社会心理学者・マースタイン氏によって提唱された、パートナーシップの考え方。
ふたりの出会いから恋愛、結婚へ向かうプロセスを3段階に分け、 その時期に必要な要素を示唆しています。

・第1ステージ「刺激(Stimulus)」
相手の外見的魅力や、人柄、言動、社会評価などに「刺激」を受け、好意を抱くステージ。
一目ぼれ、片想いから、交際が始まって間もない時期。
相手の悪い部分がまだ見えていない、ハッピーなときです。

・第2ステージ「価値(Value)」
相手との「価値観」を見定める時期です。
多くの時間を一緒に過ごす中で、考え方や行動が自分と似ているか、を重要視します。
価値観が似ている相手ならば、穏やかに過ごせるでしょう。
でも、お互いの価値観に違いがあると、喧嘩が増えてきたり相手に対する不満も表に出たりしやすい時期。
このステージで脱落するカップルは、多いそう。

・第3ステージ「役割(Role)」
恋愛の最終ステージ。
お互いに必要としながら、自分とは違う価値観も受け入れることができる。
そして、パートナーと理解しあって、お互いの足りない部分を補いあう関係です。
相手にできないことを自分が負担する、自分にできないことは、相手にお願いする。
そうやって、「役割分担」がしっかりとできる関係になると、ふたりの関係はより強いものに。
ここまでくると、カップルとしても長続きしやすいですし、夫婦だとしたら円満な家庭を築けるでしょう。


とのことでした。

人間原理とは?

2013年12月17日 | 哲学・心の病
対談者:茂木健一郎(ソニ研究所)、須藤靖(東大理学系研究科)

茂木「ところで先ほど話に出た人間原理ですが、私たちの宇宙における様々な定数や法則は人間が生まれる条件を満たすようにプログラミングされているというような話ですね」

須藤「地球上で生命が誕生したのが単なる偶然に過ぎないのか、それとも必然なのだろうか、という難問に対する解釈の一つです。勿論答えはわかっていません。しかし、調べれば調べるほど生命を誕生させるには、私たちの自然界で奇跡的な条件が成り立っている必要がある。ということは事実のようです。逆に人間が存在する宇宙では必ず「なぜ、私たちの宇宙ではこのような偶然がなりたっているんだろう」ということになる。これが人間原理と呼ばれる立場です。」

茂木「十年ぐらい前に聞いた時は、少々宗教がかったと言うか、科学の中でどう位置づけられるのか疑問におもったのですが」

須藤「おっしゃるとおり、現時点では科学と言うよりも価値観と言った方がいいかもしれません。ただし、自然法則と生命誕生が完全に解明されない限り常に残る基本的な問であることも事実です。例えば、自然界の物質は通常、液体の状態から固体の状態になると密度が高くなって沈みます。ところが、水だけは例外で。固体になると浮く、実はこの性質が生命誕生にとってきわめて重要だと考えられています。もし氷が水より重いと、氷は下に沈殿しやがて海が凍る。海中の生物は生きる事ができなくなる。これは、不思議な偶然です。」

茂木「だからこそ、「知的な設計者が生命や宇宙をつくりあげた」というIDを唱える人達がでてくるわけですね。」

須藤「その意味では、逆に絶対主を排除したいという考え方の一つが人間原理と言ってもよいでしょう。人間原理は、宇宙論研究者の間では以前からよく知られていましたが、最近の「超ひも理論」の進展によって素粒子物理学者にも注目されるようになってきました。」

茂木「どういう関係にあるんですか」

須藤「人間原理と言う考え方を物理学に持ち込んだのはケンブリッジ大学のホイルだといわれています。」

茂木「ホイルというと、ビッグバン宇宙論を認めなかった定常宇宙論者として有名ですが」

須藤「定常宇宙論自体は否定されましたが、彼は宇宙物理学において様々な先駆的業績を残しています。なかでも宇宙の元素の起源の研究は有名です。その過程で彼は当時知られていた核反応率によると炭素を合成する事は不可能である事に気付きました。生命は炭素の多様な結合性に基づいた有機物からできていますから、炭素が合成されなければ人間も誕生しない事になってしまいます。これでは困る。」

