一点の「濁り」もないBlog “G”

北海道を離れ、新たな土地で再出発。それに伴いタイトルだけリニューアル。
ただ、看板は挿げ替えたが内容は相変わらず。

トリノ閉幕 果たして惨敗か

2006-02-27 | sports
【惨敗、と言うけれど】
日本勢のトリノ五輪は荒川静香の金メダル獲得のみで幕を閉じた。世間ではこの結果に「惨敗」との評が叫ばれている。だが、果たしてそうなのだろうか。

【これまで】
夏季五輪と異なり、冬季五輪では日本はこれまでもかならずしも大成功を収めてきたわけではない。前回ソルトレイクでは清水宏保(スピードスケート男子500m)の銀、里谷多英(フリースタイル女子モーグル)の銅の2個。長野、リレハンメル、アルベールビルの3大会は多数のメダル獲得に沸いたが、その前のカルガリーやサラィェボは1個ずつ。もともと日本は冬季五輪で大国ではなかった。

【アルベールビルから長野までの成功】
ではアルベールビル五輪から長野五輪までどうして急に成功したように見えたのか。個人的にはここにもカラクリが潜んでいるように見える。
とりあえずこの3大会のメダル内訳を考えてみよう。

・スピードスケート 
金1(清水宏保/長野)
銀1(黒岩敏幸/リレハンメル)
銅7(井上純・橋本聖子・宮部行範/アルベールビル、堀井学・山本宏美/リレハンメル、清水宏保・岡崎朋美/長野)

・ノルディックコンバインド
金2(団体/アルベールビル・リレハンメル)
銀1(河野孝典/リレハンメル)

・ジャンプ
金2(団体・船木和喜/長野)
銀2(団体/リレハンメル、船木和喜/長野)
銅1(原田雅彦/長野)

・ショートトラック
金1(西谷岳文/長野)
銅2(リレー/アルベールビル、植松仁/長野)

・その他
金1(里谷多英/長野)
銀1(伊藤みどり/アルベールビル)


こう見ると、メダルを取った競技と言うのはかなり狭い範囲に限られる、ということが言える。しかも、そのなかでも多くの選手が取った、というよりはかなり限定された選手が取っている。決してこの3大会を見ても、日本選手全体が頑張った、というようには見えてこない。

【メダル数増加の要因】
この3大会でメダル数が増加したひとつの理由が「V字ジャンプ」にあると個人的には思っている。かつてジャンプというのはスキーをそろえて飛ぶのがルールだった。それがある時期、より浮力を得られるV字ジャンプが導入された。そしてV字ジャンプ導入後初の五輪がアルベールビルだったはずなのだ。メダル数急増の影には「ジャンプ」と「コンバインド」という競技での成功があることは上のメダル内訳を見ても明らかだ。日本勢はV字ジャンプの習得が早く、しかもジャンプが踏み切りだけではなくそのあとの浮力をいかに得るかということの重要性が増したことで、不足するパワーを補うことができた。これら3大会は「ジャンプ」の面で日本勢に追い風が吹いていた大会だったのだ。

【ジャンプを除くと】
その後ジャンプ、コンバインドともルール改正で日本勢に吹いていた追い風はまったくなくなり、むしろ逆風が吹くようになっていった。ソルトレイク以降、通常のW杯などでもジャンプが絡むジャンプとコンバインドで苦戦が続く。ではもうひとつの柱、スピードスケートはどうだろう。スピードスケートは実は長野あたりからすでに凋落の傾向は見えてきていた。清水の金をはじめメダルこそ3個獲ったが、獲った人間は2人。それまでのように複数の人間が複数の種目で獲るというようなことはなくなっていた。ここには競技環境の悪化が挙げられるだろう。現在実業団でマトモな環境があるのは日本電産サンキョーと富士急ぐらい。堀井学はかつて王子製紙で活躍していたし、黒岩敏幸はミサワホーム、井上純は西武鉄道、メダリストにこそ届かなかったが長距離の白幡圭史はコクドと、かつては実業団の支援も充実していた。それが今では代表選手のほとんどがサンキョーか富士急かアルピコの所属。環境悪化は著しい。これは同じことがショートトラックにも言える。

【環境悪化の中で】
そういう環境悪化はなにもスピードスケートに限ったことではない。荒川静香も金メダル会見の中で、リンク減少を危惧するコメントをしていた。金メダルを獲った人にまで、競技環境の悪化を指摘されるようでは終わっている。金メダルを獲った上で、環境が整えばもっと戦える、と言っているわけだ。そしてウィンタースポーツの盛んな欧米に比べて劣悪なこの環境の中、多くの入賞者を出したことは惨敗というよりはむしろ光明と言えるのではないか。及川佑、加藤条治、岡崎朋美(←さすがに次は狙えないだろうが)、団体パシュートをはじめとしたスピードスケート陣。男女フィギュアは今回活躍したメンバーのほかに、織田信成、浅田真央のジュニアチャンピオン(浅田に至ってはジュニアチャンピオンというレベルじゃないが)も控えている。そして何より、これまで日本勢が届きそうで届かなかったアルペン回転でも素晴らしい成績を残した。スノーボードはビッグエアのような賞金大会を見ていたら、日本勢の活躍というのも一元的な見方に過ぎないことはわかるのだが、それでも国母和宏あたりはまだまだ先が目指せる。メダリストはピークを迎えた選手たち、それに続く若手がいなかった、という長野やソルトレイクに比べれば、今大会のほうがはるかに内容がいいように思う。メダルは少なかったが。

【とにもかくにも】
冬季競技は欧米に比べあまりに地位が低いことが一番の問題だ。トリノの結果を残念がるのなら、取り組まなければならない課題はあまりにたくさんある。

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1 コメント

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こんにちは (賢木)
2006-02-28 21:43:11
「ドサ日記」賢木です。コメント、トラックバックありがとうございます。

言われてみれば、アルベールヴィル~長野はジャンプ系とスピードスケート系の限られた選手がほとんどだったんですね。



今回が「惨敗」なのかどうかに関しては最終的には、この結果を反省して環境整備等含めて次につなげることができるかどうか、にかかっているのかもしれませんね。
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