少年合唱団員になるには

2011-04-26 18:56:00 | ノンジャンル

▲キミには、どのユニフォームが似合うかナ…?(※図はイメージです)


◆あこがれの少年合唱団員になるには…◆

 もう何十年も合唱団のファンをやっていると、「フレーベル少年合唱団って、どうやったら団員になれるの?」と質問されることがあります。運営会社の名前を冠しているために「幼稚園の推薦状とかが必要なのですか?」と尋ねられたり、地域的な出演や団員募集の実績から「文京区に住んでいることが条件なのでしょうね?」と誤解なさる保護者の方もいると聞いています。ライバル(?!)のFM少年合唱団の運営会社が放送・メディアの企業ですから、春になるとラジオで「歌の大好きな男の子!僕たちといっしょに歌おうよ!」などとすてきなCMを流していたり、かっこいいホームページで団員募集をしていたりなどして、フレーベル入団を断念してしまう方もいるらしいのです。実は、この合唱団の申込手続は非常に簡潔なもので、先立つ段階で諦めてしまうのはとても勿体ないこと。…後述しますが、それぞれの合唱団にはそれぞれの良いところがあり、応募の前にご本人と合唱団の相性を調べてみることは私の経験から言っても、とても楽しく有意義な時間になると思うのです。タイトルと反してしまうようで恐縮なのですが、これは入団を決意するまでの時間をどう楽しむかという指南書になれば良いと思っています。

 一つだけ留意しておいて頂きたいのは、これが合唱団のファンが書いた言わば部外者からの情報であり、公式のインフォメーションでは無いということ。従前の募集を見て書いたもので、現状を反映していないかもしれません。エクスキューズではありますが、この拙文の主獅ヘコンサートレメ[トに盛りきれない内容の記録を残すことであって、入団勧誘というところにはありません。一生懸命歌っている現役団員さんたちに迷惑をかけるわけにはいかないのです。また、「少年合唱団」というと、どこも慢性的な団員不足に困りきっているという先入観がつきまといますが、団員不足と募集とは別モノ。…切り離して考えるべきだと私は思っています。 合唱経験の無い小さな男の子に週1~2日の限られた時間で歌と徳を教えて演出やMC付きの2部合唱、3部合唱へと仕上げるのですから、受け入れる側には当然キャパシティー的・要員的な限界が生じます。人気者でひっぱりだこの合唱団です。新入団員を抱えつつ、合唱団は現役セレクトチームを毎週次々と出演や録音のお仕事に送り出して行かなくてはいけません。どんなに優秀な子が来ていても、どんなに団員不足にあえいでいても、右も左も分からない新入団員が何十人もいっぺんに入って来たら合唱団の運営に混乱が生ずることは想像に難くありません。その時々の合唱団の事情で私たちはあっさりと「お断り」されることを覚悟しておかなくてはいけないと思います。


◆応募要項の要氏?span style="font-size:50%">(2010年以前のものです。現在の要項とは異なります)

 フレーベル少年合唱団の一般への公式な団員募集インフォメーションはここ数年、秋などに六義園のライブ中、口頭で1日だけ行われていました。アナウンスするのは一人の団員さんです。2008年度はヘーベルハウスのCMや「題名のない音楽会」のMCでおなじみのベテランアルト君が、コンサートの本番中、先生から募集要項を渡されてぶっつけで募集をかけました。突然の振りで緊張のあまり上気した面差しが少年らしい真摯さに染まり、痺れるほどカッコよかったです。ベテランらしく彼は最後までしっかりとアナウンスをして下がります。原稿代わりに手渡されていたプリントと同じ物を私は家に帰って引っぱり出し、ながめてみました。保護者向けの、大人の読むための書類でフリガナも無く、情報が表形式をともなってびっしり書かれています。小学生の彼があの場で必要な部分だけを上手に要約してしゃべったことが分かりました。恐ろしいほどたくさんの場数をこなして来たフレーベルの上級生団員の底力を見たような気がします。
 2009年度の告知はスーパーナレーター君の担当でした。あのカッコいい声で募集をかけてしまうのですから、お客様は大喜び!歌い姿じゃないのにその様子をカシャカシャと写真に収めている人もいます。彼のアナウンスの要獅ヘ「僕たちと一緒に歌いたい男の子は、フレーベル館に電話してください」というものでした。実は、これが正解なのです。平日の午前9時から午後5時までに株式会社フレーベル館の代表電話にかけると、「何日の何時に来てください」という連絡があり、言われた通り出頭・審査された時点で彼はあこがれの「少年合唱団員になれる」らしいのです。公式には随時申し込みOKと解釈して構わないと思います。(現在はテスト日程の設定があります)

