野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

わずかな風にも揺らぐ「萩」の花(夏の花 21-015)

2021年06月16日 09時40分31秒 | 

もう萩の花が咲き始めた。萩という漢字は秋という字に草冠をつけたもので、ほんらいは秋の花であり、秋の七草のひとつである。古くから歌などにもうたわれてきたが、「少し日たけぬれば、萩などの、いと重げなるに、露の落つるに枝のうち動きて、人も手ふれぬに、ふとうへざまへあがりたるも、いみじうをかし」という『枕草子』の記述も忘れ難い。わずかな風にも揺らぐ花である。ちりばなも美しい。「はらはらとせう事なしに萩の露 夏目漱石」

(2021年初夏 東京都)

■夏の花シリーズ

「アカンサス」(夏の花 21-001)
「タチアオイ」(夏の花 21-002)
「コバンソウ」(夏の花 21-003)
「エノテラ ‘アフリカンサン’」(夏の花 21-004)
「ヒメコバンソウ」(夏の花 21-005)
「ムシトリナデシコ」(夏の花 21-006)
「ゼニアオイ」(夏の花 21-007)
「ナンテン」(夏の花 21-008)
「ハクチョウソウ」(夏の花 21-009)
「セイヨウノコギリソウ」(夏の花 21-010)
「ノアザミ」(夏の花 21-011)
「マトリカリア」(夏の花 21-012)
「ホタルブクロ」(夏の花 21-013)
「オランダカイウ」(夏の花 21-014)

「萩」

ハギ(萩 Lespedeza)は、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。

名称
「萩」は本来はヨモギ類(あるいは特定の種を挙げる資料もある)の意味で、「はぎ」は国訓である。牧野富太郎によるとこれは「艸+秋」という会意による国字であり、ヨモギ類の意味の「萩」とは同形ではあるが別字という。
「芽子」「生芽」とも字を当てる。

分布
東アジア、南アジア、北米東部、オーストラリアの、温帯・亜熱帯。
特徴
数種あるが、いずれも比較的よく似た外見である。
背の低い落葉低木ではあるが、木本とは言い難い面もある。茎は木質化して固くなるが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根本から新しい芽が毎年出る。直立せず、先端はややしだれる。
葉は3出複葉、秋に枝の先端から多数の花枝を出し、赤紫の花の房をつける。果実は種子を1つだけ含み、楕円形で扁平。
荒れ地に生えるパイオニア植物で、放牧地や山火事跡などに一面に生えることがある。

 

