歌よみもどきの書

歌詠み「もどき」のあかんたれが吐き出す、短歌になりきれない五七五七七の羅列です。

目眩

2015-01-27 | 五七五七七

抱きすくめらるる感じで後方へ傾くからだ 八段目から

落つるまでの記憶鮮やかなるほどに落ちたる後のあやふや多し

痛いとふ感覚ありて助かると思ふ 脳内麻薬は分泌されず

たらちねの母は何度も繰り返す「裾踏んだんか」「電気つけたか」

答ふる声思ふがままに出でざれば夫(つま)の帰りを待つ間に眠る

(つま)の声は受話器に向かひて発せらる 救急車呼ばんといて欲しいのに



僕の鼻を見てくださいと言ふ人のマスクの下の鼻想像す

そつのなきバイタルチェックをせし後に乱れし裾に毛布かけ給ふ

しっかりとせねばと力の出る呪文「お母さん!」とふ隊員の声

家族なき白き車中の安心は「京都中部広域」の文字



病院の廊下で聞こゆ頭打ちし老婆の家族の「ボケ治らんかな」

「冷蔵庫にアイス入れた後でよかったな」われのそばにて夫(つま)笑ひけり




日曜の夜、やらかしてしまいました。。

危機管理責任者(私)が当事者になった場合を想定しておりませんでした。^^;

外傷部的には大丈夫です。(めいびー)
要因的には、今年は脳ドックも受けます。(めまいは更年期やと思うけど…)

お世話になった消防・病院関係者のみなさま、
ご心配をかけたご近所のみなさま、
申し訳ございませんでした&ありがとうございました。



*画像は日曜日のお昼に出かけた植物園の売店にて。











*1/27(火)追記
ここでだけ、ちょっと弱音吐いていいですか?^^;
お陰さまで頭は大丈夫そうなんですが、当初気づかなかった身体は日が経つごとにあちこち痛い。。
たぶん、肋骨はヒビはいってそう。
(病院行っても治らんやろし、もういいけど。TT)


口実Ⅱ

2015-01-26 | 学習ノオト

同時にいくつものことをできない私なので、致し方ないのですが。
高専ロボコンにうつつをぬかしている間(それはそれで熱く至福な時です*^^*)に、短歌に関して乗り遅れたことがふたつありました。

そのひとつ目として。。

『口実Ⅱ』が出ていました。^^;
創刊号に関しましては、こちらで書きましたので割愛しますが、装丁に惚れて飛びついたけど中身もすっごくよかったwということで。(要約しすぎ?^^;)
「2号が楽しみ」とか調子のいいこと書きながら、ノーチェックだったのでした。^^;
(反省:その時期はTwitterの「ロボコン」リストしか見てなかったため。以後注意(*`・ω・)ゞ)
で、さっそく申込み読んだのが昨年末。
今度は、年末のバタバタで読みっぱなしに。。(ごめんなさい)
今頃ではありますが、自分の勉強のため&素敵な同人誌への表敬の意をこめて、備忘録程度ではありますが感想を書かせていただきます。

先ずは装丁。
創刊号の装丁がとっても素敵でジャケ買いの私としましては、裏切られたww、という感じ。
それも「いい裏切り」です。
勝手に創刊号のあの路線かな?と思っていた私に、フェイントのジャブをくらった気分で。
それと同時に、え?これはどう来るの?的なドキドキ感を、まだ手にしていない段階(ツイートに添付されていた画像を見ただけ)から持ってしまいました。
そして、手にしましたら、若き人妻らしいつやつや感が醸し出すエロス!?
中を見る前に、うまいなぁってね。^^;

で、その中身。
構成も創刊号とは違うテイストで新鮮でした。
それに高木佳子さんの創刊号評が収められているあたりも、やられたぁ!と。
2号から買った人が創刊号を買いたくなるだけでなく。
創刊号を買った私のような人間も、創刊号の復習ができることになります。
そう!私もそう感じたwと単純に思い返せたり、ああ!そういう表現がぴったりやなぁと勉強になったり、おお!そういう風に読めるんやと気づきを与えてもらったり。
創刊号の復習という点では、「短歌ミックス」の答合わせ(笑)でも楽しめました。
そして、創刊号を踏襲する「短歌エピソード小説」があるかと思えば、新しい試みの「一首評・一句評」やゲスト投入の「相聞」があり、中身が濃ゆい出来上がりになってると思います。
特に、いつまでも短歌も「もどき」の域を出ない、いつも「感想」しか書けない私には、「評」というのがすごく勉強になります。読み方・詠み方ともの。

