≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

国立音楽大学楽器学資料館へ行った。その1(パイプオルガン)

2023-12-17 18:01:24 | 音楽

国立音楽大学楽器学資料館 というところがあって、そこで「世界の音階と音律」というのをやっている、というのを 真三@創作垢のツイートあらためポスト で知った。
ここのところ、チェンバロのチューニングでヴェルクマイスターⅢを練習している身としては、これは行ってみたい、と思ったのだ。

しかし、今回もカメラを持っていくのを忘れてしまった。資料館内は撮影不可なので油断した。
わたしのスマホの望遠レンズは傷がついてぼやーっと激しくソフトフォーカスになってしまう。それで広角レンズで撮ると、こう歪んでしまうのだ。すみません。


国立音楽大学楽器学資料館の入り口。くにたちおんがくだいがく です。こくりつ じゃない。地名です。老婆心です。
案内板、っていうんですか、アレが譜面台なのが音大っぽいかも。



入ってすぐのラウンジのショーウィンドウは撮影可。
これは、ポルタティーフオルガンじゃないですか!!
ちなみにこれは望遠レンズの方で撮った。すっごく加工してこの程度。

ポータブルなパイプオルガン。後ろのふいごを動かして空気を入れ、キーを押してパイプを鳴らす。

キャプション。

なぜかもっと小さいポルタティーフオルガンが国立音楽大学楽器学資料館の所蔵楽器目録に載っていて (下へスクロール) 、ショーウィンドウ内のものは載っていなかった。



資料館の中に入ったらもう撮影できないのに、入ったところ(ロビー)の受付脇に水オルガンが設置してあった。撮りたかった!
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄に水オルガンが出る。もうちょっと大きい写真だと分かりやすいんだけどなあ。

オルガンの操作するところの手前に透明な水槽がある。水の張られた水槽に一回り小さい透明な水槽が伏せてある。その上方には空気が入っていて、そこから管がオルガンにつながっている。伏せた水槽の上方にポンプで空気を送り込むと、小さい水槽の中の水面は外側より下がる。
オルガンのキーを押すと、対応するパイプ(笛)に空気が送り込まれて音が鳴る。小さい水槽の上方の空気がパイプに流れることで小さい水槽内の水面は上がっていく。外側の水槽の水面と同じ高さになれば空気の流れは止まり、音は止まる。
水圧を利用することでパイプに送られる空気がある程度一定に保たれるというのがミソ。

ヤマハ楽器解体全書 パイプオルガン誕生ストーリー ギリシャ時代に原型が誕生 参照

その後 ふいごが利用されるようになった。
パイプオルガンの音の鳴る仕組みはかなり昔に出来たけれど、ピアノのような鍵盤の発明はもっと後代だ。音律やら半音やらの進歩を待つから。
ということを反映してか、展示されている水オルガンのキーの並びはピアノのような鍵盤状にはなっていない。

水オルガンの名前はオルガンの歴史を調べるとたいてい見るけれど、実物は初めて見た。国立音楽大学楽器学資料館の水オルガンは水槽が透明で分かりやすいのだ。資料館の人が動かして鳴らしてくれて、興奮する!! とても納得できました。



パイプオルガンのパイプというのは素材や形状で音色が違う。素材は金属のものと木のものがあるし 管が閉じているものもそうでないものもある。笛のように音の出るもの以外にリード管というリードが振動するものもある。驚くほど種類がある。ネット上の百科事典 があるくらいだ。分かりやすい写真がなかなか見つからないが、ごく一例
水オルガンのまえを通りすぎ受付横の扉から展示室に入ると左側に、バラエティーに富んだパイプが何種類もささっているオルガンが展示してあった。これは見た目にも楽しい!
資料館の人に声をかけると説明して鳴らしてくれた。鳴るともっと楽しい!
パイプ音色見本オルガン(とよぶことにする)は所蔵楽器目録に見当たらないなあ。
その音色見本オルガンも水オルガンも マナ・オルゲルバウ社 製とオルガンに記されていた。
マナ・オルゲルバウ社は東京都町田市にある日本のビルダーだ。



展示室の扉の右側にはバレルオルガンというのがあった。barrel organ は翻訳すると手回しオルガンだ。樽オルガンではない。
ハンドルを持ってぐるぐる回すと曲が流れるオルガンなら、可愛らしく装飾されて下に車がついている移動式のものが路上や人の集まる広場でにぎやかしているシーンを動画などで見たことがある人は多いと思う。ひょうきんな音色がカーニバルっぽいパイプオルガンだ。

