国産定番万年筆 最弱インプレ
実用上十分、ほとんど最強と考える実売1~2万円の国産万年筆をレポート。カスタムパーツ製作も左下BOOKMARKで紹介中。
 



●祖父の #3776 を老店主の店に持っていきました。
このモデルにどんな原因でどんな不具合が発生しがちであるかを店主ははっきり覚えていました。このペン芯を加工するのは結構面倒なようです。今は少し忙しい時期であるようなので、今回はそのまま持って帰りました。
●ペン芯の加工についての話を聞いていると、こんな話が出ました。
以前に調整で預かった万年筆を分解したところ、ペン芯に裏技というべきか、とても大胆な加工がしてあったと。
●それは、パイロット社の古い廃番モデルである 「エリート」 の真似だと思われるペン芯加工であったそうです。
といっても筆者はエリートのペン芯を知らないので、どういうことかを訊ねました。


■すると店主がゴソゴソと持ち出してきたのが、写真の首軸です。
写真左の首軸の、ペン先を取り付けた時に接する面に、長方形の穴があります。実は、本来のエリートでは、写真右の首軸のように、この穴にスポンジのようなフェルトのような 「不織布」 がはめ込んであったそうなのです。
■細かいスリットの毛細管現象で首軸まで導かれたインクは、最終的にこのフェルトに染み込んでたっぷりと濡らし、それがペン先の裏に接して、インク出を確実なものにしていたのだそうです。
■時には、自分で分解したお客さんが 「書き込むうちに切割が紙の繊維を削り取って、ペン芯にこんなにゴミが詰まってしまったんだな」 と誤解してコレを取り除いてしまい、写真左のような状態にして 「なんかインク出が渋くなった」 と持ち込んでくる場合もあったそうです。


●話を戻して、
その、しばらく前に持ち込まれた古い万年筆のペン芯には、本来無いはずの小さな窪みが彫刻刀か何かであけられていて、そこに小さなフェルト片が押し込まれていたのだそうです。 「インク出は抜群であったかもしれないけれども反則技だな。あんたはどう思う?」 と店主は言っておりました。
●「最新のパイロット社のペチット1という200円の万年筆型筆記具のペン芯にもフェルト芯が差し込まれていますよ」
http://fish.miracle.ne.jp/mail4dl/05-topic-news/AB4-13.htm
と言うと、店主は 「ペチット」 というカタカナ語から何もイメージができないようでしたが、「ヘー、そうかね」 と申しておりました。実物を見せれば、「ああこれか」 と言うんですが。

コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (花月)
2007-10-19 04:40:15
私も以前同社の別モデルを分解したときに同じ構造を発見しました。その時は「こりゃ反則だ」と思いました。当時の、万年筆が非常に売れ日常的に使われ消費されていた時代背景を考えると、クレームを最小限にしながら低コストというメーカーとしては魅力的な仕組みだったに違いありません。多少負い目があったのか無かったのか、分解は大変でした。
 
 
 
情報ありがとうございます (Fineman)
2007-10-19 07:08:57
花月さま おはようございます。

●エリートの他にもあったのですね...。情報に感謝です。

ボールペンやサインペンの普及が広がっておらず、筆と鉛筆以外の筆記具では、まだ万年筆が主要な位置を占めていた頃であれば、「インク出トラブルの少ない筆記具をお客さまに提供したい」 という方針でこういう工夫をするのもアリだったのでしょうか。

●今現在は他の筆記具もたくさんありますし、「インクがかすれないから万年筆を使う」 という動機のユーザーは少なく、万年筆にはもっと 「純潔さ」 が求められているかも知れませんね。雑種が好まれない感じ。

●それとも、工夫の種類によっては、自動車のエンジンの、「ターボ」や「スーパーチャージャー」、「4輪操舵」や「可変バルブリフト」のように、『万年筆設計の革命だ』 とプラス評価されるでしょうか。ポイントは、より手間とコストがかかる改変かどうか、でしょうか。そんな気がします。ラクして結果を欲しがる変更でなくて。
 
 
 
飛び道具・・武士の風上にも置けない (Mike)
2007-10-19 10:56:19
アッシが世の中に出た時、オジキからもらったのが、このエリートでやした。
つい先まで、そんな仕掛けになっているたぁ知りゃしませんでした。
山田洋次てぇ活動屋さんの「隠し剣鬼の爪」てぇ活動で、年寄りの、お侍が『鉄砲、そんな飛び道具なんて卑怯せんばん、武士の風上にも置けない』てぇつぶやく場面がありやした。アッシは、鉄砲は新兵器で時代を変えたと思ってやしたが、時代の空気てぇのはそんな意見もあったのだ。むしろそんな意見が大半だったのかも知れねぇと思いやして、妙に山田洋二てぇ活動屋さんを関心いたしやした。
 
 
 
他にも (二右衛門半)
2007-10-21 00:16:38
パイロットスーパー200にも挟まってました。
これが生産されていた戦後は大変だったんでしょうが、いささか情けないですよね。

推測ですが元々は戦時中に始まったのかもしれませんよ?

