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共謀罪の新設について

2006年04月24日 13時54分07秒 | 政治・世相・スポーツ等
ついに共謀罪についての審議が始まるそうだ。
過去何度も廃案になっているこの法律、与党圧倒的多数の現在はまず通るだろう。

共謀罪とは、組織的な犯罪について、謀議の段階で犯罪を成立させるものだ。
特定の犯罪の実行行為ではなく、共謀そのものを実行行為とみなすという立法ということになる。つまり「既遂」「未遂」以外に「謀議」も新たに犯罪の形として設けるということだ。これについて一部では問題視する意見がある。

刑法を学べば必ず出てくる考え方に「共謀共同正犯」というのがある。実行行為に加わらなくても、組織的な犯罪においてその犯罪の実行に関して重大な位置を占める者を「正犯」として罰するという考え方だ。これは法的根拠に薄いと言われながらも、たとえば暴力団の組長が組員に殺人などをさせる場合、組長が命じれば教唆、武器を供与すれば幇助となるが、これでは組長は従犯となって実際の違法性に見合わないうえに状況により共犯に問うこと自体も難しくなってくる。これでは罪の均衡が図れないので、こういった組長的な者を罰するために持ち出された法理だ。繰り返すがこれは根拠とする法律がない。これに根拠を持たせる意味が共謀罪にはある。

次に、テロ対策についての国際条約をうけて、他国ではわりと行われているカルト・犯罪組織に対する強行的な捜査が共謀罪を根拠にできるようになる。日本ではなかなか出来なかったことが出来るようになると期待される。日本は治安が良い、というのは過去の話、オウムなどカルト・犯罪・テロ組織が潜伏していないとも限らない。これらに迅速に対応するため、「起きてから」でないと対処出来なかったことを未然に防ぐことが出来る共謀罪の成立が望まれている。


ところが、これに反対する動きがある。彼らが言うには、「これは治安維持法の再来だ」などと悪法であるとアピールする。根拠を見ていると、単に謀議だけで処罰するのは刑法の原則に反するというものだ。良く読んでると、彼らは刑法を理解していないか、あえて読み違えることで共謀罪の成立を阻もうとする運動に役立てているようだ。

刑法の原則には反しない。なぜなら、実行行為に至らなくても「予備・陰謀」で罰せられる犯罪は既にあるからだ。殺人や内乱などは、「予備」「陰謀」でも罰せられる。実行行為に着手していないから、違法性・社会的危険性が生じていないという反論を彼らならしそうだが、これらの重大な犯罪を行おうと陰謀することや、準備をすることが、一定の社会に対する危険性をはらんでいることは少し考えれば分かるだろう。単にこれらを拡大しただけのことで、しかも刑罰も重大な犯罪で五年以下、そうでないものでも2年以下と、重罪とは言えなくなっているし、2年以下の刑ともなれば初犯ならば執行猶予が付くことは間違いない。となると、共謀罪そのもので罰を与えるのが目的ではなく、これを根拠により大きな犯罪を暴いたり、未然に防ぐのが目的ということになる。まことによく考えられていると思う。

「組織的な」犯罪についての謀議は、それだけで危険たり得るのである。今回問題だといわれるのは、この対象となる犯罪が多すぎることがある。だが、なにも共謀罪が出来たとしても市民生活になにも支障はない。なにしろ、「犯罪について謀議」しなきゃそれで共謀罪が適用される必要はないのだから。
市民生活や市民運動が制約されると主張する団体がいるが、そういうことを主張する団体は、常に犯罪の謀議をしているんだろうか?単に許可を得てビラ配ったりデモしたり、それだけやってるぶんには何も困る必要はないと思うのだが。

もし共謀罪が出来たら?と「こんなことも犯罪になる」という例もよく挙げられる。
こういったページがあるのだが、あまりに稚拙で笑ってしまった。

「数人で友達にCDをコピーしてやろうと相談しても罪になる」(これは著作権法の誤解があるようで、実際は数人の友達間でのコピーは違法ではないが、違法となるレベルでのコピーとして返答しておく)
確かに、相談だけで罪になる。でも、そんな相談しちゃダメだよっていうのは、子供でも分かると思うのだが・・・。
「犯罪をもちかけ、相手に同意させ、それを録音して警察に届けると、持ちかけた本人は無罪か減刑で、もちかけられた相手は犯罪となる」
犯罪を持ちかけられても同意しなきゃいいと思うのだが、なにを心配しているんだろうか?
「マンション建設反対の座り込みを相談すると業務妨害の謀議になる」
ちゃんと道路使用許可を取ってやるという相談なら、妨害にはならない。
「新入部員勧誘で、入部するまで帰さないようにすると相談すると監禁の共謀になる」
当たり前です。そんなこと相談しちゃいけません。

「犯罪と知らずに同意してしまい、あとでまずいと思いとどまっても共謀罪は消えない」ここで例示されているのはそのどれも実際に実行してもまず捕まらない程度の微罪だし、「実行前に自首」することで刑の減免があることをあえてそこに書いてない。いちいち警察に自主に行く必要はないが、不本意に共謀罪に当たることをしたとしても、全員で同時に自首すりゃなにも恐いことなどないわけだ。ちゃんと「後戻りのための黄金の架け橋」的なものは用意されているじゃないか。ここで挙げられることが犯罪になるとしても、なーーーんにも困らない。
とまあ、子供の思いつくようなことばかりで笑ってしまう。

それと、この法律が治安維持法の再来、監視・密告社会を助長する、下手なことを言うと捕まるみたいに主張する向きもある。これも間違い。たとえばコピーの問題もそうだが、好きなCDを50枚コピーして、クラス中に配ったとして、すぐに警察が来て捕まえるだろうか?悪いこと、犯罪だとわかっていても、あまりに微罪だと訴えても警察はそうそう動かないのは常識だ。微罪でも確かに共謀罪は成立はするが、実務としてどうでもいいことの共謀罪なんかいちいち捜査だの逮捕だのするわけがない。
自転車で無灯火、信号無視して切符切られる奴がどれだけいるだろうか?こういうことがわからず、「簡単なことが犯罪に該当するようになる」→「すぐ逮捕される」→「恐怖社会」というスライド思考で反対しているように思える。こういうやつは実際にどういう犯罪捜査が行われているか、一般的な市民生活とは何か分かっていないのだろう。

そもそも、共謀罪は、共謀共同正犯の法文化やら、テロ対策という目的で作られるものだ。市民生活を監視して犯罪者を増やすためのものじゃない。そもそもそんなことをする量的余裕が司法機関にはないのだ。タダでさえ忙しいのに、余計な仕事増やすわけがない。
逆にこれで組織犯罪の壊滅に捜査リソースが費やされ、微罪の摘発がさらにされづらくなる。そうなれば市民生活はさらに自由になると思うのだが、違うだろうか。

犯罪の共謀をしなければ何も困らない。共犯を持ちかけられても断ればいい。普通に生活するのになにも市民生活を脅かすことはない。拡大解釈、過剰運用があるかもしれない?そりゃ、怪しい団体にはそうやって法律を拡大適用して監視していくのは当たり前だし、そうするための法律なのは確かだ。とりあえず、この法律に反対している団体がその対象となっていくのは間違いない。彼らは見事に餌に食いついたというわけだ。

この法律により、市民生活は自由に、かつ安全になっていくのだ。私は共謀罪には大賛成である。