 プリント内容の要獅ヘ、募集対象が「12歳くらいまでの男の子」で、「トイレなどの基本的生活習慣が身に付いている子に限る」といったごく最低限のゆるやかな条件があとに続きます(現在の募集対象は5歳ぐらいから10歳くらいまでの男の子15名程度です)。2010年度時点での年齢の下限は3歳。実力があって身の回りのことを一人できちんと出来るしっかりとした男の子ならば未就学児でも採るという姿勢は、彼らのステージにもよく表れています。上限は「12歳くらい」ですが、こちらの方がむしろ「あって無いようなもの」と言えます。プリントにある通り、従来の合唱団の練習日程は毎週水曜日の放課後と土曜日の午前中(B組の練習は土曜日のみです)と第3日曜日の午前中。「第3日曜日の午前中」とあるのは、午後に六義園コンサートの出演があったからです(現在のS/Aクラスの練習日程は水曜日の夕方と土曜日の午前中のみです)。土曜日と日曜日を練習や出演にとられてしまうため、小学校高学年以上の子どもたちにとってスケジュールのやりくりが無視できない問題になってきます。進学・スメ[ツ、中学に入れば定期テストの勉強や部活と、二者択一を覚悟しなくてはいけません。中学生が在籍できないFM合唱団の団員さんのお母様がたの中で「うちの子はFMを卒団したらフレーベルに入れてもらおうかな…」と冗談でおっしゃっていた方を何人か知っていますが、現実にTFBCから移籍してきた中学生団員が存在しないのは、そういう理由によります。「12歳くらいまで」という記述は、だから「声変わりの始まった子は採らないですよ」という婉曲なお断りと考えて構わないと思います。
 ただし、小学4~5年生の新入団員というのはフレーベルに限らず特に珍しいものではありません。大切な下積みの期間が短い分、彼らのスキルアップのテンモヘ速く、団員としての自覚も身に付きやすいため、それなりに重宝がられたりもします。また、変声までの猶予が限られているという点では先生方も配慮してくださるらしく、即戦力としてコンサートに動員される場合が多いように感じます。事情があって他の児童合唱団を辞め転入してくるような少年たちもこのャWションにカテゴライズされます。中にはハンデのおかげで判官びいきのファンがつき、卒団してからもしばらく励ましのお便りをもらったりするような子もいます。


◆六義園コンサートが勧めです!◆

 緩やかな条件しかなくて、電話一本で申し込みが済んでしまう気楽さはご本人にとってもご家族にとってもアリガタイとは思いますが、私たちファンにとっては不安なこともあります。合唱教室のような和やかなイメージを感じさせてはいても、間違いなく有名な合唱団です。テレビCMや映画のサウンドトラックの吹き込み、毎週のように行われるコンサート。そして、フレーベルに限らず少年合唱団には練習や通団、選抜、規律や人間関係など子どもたちにしかわからないところでたくさんの逆境が手ぐすね引いて待ち構えています。…安易な気持ちからの志望はご本人はもちろん、あとあとご家族の皆さんも苦しめる事になりかねません。そこで、フレーベル少年合唱団ファン歴ン十年の私が自信をもってオススメするのは、毎月2日間行われる六義園の無料コンサートを親子で楽しく鑑賞し、息子さんの様子を見てから考えるという方法です。どうせ入団を前に悩むのでしたら、楽しく悩んでしまおうというのです。

