もう1つの感性の本棚

書くことを仕事にしている者として、日常をどのような感性で掬い取るか。

街の縁取り60~沖縄その3◆闘牛

2007-01-05 02:07:52 | 街の縁取り
 今回の沖縄旅行で、少しディープかなと思えた空間は、本島北部にある今帰仁闘牛場だった。

 元旦の午後1時から、地元の長老の誕生祝いを冠に戴いた大会で、体重800~1000kg超の牛が闘う。
 牛によって格があり、新人戦のようなものから横綱戦まである。琉球新報、沖縄タイムスといった地元紙が後援、協賛し、テレビでも放映される。
 那覇に近い沖縄市にも闘牛場があって、そちらの方が2000~4000人の入場者を集めており、規模が大きいようだ。
 元旦の今帰仁には800人が集まったという。

 初めて牛同士が闘うのを観たが、これが単純明快にして、奥深さがあり、楽しめた。
 試合は、端的には背を見せて逃げた方が負け。
 だが、それまでの過程で、牛の性格や飼い主による戦法など、豊かなバリエーションが窺える。
 頭や角がぶつかり合う音も迫力がある。

 勝ち気にはやって興奮していても優勢とは限らない。いったん背を見せて敗走したかのようにしながらも態勢を整えてまた向かっていくような牛もいて、観客は拍手を送る。

 入場料は3000円。この日は、紅白饅頭と手ぬぐいが付いた。
 周囲を見ても賭けてる風ではなく、純粋に闘牛を楽しんでいるようだ。
 「角使いがうまい」とか、解説している人もいたり、顔見知りの飼い主や牛の気力を鼓舞する囃し手(正式には別称があるに違いない)に声援を送る人もいる。
 観光闘牛というより、地元の人による地元の人のための日常行事と映った。 

 勝った牛の背に、子供を乗せようとする大人が多く、そうした日常的に行われる勝負から運を貰うような縁起担ぎは、勝ち負けを競うだけでなく、地域として勝ちを分配するような印象を受けた。