今回は小ネタ。
先月の終盤になって、密かに「調査捕鯨」団の片割れである日本鯨類研究所(ICR)が、公式サイト上に『豆知識』なるページを設けていた。
・豆知識(2011年2月22日 日本鯨類研究所)
『豆知識』の内容としては、現時点(2011年3月8日)で以下の5つ。
・南極鯨類捕獲調査(JARPA) の概要
・第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII) の概要
・調査捕鯨の捕獲数について
・調査捕鯨副産物の流通管理体制について
・鯨肉に含まれるバレニンについて(鯨研通信429号抜き刷り)
これ、『豆知識』で片づけるだけじゃダメなブツもありそうだが・・・。
話を戻す。
この中では、「調査捕鯨」のことを色々解説していた。
その中で俺が疑問を抱いたのは、『調査捕鯨の捕獲数について』というブツだ。
↓は .pdfファイル。
・調査捕鯨の捕獲数について(2011年2月22日 日本鯨類研究所;.pdfファイル)
この中では、いかに「調査捕鯨」が人畜無害(?)で生態系への影響が小さいかを、陸上生物の生息数と比較して述べていた。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨の捕獲数について』から、その部分を(略
ただし、[]内は俺の補足。
---- 以下引用 ----
(中略)
捕獲調査では、1年間に北西太平洋で、イワシクジラ100頭、ニタリクジラ50頭、ミンククジラ220頭、マッコウクジラ10頭及び南極海でクロミンククジラ850頭、ナガスクジラ50頭を捕獲対象としております。
これら捕獲数は、主要調査項目で明らかにしたい研究データを得るために必要な最小頭数を統計学的な手法を用いて算出しています。
また、これら鯨種の現在の資源量は、イワシクジラ21,612頭、ニタリクジラ20,501頭、ミンククジラ42,257頭、マッコウクジラ102,112頭、クロミンククジラ761,000頭及びナガスクジラ11,755頭と推定されています(下記表参照のこと)。
このように調査捕鯨では、資源に対して0.01%~0.52%しか捕獲しておらず、これは、陸上の野生生物であるムース[ヘラジカ:Alces alces](56%)、オオカンガルー[Macropus giganteus](17%)、アカカンガルー[Macropus rufus](18%)及びクロカンガルー[Macropus fuliginosus](13%)と比較しても、2桁以上低いレベルです。
(以下略)
---- 引用以上 ----
比較対象された動物は、どれも IUCN のレッドリストに掲載されている。
↓は、IUCN のデータ。
・Alces alces(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus rufus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus giganteus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus fuliginosus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
しかも、そのうち 3つが(「調査捕鯨」に反対してる)オーストラリアに生息してるカンガルー3種って辺りに、「調査捕鯨」団の悪意を感じる。
他にも比較対象する動物はあっただろうに。
裏を返せば、「調査捕鯨」に政治性が含まれてるのを示してるが・・・。
で、捕獲数の根拠にしてるデータも、また素晴らしいものだった。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨の捕獲数について』から、表『調査対象鯨種の資源量推定値と計画捕獲頭数』の画面メモを(略
(最近画像が多くて申し訳)
クロミンククジラだけ 1991年の個体数かよ・・・。
実は、この個体数は、2000年の IWC 総会で正確性を否定されてるんだよな。
その後、クロミンククジラの個体数については、様々な意見が出されるものの未だ決着がつかず・・・。
この辺りは以下参照(手抜き)
・Balaenoptera bonaerensis(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
本当の所はどうなのやら(苦笑)
というか、海洋生物の捕獲数を陸上生物の個体数と単純に比較するのって「アリ」なんだろうか?