 このツアーのャCントの一つは、合唱団の団員の様子や先生方のご指導を10メートル以内の至近距離でつぶさに見学できるところにあります。ステージといっても広場の玉砂利の上にマイクロフォンが立てられているだけの場所ですから、子どもたちの入場前の表情にはじまって、演奏後に彼らがホッとした様子で帰ってゆく姿まで。運がよければバックステージでの先生方と子ども達のやりとりなどを目撃できたりもします。出演しているのは、レギュラーメンバーですが、ときとしてインターンの小さな団員たちが試用のために補充され、歌う場面に遭遇できるときも。また、コンサートの客層もどうぞよく観察なさってください。フレーベルとFMでは、団員たちから夢を受取るお客様の構成が全く違います。実は、これが重要なことなのです。そしてこのコンサートの最大のャCントは、息子さんを合唱団の中に入れて一緒に歌わせることができるというコーナーがあることにつきます。チャンスを利用しない手はアリマセン。毎月の週末の2日間。ほとんど年間を通じてチャレンジOKです。

 六義園はJR山手線や地下鉄南北線の駒込駅、もしくは都営地下鉄三田線の千石から大人の脚で徒歩10分の場所にある名勝日本庭園です。窓口で300円払って入園しますが、東京都の運営する公園なので中学生以下の小さい子は無料。大人でも無料で入れる日があります。駐車スペースはもともと在りませんし、お子様のためにも公共交通機関を利用して徒歩で行かれることをお勧めします。六義園の正門の前に、入団後は毎週通うことになる合唱団の練習場があるからです。
 毎月のコンサートについては、「六義園 東京都公園協会」「六義園 公園へ行こう!」などと入力して検索すれば「お知らせ」のページの詳細情報から開催日時を知る事が出来ます。昨年度のコンサートの様子が小さな写真入りで紹介されていたりもするので、雰囲気もわかります。掲載が無ければ、当月の公演はありません。「場所:しだれ桜前広場」とあるのは、正門(JR駒込駅南口から見える染井門ではありません。シーズン開門でそちらから入場した場合は注意!)を入って最初の広場。植栽があって見通す事はできませんが、左右どちらの道を選んでもスピーカーやマイクロフォンの立つ、床几(長椅子)の並んだ場所がすぐ目に入ると思います。

 コンサートは少年合唱団のみの30分レギュラー。ソロ団員の出席状況で多少入れ替わることもありますが、2日間のプログラムは基本的に同じ物のリピートです。演目は季節の童謡から合唱組曲のハイライト、アニソン、はてはカンツォーネやオペラのアリアまで、日本庭園という場所にとらわれないバラエティーに富んだ構成です。この多彩さが、実は現在のフレーベル少年合唱団の持ち味なのです。あなたが今日、ここで耳にしたレパートリーのうち実に三分の一以上が、年一回の定期演奏会でも歌われるはずです。息子さんが入団したら、合唱団でどんな曲を練習してくるのかが、このコンサートを聞くとだいたいわかるようになっているのです。30分間に、およそ10曲前後が披露されます。いったん本番が始まってしまうと、団員たちが最初から最後までずっと険しいおっかない表情のまま歌っていて驚かれるかもしれません。けれどもステージが終わればもとの通りニコニコの素敵な少年たちに戻ります。コンサートは彼らにとって常に真剣勝負なのです。最後に人気者の担当団員さんが進み出てお約束の「アンコールしてもイイですかぁ?!」のセリフを叫び、お客様がたがワァーっと歓声をあげ拍手でこたえると気のきいた曲が1曲歌われて終演になります(父の日・母の日や祝日にちなんだ歌が用意されている場合はさらに1曲追加になります)。次に、前の列から順番で、その列の一番カッコいい系の団員さんが「気をつけッ!」と号令をかけ「ありがとうございました!」と唱えて挙げ伸ばした右手を胸にすくい、全員でバウをかけます。皆、同じ振りなのですが、もう何十回とこの挨拶でお客様を送って来た彼らは一人一人それぞれ身のコナシにこだわりがあるようにも見えます。右手にスナップをかけてみたり、背に当てた真っ白い掌をきれいに見せたり、自身のハートにふわりと手を当てる所作を強調してみたり、お辞儀の入りを丁寧にゆっくり始める子がいたりする一方、頭を上げるタイミングを溜めに溜めて動作をエレガントに見せるような王道の技をしかけてくる団員もいます。高学年の子たちは脚がきれいに見える角度を感覚的に知っているようなのもビックリです。みな、それぞれ美しくカッコ良く、もしくはプロフェッショナル・チックにさり気なく見えるよう頭を下げてわたしたちを喜ばせてくれます。最後のバウは、入団希望の男の子に是非見せておきたい印象的な場面です。スカートをはいた女の子がこのお辞儀をすることはマナー的に殆ど無いからです。男の子の合唱団にしかできない挨拶なのです。カッコいいユニフォームをまとってすらりとコウベを垂れ、王子様のような挨拶をする我が子の未来の姿が目の前の光景に重なって見えたとしたら、その瞬間、お父様お母様にとってもどんなにかシアワセなことでしょう!


