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マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。

結果だけなら「海賊行為」かもしれんが

2010-05-05 19:52:30 | 捕鯨騒動
今回は、2010年4月7日分衆議院外務委員会から、南極海における「調査捕鯨」団への Sea Shepherd の抗議活動に関する国会論議の紹介(手抜き)。
・第174回国会 外務委員会 第10号(2010年4月7日 国会図書館)

問題の部分は、ソマリア沖での海賊取り締まり(誰を?)に関する議論の後で、浜本 宏(DPJ 所属)氏が武正 公一外務副大臣に Sea Shepherd の活動について質問したところ。
以下、2010年4月7日分国会図書館『第174回国会 外務委員会 第10号』から、その部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
○浜本委員
(中略)
 さて、次に、今海賊問題が出ましたので、我が国政府はまだこれを海賊とは認定してはおりませんけれども、私にはこれは明らかに海賊行為じゃないかと思われる、いわゆるシーシェパード、この問題についてちょっとお話をお伺いしたいと思います。
 シーシェパードによる我が国の調査捕鯨の妨害行為が頻繁に行われているということをよく報道等で見るわけですけれども、これは大体どのような形でいつぐらいから起こっておるのか、そのあたりのことについて外務省の方からお教えいただければ幸いです。

○武正副大臣 ちょっと今、資料の方を調べておりますが、委員御指摘のように、シーシェパードによる妨害行為、こういったものが近年非常に過激に行われているということは御承知のとおりでございます。
 ことしについて言えば、一月六日、我が国調査船第二昭南丸とシーシェパード船舶アディ・ギル号との間で、また二月六日には第三勇新丸とボブ・バーカー号との間で、衝突事故が発生しております。

○浜本委員 ありがとうございます。
 このシーシェパードの問題につきましては、ちょうど、これはソトコトという環境問題に関する雑誌でありますけれども、今月号にシーシェパードが特集をされまして、ポール・ワトソンの独占インタビューとか、こういう形で出ておりまして、これを見ておりますと、シーシェパードが所有する船がポルトガル政府に押収されたとか、カナダの沿岸警備隊に攻撃されたとか、またカナダ政府に押収されたとか、少なくとも、ここに出てくるだけでも三隻が押収されたり沈没させられたとかいうことが出ておるわけです。
 まず、今回、シーシェパードの元船長が五つの罪でこの間、起訴をされておりますけれども、国内法で過去に何度もこういう繰り返しがあったわけですけれども、残念ながら、十分な対応が我が国政府はできなかった。
しかしながら、今回、こんなことではいけないんだということで、物理的強制力を使って元船長を日本へ連行したということで、やはりこういう犯罪は許してはいけないという強い政府の意思が私は見られたとは思っているんです。
 国内法によってこれを逮捕したというのはよくわかるんですけれども、その一方で、このシーシェパードがやっている行為は、ある段階から明らかに海賊行為に該当するような行動になってきたのではないかというふうに思うわけであります。
 それは、国連海洋法条約百一条、きょう皆さんのお手元にも配付しておりますので、ごらんをいただければいいと思いますけれども、この件については、公明党の石田議員がたしか二月の予算委員会の中で取り上げられて、前原国土交通大臣が、これを海賊行為であるというふうに認定するについてはいろいろ考えるところがあって難しいところがある、しかしながら、完全に無理だということではない、もしやれば外国から批判を受けることもあるという、その覚悟はしなければいけないというような内容のことを予算委員会でおっしゃっておられるわけです。
 しかしながら、この百一条に見ましたときに、一番問題になるのはそこの(a)で、「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために」というこの「私的目的」、シーシェパードのやっていることが私的目的なのかどうかというところが、要するに意見の分かれるところであります。
 私的目的であるかどうか、これを認定するのは、だれが認定をするのか、これについてお伺いをしたいと思います。