茂木「何故炭素が合成されないとおもわれたのでしょうか」

須藤「重い元素はより軽い元素が2個核反応を起こす事で合成されます。質量数12の炭素は先ず質量数4のヘリウムが2個反応し質量数8の元素を作り、それに更ににもう一個のヘリウムがくっついてできると考えるのが自然です。ところが何故か、私たちの自然界には質量数8の安定元素は存在しないのです。」

茂木「つまり、元素を1ずつ融合させる2対半王の積み重ねでは、ヘリウム以上の元素、特に炭素がどうやって生まれたか説明できない」

須藤「となると2対半王ではなく3対反応、つまりヘリウム3個が同時に衝突して質量数12の炭素を合成する可能性を考えるしかありません。しかしこれが起こる確率はきわめて低い。役で人とぶつかった事の無い方はいないとおもいます。しかし、3人同時にぶつかった経験のある人はまれでしょう。」

茂木「では、この可能性もだめなんですね」

須藤「ところが、ホイルはそこで発想を逆転させたのです。「炭素がないと生命は誕生しない、したがって自然界の法則は炭素が合成されるようにできてる筈だ」と。ホイルの予言を元に実験した結果本来なら起こらないはずの反応が起きていました。質量数12の炭素のエネルギ順位に共鳴状態があったため10のー16乗秒しか寿命が無く不安定な質量数8のベリリウムと質量数4のヘリウムで炭素が合成されていたんです。これは厳密には2対反応の組み合わせなのですが、実質的にはヘリウム原子核3個の反応とみなせるためトリプルアルファ反応と呼ばれています。」

茂木「面白いですね。宇宙に私たち人間が生まれるためには炭素が必要。そこに突破口があったわけですね。」

須藤「人間原理的な考え方から重要な科学予言が導き出された。それが検証された唯一の例でしょう。こうした背景もあってか、特に英国の宇宙論研究者たちは1960年代から「人間原理」を真剣に検討してきたようです」

茂木「一般的に科学者、特に理論物理学者は「この世の中の本質的なことは全て自然法則だけで説明できるはずだ」と考えてきました。しかし、その信念に疑問を持たなければならないような事態が見えてきた。」

須藤「その信念こそが物理学者の誇りであり物理学の進歩を支えてきた思想であることは事実です。一方、1986年に宇宙物理学者であるバロとティプラが人間原理に関する非常に優れた本を著し宇宙論研究者に大きな影響を与えました。電弱相互作用の統一でノーベル賞を受けたワインバーグも1989年に宇宙定数の存在は人間原理によって理解せざるを得ないという有名な論文を書きました。しかしながら、素粒子物理学者の殆どは相変わらず「人間原理は科学ではなくそれを認めることは物理学の敗北だ」という態度でした。ところが2003年ごろ究極の理論の最右翼と目される「超ひも理論」で、宇宙の真空状態は一意的に決まるのでなく10の500乗程度の異なる解が存在する事が示され雰囲気が一変しました。」

茂木「真空状態が10の500乗個あると言うのはどういう状態ですか」

須藤「異なる真空では例えば重力や電磁力の強さを決めるニュートンの万有引力定数や素電価、更には真空のゼロ点エネルギと解釈できる宇宙定数、あるいはダークエネルギなどが私たちの宇宙での値と異なります。10の500乗個の異なる真空の解はこれら物理定数の値として10の500乗種の異なる値の組を持つ宇宙の可能性があるということです。」

茂木「つまり、私たちの宇宙はその膨大な数の解の中の一つでしかなく、それが偶々人間を生み出す宇宙だったということですね」

須藤「伝統的な素粒子物理の価値観は「究極の理論が存在し、それによって全てが決まるはずだが、私たちはその理論にいまだ達していないだけだ」というものでした。したがって複数の真空解が存在し、そのどれかを一意的に選ぶ物理的な原理を欠くようではそもそも究極の理論とはいえないことになります。人間原理は逆に生命を誕生させうると言う条件こそ10の500乗個の異なる真空の可能性から私たちの宇宙を選び出す原理そのものなのではないだろうか、というわけです。」