◆客上げに参加する◆

 入団希望の坊やたちにとって、もう一つの欠くことのできないイベントは、コンサートの後半、突然やって来ます。
「それでは、次に『アンパンマン』から、「アンパンマンのマーチ」を歌います。会場に来ているお友だちは、僕たちと一緒に歌いましょう!」(多少の語彙の差し替えはありますが、これがデフォルトのアナウンスです)
というあっさりとした団員MCがあって、客上げのコーナーが始まります。客引き担当の団員たちがサッと隊列を離脱して、観客の中に入ってきます。息子さんが入団希望なら、参加させてください!ご本人が勇気りんりん(^-^ ) でやる気マンマンなら、第一関門突破です!演奏が始まって、ご子息が楽しそうに歌い「ユニフォームを着ていない団員」の一人に見えたら一応GOサイン点灯と考えてよいと思います。あとは帰宅してからでも翌日でも「お兄ちゃんたちの合唱団に入ってみる?」と聞くだけです。登壇を渋ったり、歌う段になって尻込みや気後れが出たら「要観察」ということになります。ここらへんの兼ね合いはお子さんの性格を熟知していらっしゃるお家のかたの判断が必要になってきます。入団してから舞台勘を得たり、度胸がついたり、大好きな先輩や友だちができたため突然血道を上げて通団しはじめたりすることはどこの合唱団の団員にもまま見られる現象だからです。

 担当の団員たちは、コンサート時間の押しの兼ね合いもありますが、およそ10秒間~15秒間で客引きのあらかたを終えるよう実地訓練を受けています。客席に子どもの姿を認めるとサッと寄って来て、
「歌う?」
などと声をかけてくれます。物欲しそうにしていると、黙って手を引いてくれる場合もあります。小学生くらいの子どもでしたら自分から出て行ってもいいのですが、そろいのユニフォームがばっちりとキマったカッコいいお兄さん団員に声をかけてもらったり、手を引いて合唱団の隊列の中に押し込んでもらったり、肩に手を置いて位置決めしてもらったりするのはなかなか良い光景です。こちらの合唱団に限った事ではないのですが、ご本人さんも、入団すれば何年間かは「僕は○○先輩から声をかけてもらった」と、感慨深げに記憶している場合があります。また、「僕らといっしょに歌わないか?」という何気ない団員の言葉が、私たち大人にとっては非常に重みのある言葉として響くこともあります。

 最近の客上げは、先生方がスタンバイしていらっしゃるカミ手側(合唱団に向かって右側。六義園正門に近い側)の方がスタッフの指示が通りやすく、団員さんたちに比較的機動性が出るので、開演10分前にしだれ桜前広場に行ってそちら側の床几を取るか、ご本人さんがステージを見にくそうならば右前方の立ち見場所を押さえておくとベターだと思います(もちろん演奏中でも場所移動は自由に出来るラフなミニ・コンサートです)。この位置ですと、確実にアルト系団員さんたち(今現在、全アルト・メンバー各自の人となりがステージ上で観客を楽しませることの出来るレベルにまで達している少年合唱団などというのは日本中でもおそらくフレーベル少年合唱団だけだと思います。しかも全員なぜかカッコ良くてイケメンです!?)の客引き射程圏内に入りますし、自分から出て行くにも容易だと思います。もちろん、ソプラノ側でも、その他の場所でも、団員さんの目に入れば声をかけてもらえるはずです。たいていの場合、団員の帰投を促すためなのかスタンバイ中に曲の前奏が流れはじめてしまうので、どうしても早めに手を引いてもらうか自分で出るかしないと、タイミングを逸して気後れすることがあるので気をつけましょう。