あか桶の萩こぼれけり竹の縁 寺田寅彦
あきらかに人の声する雨の萩 飴山實 少長集
あしもとに猫の小鈴や萩の宿 中尾白雨 中尾白雨句集
あはあはとさすがに頃の萩咲いて 須田冨美子
あら~と箒のあとや萩の門 阿部みどり女 笹鳴
あるものは萩刈日和木瓜の実を二人つみつつ相恋ひにけり 島木赤彦
ある日ひとり萩括ることしてをりぬ 敦
いくそたび時雨るゝ萩を刈りにけり 岸風三楼 往来
いさゝかの風や萩ちる昼の月 蘇山人俳句集 羅蘇山人、村山古郷編
いたはれば萩の体臭曇りくる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
いちはやく萩は乱るる風を得つ 林火
いつか誰か愛さむと萩耐へゐたり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
いつ刈ると問はるる萩を不憫とす 後藤夜半 底紅
いと小さき萩寺さまの花御堂 石塚友二
いにしへの女人の歎き萩こぼれ 伊藤敬子
いのちなり白萩落花掬ふべき 河野多希女 月沙漠
いぼむしり萩をこぼしてむき直り 清原枴童 枴童句集
いま刈りし萩の束ね香かろきかな 星野麦丘人
うき旅や萩の枝末の雨を踏 蕪村遺稿 秋
うれしさの萩よ芒よ挿されけり 中尾白雨 中尾白雨句集
おとづるる誰もが言ひぬ門の萩 及川 貞
おとろへし父の酒量や萩白し 福永耕二
おのづから山路となりぬ夏の萩 楠目橙黄子 橙圃
おのづから曲りて萩の道といふ 綾部仁喜
お隣の句座を覗きぬ雨の萩 岸田稚魚
かくてあることよりも萩の人恋し 長谷川かな女 雨 月
かく刳りしよべの雷雨か萩山路 皆吉爽雨 泉声
かこちあふ萩も芙蓉も括られて 成瀬桜桃子 風色
かたまりて宿立出づる萩見かな 月舟俳句集 原月舟
かつらぎ庵の白萩はいまとの便り 岸田稚魚
かまくらのとばりに垂れし萩簾かな 西本一都 景色
かよひ路にさきすがれたる野萩かな 飯田蛇笏 山廬集
きのふけふすずしき起居萩の雨 清原枴童 枴童句集
きのふけふ障子張り替へ萩芒 小澤碧童 碧童句集
きのふ古し遺筆に活けてこぼれ萩 渡辺水巴 白日
くれなゐはくれなゐをもて鎮むべし萩は残花を正眼に見しむ 雨宮雅子
くわんおんの腕の伸びる萩のころ 佐川広治
くゞらせて色々にこそ萩の露 服部嵐雪
この萩にいくたびめぐり来りけん 軽部烏帽子 [しどみ]の花
この萩のやさしさやいつも立ちどまる 高浜虚子
この萩をみやぎのはぎと記しある 楠目橙黄子 橙圃
こぼす露こぼさぬ露や萩と葛 正岡子規
こぼるゝにつけてわりなし萩の露 鬼貫
こぼれつく萩にいく日の句精進 鈴鹿野風呂 浜木綿
こぼれ萩してゐる内は庭掃かず 池内たけし
こぼれ萩妻より先の死を希ふ 水谷 晴光
こぼれ萩日にかはきつゝ苔の上 高濱年尾 年尾句集
こぼれ萩流れつづきてとだえけり 上野泰 佐介
こぼれ萩色をまじへて掃かれけり 藤田つとむ
こぼれ萩花にひと日を加へけり 谷口桂子
こまやかな情を残しぬ萩の雨 藤崎久を
こまやかに夕日の萩の言葉かな 宮津昭彦
こま~と萩の空なる枝のさき 立子
こんなに山に咲いてゐた萩を活けてくれた シヤツと雑草 栗林一石路
こゝら浅川砂どめの萩の盛りかな 乙字俳句集 大須賀乙字
さきがけて一切経寺萩刈れり 安住敦
さはり見る無月の萩の眠りゐる 高木晴子 晴居
