歌よみもどきの書

歌詠み「もどき」のあかんたれが吐き出す、短歌になりきれない五七五七七の羅列です。

『口実』Ⅲ

2017-05-13 | 備忘録

今更感が漂いますが、昨年末に入手して感想を下書きトレイに書きかけで放置して…現在に至りました。^^;

『口実』は、創刊号2号と出て、この3号がラストになります。
(詳細はリンク先の記事をお読みいただければと思いますが)たまたまTwitterで知って結構ツボにはまってファンになって…からの最終号。
正直淋しいですが、何事も終わりはあります。
そしてそれが次なるステップの始まりでもあるのですから、今までおおきにありがとうございます!な思いを込めて(間抜けなタイミングはご容赦いただくとして^^;)つつしんで感想記事を上げさせていただきます。m(__)m



先ずは装丁。
離婚届じゃあ~りませんかっ!?
人妻たちの同人誌の最終号でテーマの「別れ」にもかけて終わりの始まり、ってことですね。
モノクロのぼかし加工でよかったです。
あまりリアルすぎて品がなくなると嫌やもん。
等身大で身近で、けど、どこかカッコいいなって惚れるファンの(いや私個人の?^^;)人妻のイメージを大事にしたままで終わってほしいもん。


メインのお歌の連作については後に譲るといたしまして。
以下、ざっくりと内容の紹介を。

短歌をもとにした短編小説<短編の実>
創刊号では、短歌も短編小説も同じ人が書くリレー形式。
2号では誰かの短歌に他の誰かが小説という形。
最終号ではそこからまた進化して、それぞれが一首詠み、他の3名がその短歌をもとに短編を書くという形でした。
私も、最初に短歌を黙読して、音読して、もう一度かみしめて黙読して、自分なりのイメージを浮かべてから三者三様の短編を続きで一気に読みました。
4名の方の個性が際立って面白かったです。
(四つ目の「テオティワカン」は、鳥栖さんと同じ発想で地味に感激しました。←)
短歌の解釈がぶれるのあまり良くない(気がします)けど、そこから広がる世界観は読み手の自由なんだ!って改めて思いました。


匿名連作の<アイリスハイツ城池F棟ー短歌ミックス>は今号も面白く拝読しました。
創刊号でD棟やったのがF棟になってるのは舞台が違うってことやとしても。
なんで「アイリス」なんやろ、花言葉やろか、ギリシア神話やろか…と深読みしたいのを置いといて。(笑)
先ずはメンバーの、雨宮真由さん、柴田瞳さん、鳥栖なおこさん、温井ねむさんのお歌を嗅ぎ分けてやるwとゲーム的な楽しみ方ができます。
不勉強な私が「らしい」などと口にするのは軽々ですが。
それでも「あ、これ〇〇さんかな」「●●さんっぽい」「□□さん臭がする」と表現や目線を推理したり、(他にもゲスト参加の方の短歌が混じってるのですが)「これは4人の誰でもない!」とか、ひとりで盛り上がれました。
それと今回は、妻バージョン、夫バージョンとあり、男性も女性も妻や夫になって詠まれているのですが。
夫バージョンがいずれも未練たらしさ全開で、男性女性ともに「上手いことなりきって(別れを)詠んだはるな~」と感心いたしました。


それでは巻頭の<短歌連作>の感想を…
無理から拙い短歌(もどき)にしてみますと。。



朝な夕な 口実・企て・愛・歌を人妻たちは育みてをり

家の数、妻の数ある歌ひ方 見事に整ひ四十奏(カルテット)なす



お粗末さまです。m(__)m
なんか、自分でも詠みたくなりました。
3号通して読み逃げしたらあかんかな~的な。^^;
後で、四名のお歌から私の好きなものを引かしていただきますが。
今回は四名がそれぞれに「口実」の歌を一首詠まれてます。
難しいことは分かりませんが、題材や、表現、トーン等、当たり前ですが、それぞれから受ける感じは違います。
雨宮さんのお歌は、尖った切なさがたまりません。
柴田さんのお歌の底流に感じる潔い日常が快いです。
鳥栖さんのお歌は、もしかしたら私と感性似てるかも…と近しいものを感じます。
温井さんのお歌は、重い静寂があって背筋が伸びます。
(いずれも、あくまで私個人の感想です…てなんか広告の言い訳みたいですね。^^;)
けれど、うまい具合にまとまってるんです。
足し算じゃなくて掛け算されてるみたいに、調和して広がってるんです。
巻末の紹介欄で、柴田さんが「わたしに何かあったら歌集より口実から代表歌を選んでほしい」と書かれてます。
ああ、そんなに気合入れたはるんや、やっぱり…と納得しました。
(脱線しますが『月は燃え出しそうなオレンジ』は『月は…』で私は好きです。版元の仕打ち?で嫌な思いを起こさはるなら悲しいです。作風が違うのは進化の証。また次に「代表歌はここから!」と言われるものを作っていただきたいです!)