後、『調査捕鯨副産物の流通管理体制について』についても少し触れておく。
↓は .pdfファイル。
・調査捕鯨副産物の流通管理体制について(2011年2月22日 日本鯨類研究所;.pdfファイル)
この中では、登録された鯨肉の DNA のデータから、市場に出回っている鯨肉がどこの鯨の骨(?)だか調べることができることを説明していた。
そして、この〆には意味深なことが・・・。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨副産物の流通管理体制について』から、最後の〆を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
結論:国内に流通する調査副産物については、全ての捕獲調査標本個体の遺伝情報に基づき、厳格に管理されています。
仮に、違法に捕獲された鯨肉が流通した場合であっても、即座に検証できる体制が敷かれています。
---- 引用以上 ----
こういうコメントを出したのは、去年の IWC 総会で鯨肉のトレーサビリティ確保法なんてのが提案されたからかもしれんな。
その前の 2010年4月には、「韓国で売られていた鯨肉が日本が行った「調査捕鯨」で捕獲されたブツだ」なんて指摘も受けてたけど・・・。
この辺は以下参照(手抜き)
・日本の調査捕鯨由来の鯨肉をアメリカと韓国で発見(2010年4月14日 ドイツ語好きの化学者のメモ)
・The traceability/trackability of illegal trade in whale products: a proposal to evaluate the technical functionality of DNA registers(2010年6月11日? iwcoffice.org;.pdfファイル)
これ、(「調査捕鯨」の宣伝という意味で)『豆知識』なんてショボい名前のページで公開しない方が良かったんじゃ・・・?
# 『豆知識』のページの英語版は作らないのだろうか?
先月の終盤になって、密かに「調査捕鯨」団の片割れである日本鯨類研究所(ICR)が、公式サイト上に『豆知識』なるページを設けていた。
・豆知識(2011年2月22日 日本鯨類研究所)
『豆知識』の内容としては、現時点(2011年3月8日)で以下の5つ。
・南極鯨類捕獲調査(JARPA) の概要
・第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII) の概要
・調査捕鯨の捕獲数について
・調査捕鯨副産物の流通管理体制について
・鯨肉に含まれるバレニンについて(鯨研通信429号抜き刷り)
これ、『豆知識』で片づけるだけじゃダメなブツもありそうだが・・・。
話を戻す。
この中では、「調査捕鯨」のことを色々解説していた。
その中で俺が疑問を抱いたのは、『調査捕鯨の捕獲数について』というブツだ。
↓は .pdfファイル。
・調査捕鯨の捕獲数について(2011年2月22日 日本鯨類研究所;.pdfファイル)
この中では、いかに「調査捕鯨」が人畜無害(?)で生態系への影響が小さいかを、陸上生物の生息数と比較して述べていた。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨の捕獲数について』から、その部分を(略
ただし、[]内は俺の補足。
---- 以下引用 ----
(中略)
捕獲調査では、1年間に北西太平洋で、イワシクジラ100頭、ニタリクジラ50頭、ミンククジラ220頭、マッコウクジラ10頭及び南極海でクロミンククジラ850頭、ナガスクジラ50頭を捕獲対象としております。
これら捕獲数は、主要調査項目で明らかにしたい研究データを得るために必要な最小頭数を統計学的な手法を用いて算出しています。
また、これら鯨種の現在の資源量は、イワシクジラ21,612頭、ニタリクジラ20,501頭、ミンククジラ42,257頭、マッコウクジラ102,112頭、クロミンククジラ761,000頭及びナガスクジラ11,755頭と推定されています(下記表参照のこと)。
このように調査捕鯨では、資源に対して0.01%~0.52%しか捕獲しておらず、これは、陸上の野生生物であるムース[ヘラジカ:Alces alces](56%)、オオカンガルー[Macropus giganteus](17%)、アカカンガルー[Macropus rufus](18%)及びクロカンガルー[Macropus fuliginosus](13%)と比較しても、2桁以上低いレベルです。
(以下略)
---- 引用以上 ----
比較対象された動物は、どれも IUCN のレッドリストに掲載されている。
↓は、IUCN のデータ。
・Alces alces(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus rufus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus giganteus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
・Macropus fuliginosus(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
しかも、そのうち 3つが(「調査捕鯨」に反対してる)オーストラリアに生息してるカンガルー3種って辺りに、「調査捕鯨」団の悪意を感じる。
他にも比較対象する動物はあっただろうに。
裏を返せば、「調査捕鯨」に政治性が含まれてるのを示してるが・・・。
で、捕獲数の根拠にしてるデータも、また素晴らしいものだった。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨の捕獲数について』から、表『調査対象鯨種の資源量推定値と計画捕獲頭数』の画面メモを(略
(最近画像が多くて申し訳)
クロミンククジラだけ 1991年の個体数かよ・・・。
実は、この個体数は、2000年の IWC 総会で正確性を否定されてるんだよな。
その後、クロミンククジラの個体数については、様々な意見が出されるものの未だ決着がつかず・・・。
この辺りは以下参照(手抜き)
・Balaenoptera bonaerensis(IUCN 最終アクセス日:2011年3月8日)
本当の所はどうなのやら(苦笑)
というか、海洋生物の捕獲数を陸上生物の個体数と単純に比較するのって「アリ」なんだろうか?