最後に、メインの短歌連作!
気になったり、気に入ったり、印象に残ったお歌を引かせていただいて、しまりのない感想文を締めさせていただこうと思います。




逆光のひとの目鼻を手の中になぞる涼しい線と執着

カッターで紙をすぱりと切る何をどう息しても君がちらつく

夢の中指が呼ぶまま絡ませてあえて制御をしない結末

  以上3首 雨宮真由 「熱」 より


眼・首にとどまらず頭蓋・瞳孔といった生々しい?体の部位が多く詠まれているのに、嫌な感じにならないのがいいなあ。
「カッター」のお歌は読んでいる方まで不整脈になりそうで好きです。
ミッチーファンというイメージと結びつかない(ごめんなさい。実は、ミッチーは分かりますがミッチーファンの生態自体が分からないので思い込みで書いてます^^;)ギャップも魅力です。
尚、どこかでフジファブリックのファンと書かれていた記憶がありますが、それならぴったり来ます。



澄んだ音鳴らして落ちるベトナムコーヒーは小さな水琴窟だ

街頭で囲まれているゆるキャラの中の人にも性の営み

きりきりと永訣の日を待つよりも縫いつけるべきボタンがあるわ

土くさく生きてゆきたい この家のどこかにあるはずの工具箱

わたしにはきみなんだろうつくづくとゼリーの絶壁に匙あてて

 以上5首 柴田瞳 「Every Jim has his Jill」 より


えっと…
柴田さんのお歌の中に私が勝手に名付けてカテゴライズするものに「カフェうた」というものがありまして、上に引かせていただいた中では1首目と5首目がそれにあたります。(独断です。)
伺う機会のないままに閉店されて残念ですが、そのカフェうたから色々想像する楽しみをありがとうございました。
「ゼリー」のお歌からは、この『口実Ⅱ』の装丁を彷彿とさせる透明感と同時に、ぷるんぷるんの力強さみたいなものを感じました。
タイトル、いいですよね。そうだと思います。
その人にとってのかの人、わたしにとってのきみ、きみにとってのわたし。。



失えばかなしいという凡庸にほそき手摺がありて下りぬ

許すため息を整(とな)うる二三歩のうちにひろがる麦畑あれ

あのころの俺たち、とかって死んでしまいエンドロールは馥郁として

  以上3首 温井ねむ 「教授、それはわたしの犬です」 より


私には、難しいというか厳しいです。
いえ、漢字がじゃないですよ。(それもあるけど^^;)
タイトルから、大昔に教授に気に入られるため犬の散歩までする院生の話を聞いたことを思い出してしまい、そのトーンから抜け出せないのです。
引かせていただいたお歌は、そんな中でも厳しさより美しさを感じたものです。
温井さんのお歌が素直にすっと入るようになれば、私も短歌的に少しは成長したと思っていいのかなぁと密かに思ってます。^^; 

 

今回は、鳥栖なおこさんが不参加で少し残念でした。
今年の秋は、気をつけて、3号チェックしますね!




























 


『夏鴉』

2015-01-21 | 学習ノオト

ハシブトガラスのぶっちーくんとお近づきになって?以来。
カラスの歌を詠んだり(読んだり)がひそかな楽しみの私。
ただ、積極的に探していないのでカラスを詠まれた歌(で気に入っている歌)は次の1首しか知りません。



わりといい路上ライヴのかたすみで翼をととのふる街鴉

(藪内亮輔 「霊喰ヒM」/角川短歌 )



そんな私が、あてもなく本屋さんの棚を物色していて目に付いたのがこちらの歌集でした。

『夏鴉』
澤村斉美

もうね、ジャケ買いというかタイトル買いですね。^^;