うだうだと書くよりも、百聞は一見にしかず。
私好みのお歌三首ずつと「口実」の入った一首を、それぞれに引いて冗長な感想文を〆させていただきます。
『口実』、ええ同人誌でした。
ありがとうございます!
メンバーの4名さまの今後のご健詠・ご活躍を陰ながらお祈りしております。m(__)m




作戦は幾重にも張る狙うとは必ず奪うことの前段

やりきれぬ思いのにじむ爪先へ私の聞けない弱音が溜まる

間違った予言はたださず次に会う口実として静かに握る

前髪を風にやらせて佇んで私の危ない光がわらう

  (危ない光   /   雨宮 真由)





少しずつ小さな庭を整える生活とのきまじめな関わり

前世でも逢ったのでしょう口実をひねりだしては会社をぬけて

星ひとつ滅びるころに光量の足りない部屋で捧げる祈り

きみというひとに出会えてあとはもう余技でしかない人生をゆく

  (たまゆら  /  柴田 瞳)



ゆるし方忘れた夜のぬか床の右手に纏わりついたしずけさ

口実を用意できないまま君に電話をかける 星うつくしい

アボカドの種をくるっと取るように丸ごとわすれてほしい夕暮れ

アスパラの先端部分をあげること愛と気付かぬ男と暮らす

  (キッチンと幸福の亡霊  /  鳥栖 なおこ)



生きるという気持ちどうしても弱い子が犬の額の窪みをなでる

かみさまの留守を口実にあらたまの春の三越にかたち溢れる

青磁器の水差しのごと足いっぽんなげだされたり朝の風呂場に

手を振って息継ぎをせぬクロールの正しいフォームで夏がゆきたり

  (正しいフォーム  /  温井 ねむ)








『なるほど工具ノート』

2016-12-03 | 備忘録

あれは8月の終わり頃でしたっけ?
ブックレビューいや読後感想文の記事をこれからは上げます、みたいなこと書きましたよね。
で、書いてない…ですね。^^;
と申しますか、書く気力が沸かないのです。
ブックレビューなら(それこそブロガーの名にふさわしい!)色んな人が書かれてますし。
同じようなことを、それより拙い文章で後から上げることの意義が見つからず。
すごーーーく書きたい場合や、めったにない感想をもった場合、その本自体が珍しい場合等以外は、わざわざ書く事もないか・・・


と流されて季節は冬。
(以上、言い訳でした^^;)



久しぶりのブックレビューです!?







『なるほど工具ノート』 KTC(京都機械工具株式会社)


KTCの社員さんがFaceBookにUPしたイラストが好評で本になったものらしいです。
面白そうなのでポチってしまいました。(かれこれひと月前)
カタログぽいものを想像していましたが、絵本みたいです。
ストーリーはありませんが、夏休み等で工具を手にする前に子供に「見とくか?」って渡したいような。





「7:3」なんて、私、結婚して、現場に出て、親方に教わるまで知りませんでしたもの。^^;
子供の時に知ってたら、ネジの頭なめてワヤにすることも少なかったやろな。。
実は、未だになめることあります。
ネジザウルスがあったら大丈夫なんですけどね。
(KTCさんごめんなさい)

小学校で教えてもエエと思うのね。
男子も女子もなく。
ほんで、押す力が相対的に弱い女子が、男子のたくましさに気づくのもエエかと思います。
あ、そんな時のためにこの本があるのかも。
(まとめ買いは業販価格になるようでした。)

1冊824円(送料別途、爆)を数分で読了した?けど、これは絵本と同じく大切に置いておこう!
て思わせてくれました。
電動工具よりハンドツールの方が好きなのもあるかもしれません。
お裁縫もミシンより手縫いが好きですから。
(電線管のネジ切るのは、インパクトドライバーでもなめてしまいますけどねー^^;)






最後にひとつだけ。
登場するおねーちゃん、ロボコニストみたいにゴーグルまでして本格的なんですが・・・
現場は長袖!
と申し上げたいです。(^_-)