茂木「人間原理は究極理論と相反する概念ではなくむしろその一部で本質的な役割をになっているということですか」

須藤「物理定数の値が無作為に選ばれたとすれば、生命更には人間を誕生させるような条件が満たされる事は確率的にありえない。だからこそ、10の500乗個という途方も無い組み合わせの数が解として存在する事が必要なんです。」

茂木「それがたとえ直接検証できなくても、私たちの住む宇宙以外に無数の宇宙が存在するはずだと言う考えにつながってくる。」

須藤「むしろそう考えなくては不自然です。人間が誕生する宇宙の存在を自然に説明するためには、そうでない無数の宇宙の存在を認めることが必須です。これが人間原理にとって多宇宙の存在が不可欠な理由です。」

なぜ性(男と女)があるのか?

2013年12月16日 | 哲学・心の病
『なぜ性(男と女)があるのか?』のわかりやすい説明をネットで探していたら、おもしろい記事がありましたので、それを紹介します。

有性生殖は、両親の遺伝子を混ぜ合わせることで多種多様な子供を産み、環境変化に適合した誰かが生き残って進化するいう優れたシステムですが、メスとオスの出会いや求愛、受精が必要で、非常に手間がかかります。
また、子を産めず、遺伝子を運ぶ精子を作るだけともいえるオスの存在も問題となります。
このため、地球上の高等生物のほとんどは有性生殖を行いますが、オスの存在による無駄を少なくする工夫をしている者も多くいます。
たとえばカタツムリは、一匹の体の中にオスとメスの性器を持つ雌雄同体で、二匹が出会うと互いの精子を交換し、互いに産卵することで、子を産まない個体をなくしています。
また、有性生殖の道具であるメスの卵が、精子と受精しないで無性生殖的に孵化して子供になる「単為生殖」を併用する生物も多くいます。
たとえばミジンコは、環境がよい春や夏には単為生殖でメスがメスだけを産んでどんどん増え、冬が近づいて環境が悪くなるとオスも生まれて有性生殖で休眠卵を産んで越冬します。
ハエの仲間も有性生殖していますが、栄養状態がよい環境では、成虫になって受精する時間を節約して、幼虫(うじ虫)の体内の卵が成熟して単為生殖で孵化し、体を食い破って多くのうじ虫が生まれます。
効率良く増殖できる単為生殖(無性生殖)と、多様性を確保して環境変化に適応する有性生殖の長所を組み合わせて逞しく生きているのです。
脊椎動物でも哺乳類以外では単為生殖の例が確認されており、両生類のオガサワラヤモリは国内産にはオスが見つかっておらず、メスだけで単為生殖していると考えられます。
オスを用いる有性生殖の効率を考えると、ヒトの場合男性と女性がほぼ同数なので、人口維持には出生率2以上が必要ですが、もし雌雄同体やメスだけによる単為生殖であれば出生率は基本的に1でよく、残念ながらオスの存在による効率の悪化は明白です。
今のところ、私たち哺乳類だけはオスとメスの受精による有性生殖しか確認されておらず、オスの存在意義が確保されていますが、国内の大学の研究では、メスの卵に別のメスの卵の染色体を特別な方法で受精させて生まれた「二母性マウス」が誕生しています。
この技術がヒトに応用されると、女性だけで子孫を残せるので効率もよく、しかも二人の母親の遺伝子が混ぜ合わされて環境変化にも強いため、男性が不必要な時代が来てしまうのかもしれません。

好まれる異性は世界共通!

2013年12月11日 | 哲学・心の病
アメリカの心理学者バスは、アジアやアメリカ、ヨーロッパ、アフリカなどの37にわたる文化で、1万人を越える人たちに調査を行い、男女間でパートナー選択の基準が異なることを示している。
それによると、男性は女性よりも外見的魅力を重視しやすく、そのような傾向は37文化中34の文化で見られた。
また、男性は女性と比べ年齢の若い相手を好みやすい傾向もあった。

一方、女性は、男性よりも相手の経済力を重視する傾向にあり、37文化中36の文化で共通していた。
また、女性は男性よりも自分より年上の相手を好みやすい傾向があった。