 また、時としてたくさんの男の子が、客上げされるときもあります。入団めあてで参加されるご家族にとっては、「えっ?!」と思われる一瞬になるかとも思います。けれど、彼らはライバルなどではありません。手を引かれて出て行った男の子の顔を良く見てごらんなさい。団員の中にソックリの子がいたりします。団員たちもそろって、ニヤニヤしていることがあります。出て行ったのは団員の弟さんや親戚の子たち。ときには私服姿のB組の団員さんが混じっていて大笑いしたこともあります(彼らは習慣から手を後ろに組んで歌うため、ベレーをかぶっていなくても団員であることがすぐにわかります)。私は六義園コンサートのこういうラフさはとてもハートフルで素晴らしいことだと思います。もちろん、六義園散策の親子連れの子どもたちも分け隔てなく大歓迎で客上げされていきます。

 いっしょに歌うのは殆どが「アンパンマンのマーチ」です。手を後ろに組んで歌う姿勢がデフォルトになっている団員たちも、この曲では必ずハンズフリーの指示が下りていて身体を左右に振りながら声を揃えます。いっしょにスイングしながら歌うと、新入団員の気分を味わう事もできます。
 非常にごく稀に客上げの記念品が配られることもありますが、これをもらえたら超ラッキー!記念品はアンパンマンのシールなど、彼らの出演やレコーディングがらみのグッズであることが多く、コンサートで配られていれば最近彼らが何らかの仕事を担当してきたのだと推察できます。
 「アンパンマンのマーチ」は定期演奏会などの大きなステージでもエンディングに歌われる曲で、入団を決めている子どもたちにとって、これが卒団までに何十回と大小のステージで歌う同曲の記念すべき第1回目の演奏になります。曲は「勇気りんりん」や「アンパンマンたいそう」などに差し変わる日もありますが、同じ「それいけ!アンパンマン」の挿入曲でも「サンサンたいそう」や「ハ行で笑うばいきんまん」などを歌うことはまずありません。(例外的に「崖の上のャjョ」を客上げの曲にしていた時期があります。)
 写真・ビデオの撮影は全く自由なので、どうか思い出に息子さんの「一日団員」の勇姿も激写してください!(他の会場ではそのために「どうぞ前に来て写真を撮ってあげてください!」と団員さんのMCが入る事もあります。結婚式みたいですネ…(^_^; 園内全域にわたって三脚・レフ板の使用だけは制限を受けていますのでご注意ください)
 もちろん、フルコーラスを暗譜して行く必要などはありません!客上げはお家のかたの方を向いてスイングしていれば良く、歌えなくても良いのです。入ったばかりの出来たてホヤホヤの団員がドングリまなこで口をモゴモゴさせながらステージに立っている姿はほほえましく、お客様も大好きです。入団後A組以上の配属になれば半年もしたらどうせすぐにビックリするほどたくさんの難しいレパートリーをぺろりと覚えてしまうので、圧唐ウれるのはご両親の方…ということになります。

 この客上げはコンサート最後の10分間の中で行われる段取りになっていて、様々な事情からスキップされてしまう場合があります。野外コンサートなので天候コンディションからコンサート自体が途中でキャンセルになることもあります。先生が指揮の最中にメゾ側に立つカルメン君にほんの一言二言耳打ちすると、1曲歌い終えた後に小さな彼がパッと進み出てきてお客様にコンサート中止のアナウンスをかけます。100%ぶっつけです。その場の状況判断でMCを考えてしゃべっているのです。彼らの演奏会は店じまいですが、カルメン君のまた別のかっこいい一面をみることができてお客様は満足して帰ります。入団に備えて客上げを待った息子さんには次の機会を用意してあげるか、見切り発車で入団を決めるか、話し合って選択する必要があります。「コンサート、途中で終わっちゃったけど、どうする?」と聞いて、ご本人が即決で「また来たい!」と言ってくれたらおそらく間違いがありません。


◆コンサートが終わってから◆

 コンサートを見終わって、「これなら入団を考えてもいいかな?」「詳しい情報が知りたい」と考えたのでしたら募集のプリントを頂きましょう。先生方やスタッフの方は、終演後の撤収でとりこんでいらっしゃる場合があります。様子を見て、声をかけ、分けていただくと良いでしょう。書類を切らしていたり、作成中の場合もあるかもしれません。いつ頃どこにうかがったら入手できるか、尋ねてみましょう。
 児童合唱がブームだった頃と違って、最近は応募・テストとも「随時・可」という少年合唱団が殆どです。また、プリントを読んで「これでは無理」と応募をとりやめる事もできるはずです。あきらめる勇気も必要。来年、再来年に本人の成長や気持ちの出来るのを待って応募することもできます。いずれにせよ今すぐにと一刻を争う必要があるとは思われません。