さびしさをこぼれて見せつ萩の露 不角 選集古今句集
さみだれ萩てふ名のやさし紅紫 細見綾子
さめし茶の渋くてうまし萩紅し 風生
さらりさらり音萩らしき雨の駕 会津八一
さりながら袖にこぼさじ萩の露 立花北枝
しぐるゝや萩の囁鮒の黙 幸田露伴 拾遺
しげしげと目で物いふや萩の露 内藤丈草
しだり尾の切子さげ来し萩の中 碧童
しだれ萩尚美しく括りたる 西本一都 景色
しづかなるよろこび萩に祖母となり 高橋淡路女 淡路女百句
しなやかに自分をとおす萩の紅 平井幸子
しほらしき名や小松吹く萩すゝき 芭蕉
しら露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
しら露や君とうねらむ萩の徑 会津八一
すかんぽの赤む砂山春浅し 山萩 志田素琴
すゞめ来て萩をゆするや秋祭 久保田万太郎 流寓抄以後
せはしなき萩の雫となりにけり 五十嵐播水
たはれめの彦根屏風の絵にも萩 森澄雄 游方
たをるなら花やはおしむ萩の露 井原西鶴
だん~に溝に雨満ち萩が散る 高木晴子 晴居
ちよろ~と水潜りけり萩の中 寺田寅彦
ちりし萩土となるまで秋日かな 龍胆 長谷川かな女
つぎつぎに人現はるる萩の中 五百木飄亭
つむぎ織る初萩の風かよはせて 荒井正隆
てぶくろに盗人萩の実を付け来 辻桃子
でんがくの串干してあり萩の茶屋 加古宗也
とみかうみ風の白さも萩の中 河野多希女 こころの鷹
にじむ墨自在にあそぶ萩月夜 三橋迪子
ねもごろに一休寺萩束ねけり 関戸靖子
はしり咲くさみだれ萩や開山忌 西岡荘人
はやばやと燈をともすなり萩に雨 角川春樹
はらはらとせう事なしに萩の露 夏目漱石 明治二十八年
ひといろは激しき思い萩こぼる 和知喜八 同齢
ひとごゑも蝶もこまやかに萩ごもり 野澤節子
ひともとの萩に秋まつ我菴ぞ 加舎白雄
ひとりには少しあまりて萩の風 齋藤玄 『雁道』
ひと恋えば萩揺れている大写し 田川飛旅子 花文字
ひと日縫ふふた日は臥して萩の風 小檜山繁子
ひと枝は流れの中に萩の花 岩田由美
ひや~と古き萩戸や道明寺 増田龍雨 龍雨句集
ひんがしに南に萩の縁つづく 阿部みどり女
ふりかぶる塵のきよらに萩を刈る 亀井糸游
ふり返る月日たひらや萩咲ける 塚本 久子
ほろほろと秋風こぼす萩がもと 黒柳召波 春泥句集
ほろ~と蝶あがるなり萩の中 久保田万太郎
ぼたもち寺寺門の萩に乱れなし 高澤良一 随笑
また痢して灯明うよむや萩のぬし 飯田蛇笏 山廬集
まだ四囲の山の名知らず萩桔梗 中村汀女
まだ夢に父に蹤く母萩の門 杉本寛
まどろむやさゝやく如き萩紫苑 久女
まぶしさの盛りの萩の忌にまかる 赤松[けい]子 白毫
みごもりしか萩むらさわぎさわぐ中 渡部ゆき子
みさ子忌の近づく萩の咲きにけり 阿部みどり女 笹鳴
みちのくの萩のこぼれに坐りけり 藤田あけ烏 赤松
みちのくの陸山くらし萩咲けど 堀口星眠 営巣期
みちのくの馬飼の野の萩咲けり 遠藤梧逸
みづうみの籬の萩は刈らでおく 中井冨佐女
むら萩に落ちたる風も夜長哉 増田龍雨 龍雨句集
むら萩や宮司の妻のよみ歌す 加舎白雄
ものうさや手すりに倚れば萩の花 正岡子規
やせ脛のいよ~やせぬ萩の花 松藤夏山 夏山句集
やはらかく抱きて萩を括りけり 畠山譲二
やや暑く少し涼しく萩盛り 後藤夜半 底紅
