考えろ！

「考えろ！」
最近、カミさんがよく使うようになった言葉。

「常識やろ」に、とって変わって出てきたようにも思う。
常識が、常識でない人間(僕)に「常識だろう」は通じないということが分かってきたのかも知れない。

「考えろ！」は、娘のピアノ練習で頻発して用いられる。

僕も、今朝（日付としては、昨日だけどまだ寝てないので）言われてしまった。
前日、洗濯機の蓋を、僕が洗濯物を入れるために開けて（くれて）いたのを、
僕が、洗濯物を入れた後、閉めなかったのがよくなかったらしい。
開いたままだったので、洗濯機が途中で待ちになってしまって、時間がかかったということ。
何故、開いているか「考え」たら、閉めるのが当然やろ！、普通気付くやろ！
と責められた。

そんなもん、勝手に閉めたら、「なんでワザワザ開けたままにしているのに、勝手に閉めるんや」と怒られるかもしれんやろ・・・と、僕は抗弁した。事実、そう思った。

「考える」も何も、何か特別なことを許可なしにすると怒られるという意識が、僕にも、娘にも出来ている。勢い僕は、家ではほとんど何も考えない人になっている。

カミさんの言う「考えろ」は、私（カミさん）が思うのと同じように「考えろ」。
わたし（カミさん）の意図、期待が何か「考えろ」・・・ということではないかと僕は、「考える」。
Ａだと思ったとしても、「なんで、Ａやねん、何々だからＢやろ」と言われる。
Ｂだと思ったとしても、「なんで、Ｂやねん、何々だからＡやろ」と言われる。
どっちでもこいだ。
カミさんだったら、何んとでもそれらしい理由が出てきそうだと思えてならないのだ。

もし仮に、洗濯機の蓋を閉めたとしても、
「何んで、勝手に洗濯機の蓋、閉めんねん。いつも開いてなくて、今日は開いているということは、アンタが洗濯物入れた後に、まだ入れるものがあったから、ワザワザ開けておいたんや、いつもと違うということに気付いたら、それはそういうことがあるからなんやと考えるのが普通やろ、よう考え！」と言われたら、そんなもんかなぁ・・・と納得してしまうのである。どっちの理由だって思いつく。第一、自分が絶対正しいと思っている迫力が違う。

で、考えるだけ損（無駄）なので、怒られないように、何も考えなくなってしまう。

そもそも、応えが決まっていることを考えるというのは、本質的に「考える」といわないのではないか。
考えるというのは、自由でないといけないのではないか・・・
命令されて、「考える」というのは、それは、矛盾ではないか・・・
と、僕はそう考えるのである。
とにかく、怒ってばかりいる人のいる家族は、考えることをしなくなる、と思う。

前の会社を辞めることになった上司との数度の面談で、上司は、この「考えろ」を何度も使った。
その「考えろ」には、勿論、正解が上司の頭の中にあるのを感じていた。
僕は、その正解に、それ以外の視野からの見解もあるのではないかと揺さぶりをかけた。
そう、ものごとには、良い面と悪い面が必ずある。
ひとつの見解を取るとしたら、捨てられた別の見解にも、別の立場からみたら、いい面があったのかも知れない。仕事での判断も、きちっとこれだけが正しいという正解がある訳ではない。(勿論、その中でその都度、最善を選んで行くのが仕事ということになる訳だけれども・・・)

・・・、勿論、（別の考え方もあるということを）理解してもらえなかった。
そういうことを、何度か繰り返す内、
ああ、この人は、自分の土俵から出て「考える」ことが出来ない人なんだなと・・・
つまり、自分の尺度以外で物をみてみるということが出来ないんだな・・・と思い知ってしまった。
自分からは、相手の土俵に入っていく努力はしないで、相手に自分の土俵に入って来るように強制する。それが、この人の「考えろ！」なんだな・・・。

実は、その瞬間、上司の理解というものを諦めてしまったのと同じように、会社に対しても諦めてしまったのだと思う。
この会社に僕の居場所はないんだな・・・と。
（勿論、それは僕のモチベーションだけでなく、僕の能力のなさが前提にはあるのだけど・・・）

結論：
「考えろ」と人に命じることは出来ない。人に「考えさせ」たかったら、どうやったら、その人を「考えさせる」ことが出来るかを「考え」ないといけない。