 演奏会が終了して団員さんたちがはけてしまったら、六義園の正門を出て右はす向かいにフレーベル館の本社がありますから前まで行ってみましょう。アンパンマンの赤い看板が目を引くのですぐに分かります(フレーベル館のアンテナショップが階段を下りたところにあって、見るだけでも楽しいので寄って来られたらよいと思います!)。このビルの上階で団員たちは日々の歌唱訓練を受けています。ここまで来ると、大きい息子さんなら、毎週、どのようなルートを通って練習場にたどり着くのか、事前にイメージすることができます。注意して探すと駐車場入り口側の右の植栽の中に会社の標札パネルが立っているのがわかります。「株式会社フレーベル館 froebel-kan co,.ltd」とロゴ書きで大きくステンシルされていますが、会社名と並んでその下に同じ大きさのちょっと柔和なゴシック体で「フレーベル少年合唱団」とハッキリ表示されているのが目を引きます。合唱団がフレーベル館のほこる大切な事業部門である事を思い知らされる光景です。TFBCにもFMセンターの1階ロビーに「TOKYO FM少年合唱団」という表示はありますが、もっとコンパクトで、放送局のたくさんあるセクションの一つという扱いです。


◆フレーベルとTFBC◆

「息子を少年合唱団に入れたいのだが、フレーベルが良いか…それともFMが良いか…?」
贅沢きわまりないステキな「お悩み」です!(笑)
毎週の通団の便を先ず考えてみてはいかがでしょうか。TFBCのフランチャイズのステージは地下鉄の半蔵門駅から大人の足で徒歩5分のFMセンター2階にあります。練習には駅の直上に立地するビルに通うことも…!歩く距離はフレーベルの半分以下になりますが、最寄り駅は半蔵門だけで、あとは少し離れた有楽町線の麹町があるくらいです。ご自宅の場所からそれぞれの合唱団練習場へのアクセスを比較検討してみてください。どちらの合唱団も電車通団の場合は水曜日の練習後に帰宅ラッシュの混雑が待ち構えています。

 フレーベルにもTFBCにも、それぞれ互いに代え難い魅力があり、団員との相性、団員保護者との相性といったものは明らかに存在します。
 FM合唱団のホームページに今後の出演予定や、発足以来の過去の出演実績(「合唱団の歴史」)が掲載されています(古い記録はかなり省略されています)。ご覧になられたかたは気付かれましたか?…そうなのです。FMは本当にクラッシック演奏会への出演が多いのです。ラジオ局の児童合唱団なのに、番組の仕事よりも目立ちます。大人の私たちが見たら尻込みしてしまいそうな高名な指揮者のタクトで、世界中の人が認める有名なオーケストラとともに、足もすくむ大劇場のステージに立って彼らは歌っています。また、モーツアルトの歌劇『魔笛』の三童子やクリスマスオペラ『アマールと夜の訪問者』のアマール少年役、プッチーニの『トスカ』の牧童の影ソロと少年僧、ブリテンの歌劇『ねじの回転』のマイルズや『カーリューリバー』の梅若丸など、首都圏で開催されるオペラのメインキャストの常連として、演技の質の高さも含め継続的な評価を得て団員たちは「子役」としても活躍しているのです(彼らの子役としての技量は、前述のラジオCM…例えば『団員募集30秒:いっしょに歌おうよ!編』のキャッチ・ナレーションなどを聞いてもよく分かると思います)。フレーベル少年合唱団の野外コンサートでしたら、客席でビデオカメラを構えたパパ様を前に団員が大テレで歌っている…といった幸せいっぱいのステキな光景をごく普通に見る事もできますが、TFBCのクラッシックコンサートでパパ様の代わりに客席に並んでいるのは、1枚数万円もするチケットを買ってくださったお客様がたです。どういうお客様にどんな曲を聴かせるか…歌を歌って誰をシアワセにしたいのかによって、それぞれの合唱団が得意とする分野は全く異なり、当然ですがご指導のャCントも曲の仕上がりの方向性も団員のカラーまでも違って来ます。お子様がはたしてどちらの方に向いていて、ご両親がどういう歌を歌わせたいのか、どうぞよく考えて結論を導いてください。

