哲学的な何か、あと心の病とか

『人生とは何か、考えるほどにわからない。というのは実は正確ではない。わからないということが、わかるのである。』池田晶子

「SVR理論」とは?

2013年12月17日 | 哲学・心の病
「SVR理論」とは、社会心理学者・マースタイン氏によって提唱された、パートナーシップの考え方。
ふたりの出会いから恋愛、結婚へ向かうプロセスを3段階に分け、 その時期に必要な要素を示唆しています。

・第1ステージ「刺激(Stimulus)」
相手の外見的魅力や、人柄、言動、社会評価などに「刺激」を受け、好意を抱くステージ。
一目ぼれ、片想いから、交際が始まって間もない時期。
相手の悪い部分がまだ見えていない、ハッピーなときです。

・第2ステージ「価値(Value)」
相手との「価値観」を見定める時期です。
多くの時間を一緒に過ごす中で、考え方や行動が自分と似ているか、を重要視します。
価値観が似ている相手ならば、穏やかに過ごせるでしょう。
でも、お互いの価値観に違いがあると、喧嘩が増えてきたり相手に対する不満も表に出たりしやすい時期。
このステージで脱落するカップルは、多いそう。

・第3ステージ「役割(Role)」
恋愛の最終ステージ。
お互いに必要としながら、自分とは違う価値観も受け入れることができる。
そして、パートナーと理解しあって、お互いの足りない部分を補いあう関係です。
相手にできないことを自分が負担する、自分にできないことは、相手にお願いする。
そうやって、「役割分担」がしっかりとできる関係になると、ふたりの関係はより強いものに。
ここまでくると、カップルとしても長続きしやすいですし、夫婦だとしたら円満な家庭を築けるでしょう。


とのことでした。

人間原理とは?

2013年12月17日 | 哲学・心の病
対談者:茂木健一郎(ソニ研究所)、須藤靖(東大理学系研究科)

茂木「ところで先ほど話に出た人間原理ですが、私たちの宇宙における様々な定数や法則は人間が生まれる条件を満たすようにプログラミングされているというような話ですね」

須藤「地球上で生命が誕生したのが単なる偶然に過ぎないのか、それとも必然なのだろうか、という難問に対する解釈の一つです。勿論答えはわかっていません。しかし、調べれば調べるほど生命を誕生させるには、私たちの自然界で奇跡的な条件が成り立っている必要がある。ということは事実のようです。逆に人間が存在する宇宙では必ず「なぜ、私たちの宇宙ではこのような偶然がなりたっているんだろう」ということになる。これが人間原理と呼ばれる立場です。」

茂木「十年ぐらい前に聞いた時は、少々宗教がかったと言うか、科学の中でどう位置づけられるのか疑問におもったのですが」

須藤「おっしゃるとおり、現時点では科学と言うよりも価値観と言った方がいいかもしれません。ただし、自然法則と生命誕生が完全に解明されない限り常に残る基本的な問であることも事実です。例えば、自然界の物質は通常、液体の状態から固体の状態になると密度が高くなって沈みます。ところが、水だけは例外で。固体になると浮く、実はこの性質が生命誕生にとってきわめて重要だと考えられています。もし氷が水より重いと、氷は下に沈殿しやがて海が凍る。海中の生物は生きる事ができなくなる。これは、不思議な偶然です。」

茂木「だからこそ、「知的な設計者が生命や宇宙をつくりあげた」というIDを唱える人達がでてくるわけですね。」

須藤「その意味では、逆に絶対主を排除したいという考え方の一つが人間原理と言ってもよいでしょう。人間原理は、宇宙論研究者の間では以前からよく知られていましたが、最近の「超ひも理論」の進展によって素粒子物理学者にも注目されるようになってきました。」

茂木「どういう関係にあるんですか」

須藤「人間原理と言う考え方を物理学に持ち込んだのはケンブリッジ大学のホイルだといわれています。」

茂木「ホイルというと、ビッグバン宇宙論を認めなかった定常宇宙論者として有名ですが」

須藤「定常宇宙論自体は否定されましたが、彼は宇宙物理学において様々な先駆的業績を残しています。なかでも宇宙の元素の起源の研究は有名です。その過程で彼は当時知られていた核反応率によると炭素を合成する事は不可能である事に気付きました。生命は炭素の多様な結合性に基づいた有機物からできていますから、炭素が合成されなければ人間も誕生しない事になってしまいます。これでは困る。」

