国産定番万年筆 最弱インプレ

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[ 013 - PILOT カスタム の "S" ( ソフト=軟調 ) とは ]

2007年05月24日 | 硬vs軟 ペン先設計の違い
■カスタムのペン先の種類において、形式名の頭に「S」がつくのはソフト・軟調子のペン先という意味のようです。
 ・中字 「M」 の軟調が 「SM」 。 
 ・細字 「F」 の軟調が 「SF」 。 
 ・FとMの中間の太さの 中細字 「FM」 の軟調が 「SFM」 。

■通常のMと、軟調のSMの、その個性の違いは、どのようにして生み出されているのでしょうか。ペン先をよく見ると、以下の点が異なっています。 M以外の軟調も違いは同様です。

 1) ソフトの方が、ペン先全体の幅が狭い( フックの法則から断面積を少なくした? )。
 2) ソフトの方が、ハート穴が先寄りにあって切割が短い( なんだか逆みたい )。
 3) ソフトの方が、ペン先地金の板厚が薄いようだ。
 4) ソフトの方は、ハート穴より先に唐草模様の刻印が無い。
 5) ソフトの方が、エラの頂点がポイントから遠い。 

■ペン先の輪郭に沿う唐草模様の刻印と 板の端のエッジとの間隔(余白) を眺めると、基本形状の違いがよく分ります。
「ソフト」 では、刻印にほぼ平行にエッジがあるのに対して、
「通常型」 では、ポイントからエラ頂点に近づくほどに、刻印とエッジの距離が離れていきます。そのぶんエラ部分の幅が広い。

■通常型の「M」と、「ソフトM」 を書き比べると、ソフトの方は柔らかくしなる感覚が強くなっています。 インクをたっぷりと紙にのせるのにもほとんど筆圧が要りません。筆圧をかけるべきでない、と言うべきかも。
筆者の好みでは、"他の筆記具とは違う万年筆らしさ" がよく現れていて、ソフトの方が楽しく気持ちよく筆を走らせることができます。でも通常版に持ち替えると、それはそれで楽に筆記できます。・・・あくまで筆者の個人的な感想ですが、

「ソフト型」は
デューク更家のウォーキング。見て面白くエンターテイメントで身体と心にビタミンのように効く。でも原稿用紙150枚を一気に書けといわれたら、しなる穂先の(無意識の)コントロールで少し疲れそう。 
「通 常 型」は
熟練ハイカーの足運び。普通っぽいけれども近所を散策する程度でなくて50km先の隣の県まで歩くならソフト型より通常型の方が疲労が少なそう。きっと頼りになりそう。しっかりしていてもちゃんと滑らかだし。

という感じです。 分りにくい たとえですが。

■また、直前に使っていた筆記具によっても評価が激変します。カスタム74の極細EFでカリカリとしばらく書いてから、MとSMを使うと、どちらも十分以上に柔らかく「インク出が豊富でたっぷり出過ぎる」ほどに感じます。 逆に特太のコースでしばらく書いてからMやSMに持ち替えると、「意外に絞られたインク出だな」と感じられます。
メーカーの調整師の方は、M担当者はずっとMばかりを担当してそれに熟練していくのでしょうか。
CやBやEFやMがバラバラに混じっている製造ラインでペン先調整をするのは、感覚が混乱して難しそうだと感じます。

■試し書きセットの11本を比較するうちに、これまでに断定的に書いた記事を書き直したくなってます。 たとえば。
並んだペンの左から右に、つまり細い方から太い方へ試すのと、右から左へ、つまり太いほうから細い方へ試すのでは、細字~中細字のペンの書き心地がかなり違って感じられます。前者では9本をなかなかイイと思うのに、後者では4本しかイイと思えない。 書き味の絶対評価って何なのかと、考え込んでしまいます。筆者が未熟なだけかもしれませんが。