しばらく前のNHK朝の連続小説で八丁味噌の蔵元を舞台にしたドラマがありましたが、その作中で脱脂大豆を使い始める云々という下りがありました。
現在販売されている醤油を見ると一部を除き或る程度の高級品ですら脱脂大豆を使っています。
醤油屋も味噌屋も製造工程が似通った処があることを考えると脱脂大豆を使った醤油が作られはじめたのも戦争が契機なのでしょう。。

以上のことを思えば、エリートに使われている不織布も単なるコストカットのための工夫、というだけでなく、筆記具の苦難の歴史を感じさせる一品、といえるのかもしれません。
 
 
 
法律改正はさかのぼらない (Fineman)
2007-10-21 08:14:03
Mike さま

●コメントありがとうございます。
Mike さんの、メリケンなお名前と古風な文体の組み合わせは、ユニークですね。
以前読んだ歴史小説に出てくる江戸っ子の脇役の、現代のラップ的にリズムが良くてユーモアが利いている啖呵の格好よさを思い出して、書店でどの本だったかなあと探しましたが、見つかりませんでした。
あんまり歴史小説は読みませんが、童門冬二氏の 「小説 上杉鷹山」 は泣けました。
●鉄砲を向けられた相手には「飛び道具で狙われた」とそれが見えますが、エリートの不織布は誰にも見えなくて存在が知られていない点で、状況がチト違っている気がします。


二右衛門半 さま

●確か漫画「おいしんぼ」だったか。 需要が少なく生産量が少ないカリフォルニアの豆腐会社はおずおずと伝統製法の教科書通りに造っている。一方需要が大きい日本の豆腐会社は、発泡剤などを使って少ない大豆から大量の豆腐を大量生産しているので、意外にも味は日本メーカーの負け、という話があったような。
あ、以前は家畜のエサと思われていた 「アメリカ人の嫌いな食べ物ナンバーワン」 の豆腐をついにアメリカ人の日常食にした日本人ビジネスマンの本 「 豆腐バカ世界に挑む 」 も面白かったです。
●おっしゃる意味は 「新しくできた法律によって過去には適法であった行為を罰せられることはないのだから、現代の基準で過去の事物を評価するのは慎重に」 ってことですね。
確かにそうですね。でも老店主の口ぶりだと、パイトット社もあんまり堂々とはやってはいなかったようです。


※ メリケン = アメリカン
 
 
 
ありがとよ (Mike)
2007-10-21 23:29:13
>Mike さんの、メリケンなお名前と古風な文体の組み合わせは、ユニークですね。
お褒めの言葉ありがとよ!
そうよなぁ江戸時代にゃゴルゴ13は居なかったもんな・・・・・・
アッシの言いたかったのぁ「万年筆かくあるへし」なんてあんまり片意地はりなさんなてぇ事 「ペチット」か「ペテット」か知らねぇがあれだっておめぇアッシらから見りゃ立派な万年筆よ、カートリッジ式で¥300だって、健気なもんじゃねぇか。
武田軍最強と言われた騎馬隊だって鉄砲にやられちまってさ、武田にだって鉄砲はあつたろうに、それを使う事を進言したお侍もいたろうによ、武田は騎馬隊でなきゃなんてこだわるから負けちまって女、子供はてぇへんよ。おまんまのくいあげ
万年筆もよ、今ちっとばかり風吹いたからって、かてぇ事言ってると・・・・てな感じがいたしやす。
 
 
 
リアカーで北極 (Fineman)
2007-10-23 06:34:14
Mike さま

●コメントありがとうございます。
そうですね。お話を拝読して、冒険家の無茶のことを考えました。

リヤカーで大陸横断とか
http://bouken.zz.tc/riacar
バイクで北極圏到達
http://bouken.zz.tc/bikenp  とか。

●北極点を目指すなら雪原用のソリやスノーモビルを使うのが正しい選択で、道路用の2輪車バイクで目指すのは冒険というよりも 「モノゴトを無駄に難しくしているだけ」 という意見もあると思うのです。 釘を打つのに金槌でなく箸を使って1ヶ月かかったのを 「果敢な挑戦だ」 と言うのかよ、という感じで。

●ペン先裏に不織布を仕込むことは、北極を目指すのにスノーモビルという正しい最新の道具を使うことに似ているのかも。 詰め物が「フェルト」でなくて「ケブラー繊維」だったりすると、最先端な感じもしてきますし。 あえて樹脂製ペン芯溝の毛細管現象だけを用いるのは、見方を変えるとワザと難しい道を行く孤高の挑戦であるのかも。

●同じ仕様を、人によって「高邁なチャレンジ精神だ」とか、「無駄な労力を消費するノスタルジーだ」とか、色んな見方で眺めるのかもしれませんね。
同じ取り組みが「思考が柔軟だ」と誉められたり、「伝統が崩れている」と批判されたり。
とはいえ、万年筆の基本構造は今後30年も頑固に変わらない気がします。 でも200年後だとどうでしょう、固いことは言わなくなっているかも、です。 その頃にはとっくに石油が尽きていて、現在の主要な軸/ペン芯の素材である石油樹脂から、もう何か別の素材に代わっているでしょうし....。

Mike さまのお話に刺激されて 思いつきで適当なことをツラツラ書いていますので、突っ込みはほどほどにお願いいたします。
 
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