女優・水野美紀と脚本家・楠野一郎のユニット「プロペラ犬」と、筋肉少女帯のコラボによる舞台を鑑賞。ちなみにプロペラ犬の"ユニット"とは、当初は"演劇ユニット"を名乗ったものの、旗揚げ公演で「演劇ってよりコントでしょ?」との指摘を受け「演劇」の二文字を取っ払ったらしい。ま、広い意味での「劇団」みたいなもんです。
「エンゲキロック」と銘打たれたこの舞台、東京公演は会場がなんと赤坂BLITZ。ライブハウスから芝居用のハコに舞台を移し、大阪ではサンケイホールブリーゼでの上演。
客席がそのままフェスのオーディエンスという設定で、ステージ前ではセキュリティ(役の役者)がパントマイムでダイバーをキャッチしてたり。上下二層の造りになった舞台では、下段の両端にベースとギターが、上段両端にはキーボードとドラムが常駐して、劇中に登場するガールズバンド(ただし、一部メンバーはオカマと老女)"シスターロメロ"の曲をガンガン生演奏。この影バンドのドラマーが、なんと音楽監督も務めた爆スラのファンキー末吉さんなのです。(ファンキーさんは去年、筋少のツアーでもドラムにも入ってましたね。)ボーカルを取る以外の役者は、影バンド演奏にあわせ楽器を「アテ振り」をし、物語はミュージカルのように音楽に併せて進むのですが、この曲が全て筋少のナンバー!!筋少+生演奏、これもう既にライブっすよ兄貴!指定席で座って観てるのが、じれったくてタマラン。でも、あくまでもエンゲキロックなので、おりこうに観ないといけないのです。拳を突き上げてもいけないのです。モッシュなんてもっての外なのです。
筋肉少女帯の曲を繋ぎ合わせながら物語を練ったそうで、オーケンのあの世界観を再現した舞台に、既存の名曲がぴったり。また、筋少自身も今月に出たアルバム「蔦からまるQの惑星」はこの舞台のサントラ的意味合いで制作されており(…映画以外もサントラっていうのか?フィルム使ってないのにサウンドトラックっておかしいよな。)、音楽と芝居が互いを高めあっている幸せな関係。もっとも、既存の曲をそのまま使っている訳ではなくって、歌詞は物語に併せ一部改変。大部分は元のままで、いくつかの単語や人物の名前を替えただけの曲がほとんどですが、『日本の米』の大胆な替え歌、『物販』には大爆笑!!あ、ちなみに『日本の米』って、DJハヤシがよくかけてるヤツな。
『物販』(←『日本の米』替え歌)
君は!Tシャツ買っているのか?
物販で!タオル買っているのか?
知らないのか?物販で、やっとわずかな利益出る!
知らないのか?物販で、ロックバンドは喰っている!
買え買え買え買え…
売れ売れ売れ売れ…
以上、ウロ覚えの歌詞。
知ってる知ってる、その現実ww!サントラ出してー!
(ちなみに原曲。
「君は!米を知っているのか?
日本の!米を知っているのか?
知らないのか?納豆に、ネギを刻むと美味いんだ!
知らないのか?納豆に、ネギを刻むと美味いんだ!
米米米米…」
米米米米…」)
前説と本編の境が分からない導入から始まって、売れっ子俳優をキャスティングする際の、所属事務所との「バーター役者」をネタにしてみたりとか、影バンドのファンキーさんがいきなり物語に絡んできたりとか、舞台上のフィクションと現実が混在したメタな構成って芝居ならではの文化やね。あ、これを映画でやったのが、あの『シベリア超特急』な訳か?
美人女優のイメージが強かった水野美紀が舞台では結構なコメディエンヌになることと、アイドルとしか見てなかったソニンが、歌も上手くて演技も良かったのは新発見。オデコフェチとしては嬉しい限り。日替わりゲストが、この千秋楽は筋肉少女帯やったので、四人もチョイ役で登場してお恥ずかしい小芝居を披露。
音楽と笑いのベールを取り去ると、物語自体はシスターロメロの結成とブレイク、凋落、解散と再結成を通じ(で、結構筋少の実話とリンクしてたりもするのですが)、夢をあきらめないことや姉妹の絆を描いた、芝居としてはベッタベタの展開。ストーリーだけなら高校演劇にでも使えそうな戯曲やけど、これは生演奏と一体でないと絶対に面白くないでしょうね。でも、作品のテーマ(←をすぐに考えるのが、高校演劇出身者の悪い癖。)であり、タイトル曲『アウェーインザライフ』にも歌われている、「人間誰しも生まれたときからアウェイ。だったらアウェイを嘆くより、ここをホームにしてしまえ!」というメッセージは、斬新で実に心強い。「きっとどこかにホームがあるよ」みたいなお話が多い中で、ただ口をあけて幸せが落ちてくるのを待ってるよりは、自分でホームを勝ち取る、創り上げる姿勢は絶対に大切やと思うのです。
カーテンコールでは、お利口さん鑑賞モード解除!!オーケンの歌う『踊るダメ人間』でダメジャンプ!!がっきがきにヘドバンかまして、三曲だけで汗だくになりました。
…でも、メガネでヘドバンしたらメガネ飛ぶよね。(えびは普段はメガネ、ライブの際のみコンタクトを装用しているのです。)
■セットリスト(というのか?)
01.踊るダメ人間
02.日本の米(物販)
03.じーさんはいい塩梅(膝の水を抜いた日)
04.仲直りのテーマ
05.人間嫌いの歌
06.これでいいのだ
07.香菜、頭をよくしてあげよう
08.中学生からやり直せ
09.おサル音頭~BORN TO BE WILD~
10.蜘蛛の糸
11.踊る赤ちゃん人間
12.タイアップ
13.ソウルこっくりさん
14.世界中のラブソングが君を
15.心の折れたエンジェル
16.新人バンドのテーマ
17.家なき子と打点王
18.蓮華畑
19.アウェーインザライフ
EN…じゃなくってカーテンコール
20.踊るダメ人間
21.アウェーインザライフ
22.トゥルーロマンス
(あと、シスターロメロのメジャーデビューが決まる際に
筋少本人がアコースティックで演ったのって何やったっけ…)
最後は舞台のお約束、全キャスト横並びで手を繋いでバンザイ。(仲の悪かった)オーケンと橘高文彦が手を繋ぐ光景に頬を緩めたのですが、後日、BIGCATでのライブの際のMCによると…
大槻「俺さぁ、水野美紀さんとソニンちゃんと手を繋ぎたかったから、
絶対俺のそばには来るな!!って事前にメンバーに言ってたのに、
なぜか橘高くんがいるんだもん!!」
橘高「舞台の上で、大槻が小さい声で、「なんで来るんだよー」って
俺に言ってるのww」
…だそうです。とほほ。