ゆつくり歩かう萩がこぼれる 山頭火
ゆひ目解けばみな咲て居り萩の花 菊舎
ゆふ風に萩むらの萩咲き出せばわがたましひの通りみち見ゆ 前川佐美雄
ゆらぎつつ葉の湧きやまず萩茂る 亀井糸游
よき句得し人を憎みて萩に立つ 雑草 長谷川零餘子
よろと卒塔婆小町の萩の託言も失せてけり 文挟夫佐恵
りんりんと白萩しろし木戸に錠 三橋鷹女
わが墓は天上にあり乱れ萩 保坂加津夫
わが萩や目高の甕に雨溢れ 篠田悌二郎
エノケンも心にありて萩に彳つ 富安風生
カルストの萩色淡し寄れば濃し 上野さち子
ピアノの音湯宿の萩も刈られたり 桜井博道 海上
ピカソ忌の萩寺尿意しきりなり 塚本邦雄 甘露
一つ家に遊女も寝たり萩と月 芭蕉 (越後一振の関にて)
一家に遊女もねたり萩と月 芭蕉
一日のゆふべの雨の萩に灯す 松本たかし
一株の萩刈つて断つ思ひあり 関戸靖子
一粒の露のむすびし萩の色 野澤節子 『八朶集』
一通の電報萩に生畢る 宮武寒々 朱卓
一門に一石萩の無縁仏 古舘曹人 能登の蛙
一隅にむらがる萩や花畑 子瓢
一頻り萩刈る音か高山寺 高澤良一 宿好
七日喪の山萩とりに来て泣けり 関戸靖子
七日月庇の下に萩の上に 子規句集 虚子・碧梧桐選
七株の萩の手本や星の秋 翁 七 月 月別句集「韻塞」
万葉に多くはありぬ萩の歌 尾崎迷堂 孤輪
三日月やこの頃萩の咲きこぼれ 碧梧桐
三日月や此頃萩の咲きこぼれ 河東碧梧桐
下々もみな居なじみてよめが萩 山店 芭蕉庵小文庫
下ありく雀居るから萩こぼる 篠田悌二郎 風雪前
中元や萩の寺より萩の筆 井上洛山人
中折にふれたる萩のカサと言ひぬ 藤後左右
久住野の藍は竜胆紅は萩 小原菁々子
乱萩子と踏跨ぎふり返り 横光利一
二三枚より萩黄葉はじまりし 田畑美穂女
井戸端萩が咲く吾れに一生の井の水の味 安斎櫻[カイ]子
井浚ひの始まる萩を束ねけり 前田普羅 新訂普羅句集
京の萩見てのあしたのわが家の萩 鈴木真砂女 夕螢
京饌寮全く萩に沈みけり 比叡 野村泊月
人の死につまづくごとし萩芒 古舘曹人 樹下石上
人は斜に構へて萩に立てりけり 久米正雄 返り花
人力車光り置かれて萩の門 上野泰 佐介
人散らんとす萩園の日落ちざれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
人消えてゆく萩の中風の中 大形実世
人間に近づきたくてこぼれる萩 津根元潮
今も住む合掌建てや萩の風 朝倉和江
今日にして詳らかなる萩黄葉 後藤夜半 底紅
仏像のまなじりに萩走り咲く 細見綾子 黄 炎
仏光明の芒よ萩よ道元忌 森本之棗
任満ちて我が家は萩の繁み哉 会津八一
伎芸天このやさしさのこぼれ萩 中村明子
伏す萩の風情にそれと覚りてよ 夏目漱石 明治三十七年
伏流水湧けり萩咲き乱れをり 米山源雄
似合しき萩のあるじや女宮 黒柳召波 春泥句集
低く垂れその上に垂れ萩の花 高野素十
何もかも過ぎたる萩を括るかな 安住敦
佛壇の萩に何やら虫が鳴く 寺田寅彦
俳諧の忌日は多し萩の露 高浜虚子
傘さして傘に雨あり萩に佇つ 岸風三楼 往来
傘さして萩に人立つ無月かな 西山泊雲 泊雲句集
傘すぼめ萩は散らさじ肩ぬらす 及川貞 榧の實
儚む世とは思はずに萩愛づる 及川貞 榧の實
光悦垣苔厚くして萩のこり 及川貞 夕焼