このリンクのようなストリートオルガンは紙に孔を開けて曲がプログラムされているのに対し、展示されているバレルオルガンはオルゴールのように円筒に突起をつけてプログラムされている。
オルガンの上の板を開けると中に大きなバレルが見える。上の板の内側には曲名が書かれた紙が貼られていた。10曲くらいあったと思う。突起を読み取るピンに対して円筒を横に少しずらすと、別の曲が鳴るそうだ。後述の動画に円筒部のアップがあるので、見ると分かるかもしれない。

まあそういうわけで、バレルにプログラムされているからバレルオルガンというのだろう。手回しオルガンのうちの紙に記録するタイプを紙に記録するという意味の名前にして、両方をまとめて手回しオルガンということにすれば、もうちょっと分かりやすくなると思うんだけどな。専門用語ではあるのかしらん? あ、でも手回しじゃなくて蒸気機関で動くものもあるらしい。それはどういう名前にすればいいのだ !?

楽器学資料館に話を戻す。ここのバレルオルガンの筐体の向かって左脇には、鳴らすパイプのセット数を変えられるレバーもついていた。
そういえば、このオルガンには車がついていないなあ。とはいえ、それほど大きくはないから、その気になれば移動させられるな。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にバレルオルガンが出る。
  👈 このバレルオルガンのデモ動画。筐体は落ち着いたデザインだが、音色は愉快で、そこがやっぱりストリートオルガンの血を感じる。パイプオルガンといえば教会の厳粛なイメージだったりするけど、対極にある 世俗的で賑やかで楽しいストリートオルガンも実はパイプオルガンなのが、興味深い。



バレルオルガンの横にはパイプオルガンの仕組みが見てとれるようなオルガンがあった。筐体に納まるべきパーツが剥き出しだ。
ふいごにキーにトラッカーにストップにスライダーにパイプ。パイプは金属製のものと木製の開管と閉管の 合計3セットあり、それぞれに対応するストップも3個ある。
さすがに風箱は閉じている。空気が抜けたら音がでないから。

ヤマハ楽器解体全書 パイプオルガンのしくみ パイプに風を通して音を出す楽器 スクロールして「音を出す仕組み」を参照

このオルガンも所蔵楽器目録に見当たらない。音色見本オルガンとセットでパイプオルガンの仕組みが尚よく分かる 素晴らしい模型なのに。
しかし写真はちらりと見ることは出来る。上述したバレルオルガンの所蔵楽器目録詳細(再掲)の写真右に写っている。また、上述のバレルオルガンの動画(再掲)の始めと終わりにも左側に写っている。目を凝らしていただければ嬉しいです。
音色見本オルガンも 動画の終わりにはちょっと写っている。オルガン上部のパイプが色々ささっているところが透明な樹脂ケースに覆われているやつだ。この動画を撮影したときは、展示場所が異なっていたんだろうな。



ポジティブオルガンもあった。顔のまえまでパイプが立っていてけっこう背が高い。ペダルなしオルガンという風情。
ドイツ語読みでポジティフということもある。持ち運び可なオルガンという意味だが、一人じゃムリだな。一人で動かせるならポルタティーフ。
ポジティフオルガンって、もっと背が低くて 箱形 なイメージの方が多いかな。ペダルつきのものもある。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にポジティブオルガンが出る。
  👈 このポジティブオルガンのデモ動画。いい感じ。 後ろにバイブルリーガルオルガンが見える。