このようなパートナー選択における男女間の違いは、これまでいくつもの研究で類似した結果が得られている。
では、どうして男性と女性で基準が異なるのだろうか?
このことについてバスは、進化心理学的な考え方から説明を行っている。

進化心理学的には、人間は大昔の過酷な環境において子孫を繁栄させる(自分の遺伝子を残す)ために、よりよいパートナー選択を行ってきたと考えられる。
そのパートナー選択の基準は、人が数百万年にわたって獲得してきたものであり、現代においてもそれほど変化することなく見受けられるといえるだろう。

では、「よりよいパートナー選択」とは何か?
妊娠と子育てという危険な役割を担う女性にとっては、自分と子供にきちんと食糧を供給してくれること、すなわち現代における経済力が重要なポイントとなる。

一方、男性にとっては、自身の遺伝子を残すために妊娠し、うまく出産できる可能性の高い相手、すなわち若くて健康的であることが重要視される。
この健康的という指標は外見的魅力と関連するため、とくに男性は見た目を重視しやすいのだといえる。

※ただし、こうした進化心理学的な考え方はあくまで仮設であり、現代の事情に必ずしも当てはまるとはいえないことは、心に留めておいてほしい。

人はなぜキスをするのか?

2013年12月11日 | 哲学・心の病
人類進化学の分野では、「人はチンパンジーが幼いままに成長することで進化した種である」と考えられています。
そして、幼い特徴をもったまま大きくなる人間は、成長がほかの動物と比べても非常に遅く、長期にわたって続きます。
それゆえに、人間は大人になったあとでも、チンパンジーの赤ちゃんと類似した行動をとるといわれています。

そのひとつの例が、キスだというのです。
人間のキスは、離乳時期のチンパンジーの赤ちゃんが、母親から噛み砕いた食べ物を口移しでもらうしぐさと似ています。

しかし、なぜ人は、恋愛や夫婦関係においてキスをするのでしょうか?
それは、「母親から食べ物を与えられることへの温かさや心地よさ」を、大人になってからも求めてしまうからだというのです。

現実的には「永遠の愛はない」

2013年12月09日 | 哲学・心の病
近年、日本では3人に1人が離婚し、欧米では2人に1人(ベルギーは70%)が離婚していますが、欧米の離婚が多い原因をネットで調べたら、次の回答がありました。

国にも寄ると思いますが、制度が行き届いているのも関係していると思います。
離婚した場合の多くの親権は、母親側が持つことが多いですが、国や自治体の制度がしっかりしていて、母親だけでも十分に生活していけるため、我慢して嫌な夫と暮らす必要がないのです。
そして、離婚する時に決めた養育費の支払い等をきちんと履行する父親が多いということです。
(日本では踏み倒す人が多いとか…)。
加えて、日本のように専業主婦というのもあまりいなく、結婚してからも女性も仕事を続けていますので、貯蓄もあり、精神的にも自立しているということもあると思います。
なので、「離婚すると経済的に苦しくて生活できないから我慢して離婚しない」という日本とは大きく違っています。

ということでした。
つまり、離婚によるデメリットがなくなる社会になっていけば、今以上に離婚数が増えるということで、それは、現実的には「永遠の男女の愛はない」ということを物語っているのではないでしょうか。

ここからは、科学的根拠のない私の意見ですが、おおよそ4年で男女の愛がなくなるがために、人類は絶滅をまぬがれたのではないか?
また、そうであるがために、人類は知能が発達したのではないか?
つまり、そうでなかったならば、今現在の私たちは存在しなかったのではないか?
と考えることもできるのではないでしょうか。

※ご承知だと思いますが、私の意見が正しいとは限りませんので、ご注意ください。

うつ病の原因(その2)

2013年12月04日 | 哲学・心の病
【うつ病の原因は記憶だ!】

3.第三の原因は記憶

およそ370万年前、アフリカのサバンナにいた人類は、猛獣に襲われるようになりました。
そこでは、恐怖の記憶が生き延びるために欠かせませんでした。
たとえば、ライオンの縄張りへ入り込み殺されそうになったことを覚えていればこそ、二度とそこへ近づかないようになります。