8x4短歌

2016-11-02 | 備忘録

Twitterで #8x4短歌 なるハッシュタグを見つけました。
どうやら制汗剤屋さんがキャンペーンをされているようでした。
私は鍵垢なので抽選対象外なのですが、面白そうなので歌を詠むだけで勝手に参加しました。


が!
普段そんなにどっぷり浸ってるつもりはなくとも5・7・5・7・7に慣れてしまっているようで、4・8・4・8・8思いのほか難しかったです。
満足するようには作れなかったのでTLの波に流して恥の書き捨てにしようとも思ったのですが、ひとつ試したことがあったので恥を忍んで備忘録程度に上げておきます。




山の端
あまりに赤くて
思わず
車を止めたら
きみから着信

口語でしか詠めん!と思ったのが第一印象。
ということは、普段57577のリズムで考えるのってやはり文語のなせる技!?ってことでしょうか。
それなら、なんとか①を文語で・・・と試みたのです。


山の端赤く燃ゆるやう あやしうきみを思へば着信の音す

なんちゅう句またがり。
てか、リズム悪すぎw
なんとか三十一文字で詠めんもんやろか・・・
そや!ネイティブ言語の関西弁で挑戦しよ!


あの山めっちゃ赤うて突っ込むつもりでドリフト あんたに会いたい

おいおい、歌が変わってるやんかいさ!なデキ。
けど、①の世界観を損なわんような短歌には仕上がった(つもり)。
そう「着信」は空耳?空想?なんです。(分かりにくい^^;)
だから、一番わかりやすいのも③ってことですよねー。
なかなか勉強になりました。


お口直しに このハッシュタグの中で一番気に入った歌を引かせていただきます。


ほんとは
降りる駅だけど
まあいい
眠る先輩の
髪はいい匂い
 (佐々木あらら)



あららさん、さすが!(って失礼ですが)
ポエムやぁ*^^*





*11/4(金)追記
朝、お弁当を作りながら、またトライしてました。
(結構しつこい^^;)


唐揚げはそつと寄り添ふゆで玉子 老ひても親とふ母を見るやう



唐揚げ 
ゆで玉子の横 
寄り添う 
調理されても 
親ですから、と



①の三十一文字は自然に文語。
これを8x4に変換しようとしたら
②のブチブチにキレまくった、やはり口語に。

なかなかに難しいかったけど、頭の体操にはなりました。(負け惜しみ)




古典鑑賞の入口

2016-09-10 | 備忘録

古典にもっと親しんで!なーんて偉そうには言えたギリでない私です。


特に中3の時の授業は、どちらかといえば苦手でした、古典。
先生に「ここの和訳ですけど・・・」と質問して、
「和訳って…これは日本語、これが日本語の元です!」と呆れられたり。
助動詞の追試を8回まで受けました。
8回目は私ひとりで、かつ「これを丸覚えしなさい。あなたが覚えられたら試験をします。」と言われる始末。^^;
(でも、小学生の頃、逆上がりができず毎日「お残り」してもできなかった挙句「もういいよ」と優しく見捨てられた黒歴史をもつ私にはありがたあったです。
最後まで付き合ってくださったのですから。)
きっとその時の記憶がいまだに役立ってるように思います。

ま、元々、苦手ではあっても、嫌いではありませんでした。
それは、幼い頃、寝る前に父が古事記を読み聞かせしてくれたり、中学受験のために通った田舎町に初登場の進学塾で(入試に出ないのに^^;)竹取物語や万葉集をひたすら鑑賞した下地があったからかもしれません。
以前にも書きましたが、今となっては、本当に感謝です。

そして。。
そんな私が国語を専攻して(しまった^^;)出会った上代文学の先生に万葉集の読み方?感じ方?を考えさせられた(決して教えられた訳ではありません)のがトドメですね。

この年になっても、万葉集の歌は、時々、色々、浮かんだり、わざわざ本(学生時代のテキスト)を開けたりします。



先月の終わり頃。
GAO!で新海誠氏の『言の葉の庭』を観ました。
最初は綺麗な風景やなぁ…とぼーっと観ていたのですが、万葉集の歌が登場してから鑑賞姿勢が変わりました。


鳴る神の少し響(とよ)みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ
   万葉集 巻11ー2513 作者未詳(柿本人麻呂歌集)

鳴る神の少し響(とよ)みて降らずとも我(わ)は留まらむ妹(いも)し留めば
   万葉集 巻11-2514 作者未詳(柿本人麻呂歌集)