○岡田国務大臣 これは条約でありますから、最終的に、決定するということになれば、国際司法裁判所で決定するということになると思います。

○浜本委員 もちろん、国際司法裁判所に提訴をされて、お互いが管轄権を認めている場合はそうでしょうけれども、やはりこれは、主権国家であるそれぞれの国々が、締約国が、まずその前段階として私的行為であるかどうかということを判断した上で国際法を適用するんだ、こういうふうに理解しております。
 したがって、シーシェパードの行為がこれは私的行為を、私的目的を逸脱しているんだ、こういう認定を我が国がすれば、少なくとも政治的に国際社会に対して国際犯罪である海賊行為だということをアピールできるのではないか。
もしそれが無理であるならば、少なくとも、海賊行為に近い行為であって、これは国際社会に対する犯罪に近いんだというぐらいの、犯罪行為である、違法な行為であるということはおっしゃっておられますけれども、やはり海賊行為というのは、御存じのように、国際犯罪というふうに認められておるわけであります。
そういう意味で、これを積極的に我が国は、シーシェパードについては、もはやこれは海賊的な行為であるというふうにやってもいいのではないか。
 非常に強硬的な意見であるかもわかりませんけれども、やはりここは思い切って国際社会の犯罪に対して強くぶち当たっていくんだという意思は示した方がいいのではないかなというふうに思っておるんですが、いかが考えられるのか、お願いいたします。

○武正副大臣 浜本委員にお答えいたします。
 先ほどのお問い合わせでございますが、シーシェパードの設立は一九七〇年代でありますが、日本船に対しては、二〇〇五年から二〇〇六年の漁期、秋から冬にかけてから、毎年妨害が行われているということでございます。
 また、今の御指摘でありますけれども、委員の御指摘というところは、しっかりと受けとめさせていただきます。
 一方、やはり国際海洋法条約上の海賊行為に該当すると断定することについての困難さがあるということは、やはり言わなければなりません。ただ、このシーシェパードの妨害行為は、船舶及び乗組員の安全を脅かす極めて悪質かつ危険な行為であり、政府として引き続き、旗国等関係国に対し、妨害行為の再発防止に向け、しかるべき措置をとるよう申し入れていく考えであります。

○浜本委員 ありがとうございます。
 こういう国連海洋法条約、いわゆる国際法の中の一つでありますけれども、先ほど外務省と関連する坂本竜馬の話をしましたが、国際法の父と言われるグロティウス、彼は公海自由の原則というものを「海洋自由論」という本の中で書いておるわけでありますし、この公海自由の原則というのは、何百年にわたって人類が守ってきた大切な原則であります。
それがこのシーシェパードの行為によって、何百年と人類が守ってきた慣習法が今やこの国連海洋法条約では明文化されておりますけれども、そういった大原則を破っている、この行為は断じて許してはいけないという強い思いはやはり持つ必要がある、こういうふうに考えております。
 この件につきましては、そういうことで、国際犯罪を許してはいけないんだということで、ぜひ皆さんのさらなる御検討をよろしくお願いしたいと思います。
(以下略)
---- 引用以上 ----

『国連海洋法(海洋法に関する国際連合条約:United Nations Convention on the Law of the Sea)』については↓参照。
・海洋法に関する国際連合条約(ioc.u-tokyo.ac.jp)
・United Nations Convention on the Law of the Sea(un.org;.pdfファイル)

余談だが、イスラエルはこの条約を批准してない。
Gaza 地区への船舶出入り制限やら武器密輸入阻止などを理由にして批准をしてないのか?

話を戻す。
この中で、海賊行為云々に触れてるのは第100条~第107条。
一応、以下で『海洋法に関する国際連合条約』の第100条と第101条を引用する。
ただし、英語版からもその条文を(略

---- 以下引用 ----
[以下英語版]
(中略)
Article 100 Duty to cooperate in the repression of piracy

All States shall cooperate to the fullest possible extent in the repression of piracy on the high seas or in any other place outside the jurisdiction of any State.