 現役団員さんの中にも実は「フレーベル少年合唱団だからこそ、この子は見いだされ、人気者になれたのだなぁ…」と思われる団員さんがいる一方、「FMに行っていたら、役の来ないアルトじゃなくて絶世のドラマチック・ボーイソプラノとして大活躍していたにちがいない…」と私が個人的に確信するようなタイプの子もいます。けれども、誰も声に出しては言いませんが、「つらいかもしれないけれど、負けるな!キミがステージで頑張っている姿を見ると勇気がわく。」と客席の隅から心の中で黙って応援し続けてくれるようなお客様がそういう子にも必ずつきます。いったい何がその子の幸せになるかわかないと思うのです。
 ただ、「そうは言っても…」という感情があるのも人間です。二つの合唱団の間で、過去に何人もの団員の「移籍」があったのは事実です。彼らは移籍先の合唱団で心機一転、たくさんのお客様を喜ばせるような活躍をし、ボーイソプラノ生活をエンジョイしていきました。卒団の頃には、その子がもとは他所の合唱団にいたことなど誰も覚えていません。このような生き方もあるのだなぁと私は思っています。結局、どちらの合唱団に入るかは単なる巡り合わせであって、ご本人が幸せな少年時代をおくれるかどうかとはあまり関係が無いような気がします。

 入団とはかかわりのないことなのですが、「レコーディングに行ったら他所の合唱団の子はみんな家から弁当を持って来ていたので、フレーベルと違って普通、お茶もお弁当も会社からは支給されないのだと初めて知りました」といった内容のOBの証言から判明するアンビリーバブルなデラックスさ(愕?)や、自分のステージ衣装の管理に各自が気を使うFM合唱団に対し、ユニフォームの管理が合唱団主体らしく、終演後、撤収が非常に身軽で迅速なことなど、この合唱団ならではのチャームャCントといったものもあります。
 どちらの合唱団も定期演奏会は都内のきちんとした音楽ホールをおさえているため、ご家族へのチケット・ノルマのようなものが当然発生します。団員構成によって多少の変動はあると思いますが、フレーベルでは5ケタ単位の金額ノルマと予想しておかれると間違いないように思えます。
 また、どこの少年合唱団も男の子ばかり上から下まで何十人もいるいわばバトル集団(えッ?!)ですから、切った張ったの騒ぎは日常茶飯。先輩風を吹かせる上級生たちは本番中でさえヤンチャなシンマイ団員にニラミをきかせていますし、先生方もそれなりに厳しいご指導で子どもたちを引っぱっていらっしゃいます。「少年合唱団」というと、どこか天使の会衆のようなイノセンスや可憐さ、はかなさをイメージさせたりしますが、それは所詮、聴いている側の私たちの勝手な思い込みに過ぎません。何時間も美しい姿勢をキープしながら立ちっぱなし。腹式呼吸のまま声を統御し続けるという「肉体労働」です。スタンドプレーは必ずや悪い結果をまねき、誰か一人のちょっとしたミスが全員の苦労を一瞬にしてぶち壊す過酷なチームプレーでもあります。体育会系の集団にならざるを得ないのです。しかも、お客様は「子どもダマし」のきかない大人たちだったりします。入団後の息子さんの前にはその他、夥しい試練のフルコース…失敗や挫折や緊張や恐浮竰冾゚や別離や苦痛やらが連射式ミサイルのように待ち構えています。たくさんのお客様や戦友たちやご両親の支え、もちまえの体力・頭脳・性格の良さで卒団までの困苦を乗り越え、かわし終えたとき、彼は同じぐらいたくさんの抱えきれないくらいの心の「強さ」と「やさしさ」を確実に手に入れることになります。そしてこれらはみな、彼が「僕も合唱団に入って歌ってみようかな」と最初の日に思ったりしなければ…彼がごく普通の小学生として少年時代を終えていたとしたら…決して得ることの無かった貴重な財産であると言わざるをえません。

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