其はてが萩と薄の心中かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
内蔵に月もかたぶく萩の露 上島鬼貫
冤罪や手触れぬ萩の散り止まず(勿来の関跡) 殿村菟絲子 『菟絲』
凩やこの頃までは萩の風 與謝蕪村
切りし髪ひとの手にあり萩の風 野澤節子 黄 炎
切株の荘門向き合ひ萩桔梗 阿部みどり女 笹鳴
刈らである萩に光悦垣あらた 田中秋琴女
刈らぬ萩だん~惜しく十二月 長谷川かな女 雨 月
刈られずにありたる萩や仙忌 銀漢 吉岡禅寺洞
刈られねば萩けぶるなり好日を 宮津昭彦
刈草のてり返す日や萩の下 楠目橙黄子 橙圃
刈萩の根にひこばえや小六月 五十嵐播水 播水句集
刈萩や句碑の面に花眼寄す 石川桂郎 高蘆
刈萩をそろへて老の一休み 高浜虚子
刈込に紅刷く萩や上の茶屋 下村ひろし 西陲集
初汐の今戸は萩のさかりかな 萩原麦草 麦嵐
初萩と呼ぶ一点の紅をもて 八染藍子
初萩と思ひあたりて彳みぬ 後藤夜半 底紅
初萩にめざとく縁を下りたるか 皆吉爽雨 泉声
別荘の手入れとどきしこぼれ萩 新 純子
北国の一日日和萩を刈る 高野素十
北嵯峨や萩より抜けて松の幹 西山泊雲 泊雲句集
十三夜の月の下びに見いでたる萩おそろしきまでの衰へ 春日真木子
十六夜や酒に間のある萩小鉢 古舘曹人 樹下石上
占領兵に奪はれざりし萩紅し 殿村莵絲子 花寂び 以後
卯辰山前に白萩うねり初め 高澤良一 宿好
友とすら夜も書車(ふくるま)の萩の声 上島鬼貫
古庭や身に親しくも萩の花 小澤碧童 碧童句集
古椀うかむ池ふく風や萩のつゆ 飯田蛇笏 山廬集
古池や乱れてしまえ萩すすき 鳴戸奈菜
古萩見る柊匂ふ蔵の窓 福田蓼汀
台風あと別な白さの萩咲ける 細見綾子 存問
合点ぢや萩のうねりの其事か 正岡子規
吉原の芸者連れたる萩見かな 白水郎句集 大場白水郎
名の月や僧の帰りし萩の中 角川春樹
名月や叩かば散らん萩の門 正岡子規
君いまも紅顔萩の風浄く 堀口星眠 営巣期
君たちの恋句ばかりの夜の萩 石田波郷(1913-69)
吹きまくや萩も芒もあらばこそ 寺田寅彦
咲くやがて萩の乱れのらちもなし 遠藤 はつ
唐黍や軒端の萩の取りちがえ 松尾芭蕉
噴煙は遠し萩咲き野菊咲き 藤後左右
四阿の後ろの萩の広さかな 柑子句集 籾山柑子
回廊に回廊を継ぎ萩の風 高澤良一 宿好
園の門入れば直ちに萩の風 楠目橙黄子 橙圃
土の皺に流れたまりて萩の花 西山泊雲 泊雲句集
在りし日の妻の衣ずれ萩の風 吉田三船
地に還るもののしずけさ萩白し 実籾 繁
地獄絵に野萩の風のひとしきり 南光 翠峰
垣結ひて萩一株もその中に 高木晴子 花 季
塀外へあふれ咲く枝や萩の宿 杉田久女
塗下駄の湿りや萩の露曇 尾崎紅葉
塵と見て露にもぬれそ萩の花 千代尼
夕ぐれや短冊を吹く萩の風 尾崎放哉
夕日抱く大萩黄葉なりしかな 山田弘子
夕月に誰やら恋し萩の原 美角
夕月や萩の上行くおとし水 一茶
夕萩にまとふ羽織の匂ふかな 阿部みどり女 笹鳴
夕萩に訪れ月の出にも逢ふ 後藤夜半 底紅
夕萩やはかなく消えし海の虹 林原耒井 蜩
夕風の萩や桔梗や心細ソ 草間時彦 櫻山
夜の萩の火影うけたるところかな 久保田万太郎 草の丈
夜の萩はなやかに酔ひ恥ゐたり 小林康治 玄霜