扁桃体が激しく活動すると、記憶をつかさどる海馬(かいば)もはたらき、記憶が生まれます。
そして、何度も恐怖の記憶がよみがえるうちに、現実は繰り返されていないにもかかわらず扁桃体が連動してストレスホルモンを生み、うつ病になります。


【うつ病の原因は言語だ!】

4.第四の原因は言語

およそ190万年前、人類の脳にはブローカ野(や)という言語をつかさどる部位が生じました。

声を用いて情報を伝え合ううちに、他人から恐怖の体験について聞かされただけでも扁桃体が強く活動するようになりました。


【うつ病の原因は不平等だ!】

5.第五の原因は不平等

およそ40万年前、集団の結束で狩りを始めた人類は平等でした。
平等に生きる「ハッザ族」の人々は、うつ病を発症していません。

お金を分け合う実験によると、自分のものと他人のものとが不平等であれば、損をしても得をしても扁桃体は激しくはたらきますが、平等であれば、扁桃体は反応しません。

人類はもともと、平等の精神を持っていたのでうつ病になりませんでしたが、それが失われてから発症するようになりました。
不平等な社会になり、扁桃体を暴走させない仕組みもなくなりました。

ペンシルベニア大学のミッチェル・ロスマン博士によれば、狩猟採集生活から農業を中心とした社会への大転換により、貧富の差が生まれました。
それは、穀物を権力に応じて分けるようになった、メソポタミア文明の遺跡からも明らかです。
農耕を主とする文明社会によって、平等が崩れ、人類はうつ病への道を歩み始めました。

そして、現代では職業の違いも、うつ病の発症と関係があります。
専門職や技能職に就いている人々と、営業、事務や非技能職に就いている人々とでは、うつ病の発症率に2倍以上の違いがあります。
社会的立場によって、受けるストレスの強さがまったく異なるのです。

人類自らが生んだ文明によって不平等が広がり、うつ病を生む社会をつくってしまったのです。

うつ病の原因(その1)

2013年12月04日 | 哲学・心の病
NHK「病の起源 第3集 うつ病 ~防衛本能がもたらす宿命~」の番組で、うつ病の原因を紹介していました。

【うつ病の原因は天敵だ!】

1.第一の原因は天敵

うつ病にかかった人は、脳の一部が萎縮しています。
その原因は扁桃体(へんとうたい)。
扁桃体の活動が強まると、恐怖や悲しみや不安が引き起こされます。

今からおよそ5億2000万年前、人類の先祖である魚類は節足類を天敵とし、厳しい生存競争をくり広げていました。
節足類は神経細胞が全身にばらけていますが、魚類は身を守るために神経細胞が集中する脳を発達させ、扁桃体が生まれました。
敵を察知すると扁桃体がはたらいてストレスホルモンを分泌し、全身の筋肉を活性化し、結果的に鋭い動きで敵から逃れられるのです。

ゼブラフィッシュを天敵がいる水槽へ入れておくと、うつ病になります。
入れた当初はさかんに逃げ回っていますが、ある時期を境にしてほとんど動かなくなります。
ストレスホルモンの分泌が止まらなくなると、脳の神経細胞がダメージを受け、うつ状態が生まれるのです。

扁桃体が過剰にはたらく→全身へ過剰なストレスホルモンが分泌される→脳に及ぶとダメージを与えて栄養不足となる→脳が萎縮する→意欲や行動が低下する、

つまり、扁桃体の暴走によってうつ病が発症するのです。


【うつ病の原因は孤独だ!】

2.第二の原因は孤独

魚類からハ虫類、そして、ほ乳類へと進化をたどる過程において、人類は扁桃体のおかげで生き延びましたが、扁桃体は天敵以外にも反応するようになり、うつ病の新たな原因が生じました。

チンパンジーは集団で暮らし、子供を育てるのも、敵と戦うのも、集団の力によります。
病気になったチンパンジーを長い間、群れから離しておいたところ、一日中室内で過ごすようになりました。
飼育している担当者は、「まるで幽霊のようです」と言います。

孤独になると不安や恐怖が生まれ、扁桃体が激しく活動してしまい、うつ病になります。
孤独がストレスを生じるのは、仲間との絆が強いタイプの生きものの宿命です。