お仕事祭のクライマックスを翌日に控え、本日午後より上京。
一年ばかり暮らした街やけど、
ソフィア・コッポラが「ロスト・イン・トランスレーション」で描いたように、
東京の雑踏にはどこか孤独を感じてしまう。
さて、上京する車中での出来事。
平日昼間の東海道新幹線なんてのは
たいがいビジネスマンばっかりで、
ノーパソで仕事してたり書類を読んでたり、
移動時間にこれ幸いと惰眠をむさぼったり。
そんなスーツの群れの中に、
思いっきり場違いな「おばあちゃん」がひとり。
べつに高齢の方がのぞみに乗ってても、
何も問題ないんやけど、
その方は普通に町を歩いてはっても手助けしてしまいそうな
よぼよぼのおばあちゃんで、なんとなく違和感があふれる。
使い古された百貨店の紙袋に、いっぱい荷物を詰めて、
一人で新幹線に乗っておられました。
さて、のぞみ90号が静岡駅を過ぎたころ、
『話題のスーパー もちづき』という大きな看板が見えた。
…どう話題なのか、何が話題なのか、とても気になる。
そんな疑問に心の平静を乱されているころ、
件の「おばあちゃん」がよれよれの紙袋をあさり始めた。
取り出したのは、袋詰めのチョコレート。
袋をあけると、おばあちゃんは隣席で漫画を読むビジネスマンに
チョコを二つ渡した。
続いて、反対側の隣でプレゼン資料を読み込むスーツの男性にも。
「あれ?お知り合いやったの?」と思うのも束の間、
そのもうひとつとなりで、VAIOを叩いて仕事をする
(ふりをしながら実は某誌用の映画紹介原稿を書いていた)男性、
つまりは私えびてつにもチョコレートが回ってきた。
・・・「おすそ分け」だったのである。
観光バスでも無い、行楽シーズンでもない、
平日昼間の「のぞみ」の車内で。チョコレートのおすそ分け。
えびも含めて、周囲のスーツ野郎共は困ったようなはにかんだような様子で、
それでも嬉しそうにチョコレートを受け取った。
ドメスティックブランドの、特に高価でもないミルクチョコレート。
・・・とてもおいしかった。
テンションが張り詰めて、かなりピリピリしていたんやけど、
その神経がゆるゆると緩んでいくのが分かった。
先日、滋賀会館シネマホールでも上映された
「ALWAYS 三丁目の夕日」は、昨年の映画賞で絶賛されたけれど、
きっとあの時代には、こういう行為も生きてたんやろうな。
昭和30年代を知らないえびは、あの作品に何のノスタルジックも感じないけれど
意外なところで人のつながりの温かみを感じてしまって、
やっぱりそういうのもいいな、と単純に思った。
新横浜に着くと、おばあちゃんは
周囲に一礼してひょこひょこと降りていった。
・・・おばあちゃん、いつまでもお元気で。
ホテルの15階の窓からは、そびえる霞ヶ関のビル群が見えます。
この街には何万人のひとが暮らしてるんやろなぁ。