歌よみもどきの書

歌詠み「もどき」のあかんたれが吐き出す、短歌になりきれない五七五七七の羅列です。

好子おばちゃんへ ~『木洩れ陽』の感想~

2020-06-02 | 学習ノオト

叔母の歌集『木洩れ陽』は、年度末ラッシュの最中も、新年度らしくない繁忙期にも何度も読んでいた。
5月になり我が家(当社)にもコロナの影響が出始めて現場は止まったものの、私個人的には確定申告が済むまでは落ち着けず、お礼とかお祝いとかに感想の手紙を添えて…というのはその後のタスクにしていた…



…ら!
先日、叔母から追加の歌集(2冊欲しいと伝えたが入れ違いで出版社から1冊だけ直送された。まコロナ騒動が収まればお祝い方々追加分を貰いに訪問すればいいかと放置してた^^;)に「頂き物が多くて食べ切れぬから」とおかきや干菓子のあれこれにお小遣い(笑)まで添えて送られて来た。



しまった!
確定申告を終えても絶賛放置プレイ中やった。。
すぐさま電話で無事着いた旨とお礼は伝え、感想はまた改めて…と切ったものの。
感想を手紙にするには、下書きが必須。
そしてこのブログにも「感想は改めて」と記してる。
そうや!叔母への手紙の下書きとブログ記事を兼ねたらええんやw ←コラ!
と、いう訳で、以下叔母への手紙の下書きのつもりで書いてみる。





好子おばさま

前略ごめんくださいませ。
先日は、『麒麟』の始まる直前にお電話し失礼いたしました。
お声を聴く限りお変わりなさそうで安心しております。
色々お気遣いいただき(この年になりまだお小遣をいただき恐縮しております)その上決して近くない道のりを郵便局まで出向きお送りいただき、改めてお礼申します。
おばちゃん、ほんまにありがとう!!

さて。
それでは第一歌集『木洩れ陽』の感想をつらつらと述べさせていただきます。
途中、おばちゃんのお歌に大いに刺激され拙歌を織り交ぜますが、悪しからずご容赦くださいませ。




まず装丁。
淡く、彩度を少し抑えた上品な藤色。
よいお色なだけでなく、おばちゃんのことをご存じな方は皆この色からおばちゃんを連想されると思います。

あは紫のカバーは想像かきたてる 子規の藤の歌とか茄子漬 (ひろ子)




そして口絵に使っていただいた父の写真。(*参考画像↑。ブログ用に編集)
折しも今年は十三回忌でしたから、本当にいい供養になりました。
あんなに撮った山ほど川ほどの写真の中でこの4枚は日の目を見ることができた、と嬉しいです。
選んでいただいた写真も、レイアウトも、お歌を邪魔することなく、そのものを詠まれていなくても全体に流れるトーンとはとても合っていると思います。
(私はお祭の写真を1枚推した記憶がありますが、花ばかりで正解です!)
そして、父の写真の感想まで教えていただいて、ありがとうございます。
「一例に」と先輩?のお葉書を切って同封していただいたの、嬉しくて栞にしました。
もちろん『木洩れ陽』専用です。




お歌は何度も読みました。
年度末や(例年なら暇なはずが今年は姫路の現場に通ったりして結構バタバタしていた)新年度になってからも。
短歌はいいです。
いくら忙しいといっても三十一文字くらい読めますもの。
そしてたった三十一文字の中に小説くらい凝縮されているものがあったりもして。
詠む(作る)方は、結社に入るでもなくいつまでたっても我流で進歩のない私ですが、読む(鑑賞)方はとても好きで、歌集・雑誌・同人誌を割と読む方です。
ただ今回は今までにない読み方ができました。
身内ならではの味わい方です。
身内故の大きな感情移入で涙が出るほど心が揺り動かされたり、「そうやったんか」と新たな発見があったり、ふーんと笑ったり。(私は「七つの子」ではなく「富士山」でした!)

例えばですが。
作歌直後に地元の新聞に載った

日に焼けつ野球に暮れし少年の兄顕ち来たる通夜の読経に

というお歌を

日焼けして野球に暮れし少年の兄顕ち来たる忌明の読経に

と推敲されて時系列的に後へ回されたことも、ストーリーとするにはおさまりが良いよいようにされたのだなあと勉強になります。
たまたま父が亡くなった際に目にしていたからこそ学べたことで完成品だけを読んでいても分からないのでとても得をした気持ちです。
風景なども普通は想像するだけですが、同じ八幡に育った者ならではの「あの景色かな」という想像もでき楽しいです。
孫を詠むお歌は(三人とも小さい頃の記憶しかなく立派になられた今を知らないので)、当時の可愛いしぐさが脳内再生される特典もありました。
おばちゃんが第二歌集を出されない限りできない貴重な体験です。


ばあちゃん子のわれ知らぬ祖母の詠まれをり「母」なる祖母の横顔を知る (ひろ子)

「娘」(こ)とあるは長女か次女かと思いつつ鑑賞するは身内の得と (ひろ子)

「姪」を詠む歌に喜ぶわれはミーハー叔母らしきかな気遣ひのあり (ひろ子)

山田家に生まれ育ちて嫁ぎ出でし共通項もつ叔母の歌うた (ひろ子)




最近は口語短歌に接することの方が多いので、おばちゃんのお歌を読むことで文語や歴史的仮名遣いの入ったものを読み返したくなりました。
文語は読むことはできても、使いこなせていない自省の念もあり。
学校で習ったことを卒業する時に律義に返して何も残ってない有様を久しぶりに恥ずかしいと自覚しております。
私の短歌の目標はかっこいい辞世の歌を詠んでお葬式の粗供養に同封してもらうこと(笑)ですが、このままでは無理そうなのでもうちょっと頑張らなければと大いに刺激も受けました。




オノマトペや編集の妙を学びたる教科書となりありがたきかな (ひろ子)

ジャブのごと大和言葉のよさ沁みて早速購(か)ひし本を開きぬ (ひろ子)

(あ)もいつか歌集なるもの作れぬか 腕磨くより心研ぎ澄まな (ひろ子)





冗長に書きなぐりましたが、最後に個人的に気に入ったお歌をいくつか引かせていただきます。


木洩れ陽の淡きぬくもり掌(て)にすくひ八幡宮の石段(いしきだ)のぼる

夕闇に白くあはあは浮かびゐる花の帯なす背割のさくら 

裏庭の紅梅仄かに匂ひ起(た)ち雨戸閉づる手ふと休めたり

水張田に鉄塔の影きはだてば朝(あした)の窓辺去り難くあり 

(うみ)のかなた遥かに霞む峰指してあれは比良ねと夫に確かむ
                   (冬の車窓より)

綱手繰(たぐ)り巧みに井戸の深きより兄西瓜上ぐるを見てゐしかの日  

ハムチーズ赤黄緑のサラダ添へパンと珈琲のわたしの朝餉(あさげ)

定まらぬ地球上なれど美しき国に歌拾ふわれの幸(さきは)い  

をだまきのやや俯きて咲きたるを遠き日の娘(こ)を見るごと眺む

拙くも令和に詠まな現(うつ)し身の憂ひ喜びの折折の歌








もう少し世間が落ち着きましたら是非ともお目もじ叶いますように。
その時は、時間をかけてもっと詠まれたお歌のあれこれを聞かせていただければと存じます。
時節柄ご自愛のほどお祈り申し上げます。

温かく和やかに来し折々を叔母読みませり木洩れ陽のごと (ひろ子)





 

 

 



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