茂木「何故炭素が合成されないとおもわれたのでしょうか」

須藤「重い元素はより軽い元素が2個核反応を起こす事で合成されます。質量数12の炭素は先ず質量数4のヘリウムが2個反応し質量数8の元素を作り、それに更ににもう一個のヘリウムがくっついてできると考えるのが自然です。ところが何故か、私たちの自然界には質量数8の安定元素は存在しないのです。」

茂木「つまり、元素を1ずつ融合させる2対半王の積み重ねでは、ヘリウム以上の元素、特に炭素がどうやって生まれたか説明できない」

須藤「となると2対半王ではなく3対反応、つまりヘリウム3個が同時に衝突して質量数12の炭素を合成する可能性を考えるしかありません。しかしこれが起こる確率はきわめて低い。役で人とぶつかった事の無い方はいないとおもいます。しかし、3人同時にぶつかった経験のある人はまれでしょう。」

茂木「では、この可能性もだめなんですね」

須藤「ところが、ホイルはそこで発想を逆転させたのです。「炭素がないと生命は誕生しない、したがって自然界の法則は炭素が合成されるようにできてる筈だ」と。ホイルの予言を元に実験した結果本来なら起こらないはずの反応が起きていました。質量数12の炭素のエネルギ順位に共鳴状態があったため10のー16乗秒しか寿命が無く不安定な質量数8のベリリウムと質量数4のヘリウムで炭素が合成されていたんです。これは厳密には2対反応の組み合わせなのですが、実質的にはヘリウム原子核3個の反応とみなせるためトリプルアルファ反応と呼ばれています。」

茂木「面白いですね。宇宙に私たち人間が生まれるためには炭素が必要。そこに突破口があったわけですね。」

須藤「人間原理的な考え方から重要な科学予言が導き出された。それが検証された唯一の例でしょう。こうした背景もあってか、特に英国の宇宙論研究者たちは1960年代から「人間原理」を真剣に検討してきたようです」

茂木「一般的に科学者、特に理論物理学者は「この世の中の本質的なことは全て自然法則だけで説明できるはずだ」と考えてきました。しかし、その信念に疑問を持たなければならないような事態が見えてきた。」

須藤「その信念こそが物理学者の誇りであり物理学の進歩を支えてきた思想であることは事実です。一方、1986年に宇宙物理学者であるバロとティプラが人間原理に関する非常に優れた本を著し宇宙論研究者に大きな影響を与えました。電弱相互作用の統一でノーベル賞を受けたワインバーグも1989年に宇宙定数の存在は人間原理によって理解せざるを得ないという有名な論文を書きました。しかしながら、素粒子物理学者の殆どは相変わらず「人間原理は科学ではなくそれを認めることは物理学の敗北だ」という態度でした。ところが2003年ごろ究極の理論の最右翼と目される「超ひも理論」で、宇宙の真空状態は一意的に決まるのでなく10の500乗程度の異なる解が存在する事が示され雰囲気が一変しました。」

茂木「真空状態が10の500乗個あると言うのはどういう状態ですか」

須藤「異なる真空では例えば重力や電磁力の強さを決めるニュートンの万有引力定数や素電価、更には真空のゼロ点エネルギと解釈できる宇宙定数、あるいはダークエネルギなどが私たちの宇宙での値と異なります。10の500乗個の異なる真空の解はこれら物理定数の値として10の500乗種の異なる値の組を持つ宇宙の可能性があるということです。」

茂木「つまり、私たちの宇宙はその膨大な数の解の中の一つでしかなく、それが偶々人間を生み出す宇宙だったということですね」

須藤「伝統的な素粒子物理の価値観は「究極の理論が存在し、それによって全てが決まるはずだが、私たちはその理論にいまだ達していないだけだ」というものでした。したがって複数の真空解が存在し、そのどれかを一意的に選ぶ物理的な原理を欠くようではそもそも究極の理論とはいえないことになります。人間原理は逆に生命を誕生させうると言う条件こそ10の500乗個の異なる真空の可能性から私たちの宇宙を選び出す原理そのものなのではないだろうか、というわけです。」

茂木「人間原理は究極理論と相反する概念ではなくむしろその一部で本質的な役割をになっているということですか」

須藤「物理定数の値が無作為に選ばれたとすれば、生命更には人間を誕生させるような条件が満たされる事は確率的にありえない。だからこそ、10の500乗個という途方も無い組み合わせの数が解として存在する事が必要なんです。」

茂木「それがたとえ直接検証できなくても、私たちの住む宇宙以外に無数の宇宙が存在するはずだと言う考えにつながってくる。」

須藤「むしろそう考えなくては不自然です。人間が誕生する宇宙の存在を自然に説明するためには、そうでない無数の宇宙の存在を認めることが必須です。これが人間原理にとって多宇宙の存在が不可欠な理由です。」