後、『調査捕鯨副産物の流通管理体制について』についても少し触れておく。
↓は .pdfファイル。
・調査捕鯨副産物の流通管理体制について(2011年2月22日 日本鯨類研究所;.pdfファイル)
この中では、登録された鯨肉の DNA のデータから、市場に出回っている鯨肉がどこの鯨の骨(?)だか調べることができることを説明していた。
そして、この〆には意味深なことが・・・。
以下、2011年2月22日分日本鯨類研究所『調査捕鯨副産物の流通管理体制について』から、最後の〆を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
結論:国内に流通する調査副産物については、全ての捕獲調査標本個体の遺伝情報に基づき、厳格に管理されています。
仮に、違法に捕獲された鯨肉が流通した場合であっても、即座に検証できる体制が敷かれています。
---- 引用以上 ----
こういうコメントを出したのは、去年の IWC 総会で鯨肉のトレーサビリティ確保法なんてのが提案されたからかもしれんな。
その前の 2010年4月には、「韓国で売られていた鯨肉が日本が行った「調査捕鯨」で捕獲されたブツだ」なんて指摘も受けてたけど・・・。
この辺は以下参照(手抜き)
・日本の調査捕鯨由来の鯨肉をアメリカと韓国で発見(2010年4月14日 ドイツ語好きの化学者のメモ)
・The traceability/trackability of illegal trade in whale products: a proposal to evaluate the technical functionality of DNA registers(2010年6月11日? iwcoffice.org;.pdfファイル)
これ、(「調査捕鯨」の宣伝という意味で)『豆知識』なんてショボい名前のページで公開しない方が良かったんじゃ・・・?
# 『豆知識』のページの英語版は作らないのだろうか?
生息数については最低でも、95%信頼区間の範囲を示してほしいものです。また、引用した資料の信頼性について注釈がないのも、物足りなさがあります。
「豆」知識だからわずが1ページに簡略化したとも言えますが、もっと知りたい人に対しては不親切な資料です。
カンガルー3種を例示していますが、確かに意図的な引用です。天敵となる上位肉食動物を人間が駆除したため、代わりに駆除しなければならなくなったのに。
日本でもエゾシカの駆除をしていますし、ツキノワグマは人里に現れたというだけで駆除されています。
日本国内の事例も例示しておけば、「科学研究団体」という印象付けができたのに。脇が甘いというか、自分主体の考え方しかできない人たちの集団だという、逆効果の印象付けになっていますね。まあ、彼らは気にしないでしょうが。
★「生データ」合算値推移
まずSOWER二周目(CPII)→三周目(CPIII)における
各海区中央値「生データ」の合算値の推移は
●[769,000→362,000]
です。
When results from closing mode and IO mode were combined the circumpolar abundance estimates were
594,000 (CV = 12.8%), 769,000 (CV = 9.4%) and 362,000 (CV = 8.0%) for CPI, CPII and CPIII respectively.