ペッタンコで小さな、バイブルリーガルオルガンというものもあった。
ふいごがよく見える。というか、並んだ2つのふいごがメインで、鍵盤は取ってつけたかのようだ。
リーガルオルガンはリードが鳴るんだけれど、パイプオルガンのパイプの一種であるリード管が並べてあるもので、ハーモニカのようにリードが並べてあるものとは違う。リードオルガンやアコーディオンは 中に大きなハーモニカが入っているような構造で、これらの系統の方がリーガルオルガンより新しい。どちらの系統にしても、低い音が 笛よりも小さくても鳴らすことが出来るので省スペースだ。
  👈 レガールオルガンの説明動画。 レガールはドイツ語読み、リーガルは英語読みだ。
そういえば、リード管も形の違うものが何種類かパイプ音色見本オルガンにささっていた。
  👈 下にスクロールすると所蔵楽器目録詳細欄にバイブルリーガルオルガンが出る。
  👈 このバイブルリーガルオルガンのデモ動画。チャルメラのような音色。
なんでバイブルなのかというと、この楽器は二つに折りたたむと分厚い聖書に似ているから。
折りたたみピアノって最近売っているけど(ORIPIA とか)、アイディアはずっと昔からあったんだ。それどころか、折りたたみチェンバロ (影踏丸 折りたたみチェンバロ:イタリアのチェンバロについて8(173) も結構あったらしい。マジか。 とはいえ、さすがに巻ける鍵盤(ロールピアノ)はなかった。



ここまで国立音楽大学楽器学資料館で見た ポルタティーフオルガン、水オルガン、音色見本オルガン、バレルオルガン、パイプオルガンの仕組みが見てとれるオルガン、ポジティブオルガン、バイブルリーガルオルガン、と7つのパイプオルガンの仲間を挙げた。
なんとバラエティに富んでいることか!

もしかして国立音楽大学ってパイプオルガンに力を入れているのかしら。国音には大きなオルガンがあるし オルガンを学べるコースもあるし、そうなんでしょうかね。


写真が撮れなかったのが残念だ。それぞれ個性的な姿なのでぜひリンク先に跳んで動画を見ていただきたい。なんなら国立音楽大学楽器学資料館に行くとよい。水オルガンはぜひ動かしてもらうとよい! 一般人の見学は要予約の水曜日だけなんだけどね。



   国立音楽大学楽器学資料館へ行った。その2(チェンバロ、クラヴィコード、スクウェアピアノ) へつづく




 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国立音楽大学楽器学資料館へ... | トップ | 虎渓山 永保寺へ行った。その3 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (fuiriyamabuki)
2023-12-18 21:22:24
ふらっとさん、こんんちは。
読んでくださってありがとうございます。

折りたたみキーボード、ふらっとさんが持ってる話をしてたよなあ、って思い出して書いたんですよ。
ロール式はやっぱり弾きにくいですか😸

影踏丸さんが記事にアップしている動画で、ふくよかなおじさんが製作した折りたたみチェンバロを いそいそとたたんでケースにしまい背負って歩くのものがあるのですが、楽しそうなんです。
貼られてはいないのですが、そのチェンバロをそのおじさんが弾いている動画もありました。

影踏丸さんが、初期稿BWV1050aのチェンバロパートの音域が4オクターヴに制限されているのは折りたたみチェンバロで演奏されたからだ、という推理をしていました。
推理といえば、折りたたんでしまっておいたから壊されなかったんだろう、というふらっとさんの意見、納得です!

「小さくてもドデカゴン」、初めて知りました。ビルダーの方なんですね。
さすがふらっとさん、情報をたくさんお持ちです。教えてくださり、ありがとうございます。
わたしに「小さくてもドデカゴン」は早すぎると思いました。
「チェンバロ大事典」に載っている音律がいくつも出来るようになったら欲しくなるかもしれません。

宝の持ち腐れ、といえば、桒形亜樹子 (2009)「不等分か等分か?ーフランス18世紀音律の色彩、その曖昧さの魅力」を国会図書館から取り寄せましたが、一回目を通しただけだけです。
出来るようになりたいんですけどね
返信する
Unknown (ふらっと)
2023-12-17 22:17:57
今回も充実のレポート、ありがとうございます。鍵盤ものは奥が深いですよね。ガタイもでかいし。
折りたたみキーボード、私も持ってます。ロール式のも以前職場にあったんですが、弾きにくいったらなくて、捨ててしいましました。
チェンバロってデカいから、折りたたみたくなる気持ち、わかります。それに折りたたみタイプだと場所を取らないので、革命後も取っておきやすかったんでしょうね。隠しておくとか、しまってて忘れちゃったとか。
ところで、音律のことですが、「小さくてもドデカゴン」という本、ご存知ですか?
https://anonymous25.jimdofree.com/%E7%A0%94%E7%A9%B6/
読む人が読むとすごい本です。いろ〜〜〜んな調律法が細かく書いてあるんですよ。私は数字に弱いので、宝の持ち腐れですが💦
返信する

コメントを投稿

音楽」カテゴリの最新記事