夜の萩白くおもたきみづからの光守れり誰か死ぬらむ 河野愛子
夜を白う水行く萩の小徑哉 幸田露伴 拾遺
夜明けにて妹は萩叢妊れり 河原枇杷男 定本烏宙論
夜涼や露置く萩の絵帷子 高井几董
大いなる乳牛の顔や萩の上 相馬遷子 雪嶺
大前の萩の刈跡新しく 川上 千代
大名の石燈籠に萩高し 京極杞陽 くくたち上巻
大撓みしていちめんに萩の海 高澤良一 寒暑
大熱のひけた畳に萩の花こぼれ 栗林一石路
天の川白き夜去りて朝風の中なる萩にくれなゐ走る 宮柊二
天平を負ふ肩なるや萩の丈 石塚友二 方寸虚実
天竜の出水汚れの乱れ萩 小田実希次
天高く地は静かなり萩と月 幸田露伴 谷中集
夫と父母恵子よ庭萩切りて来ぬ 及川貞 夕焼
夫の忌のやがてちかづく萩に病む 長谷川ふみ子
女らし萩の小窓の鉦の聲 会津八一
妥協なき子の意聞きをり萩こぼる 高橋良子
妹許へ萩に触れゆく切通し 北野民夫
妻も子もその子も萩の頃生れ 仁尾正文
子の墓を洗へば足るか萩挿して 及川貞 榧の實
子規堂の白萩にまづ句ごころを 河野静雲
子規忌すみあと話しゐる萩の雨 松本たかし
孟蘭盆や径をへだてて萩芒 依光陽子
官邸を去る日の近し萩を刈る 山内年日子
実となりし萩にはげしき風雨かな 高橋淡路女 梶の葉
実をつけし安徳陵の塀の萩 西本一都 景色
宮城野や萩の下露川なさん 加舎白雄
宮城野ゝ萩更級の蕎麥にいづれ 蕪村 秋之部 ■ 雲裡房、つくしへ旅だつとて我に同行をすゝめけるに、えゆかざりければ
宵闇の萩白かりし一事かな 後藤夜半 底紅
家にあれば寝るころほひを萩と月 上田五千石 琥珀
家の者誰も萩咲くとも言はず 加倉井秋を
家墓に刻めぬ姉の名萩咲き続く 香西照雄 対話
寂として白萩ばかりこぼれけり 永井龍男
富士見ゆる家建ちあがり萩すゝき 林原耒井 蜩
寝たる萩や容顔無礼花の顔 松尾芭蕉
寺の端の夕まけて萩刈られけり 岸田稚魚 『雪涅槃』
寺を出て萩に片よる水の音 桂信子 遠い橋
小男鹿の喰こぼしけり萩の花 一茶
小芝かけて萩こぼれたる山路かな 西山泊雲 泊雲句集
少女病む窓のなかばを萩おほふ 殿村莵絲子 花 季
少年の白萩かつぐ祭かな 遠山郁好
山の井や汲む人なくて萩の花 竹冷句鈔 角田竹冷
山の子が荷物持ち呉れ萩がくれ 阿部みどり女 笹鳴
山の萩ちら~小さき花を持つ 高木晴子 花 季
山の萩見て来て庭の萩待たる 大島民郎
山中や萩咲き私の座敷のよう 斎藤一湖
山仕舞ひたる白萩に月夜かな 福田甲子雄
山深くゐて萩馬のいななかず 田村了咲
山萩に時流れはた雲流れ 有働 亨
山萩に湖の微力をおもひゐる 金田咲子 全身 以後
山萩に皇霊祭の日あたれり 長谷川かな女 雨 月
山萩のさびしき方へみな歩く 古舘曹人 樹下石上
山萩の一夜もありし放浪記 片山辰水
山萩の地味でゐて且つ和むいろ 高澤良一 素抱
山萩の撓みに細る塩の道 村上光子
山萩は姉の傍こまごま不思議 阿部完市 春日朝歌
山萩紅そこはあふれて姉をまつ 阿部完市 春日朝歌
山路はや萩を咲かせてゐる 種田山頭火 草木塔
山門といふべく萩の嵐かな 石橋秀野
山門を入るにしづかな萩の鞭 萩原麦草 麦嵐
山鳩もひとり朝餉か萩ゆれて 堀口星眠 営巣期



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