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/SCRepFiles2005/AnnexGsq.pdf
(ここでCPIIが761,000ではなく769,000であるのはCPIIの最初の年からと正確を規したからだと思われます)
------------------
★「加工データ」合算値推移
2009.06
でその「生データ」を“(それぞれが想定したモデルの取り方によって)加工”した「加工データ」の合算値の推移は
「岡村寛」「北門利英」が●[1,287,000→688,000]
「Bravington」「Hedley」が●[747,000→461,000]
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/SCRepFiles2009/SCReport%20-%20Final.pdf
(p29-)
2010.06
若干の修正がありました。
「岡村寛」「北門利英」が●[1,486,000→712,000]
「Bravington」「Hedley」が●[747,000→382,000]
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/SCRepFiles2010/Annex%20G%20FINAL-sq.pdf
(p3)
2011.01
さらに若干の修正が。
「岡村寛」「北門利英」が●[1,372,202→678,638]
http://www.iwcoffice.org/_documents/sci_com/workshops/SHM/SCJ11AE1.pdf
(p6)
「Bravington」「Hedley」の方は分かりません。
本当に大手マスコミはセンスが無い、としか。
http://webronza.asahi.com/science/2011030200001.html
>生息数については最低でも、95%信頼区間の範囲を示してほしいものです。
内部で 95%信頼区間の計算はしたものの、いざ資料作成の段になって上層部から「普通の人達にはわからないからそこまで公開しなくてもいいべさ」なんて横やりが入った、という可能性は十分ありそうです。
「豆知識」であるとはいえ、もう少しやりようがあると思うのですが・・・。
>日本国内の事例も例示しておけば、「科学研究団体」という印象付けができたのに。
確かに、日本国内の事例を紹介しなかったのは謎です。
それにしても、ここまで政治的意図を露骨に表してる「科学研究団体」も日本ではそんなにないと思いますね。
ただ、日本国外だと、こういう団体も結構ありそうですが・・・。
毎年毎年クロミンククジラの生息数のデータが変わってるのは、ある意味で現在の調査方法の限界を示してるのかもしれません。
この調子だと、次回の IWC 総会でも同じことが起きても不思議はありません(苦笑)
「調査捕鯨」団の方々には、クロミンククジラに限らず鯨類の生息数調査で有効な手法を提案すれば良いのですが・・・。
議題が議題だけに、無料ページで公開すると妙な言いがかりをつけてくる人達が出るのを恐れたのかもしれません。
もっとも、有料ページ(WEB RONZA は月額735円)で公開しても、内容がアレだと何にもならないのですが・・・。
見ろ!メディアがゴミのようだ!(2011年2月10日 ならなしとり)
http://blog.goo.ne.jp/micropterusandsalmo/e/737e113fb74b67935e5cfdae62d9dba9
鯨がレッドリストに載ってる希少種だから保護すべきみたいな論調でふっかけてきて それに対する日本側の提出データだから 討論としては ありでしょう。
あと 固体種が回復傾向にあるかなどを
継続可能な状態で見極めるために調査捕鯨してる。
そのデータ取りを邪魔するために 何もデータを出さずに ふっかけてる今のオーストラリアの姿勢は、
科学調査的に非難されるべきでしょう。
例えるなら 地面に落ちた2つの種を
片足で踏んづけて 種は無いって主張してるのが、
オーストラリアの主張です。
>確かオーストラリアが、鯨がレッドリストに載ってる希少種だから保護すべきみたいな論調でふっかけて~
この辺りの経緯については正直わからない所があるのですが・・・。
仮に、オーストラリア側のやり方がそうだとすれば、むしろ日本政府側はその手法自体を批判する必要があったのではないでしょうか?
それをせず、ICR が同じ論法を使ったのは、ただ相手側への当てつけを行ってるだけでしかありません。
>そのデータ取りを邪魔するために 何もデータを出さずに ふっかけてる今のオーストラリアの姿勢は、
科学調査的に非難されるべきでしょう
う~ん。
現状だと、「調査捕鯨」が唯一のデータ採集方法になっていますが、それ以外の手法について案を出していない(出していても使えるレベルでない)のは問題だと思います
無論、この辺は日本政府にも一半の責任があるのですが・・・。