25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

波の盆 武満徹

2016年08月10日 | 音楽

 昨日久しぶりに渋谷に行った。日帰りだった。仕事を済ませて、ドトールコーヒーの本店でコーヒーを飲み、タワレコードに行き、武満徹の「波の盆」と「夢の引用」というCD2枚を買った。目当ての「三つの映画音楽」を求めていたのだが、それはなかった。

 「波の盆」は彼がNHKのドラマ「夢千代日記」で作曲したのとほぼ同じような雰囲気のものを17分のものにまとめたもので、裏日本の抒情が溢れている。吉永小百合の作品の中で一番だと僕が思っている「夢千代日記」の舞台は兵庫県美方郡温泉町(現:新温泉町)。同町の湯村温泉はこのドラマ放送後、「夢千代の里」として脚光を浴びたという。現在、温泉街の中心部である荒湯のそばに吉永小百合をモデルにした「夢千代の像」が建てられている。また平成16年11月に資料館「夢千代館」がオープンし、館内には湯里銀座や煙草屋旅館内部などが再現されているらしい。物語中で芸者たちが度々舞う「貝殻節」は山陰地方でのみ知られる民謡だったが、このドラマで一躍全国的な知名度を得たということだ。山陰暗さが樹木希林の明るさや秋吉久美子の子を思う気持ちなどで、安心感もあり、裏日本の抒情に武満徹という作曲家と早坂暁という脚本家が絶望感にまで陥らせないで、ギリギリのところで物語を保っている。この地方の方言もよかったし、あり得ない風景の組み合わせだけれど、このドラマ世界を成り立たせている。短歌が時に出てくる。

 「花へんろ」はやはり早坂暁の脚本であるが、愛媛の風早町の方言である 「 ~なもし」と沢村貞子たちが喋るのが楽しかった。こちらは俳句が毎回出てくる。「昭和とは どんな眺めぞ 花へんろ」とは早坂作の俳句である。この作品は、1986年(昭和61年)、第4回向田邦子賞芸術選奨文部大臣賞、放送批評家懇談会優秀賞、放送文化基金賞個人賞受賞。1988年、第25回ギャラクシー賞・大賞受賞している。

 渥美清は寅さんになってしまったが、早坂暁の脚本で「尾崎放哉」をやりたかっただろうな、とこれらの作品を見ればきつく思ったことだろう。