なんて素敵な引用の仕方なんやろ、って。

もしも、今、万葉集に(そもそも古典そのものにも)興味の無い方がこれをお読みいただいてたら。
ググったりせず、何度もこの歌を唱えてみてください。
調べや音韻を味わってっください。
けど、この映画を観たら、調べや音韻や歌意もひっくるめて味わえます、きっと。
そういう意味で素敵な引用やと感じたんです。





ぐぐったら、↑こんな感じのが出てくるかもしれませんから。
人麻呂歌集とはとか、略体歌とはとか、おいといて、魂でまず鑑賞してほしいです。



そして。
絶賛上映中の『君の名は。』にも。
万葉集から引用されているようですね。
「ようですね」というのは、私自身まだ観られていないからです。
ただ、私の周りからは、はリアルにもtwitterのタイムラインにも「よかった」「また見たい」「○回目見た」の声が届きます。
はぁ、観たい!
激務が続くし、上映中に落ち着く自信もないし、ネタバレ情報が目にはいってくるし、もうええわ!
先月に引き続き『ユリイカ』9月号を買っちまいました。



はい、積極的ネタバレですね。^^;
編集部のメッセージとして何度も
*本稿には、物語の核心に触れる記述があるため、映画『君の名は。』および、小説版を未見の方にはネタバレとなる虞があります。ご注意ください。
とありますが、気にしない!?
いや、ためらいはあるもののこの飢餓状態は耐えられん。

と、いう訳で、拙ブログでも以下ネタバレ抵触します。
ご注意くださいませ。






↑ネットで拾いました。
『君の名は。』のワンシーン。
古文の授業みたいですね。

で、知ったのです。
この歌が引用されてるんや。。



(た)そ彼(かれ)とわれをな問ひそ九月(ながつき)の露に濡れつつ君待つわれそ
  万葉集 巻10-2240 作者未詳(柿本人麻呂歌集)


 
はぁ、映画観たいw
愚息は確か小説も持ってるみたいやし、先に借りようか。
奴は、映画も2回見たらしい。
なんかね、何度も見る(見たい)っていうのはね。
ガルパンおじさんのケースとは少し違って?(すみません邪推です^^;)鑑賞や理解を深めるためやないかなぁ。
何度も和歌を口ずさむようで素敵ですよね。


しゃーない。
鄙の里に住まう者、ただでさえ映画なんて一日仕事な上に今月はめっちゃ忙しい。
現場が落ち着いたら溜まったデスクワークに追われるし。
夜な夜な布団の中で万葉集読んどきます。




『魚舟・獣舟』

2016-08-31 | 備忘録

『魚舟・獣舟』 上田早夕里:著

今頃かよ!ですがお盆前には読了です。
読後あまりにも時間が経つと「こなし仕事」でUPするようでいけませんね。^^;
ただ、そもそもが!
夏の大人買い?をする発端は、同じ著者の『華竜の宮』を読みたい!と思ったからでした。
そして、それより先に、同じ設定で発表された短編がこの『魚舟・獣舟』であると知り、それなら時系列というか、短編から読もうと思った次第であります。(`・ω・)ゞ

と、いう訳で私にしては珍しい?SFです。

『魚舟・獣舟』(うおぶね・けものぶね)、『くさびらの道』、『饗応』、『真朱の街』、『ブルーグラス』、『小鳥の墓』の6編が収められてます。

例えば、表題作『魚舟・獣舟』は現代社会が崩壊した後の時代が舞台です。
なんと陸地ののほとんどは水没してそれに適応するようにヒトも進化?してるんです。
必ず双子で生まれて、片方はヒト、もう片方はサカナである・・・って設定です。
続き読みたくなりませんか?(^_-)

SFがこんなに面白いと思ったのはこの本が初めてです。
ロボットや宇宙ネタではない…つまり物理や工学的なものでなく生物学的な内容。
つまり私にも理解しやすい分野だった(といっても中学:理科クラブ、高校:生物部ってだけです^^;)ことも理由のひとつです。
でも、それだけではありません。
たぶん、今まで私が読んだSFってすべて男性作家やったと思うのです。
男女差というより個人差だとは思うのですが(て一応断っときます)、SFっていうと発想や理屈やストーリーの展開が面白いかどうか、の鍵になるものだと思ってました。
上田さんも、もちろん発想・理屈・ストーリー性も斬新で惹かれます。
でも、そこで終わらずに、現代とは変わってしまった未来の時代であっても、人の感情というか心の機微を丁寧に描写されている気がします。
で、そこに惹かれたのかなぁと。

本命の『華竜の宮』が楽しみです!^^v