Article 101 Definition of piracy

Piracy consists of any of the following acts:

(a) any illegal acts of violence or detention, or any act of depredation, committed for private ends by the crew or the passengers of a private ship or a private aircraft, and directed:
(i) on the high seas, against another ship or aircraft, or against persons or property on board such ship or aircraft;
(ii) against a ship, aircraft, persons or property in a place outside the jurisdiction of any State;
(b) any act of voluntary participation in the operation of a ship or of an aircraft with knowledge of facts making it a pirate ship or aircraft;
(c) any act of inciting or of intentionally facilitating an act described in subparagraph (a) or (b).
(以下略)

[以下日本語版]
(中略)
第百条 海賊行為の抑止のための協力の義務

すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。


第百一条 海賊行為の定義

海賊行為とは、次の行為をいう。
(a) 私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であって次のものに対して行われるもの

(a) 公海における他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しくは財産
(b) いずれの国の管轄権にも服さない場所にある船舶、航空機、人又は財産
(c) いずれかの船舶又は航空機を海賊船舶又は海賊航空機とする事実を知って当該船舶又は航空機の運航に自発的に参加するすべての行為
(d) (a)又は(b)に規定する行為を扇動し又は故意に助長するすべての行為
(以下略)
---- 引用以上 ----

私的行為、ね。
仮に Sea Shepherd の抗議活動が私的行為というなら、「寄付集めのため」とか「TV番組の宣伝」というのをその理由に挙げるんだろうか?
結果として「調査捕鯨」団への抗議活動で Sea Shepherd の寄付額は相当増えた(と思われる)が、それが目的かどうかは不明かと。
この様な理由で日本政府が Sea Shepherd の抗議活動を「海賊行為」とみなすなら、Watson 船長も理論武装がやりやすいんじゃね~の?
なんせ、日本政府は Sea Shepherd の抗議活動の「結果」じゃなくて「目的」で海賊行為の認定に躍起になってるのだから。

ま、Watson 船長は日本に行くことはできないけど(容疑者扱いされてるから)・・・。


『公海自由の原則』の解釈も謎。
つーか、元々Grotius が説いた『公海自由の原則』ってのは、『Mare Liberum, sive de jure quod Batavis competit ad Indicana commercia dissertatio(The Freedom of the Sea, Or, The Right Which Belongs to the Dutch to Take Part in the East Indian Trade.)』というラテン語(!)で書いた本でのことらしいが・・・。
↓は英訳版(暇な人は読んでね)。
・The Freedom of the Seas(2000年 socserv.mcmaster.ca;.pdfファイル)


話を戻す。
『公海自由の原則』って言っても、何も「調査捕鯨」について好き勝手やって良いわけ無いっつーに。
ま、IWC で「調査捕鯨」について承認を得ているという事情もあるけど・・・。

いささか意地の悪いことを書くなら、国際法ってのが公海において Greenpeace や Sea Shepherd などが行う大規模な抗議活動を想定してないのも事態を複雑にしてるんだろうな。
実際、抗議活動を行ってる側も(法的にギリギリの線を渡っているから)内心困ってるのかもな。
このことは、日本政府(に限らないのだが)にとって有利に働く面もあるけど・・・。

今後、この話は別の視点でも議論される必要があると思ふ俺。


それはそうと。
先月 Paul Watson 船長が日本で容疑者扱い(・・・)された Sea Shepherd は、空気を読まずに(?)ガラパゴス周辺のサメの保護を訴える新聞広告を el Colono 紙に出していた。
・Sea Shepherd Galapagos Presents Shark Awareness Pack(2010年5月3日 Sea Shepherd)

この広告では、Sea Shepherd がサメ類の保護を続けてることを訴えた上で、中国や台湾などで(日本も忘れないで)フカヒレが食べられてることを指摘している。
広告料いくら払ったんだよ、とか言わない。

なお、ガラパゴス周辺海域ではサメ類の捕獲は禁止されてる。
以下は、エクアドル政府が定めたサメ類の保護に関する施行令みたいなもん。
・Decreto Ejecutivo 486 (Tiburón)(2007年7月23日 SRP;スペイン語)

果たして、Sea Shepherd はこの活動をいつまで続けられるのやら(苦笑)


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