夏鴉とか寒鴉とか、俳句では季語に使われますが。
どうして「鴉」であって「烏」ではないのでしょうね。。
カラスの本やらサイトを読む限りでは、鴉はハシブトガラス、烏はハシボソガラスを表すとあったのですが、短歌や俳句の世界でもそうなんでしょうか?
そんなことを思いつつ、先ずは、さっくりと鴉の登場歌を漁るように読みました。




逆光の鴉のからだがくっきりと見えた日、君を夏空と呼ぶ


帰らないつもりの家へ帰りゆく鴉のからだ黒いだらうか


空をゆく鴉のやうなメールあり返事書くとき雨が降りだす


美しき友を見送りこの町はわれを住まはす 鴉降りる路地


ベランダに鴉の赤い口腔が見えたりけふは休みの上司


あをあをと天の映れる水の弧にずり落ちさうに夏鴉立つ




もしかしたら鴉の歌は1首だけかも、と思っていた私にとって嬉しい誤算の6首みっけ!!
最初に引いたお歌は、この歌集の1首目でもあり、タイトルにされた「夏鴉」の6首目の歌と一対になっているように感じます。
好き!気に入ってしまいました。*^^*
春に繁殖するので夏鴉というのは、巣立ったばかりの若いカラスをさすのでしょうか。
雨上がりの夏空に少し頼りなげに?けど自らの意思で飛び立つハシブトガラスが脳内再生されます。

カラスの歌が1首でなかった以上に、(いい意味で)裏切られたな!と思ったことがもうひとつ。
歌集のトップバッターが鴉だから、最後も鴉の歌で締められると思ったのですね。
ところが!



ここからはもう待たないといふ声がして夕間暮れ、ともしびの鷺



え?鴉と違て鷺なん?
期待を裏切られたけど、なかなかニクイ演出やん!とニヤリとしてしまいました。
このサギは、グレー(アオサギとかゴイサギみたいな)でなく白いサギ(ダイサギかチュウサギかコサギかは知りませんが)ですよね、たぶん。(個人的嗜好でそうであって欲しいです。^^;)
真昼(逆光でくっきり見えるのだからたぶんそうです)の黒いカラスで始めて、夕間暮れの白いサギで終わるなんて、洒落てます!
この歌集、いいなぁ。。
そう思って、もう一度。
今度は、しみじみと、カラスの歌以外も(笑)丁寧に読みました。

そうして、もっと、いいなぁと思いました。
何がかといいますと。
え?もしかしてこれって?と思うくらいの、控えめな相聞が。
カラスって、巣立ってもすぐにペアにならない鳥らしくって。
若い夏鴉のつがいになる前のはっきりしない恋の様子が控えめな詠み方で余計に浮かび上がるというか、きゅんとくるというか。
そういう意味もタイトルに込められているとしたら、澤村さんも、結構カラスお好きなのではないでしょうか?^^

カラスファンといたしましては。
ありがちなマイナーイメージで扱われることなく、淡々と、けど身近な存在として詠まれていてとても嬉しかったです。
数えた訳ではありませんが、「光」「ひかり」「光る」「ひかる」の言葉が多く登場したように感じるので、むしろ明るく、けれど静かな印象でした。
最後に鴉以外で(しつこいですね、笑)気に入ったお歌を何首か引かせていただきます。



からだの中の柊を見てゐるやうな君のまなざし 逢ひたいと言ふ

海のあることがあなたを展(ひら)きゆく缶コーヒーに寄る波の音

消えさうな人だから呼びたくなりぬ冷えた受話器に声を集めて

おしまひに始まりの符を付すやうな抱擁のため腕は伸べらる

わたくしのからだの影として思ふいつも遠くにひかる杉やま

浅すぎた思ひに気づく梅の木の痩せつつ曲がる夜を帰り来て

会はぬと決めて会はざる日々にハナミズキ若き名もなき木にかはりたり

決別といふほどのことわれはせずひとりで閉ぢゆく扉を思ふ




第二歌集も出ているらしく、ちょっと気になります。。